羽田孜の発言 (本会議)

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○羽田孜君 政治改革三法案の国会上程に当たりまして、自由民主党を代表して、総理の御所見をお伺いいたしたいと思います。
 さて、私は、我が党の選挙制度調査会の責任者について以来、実に多くの国民の皆様と話し合いをさせていただく機会を得ました。あるときは皆様と一緒に公開討論会、またあるときは少数の会合で文字どおりひざを突き合わせながら、そして時によっては路上で声をかけられ、そのまま立ち話ということもありました。もちろん、たくさんの丁寧な手紙も寄せられているところであります。
 こうした皆様のお考えは、もちろん十人十色、各人各様であります。しかしながら、動機は多様であっても、結論はいつもたった一つでありました。日本の政治はもっとしっかりしてほしい、政治家は我々の信頼に足る振る舞いをしてほしい、延々と続いた議論も、最後はこれに尽きるのであります。残念ながら、ごく普通の方々が抱いている政治に対する印象とはこのようなものであり、あるいはそれの証左なのか、国民の政治離れは近年ますます進む一方であります。さきの統一地方選挙では、政治を志す人々自体が減っていることが如実に示されております。
 政治が不在で国家が成り立つことなど到底あり得ません。しかし、政治が国家を乱すことは幾らでもその例があるところであります。庶民は言うに言えないもどかしい願いを、政治よ、しっかりしろ、政治家よ、襟を正せという短い言葉の中に込めているのではないでしょうか。政治家としてこの声に責任を持ってこたえること、それが政治改革であります。
 そのような政治に対する信頼感の喪失、これは何が原因で生じておるのでありましょうか。我々はこの点をここ三年近くにわたり謙虚かつ徹底的に追求してまいりました。
 そして、政治不信の背景をなす五つの要素に突き当たったのであります。第一は、政治家個々人の倫理的問題、第二は、膨大な政治資金とその不透明さ、第三は、不合理な議員定数と選挙制度、第四は、わかりにくく非能率な国会のあり方、第五は、派閥政治の横行であります。これらの一つ一つが、国民の皆様の心にいろいろな形で政治への不信感をもたらしているのであります。
 したがって、政治改革とはこれら全体を根元から改善することにほかなりません。部分的手直しては、やがてその改善されたかに見えた部分も再びもとのもくあみになることは目に見えているからであります。
 この際、我々が現行選挙制度の抜本改革を糸口に政治の全体的な改革に着手しようとしておりますことは、次に申し述べますように、選挙制度こそが政治活動のあり方を決定的に左右するものとの認識を基本としているからであります。
 このたびの選挙制度の抜本改革に対し、政治改革を選挙制度の問題にすりかえるものだ、あるいはまた、現行中選挙区制のもとで総定数を削減し、一票の価値の格差是正を行うべきだといった意見があることは承知しております。しかし、本当にそうでしょうか。
 今日、我が国政治の弊害として内外から指摘されている種々の問題は、一つの選挙区で三人、四人、五人等の複数議員を選挙するため、政権を単独で担おうとする政党は、与野党を問わず必ず定数の半分以上の当選者を出さなければならないという宿命を持つ現行中選挙区制にほとんどすべてが起因しているのであります。候補者の間では、政策論争よりも後援会の拡大競争、サービス競争が行われ、そのために政治資金が水膨れ的に必要となります。当選のためには背に腹はかえられないことから、倫理も逸脱しからであります。候補者には党のかわりに派閥が後押しし、派閥政治発生の素地を許しています。そして何よりも、選挙が終われば無所属候補の入党により与野党の勢力比がほとんど前と変わらず、このことが国会の緊張感をそいで、有権者の間に、どうせ一票で政治は変えられない、政治は永田町内の駆け引きで決まるという無力感を生む原因ともなっているのであります。
 また、中選挙区制のままの総定数削減、格差是正が言われますが、例えば八増・七減という国民の批判にさらされた定数是正ですらどれほど困難であったかを思い起こしても、言うべくして行うほかたしというのが現実であります。今回、もし昭和六十一年の国会決議をもとに定数是正を行うとすれば、膨大な数の選挙区を動かさなくてはなりませんし、万一それができたとしても、違憲状態を解消するのみで、中選挙区制に起因する弊害は全く除去できず、政治に対して国民が望む、政治と金の関係を正すべきだ、国会審議を機能的に、わかりやすくすべきだ、派閥の争いより政策論をしてほしい等にこたえることはできません。定数是正は当然の前提条件であって、政治改革ということではないのであります。
