浜本万三の発言 (本会議)

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○浜本万三君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、海部内閣総理大臣の所信表明に対し質問いたします。
 初めに、雲仙・普賢岳の噴火災害対策についてお伺いいたします。
 まず、今回の災害により亡くなられた多数の方々に対し衷心より哀悼の意を表しますとともに、被災者及び避難されている方々に心からお見舞いを申し上げます。
 昨年の十一月、約二百年ぶりに噴火した雲仙・普賢岳は、本年五月以降活動が活発化し、六月三日には大規模な火砕流によって多数の死者、行方不明者を出し、一万人を超える多くの住民が今なお不自由な避難生活を余儀なくされているという我が国災害史上ほかに例を見ない事態となっております。しかも、火山活動はその後も一向に衰える気配がなく、二カ月以上に及ぶ長期の避難生活で住民の疲労と生活不安は極限の状態にあります。また、島原半島全域で、降灰による農作物被害、漁獲高の減少、売り上げ激減などの被害に直面しております。
 我が党は、大火砕流の発生直後から、土井委員長が三度にわたって現地を訪れて被災者を励ましたのを初め、現地対策本部を設けまして被災住民の相談活動を行うなどの取り組みを行ってまいりました。しかし、国の対応を見ますと、非常災害対策本部を設け、確かに八十三項目の対策を決定し実施してきてほおられますが、今回の災害の特殊性、激甚性等を考えますと、極めて不十分だと言わざるを得ません。
 社会の本当の豊かさが試されるのは災害のときだと言われております。海部総理も現地で被災住民救済のため立法措置の検討を約束されたと聞いております。現地は、総理、あなたの前向きな姿勢に期待をしておるのです。国としても、住民救済のため、避難見舞い金制度の新設など法制度の改善に積極的に取り組むべきであります。また、噴火終息後の地域の復興、活性化を迅速かつ円滑に進めるため、長崎県が強く要望しております災害復興基金の設立が不可欠と考えます。総理の御見解をお伺いいたします。
 以下、各般にわたりまして具体的にお伺いをいたします。
 まず、証券不祥事についてただしたいと思います。
 暴力団稲川会に対する巨額な資金供給を行い、また稲川会と組んで東急電鉄株の株価操作を行い、その上に特定大口投資家に莫大な損失補てんを行うといった異常事態が経済大国日本で発生いたしました。これらの行為は、不祥事、すなわち好ましくない事柄程度の問題でありましょうか。それとも、一連の行為は国会が制定した法律や政令に違反し、法治国家のもとでの企業行動を逸脱した経済犯罪でありましょうか。政府は事柄の矮小化と真相究明にふたをする姿勢をとっているというのが多くの国民の見方であります。総理は事件の本質をどう認識しておられるか、どのような姿勢で対処されるのか、御答弁を願います。
 我が党は、野村証券の田淵前会長ほか三名の証人喚問を要求してまいりました。しかし、政府・自民党の反対で実現しておりません。この事件が国の内外に与えた影響の大きさを考え、再発防止に立法、行政両面からの措置を講じる上で、証人喚問は絶対に不可欠であります。証人喚問に応じることをここでお約束いただきたい。
 全容解明に欠くことのできないのが、補てんを受けた企業名はもちろん、補てんの手口、方法をあわせて公表する必要があります。しかし、大蔵省は補てん先企業名すら、非公開を前提に証券会社から受けた報告を公表するのは無理だとして、企業側が自主的に対処すべき問題と逃げに終始してまいりました。引責辞任した田淵前野村証券会長が七十年の野村の歴史で最大の汚点と言わざるを得なかった大事件を前に、補てん先やその手口、方法を政府の責任でなぜ明らかにしようとしないのですか。政府・与党幹部が業界の責任で公表するよう圧力をかけ、証券業協会から二度にわたって発表させました。この発表リストに一点の間違いもございませんか。政府は発表リストに全責任を負われますか。責任ある御答弁を願いたいと思います。
 証券不祥事件の背景についてただしたいと思います。
