北側一雄の発言 (本会議)
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○北側一雄君 私は、公明党・国民会議を代表し、ただいま議題となりました政治改革三法案について、総理に質問いたします。
御承知のとおり、我が党は、九月三日、比例代表選挙区併用制の要綱を発表いたしました。多様な民意を正確に反映し、かつ候補者個人の顔が見える比例代表選挙制度でございます。
まず、政府の提出した選挙制度改革案である小選挙区比例代表並立制について、我が党の提案する併用制と対比しだから質問をいたします。
政府の提案する並立制がその根拠としていることは、第一に、政策本位、政党本位の選挙の実現と言われております。しかし、現行選挙が個人本位の選挙となってしまって、政策本位、政党本位の選挙となっていないと指摘するなら、それは専ら自民党党内の特有の問題ではありませんか。また、政策本位、政党本位の選挙の実現というなら、並立制より、まさしく政党間の選挙であるところの併用制が数段すぐれていると思いますが、総理のお考えをお尋ねいたします。
第二に、並立制は、政権交代の可能性を高めて、政治における緊張感をもたらすと言われております。確かに、政権交代がないために政治に緊張感が失われ、それがまた政治の腐敗をも招いているという認識は、重要な指摘であります。しかし、並立制が政権交代の可能性を高めるのに役立つというのは、到底納得できるものではありません。幾度も指摘されているように、勢力の均衡した二つの政党がない日本の政治状況では、むしろ一党支配が固定化する可能性が高いと言わざるを得ません。政権交代の可能性を言うのであれば、政党の得票率が正確に議席に反映する併用制を採用すれば、政権交代可能性が直ちに現実のものとなると考えますが、総理はどうお考えですか。
第三に、並立制の導入は金のかからない選挙にするためと言われております。並立制にすれば選挙に金がかからなくなるとはとても考えられません。できるだけ金がかからない選挙にしたいというのであれば、比例代表制である併用制の方が間違いなくすぐれていると考えますが、総理はどうお考えでしょうか。
次に、併用制の議論に関連いたしまして、連立政権に対する総理の認識をお尋ねいたします。
総理は一昨日、また、昨日の本会議において、併用制は民意を反映する反面、小党分立、連立政権の可能性を高め、政権を担当する政党が国民によって直接選ばれるのではなく、政党間の交渉で決定されるという問題があると答弁しておられますが、そもそも間接民主制、議院内閣制の制度のもとでは、政権をだれが担当するのかは、選挙で選ばれた議員で構成する国会の議決により決定することであって、国民が直接に決定するわけではありません。また、政府の形成にできるだけ民意を反映させたいという趣旨でおっしゃっているのであれば、連立政権となる場合でも、有権者は、選挙前に、いかなる政党が連立を形成しようとしているのか十分に認識しており、それをも重要な要素として投票行動をとっているのであって、総理の指摘は全く的外れと言わざるを得ません。(拍手)選挙で、単独で過半数を占める政党が出ないのなら、その結果こそが厳然とした有権者の意思のあらわれではありませんか。
総理の見解は、要するに、選挙制度改革によって、一つの政党だけで常に過半数議席を占めるような制度にしたいという意思のあらわれ、願望を表明したものではないかと思いますが、総理、いかがでしょうか。
また、総理は昨日、総理自身がドイツに行ったときの経験を話されて、連立政権は機動的でない、また非効率であるかのごとき発言をなされましたが、一体総理は連立政権というものをどのように評価、理解されているのか。連立政権だから政治が不安定だとか非効率だとか評価されるのであれば、余りにも短絡的と言わざるを得ません。現に、単独で過半数を占める政党がなくても、連立政権によって政権が安定している例は世界じゅうに数多く見られます。むしろ、連立政権の方がチェック・アンド・バランスがきいて、より安定するとも言われております。改めて、総理の連立政権に対する認識をお尋ねするものでございます。
さて、本法案では、選挙区人口格差は二・一五倍で、格差が二倍を超える選挙区が二十七選挙区ございます。総理、あなたは、そもそも投票価値の平等という要請をどのように理解されているのですか。各選挙区の区割りを行う際、投票価値の平等という要請はどの程度満たしておればよいと考えているのですか。
投票価値の平等というのは、民主主義の根幹をなす大原則であります。過疎地域への配慮など、これ以外の要素を考慮することがあったとしても、それはあくまで付随的な要素として認められるものであって、人口格差が二倍を超えるような区割りは到底許されるものではないと考えます。具体的に、選挙区間の人口格差が一体何倍を超えれば、国会として是正の必要が生じてくると考えているのか、総理、具体的にお答え願いたい。