 現行中選挙区制であっても、まだ手直しをしたり議員が自覚することで弊害を改善できるとの意見もあります。しかし、先ほどからこの問題について皆さんに問いかけているのは、我々みずから反省し新しいものを求めようとしておる。しかし、諸君のやじは、残念ですけれども、社会党そのほかの政党が何をしてきたのか、このことについては何の反省もないのであります。(拍手)しかし、我々は、過去にあって政治倫理綱領を制定し、行為規範もつくりました。公職選挙法、政治資金規正法の改正も数次にわたり実施してまいりました。しかし、その実効は顕著にあらわれることなく、今日まさに限界に来ておると申し上げることが至当であろうと考えるのであります。
 我々は、単に投票価値の格差是正が困難だから選挙制度を改めようと申しているのではありません。戦後半世紀近くを過ぎ、地元などの部分単位の利益を補ってきた現行中選挙区制は今その役割を終え、次の半世紀への踏み台となる新しい制度が必要であるとの判断に基づいてこのたびの改革を目指しているのであります。
 申し上げるまでもなく、衆議院議員選挙の意義は政権の選択にあります。政党が選挙で掲げる政権構想や政策の体系を国民が選択することにより政権がつくられ、あるいは審判の結果によっては政権が交代するのが本来の姿であります。それゆえに国民に信を問うという解散もあるのであります。しかし、前にも述べましたように、今の仕組みでは、政権を担おうとする政党は、一つの選挙区で複数の候補者を立てざるを得ず、そのために、政策以外の要素である人物の売り込みやサービスの提供によって多くの当選者を生み出さざるを得ません。これで果たして政権選択の意義が発揮されていると言えるのでありましょうか。逆に言えば、一人一党式の選挙のままで、議院内閣制の前提である政党政治が真に国民全体に責任を負って機能し得ると言えるのでありましょうか。
 海部総理、ここで、総理御自身の経験等に照らし、現行の中選挙区制についてどう考えておられるのか、忌憚のない御意見を承りたいと存じます。
 そこで、このたびの政治改革三法案でありますが、これらは一つの考え方のもと、相互に関係し合っている法案であり、個別の法案として存立し得る内容のものではないと考えます。中選挙区制という構造が、政策論争よりもサービス競争、個人への無理な資金調達の強制、政権交代の展望を欠くがゆえの緩んだ政治土壌等の弊害を近年とみに表面化させていることを考えると、やはり制度改革をもって克服する以外にないと信ずるのであります。(拍手)
 すなわち、小選挙区比例代表並立制を導入する公職選挙法の一部を改正する法律案は、各党が一つの選挙区に一人の候補者を立てることによって、選挙をその本来のあり方である、責任を明確にする政党間の政策論争本位の競争に改めることが目的であります。これに伴い選挙運動は政党を中心とし、これと相まって選挙の腐敗行為に対する制裁強化をも図るものであります。
 しかし、この制度改革によって、有権者の選択の自由がなくなる、死票が多くなる、本当に金がかからなくなるのか、選挙区が小さくなることでサービスが激化し、真の政治活動ができなくなるのではないか、政権交代の可能性を確保するのならば完全小選挙区制であるべきである、権力は腐敗する、無所属候補者こそが腐敗を防止する、多極分散の時代に、議員の一極集中となる区割りは逆行である、中選挙区制こそ身分や経歴にかかわらず自由に立候補でき、人材の発掘ができるのではないか、五〇%前後の得票となると人気取りの政策競争が横行し、国民の痛みを伴う諸改革に取り組めなくなる、大物の輩出が困難になる、区長、都議、区議より選挙区が小さくなり、国会議員の権威が存在しなくなる、政権交代の可能性と言うが、今の野党に国を任せる力量があろうか等々の疑念や意見があるところでありますが、総理または自治大臣の御見解を伺わせていただきたいと思うのであります。
 ところで、政治改革が国民の強い声として具体的に浮き彫りになったのはリクルート事件でありました。この事件で世論は、端的に言うならば、政治と金の関係は一般常識では考えられないという非難一色であったのであります。
 国民も政策の普及、声の吸収のためのコストは認めております。しかし、その額の膨大さが問題であります。先進各国と比較しても、日常活動及び選挙費用とも数十倍とか言われるようになると黙視できないということであり、その政治資金の総額が、地方と合わせて三千億円を超える膨大な金額であることは、諸外国からも異常とまで指摘されており……(発言する者あり)ですから、改革をしようとしておるんです。一体どのように集金するのか、その企業、団体、組合等に対し真に中立公正が保たれるのかと問われたとき、背筋に寒さを覚えるのであります。今、国際社会からもこの点につき特に不信の目が向けられていることを知らなければならないと思います。
