尾身幸次の発言 (政治改革に関する特別委員会)

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○尾身委員 次に、現行の中選挙区制度と小選挙区比例代表並立制のどちらがより民意の反映がなされているかという点について伺いたいと思います。
 民意の反映という言葉について、政府及び野党等のこの国会の論争を伺っておりますと、いかなる制度が民意を的確に議席の数に反映できるかという議論に終始しているわけであります。つまり、その論争の中には、議席数が幾らになるかという議論が多いわけであります。そして、いかなる人物が有権者の代表として国会に送られてくるかという議論は全く欠落しております。私は、もとより、議席数に民意を反映することも必要であることはわかります。しかし同時に、選ばれてくる一人一人の政治家の人格、識見、有権者との信頼関係、そういうものに民意が反映されていなければならないと思うわけであります。言いかえれば、選ばれる人物に民意が反映されることが民主主義の基本原則であると思うのであります。
 政策本位、政党本位の選挙ということを言われておりますが、果たして本当にそれがいいのか。政党の政策といえば、いわばパンフレット一冊にまとめられたものであります。この各政党のパンフレットをそれぞれ読み比べて、どのパンフレットがいいから、その政党の政策がいいからこの政党の候補者に投票しようというほど単純なものではないと私は思うわけであります。
 去る七月の産経新聞に香山健一教授は、「二十世紀未の現在、世界的な規模で進行しているのは、イデオロギー政党ならびに近代組織政党の終焉(しゅうえん)である。画一的なイデオロギーで支配され、巨大な党員数を擁し、中央から末端に至る党官僚組織からなる近代組織政党モデルはいまや完全に時代遅れの存在となろうとしている。
 個性化、自由化、多様化、国際化、情報化などの構造的な変化が進展する新しい社会のなかにあって、有権者は二十四時間私生活を拘束するような強固な組織政党への忠誠心を持ちたいとは考えていない。有権者が求めているのは、激動する内外情勢のなかにあって国や地方の政治の進路選択のリーダーシップをとることのできる国会議員や地方議会議員である。」したがって、個々の政策についての判断が微妙に違うその中に個人個人の資質、能力、先見性、そういうものを生かして、有権者の望む方向、国のあるべき方向を見出していく個々の有能なる人物はだれかという選択を有権者が自分自身ですることを望んでいると主張しているわけでありますが、私はまさにそのとおりと思うのであります。
 中選挙区制においては同士打ちが起きるから、厳しい競争で金がかかる、小選挙区制は金がかからないということについて疑問があることは、先ほど質問したとおりであります。同じ選挙区で同じ政党の候補者が同士打ちを起こさない方がよいということは立候補する側の論理でありまして、有権者の側からこの問題を考えてみたときには、中選挙区制には有権者の選択の自由があるということであります。小選挙区制のもとにおいては、一つの政党から、例えば自民党から一人しか立候補できないために、有権者がその人を気に入らなかった場合どうしたらいいか。その場合には他の政党に投票するか、あるいは棄権する以外にないということになります。他方、現行の中選挙区制のもとにおいては、あの人はいい人だけれども○○党だからだめだ、あの人は立派な人だけれども××党だからだめだ、やはり自民党がいい、そしてその自民党の中で何人もの候補者がいるから、その中のだれが自分にかわって国政の場で国の方向を決めてもらうのにベストか、だれがふるさとの発展のために一番役に立つか、だれが自分の考えている政治の課題を解決してくれるか、そういうことを考えて人物を選び、投票をしているわけであります。つまり、今の中選挙区制度においては、政党の選択と人物の選択を有権者が同時に行っているのであります。これに対して、新しく考えられている小選挙区制のもとにおいては、有権者は政党の選択はできるけれども、人物の選択はできないということになります。つまり、言いかえれば、有権者が今まで持っていた政党を選ぶ権利と人物を選ぶ権利のうち、人物を選ぶ権利を政党が取り上げてしまう、有権者には政党を選ぶ権利しか残されていないということになるわけであります。私は、これは大変なことだと思うわけであります。
 このことは、私は、有権者が神様である、主権は国民にある、主権在民という民主主義の基本理念に反すると考えております。したがって、政党と人物の両方を選ぶ権利を有権者が持っている現在の中選挙区制の方が、民主主義の基本原則から考えれば断然すぐれた制度であると思うのであります。この点についての総理の御見解を伺います。

発言情報

speech_id: 112104575X00719910927_006

発言者: 尾身幸次

speaker_id: 1221

日付: 1991-09-27

院: 衆議院

会議名: 政治改革に関する特別委員会