 私は、短期的に見た背景は、いわゆるバブル経済をつくり上げた政府・自民党の経済運営であると指摘せざるを得ません。金利二・五%の低金利政策と超緩和の行き過ぎた金融政策を長期間にわたって実行した結果、投機経済を生み、年間国民総生産に匹敵するほどの土地と株式中心のキャピタルゲインが発生したことを誇らしげに政府の経済報告で行っていたことは、よもやお忘れではないと思います。多くの企業が本来の生業を忘れ、財テクで稼いたことも間違いありません。さらに、暴力団等の裏の経済分野を想像を絶する巨大なやみ金融の場につくり上げたことを厳しく反省していただかなければなりません。政策の失敗がもたらした証券不祥事というあだ花に、政府・日銀の責任は重大であります。御答弁願います。
 次に、構造的な背景は、東京株式市場の一部上場株の七割までが企業の保有であり、経済摩擦の元凶の一つと米国から指摘される系列企業による株式の相互持ち合い、さらに系列企業間の相互ファイナンス、企業同士による株式買いあおりで膨大な含み益をつくり出すなどなど、余りにも日本的でゆがんだ資本市場構造が証券不祥事件の温床であります。
 本来、国際的に開かれた市場とは、投資額などで差別なく、そこに参加するすべての人に共通のルールと自己責任が貫徹されていなければなりません。この点で、系列と大企業集団の株式持ち合い、一強三弱とやゆされた証券業界の寡占状態のもとでは健全な市場は育つはずがないと断ぜざるを得ません。独禁政策を放棄して寡占状態の証券会社の分割を怠りたこの構造的要因を取り除く手だてなしに、政府が考えている程度の小手先の改正で、国民の不信を取り除き、国際的に納得される市場が本当につくれるか疑問であります。御答弁を願います。
 さらに、再発防止策についてただしたいと思います。
 まず最初に、多くの場合、この種の事件が起きると、外国の制度と比較して制度に欠陥があったかのごとく大騒ぎをいたしまして、経済犯罪それ自体を放免してしまう弊風があります。そうでなく、現行証券取引法に照らして、野村が東急株を推奨扱いにし騰貴確実と勧誘し、その裏で暴力団稲川会と手を組んで資金供給やもろもろの便宜を与えたことは、証券取引法上の合法的行為でありましょうか。まず現行法による一罰百戒を証券局の責任において行うべきではありませんか。大蔵省通達違反程度で済ませていい問題ではないと思いますが、いかがでございましょうか。
 このことと並行して、法律の改正や制度改善を考えるべきであります。
 第一は、補てん行為の絶対禁止は当然で、証券会社と補てんを受けた両者を罰するよう法律改正を行うべきであります。加えて、従来の大蔵省通達を原則廃止の方向で検討すべきであります。海外からも不透明性が批判され、さらにさじかげんが業界及び業者との癒着と非難される証券行政の運用を、法律事項に改めるべきであります。今日までの大蔵省の保護育成政策は徹底的に整理しなくてはならないと思います。
 第二に、日本版SECの創設であります。大蔵省は、米国の証券会社は登録制であり、日本は免許制でSEC方式はなじまないとの立場のようであります。大蔵省の言い分の免許制と厳しい監督のもとで世界に恥ずべき大不祥事が起きている以上、第三者機関による取り締まり、監視、告発などを行うことは不可欠だと存じます。
 第三は、証券会社が行っている引受業務と売買業務の分離を行うべきであります。今回の補てんのやり口は、引受業務で企業に資金調達を行わせ、その運用を任された証券会社が、発生した損失を非上場株あるいは転換社債を使って違法な補てんを行ったものであります。
 第四は、企業会計処理の国際共通ルール化を図り、それに従うべきであります。日本独特の含み損益を初め、わかりにくい企業内部限りの会計処理と不十分なディスクロージャーこそが日本企業の強さの一因であると、日本企業の閉鎖性が海外から指摘されております。企業会計処理の透明度を上げると同時に、情報開示の強化措置を講ずることを要求いたします。
 最後に、証券不祥事件と連鎖反応を起こして銀行か不祥事件を多発しております。これはまことに残念であります。住友銀行、富士銀行、協和埼玉銀行、そして東海銀行などなどが巨額な不正融資や架空預金取引など、信用が唯一最大の売り物の銀行か、しかも銀行のトップから行員まで、内部の者の仕組んだ犯罪であります。富士銀行の不正融資に橋本大蔵大臣の秘書が関与しており、国民や預金者はあいた口がふさがりません。蔵相自身の責任のとり方と、あわせて一連の銀行不祥事の原因をどのように把握されておられますか、しかと承りたいと思います。