 今回提案の政治資金規正法の一部を改正する法律案は、政党中心の選挙制度に呼応して、企業等の団体寄附は政治家個人から政党に限定していくことを眼目とし、同時に、政治資金パーティー収支の明確化、寄附者の公開基準の大幅引き下げ等による政治資金のガラス張り化を図り、違反に対しては公民権の停止等罰則を強化するほか、あわせて連座制の強化、裁判の迅速化等、腐敗防止法とも言うべき公職選挙法の改正も行っておりますが、この改正案についても幾つかの疑問と指摘があるところであります。企業献金は政党にシフトするというが、企業と政党の癒着は起こらないのか、政治資金の規制は陰にこもる結果にならないか、かえって限度枠を広げる方が現実的等の意見がありますが、総理または自治大臣の御見解をお示しいただきたい。
 さらに、政党助成法案については、議会制民主主義が当然に前提としている政党の公的性格からも、その機能が政党中心の選挙制度になれば格段に高まることから、個人を規制し政党に政治資金を集めるという政治資金規正法の強化の一方で、必要な資金を政党に対し公費で助成し、これをもって活動を支援しようというものであります。
 この点については、公的助成の導入は、公権力が入り、政治活動の自由を阻害するおそれはないか、国民の税金で行われるが、納得されるだろうか、補助が受けられる政党要件を得票の二%と定めたのは結社の自由に触れないか等の指摘がたされているところであり、以上についても御答弁を願いたい。
 以上のように、三法案は、選挙と日常政治活動を通じて政党政治を確立し、議会制民主主義の健全な発展を図り、政治に対する国民の信頼をいただこうという共通の考えに基づく措置でありますから、三法一体が原則でなければなりません。
 しかし、これに対し、制度は制度、金は金、助成は助成で分離して、できるものからやるべきなどの一部論調がありますが、諸外国と比しても法外に金のかかる制度の根本を断ち切ることが必要で、そのことを前提として政治資金も規制できるのであり、これらをなし得るとき初めて公的助成についての国民の理解が得られるものと信ずるところでありますが、この点につきましても、総理のお答えをいただきたいと思います。(拍手)。さて、小選挙区比例代表並立制の制度自体の意義を申し上げるならば、小選挙区制の特性である安定した。責任の明確な政権の形成と、全国集計による比例代表制の特性である少数意見の議席への反映という、選挙の二つの大事な目標をともに満たす案で、本案をまとめるに当たり世界各国の制度をつぶさに検証した上での採用でありまして、これはまさに人知の最高の制度であろうと今私どもは考えております。(拍手)
 よく、四割の得票率で八割の議席獲得をねらった自民党の党利党略だと悪意の宣伝がなされることがあります。ならば、野党の皆さんはなぜ反自由民主党の六割の得票率を結集して九割の議席を占めることのために本当の努力を今までもしなかったのでしょうか。(拍手)私は、そのように反論申し上げたい。我が党が仮に永久政権をねらっているとしたら、現行選挙制度こそが今日までの実績からもほるかにその可能性が高いのであります。我々が目的としているのは、停滞している今日の政治状況を打破し、国会に活力を生み出し、制度疲労を来した現行制度の改革を行い、政治に信頼を取り戻すところにあるのであります。(拍手)
 現に、去る大規模な世論調査によりますと、八六%の人が政界再編成を望んでおりました。そして六二%の人が、今の中選挙区ではだめである、新しい選挙制度にしたさい、これが六二%の声であるということ。やっぱり皆さんも謙虚にこのことに耳をかすべきであろうと思います。(拍手)
 これらの点につきまして、総理の御見解もお聞かせをいただきたいと思います。
 この改革では、政権交代可能の土壌が培われると考えますが、一人を選ぶ制度ですから、有権者の一票が万年与党、万年野党の政治を一変させる力を持つのであります。その互いの緊張感を背景に、もはや候補者も政党も、部分的な声だけでなく、各党が地方組織を充実することに努め、幅広い層の政策要望を十分に吸収し、内外の重要課題に卓越した先見性を示すことになりましょう。その努力を怠らない政党だけが真に国民の信頼をから得ることができ、政権を担う政党にふさわしいと評価されるのでありましょう。
 我が党は、政治改革に当たって、三法案は改革のエンジン部分と位置づけ、このほか、冒頭申し上げた政治不信の五つの要素を払拭する努力に全力を傾注しておるところであります。