また、選挙制度審議会は、投票価値の平等に関して、次のように答申をしております。すなわち、「選挙区間の人口の均衡を図るものとし、各選挙区間の人口の格差は一対二未満とすることを基本原則とする。」としているのでございます。この答申の趣旨に明らかに反して、当初から二倍を超えるような区割り案になっているのはなぜなのか、明確な答弁をお願いいたします。
次に、連座制についてお聞きいたします。
本法案で、連座制の強化を副指しての改正案が提出されておりますが、新たに連座制の対象とする者として、公職の候補者となろうとする者の一定の親族、また公職の候補者等の秘書を掲げているものの、これらの者が禁錮以上の実刑に処せられたときに限っているのはどうしてですか。こうした規定で腐敗防止の実を上げられると考えているのですか。
総理は、買収等の罪によって禁錮以上の実刑の言い渡しを受けているのがどの程度あるのか御存じなのでしょうか。私の調べたところでは、昭和六十一年から平成二年までの最近五年間で、買収等の罪を犯して裁判所に起訴されている件数は約二万件であります。このうち、禁錮以上の実刑判決の言い渡しを受けているのはたった四十三件、比率にしてわずか○・二%でございます。さらに、この実刑判決を受けた者の中で、親族や秘書という身分を持つ者は皆無と思われます。
このような過去の例からもわかるように、本法案で連座制の対象を拡大したといっても、実際上は、この規定により連座制が働き、そして腐敗防止の実を上げることは全くないと言わざるを得ません。親族や秘書についても、総括主宰者や地域主宰者と同じく、執行猶予つきであれ、また罰金刑であれ、買収等の罪を犯して刑に処せられたときは、連座制が働くようにすべきであると提案いたしますが、総理、いかがでしょうか。
また、本法案は、これまでの当選無効に加えて候補者の五年間の立候補制限を規定しております。この立候補制限そのものは、評価をいたします。しかし、これも連座制による当選無効があって初めて、候補者の立候補制限という二次的効果が生じるのであります。これまで国会議員について、連座制の適用があり当選無効とたったのは、昭和三十年二月実施の衆院選での一例だけで、そもそも連座制の対象を根本的に拡大しなければ、この候補者の立候補制限という規定も実際に働く余地は全くないと言わねばなりません。
以上から明らかなように、本法案の連座制規定によって選挙の腐敗行為に対する制裁を強化したなどというのは、全くの見せかけだけであると言わざるを得ないと考えますが、総理の見解をお聞きいたします。
次に、政治資金規正法の改正案について質問をいたします。
改正案は、政治家と政治団体の関係が公表されること、また資金調達団体を二つに限定していること、企業献金は原則として政党への献金に限っていることなど、不完全ながらも、現行法に比べれば一歩前進と言えるでしょう。しかし、次のような大きな問題点があることも指摘せざるを得ません。
すなわち、本法案によって、政治資金パーティーを寄附とは別枠のものとして新たに制度化し、かつ、その規制はパーティー一件ごとの規制になっているにすぎません。また、パーティー券購入者名の公開も、また購入金額の制限も、パーティーごとの規制になっているだけで、年間の総額制限や年間総額による購入者名の公開がなされておりません。また、政治団体以外の者も政治資金パーティーを開催できる。これでは、これまでの企業献金と同じく、新たな大規模な政治資金収集手段となってしまうおそれが強いと考えますが、総理はどうお考えでしょうか。
企業献金に関して一言付加しますと、五年後以降も、当分の間は資金調達団体に年二十四万円までの献金が認められておりますが、企業献金を全面的に禁止してこそ、政党助成についての国民の理解が得られると思いますが、総理、いかがでしょうか。
最後に、一点お尋ねをいたします。
政府は、これまで選挙制度改革案とその他の政治改革案は一括に処理しなければならないと言われておりますが、小選挙区比例代表並立制について野党は一致して絶対反対であることは、これまでの質疑から明らかであります。また、自民党党内からも反対の声が強いことも御承知のとおりです。
総理、選挙制度改革の成立する見通しが全くないこの段に至っては、まずは政治改革三法案の中で、選挙制度関連の項目と、その他の政治資金の規制、腐敗防止などの項目とを切り離して、まずは後者の中から実現可能なものを成立させることが、金権腐敗体質からの改善を願う国民の意思に沿うものと考えますが、どうでしょうか。いつまでも選挙制度と執拗にリンクさせることで、実現可能な他の改革を先送りすることは、到底許されるものではないと強く訴えるものでございます。
以上、総理の明快な答弁を求めまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