 さらに、大蔵省銀行局や日銀の監督行政に欠陥や時代おくれの面はありませんか。証券、銀行のスキャンダルで一番ばかを見ているのはまじめな預金者だという怒りと、株の補てんを受けた約千七百億円の金を政府の責任で社会に還元せよという声に蔵相ほどのようにお答えされますか、しかと承っておきたいと思います。
 次に、政治改革についてただしたいと思います。
 海部総理は、就任に当たり政治改革の公約をされ、平成二年十一月の議会開設百年目には実行する、そしてそれに政権の命運をかけると申されました。だが、何一つ実行されませんでした。今回は、自民党内の多くの反対を押し切って政治改革三法案の決定を行い、国会に提出することで自民党総裁任期満了後の続投の材料にしようとしているというのが、これは新聞の論調でございます。海部総理は、政治改革というにしきの御旗を使って、実は自分の政治的立場や基盤の補強にしていると批判されても仕方がないと存じます。既に政権の命運をかけると国民に誓ったのに今国会に提出された法案が成立しなかった場合は、総辞職して出処進退を明らかにすべきだと存じますが、この点、まず総理の責任ある答弁を承りたいと思います。
 これまで私どもは、リクルート事件に汚染された政治を改めるには、まず政治資金の規制を最優先して行うべきことを主張してまいりましたが、海部総理は、改革は選挙区制度の改正、すなわち小選挙区制導入とすりかえて今日に至っております。政府が提出した三本の政治改革法案のうち、政治資金規正法案は小選挙区制導入と一体不可分といった関係ではないと考えられます。政治改革関連の三法案は一括処理でいくのか、それとも国会で各党の話し合いがまとまれば政治資金規正法案を切り離して優先して成立させることもあり得るのか、総理の方針をただしておきたいと思います。
 次に、小選挙区比例代表並立型の選挙区制改正についてただしたいと思います。
 まず、総理は、政治改革は行政府の決めた案でやれというのではなく、政党政治のよって立つ基本でありますから、各党各会派の御意見をちょうだいし、参考にさせていただきながら進めていくのが筋であり当然でありますと、しばしば答弁をされておられました。今回の小選挙区制法案で、野党各党にどれほどの話し合いの場や相互の検討結果の持ち寄り等が行われましたか。私が思いますのに、総理の顔は自民党内の反対派にだけ向けられたではありませんか。口先だけで実行を欠いては何にもなりません。
 自民党案の小選挙区比例代表並立制の考え方に対しては、すべての野党が反対しておることは御承知のとおりであります。仮の話ですが、百歩譲って小選挙区制に変えるとした場合、小選挙区比例代表併用制にすべきなどの考え方もありますが、行政府の決めた案でやれとは言わないとの従来の総理答弁から考えますと、併用制採用もあり得ると理解してよろしいのか、再確認の意味で答弁を求めておきたいと思います。
 なぜこうした点を伺うかといえば、この制度は、朝日新聞の指摘によれば、過去の参議院選挙のデータを基礎に試算すると、極端な場合三九%の相対得票率で七八%の議席を政府・自民党が獲得できて、大政党に大変有利になる。これでは、政治改革に名をかりた自民党永久政権ねらいの改悪案との非難も当然と思われます。
 一票の重みの格差解消は政治改革の大事な目玉の一つでしたが、小選挙区の区割り案では二・一四倍となってしまいました。格差二倍以内を守れなかった責任は極めて重大であります。これは政府・自民党が人口比に徹した区割りを避け、各都道府県に議席をあらかじめ一つずつ配分し、小選挙区の議席三百の残りを人口比で振り分けるというやり方をしたので、市区町村は分割しないといった方針も守られないところも出てきている状況であります。平等な選挙権の保障は民主主義の原点であります。総理は人口比配分に徹する御決意はありませんか、御答弁を求めておきたいと思います。
 我が党の政治改革に取り組む姿勢をここに明らかにしておきたいと思います。
 政治改革は、政治腐敗の一掃、政治倫理の確立こそが求められており、総理のように選挙区制度の問題に矮小化することは間違いで、国民の政治浄化の要求を裏切るものであることを厳しく指摘しておきたいと思います。我が党の主張は、政府・自民党の小選挙区比例代表並立制案には反対であります。一九八六年の小選挙区制は導入しないとの国会決議に反する改悪案を提出することは議会制度を否定するもので、こうした暴挙は絶対に許されません。