 まず、政治倫理については、政治倫理確立のための国会議員等の資産等の公開に関する法律案、これをまとめ、議会制度協議会に提案し、実現に向けて各党の皆さんに審議をお願いしてまいったところであります。
 国会改革の問題は、国会から国の行く先や顔が見えてこないという国の内外からの批判の声にこたえるために、我々が直ちに取り組むべき課題であります。消費税国会にしても、何ゆえ税制の改革が必要なのか、必要でないのか、論議の過程からなかなか見えてこない、これが国民の声でありました。昨年の八月二日のイラクのクウエート侵攻についても、直ちに国会が召集され、状況の分析や、日本はどのように行動すべきか議論されるべきでありましたが、二カ月経過した臨時国会まで開会されなかったのは一体なぜなのか。また、内外のもろもろの重要な問題に関して、国民の代表である国会から議論を通じての示唆がなされないことにより、行政も適切な施策を、しかも敏速にとり得ないことに対するいら立ちが多々あります。何ができ、何をどのように実施をすべきなのか、もっと活発に議論がされるような改革が国民から要請されているのであります。湾岸戦争に臨む際のアメリカの議会、クーデターが起きたときのソ連邦の議会、その双方の対応ぶりを比較したとき、両者の差は歴然としていたのであります。
 また、国会決議等に見られる我が国の全会一致方式についても、実は問われているところであります。民主主義の基本は、多数決で決することにありますが、可一選挙区から複数が選ばれる現状にあっては、白黒をはっきりさせることを嫌うのが現実であります。これは、波風を起こさないという我が国特有の知恵であって、何も政治の場だけの現象ではないとの君もありますが、もはやこの方式が激変の時代。に通用しなくなっていることも真剣に考え、対処していかなければならないと思います。
 以上から、この激変、転換の時代に国会は機能しているのかとの国民の手厳しい批判にどうこたえるか。今、国の心臓部である国会を権威ある言論の府に改革していくことは急務の問題でありましょう。
 なお、我々の長年の懸案でございました。国会の一月召集が実現されようとしております。これについては、財政当局に予算編成をなるべく暮れの早いうちにやはり済ませてもらう協力も必要であります。また、国会の傍聴席を全国に広げようとの国会中継専用テレビジョン、これについても、今、議院運営委員会の各党の皆様方によってこの問題が議論をされておること、これは私は評価すべきであろうと考えております。
 さらに、我々は、我が党自身について、その運営、組織の根本にまでさかのぼって子細な検討を加え、より民主的で公正の理念に貫かれた。国民に親しまれる近代政党に脱皮させるための抜本的かつ全体的改革案を既に党議として定めているところであります。また、地方分権は、一極集中を排除するという国是とも言うべきものであり、新しい制度を真に定着させるためにも欠かすことのできない施策で、地方と国の役割の分担を明確にしていき、あわせて、地方議会の選挙についても、地方の現状と国会議員の選挙との整合性を求めながら検討を進めなければなりません。その上に立った地方自治の確立も確認しておるところであります。
 なお、現行の二院制についても、国民からもそのあり方について厳しい批判があるのが事実であり、一院にすべきとの極論さえあります。内閣は、参議院の制度改革についても選挙制度審議会に諮問し、答申もいただいたのでありますが、このたびは、制度改革には触れられておりません。多くの識者の意見としては、参議院の本来の性格である衆議院の補完、抑制、均衡の役割を生かすため、政党とできるだけ距離を置き、また、過酷な選挙運動をせずとも議席を得られるようた制度を採用すべきとのことであります。しかし、このたびの答申のまま実行するならば、ほぼかつての銭酷区、残酷区となってしまうとの懸念から見合わせることとし、我が党としても鋭意検討を進めているところであります。車の両輪である参議院の制度も一日も早く結論を得るべきでありましょう。
 以上申し上げた点につきましても、総理の御見解を承りたいと思います。
 終わりに、今国会では、証券・金融等についてそのあり方が問われています。しかし、このことは単に一金融界のみの問題ではなく、戦後から今日まで我が国の繁栄を築く間にありまして、各界でももたれ合い、なれ合い、黙認等の形で慣行として当然視されてきた点が多々あったことは否めない事実であろうと思います。しかし、経済大国となった今日、透明性や国際慣行に合った経済社会運営が求められていると申し上げて過言ではないと思います。(発言する者あり)無責任ということじゃありません。そういった問題をみんなで考えなければならぬ。なぜ、あなた方は政権をとって我が党を阻止することができなかったのですか。(拍手)
