尾身幸次の発言 (政治改革に関する特別委員会)

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○尾身委員 私は、政治改革そのものの必要性をもとより否定するものではございません。国民のために、我が国の繁栄のために正しい政治が実現できるシステムをつくることは極めて重要であると考えております。だからといって、政治改革即小選挙区比例代表並立制の導入ということには断じてなり得ないのであります。
 現行中選挙区制は制度疲労を起こしているとか、お金がかかり過ぎるとか言われておりますが、小選挙区と比べて、私はお金がかかり過ぎるという実態にはないと思います。そして、私はいろいろと総合的に考えてみて、有権者が政党と人物の選択を同時にできること、競争原理が働き、新人が出やすくて新陳代謝が確保され、政治に緊張感が保たれること、有権者の選択が党の決定よりも上位にくること、有権者が神様であるという民主主義の一番大切な基本原理が守られていること、また、野党との間で議論になっている得票数と議席数との関係についても、ほぼバランスのとれた数の配分に結果としてなっているなどという点を考えますと、現行中選挙区制度は、百点満点ではないけれども、小選挙区比例代表並立制よりもはるかにすぐれた制度であると考えているわけであります。
 中選挙区制は外国に例がないというようなことも言われておりますが、戦後四十六年間、あの戦争に敗れて廃墟の中から立ち上がった日本が、いわばマラソンで言えば一番びりからスタートをした日本が世界の各国を追い抜いて今や世界のリーダーとしてトップに立っている、トップランナーとして走っているというそういう現状を考えてみたときに、基本的な我が国の政治の枠組みが間違っていたのならば決してこれは実現できなかったということも確かなわけでありまして、そういう意味で、この基本的な枠組みを変えることは極めて問題があると考えているわけであります。
 時間がございませんから、最後まで質問をさせていただきます。
 選挙制度に反対する者は対案がないではないかと言われておりますが、私は、制度の持っている本質的な性格からして、現行中選挙区制の方がはるかに民主主義の理念に合致したすぐれた制度であると確信をしております。そこで、私は、政治改革の基本は、この中選挙区制度をもとにして定数格差の是正を実現するところにあると考えております。
 定数格差の是正については国会決議がございます。与野党一致した国会決議でありますから、それをベースとしつつ、中選挙区制度のもとで定数格差の是正を行い、そしてその前提において政治改革を実現していく。例えば資産公開、腐敗防止法の制定、これらを通じて正しい政治のあり方を確立していくことが極めて重要であると考えているわけであります。
 我々の仲間は、既に中選挙区制度のもとにおいて格差二倍以内にするという案を検討しているわけであります。定数格差の是正を実現することは、政治改革を目指す我々にとってどんなにつらくても苦しくても必要不可欠なことであります。我々は苦しさを避けるつもりはありません。つらさを避けているわけでもありません。この定数格差是正を中選挙区制度のもとにおいて行うべきだと考えております。選挙制度のあり方は我が国政治制度の枠組み、メカニズムの問題でありまして、定数格差の是正は、現行中選挙制度をとろうが、あるいは小選挙区比例代表制をとろうが、どうしても実現しなければならない課題であります。中選挙区制のもとにおいて定数格差の是正が非常に困難であるから小選挙区比例代表並立制という形でやるというのは、私は本末転倒であると考えているわけであります。
 以上、いろいろな点を指摘をいたしまして御見解を承っておりますが、私は、小選挙区比例代表並立制を中心とするこの政治改革三法案の底に流れる考え方は極めて一貫していると思っているわけであります。その考え方は政党本位の政治体制であります。政党がその構成員である政治家個人をコントロールし、管理する政治体制にする、そして有権者との結びつきは、個人対個人の結びつきではなしに政党と有権者の結びつきを重視する、有権者は政党を相手にして投票をするというものでありまして、いわば管理された政治、政党支配の政治、そういう方向を目指していると考えられるわけであります。したがって、その究極のあり方は、政党による管理体制の確立、政党による個人の規制、政党による個人の政治活動の抑え込み、管理、そういう方向を一貫して目指しているように私には感じられるわけであります。
 この三法案が通ったならば、地方区における公認の決定や比例区における順位づけを政党の幹部が行う、資金の配分も政党幹部に一本化するということで、公認、順位づけ、資金の三点から政党幹部にすさまじい権力の集中が起こるものと予想されます。その結果、政党幹部が国会議員の生殺与奪の権を握ることになり、政党ファシズムの台頭が懸念されるわけであります。そして政治家は、有権者の意向を尊重するよりも政党幹部の方に顔を向けるようになると思うのであります。総理は、もとよりこのようなことは全く考えていないとお答えになるかもしれませんが、制度の本質としてそのような欠陥を内蔵していると思うのであります。これは極めて憂慮すべきことであります。
 それに対して私は、これからの複雑多様化する社会においては、政党の個人政治家に対する規制、コントロールというものはできるだけソフトにした方がよいと考えております。むしろ個人個人が時代の流れに即応した判断をし、政治行動をする、そして個々の政治家が有権者と直接信頼関係によって結びついてその有権者のニーズや要望を吸い上げて、それをもとにして政党という組織を通じてコンセンサスをつくり上げ、日本の政治に反映していくべきである。私は、自由で濶達で、そしてオープンで開放的で、そしてまた多種多様な政治家が育つ、その多種多様な政治家の中で基本的に政治理念を同じくする者同士が集まって政党を構成し、そういう中からコンセンサスを確立して日本の方向づけをする、そのような政治のあり方がこれからの日本の方向づけ、国際社会のあり方を決める政治体制としてはベターである、その方か民主的である、より国民の意思に合っている、そのように考えるわけであります。
 したがって、この政治改革についての最大のポイントは、今後我が国がより管理された政治ファシズム、政党ファシズムの方向に行くか、あるいは自由な政治体制をとるかという基本的方向の選択の問題でありまして、私は、この両者を比較した場合に、どんなことがあっても、断固、より自由な政治体制をとることがこれからの国家社会の健全な発展のためにどうしても必要と考えているわけでございます。
 以上の諸点について最後に総理の御所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。

発言情報

speech_id: 112104575X00719910927_008

発言者: 尾身幸次

speaker_id: 1221

日付: 1991-09-27

院: 衆議院

会議名: 政治改革に関する特別委員会