 そういう中で、苦しくとも正すべきは正し、国民はもとより、広く世界にも理解される制度をつくり上げるべきであろうと考えます。これをなし遂げた上で、堂々と胸を張り、真の豊か、な国民生活と、世界にも理解され、信頼され、そして貢献する日本を築いていくことが今求められているのだと思います。その意味で、この今日の不幸な出来事を次のステップヘ生かすべきであろうと信じます。
 私たちは、近年、国家として必要であっても国民一人一人にとってはきつい消費税の導入をお願いしてまいりました。農業者の皆さんには、国際化が進む中で、牛肉・かんきつ類の自由化や支持価格の引き下げをお願いしてまいりました。商業に携わる皆さんには、大店舗法の改正等をお願いしてまいりました。このほか多くの皆様に、時代の要請に基づき、痛みの伴う改革をお願いしてきたところであり、これからもさらに多くの変革に際し、国民の皆様の御協力をお願いしていかなければなりません。長い歴史を持った慣習を切りかえること、既得権を失うことは困難と痛みを伴います。しかし、時代の変化にこたえ、変えていかなければならないとの観点から、苦悩の末に決断してお願いをしてまいったところであります。
 かつて、昭和三十一年当時、審議され廃案となった制度改革とは、その背景も環境も大きく変化しております。このたびの第八次選挙制度審議会も、当時と異なり、常に冷静に、公正な討論をもとに答申されたものであり、これを受けた我が党も、ひとり党利党略に走ることなく常に配慮し、議会制民主主義のいかにあるべきかを真摯に問い続けてまいりました。
 この間、野党の皆さんとも公式、非公式を問わず改革について議論してきたところで、殊に本年三月から五月にかけて、石井一委員長のもとでの公職選挙法特別委員会にあっては、各党の皆さんからも、定数是正のみで今求められている政治改革にこたえることができるのか、政治資金規正法の改正その他により、中選挙区制の中でのもろもろの問題にこたえることができるのかを議論してまいりました。各党とも今日の選挙制度の疲労は認められております。制度そのものを改めるべきであるとの声がほとんどであったのであります。ただ……(発言する者あり、拍手)お聞きなさい。中には、まず定数是正をやりましょう、しかる後に選挙制度を。否、単に定数是正をやることは大幅なものとなり、困難である、よしんばやったとしても、制度疲労に加え、合区、分区等によりさらに厳しいものが残されることになり、何よりも政治の全体的な改革にはつながらないため、今こそ制度改革をすべきである等の声も強くあったわけであります。
 その日から今日まで検討の日は十分あったと考えます。改革に対する意欲と責任をお持ちであるならば、具体的な改革案を今国会に提出すべきであろうということを私は皆様に期待をいたしたいのであります。(拍手)
 さきにも申し上げたとおり、制度改革は他の法律とは異なり、民主主義の土俵づくりであります。このことからも、単に内閣と議員との議論のみではなくて、石井委員会で実現された議員間における活発かつ建設的な議論が望まれるところであります。
 改革は常に痛みを伴うものであります。国民の皆さんにはさきに申し上げましたように多くの改革をお願いしているとき、言を左右にしてみずからの改革を怠ることは許されません。もしそのようなことがあるとするならば、政治不信はさらに高まり、予測し得ない事態も恐れなければならないと考えます。主権在民の日本、国民の代表は国会であります。その国会を構成する議員みずからが率先して改革に当たることこそ、国民の期待にこたえる緊急かつ重大な我々の使命であろうと考えるところであります。(拍手)
 このたびの改革は、明治の志士たちが近代国家日本をつくるため、みずからの血を流し実現した版籍奉還の挙にも等しいと考えるのであります。同僚議員の皆さん、つらくとも苦しくとも、意欲を持って改革をなし遂げようではありませんか。そこに新たな活力がみたぎり、改革した制度による新しい国会から、新しい日本の国、国際社会から信頼される日本の国、子供や孫たちが真に誇りの持てる日本の国がつくられるのだと私は信じます。その第一歩として、政府がただいま提案されました三法につきまして、ただやじることなく、本当に真摯に議員の皆さん方が取り組んでいただき、議論をし、そして新しい道を見つけていただきますことを私は心から皆様方にお訴えをいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕

発言情報

speech_id: 112105254X00619910910_005

発言者: 羽田孜

speaker_id: 3201

日付: 1991-09-10

院: 衆議院

会議名: 本会議