 我が党が主張する当面緊急に是正すべき点は、まず一九八六年の国会決議による現行中選挙区制のもとにおける人口格差二倍以内の定数是正であります。あわせて、政治倫理法の制定を行うとともに、政治資金の透明度を初め、規制のための立法措置を講ずることにいたしております。なお、緊急是正後、時間をかけて、民意を正確に反映する比例代表制の選挙制度を検討することにいたしていることもあわせて明らかにしておきたいと思います。
 次に、国連平和維持活動、いわゆるPKOへの協力についてお尋ねいたします。
 政府は、極めて恣意的な基準によって武力行使と武器使用を区別し、武力行使を伴う事態になるときは撤退もあり得るなどの条件をつけて、自衛隊を国連平和維持軍の本体にも参加させる方針のようであります。
 総理、あなたは、自衛隊の海外出動をねらった国連平和協力法案が昨年秋の国会で国民の厳しい批判に遭って廃案になった事実をよもやお忘れではありますまい。性懲りもなく、よくもこんな案を再び出せたものであります。総理は、これで憲法上の疑義はすべてクリアできた、自衛隊とは別組織であると本当にお考えなのでしょうか。
 我が党は、既に自衛隊とは全く切り離した文民で構成する国連平和協力隊の派遣体制を整備する具体策を提案しておるところでありますが、政府が今なすべきは、これまでの国会の審議経過を踏まえ、これを尊重して国民の合意を形成すべきことであると思います。平和憲法第九条という日本が世界に誇り得る崇高な原則があるにもかかわらず、これをねじ曲げてまで、しゃにむに自衛隊参加に道を開こうとする政府の姿勢に、良識ある国民は大きな疑問と不安、そして憤りを感じているからであります。総理はこれに率直に答えるべきであると思います。
 確かに、湾岸危機勃発から丸一年が経過した今日、冷戦の終結と新世界秩序構築の動きを背景にして一世界に対する日本の貢献が求められているという意識が国民の間に高まり、広がっております。しかし、国民が真に望む国際貢献とは、平和憲法と整合した枠内での貢献であるはずであります。
 総理、我が国がこれまで平和憲法にのっとった国際貢献ができなかったのは、平和憲法第九条があるから、それに邪魔されたためではありません。そうではなく、せっかくの憲法第九条があるのに、だからこそできたはずの国際社会への働きかけをしてこなかったことこそ問題であると思います。今、改めて我が国は、敢然と戦争否定を鮮明にした憲法を生かし、それを実現する国際社会への働きかけに邁進すべきであります。それこそ平和憲法の理念に基づく国際貢献であります。総理の御見解を承りたいと思います。
 ところで、ことしの防衛白書は、自衛隊は一つの能力集団であり、国民の財産であるとし、その能力を国際貢献に役立たせるという新たな装いを凝らして、実は実力の拡充強化をねらっております。しかし、今日自衛隊が対象とする軍事的脅威は減退し、消滅しつつあります。それを認めるからこそ、防衛白書は国際貢献への活用によって自衛隊の活路を見出そうとしたのではないでしょうか。軍事的脅威の減退に応じて自衛隊を削減縮小すべきは当然のことであります。この際、自衛隊をぼっきりと国際貢献隊とかあるいは国際協力隊に改組いたしまして、これに平和憲法が理念とする役割を担わせたらどうでしょうか。総理のお考えを伺っておきたいと思います。
 次に、外交問題についてお尋ねいたします。
 ロンドン・サミットは、冷戦終結後の新しい国際秩序を打ち立てることが大きな目標でありました。そのためにも、サミットに引き続き、ゴルバチョフ・ソ連大統領を招いて東西グローバルサミットとを言うべき場を設けたわけであります。しかしながら、国連やガットといった既存の枠組みの運用改善を強調したにとどまった感があります。明確な新秩序を提示できたとは申せません。
 第一に、政治・安全保障に関する宣言では、国連の平和維持機能の強化、兵器移転の国連登録制などがうたわれています。これらは確かに前向きな姿勢を示したものではありますが、少なからず問題があります。まず、平和維持機能について言えば、国連安保理が五大常任理事国の恣意によって動かされ、パクスP5となる可能性も否めず、中小国の主権を制限するおそれはないのでありましょうか。また、兵器移転についても、単なる登録制ではなく、規制措置こそが緊急課題であります。皮肉にも、サミットで移転登録について討議している一方で、米国は中東に対する巨額の兵器供与を意図していると伝えられております。こうしたことでは、規制に踏み切ることは至難のわざではありませんか。
 第二に、経済宣言では、自由貿易主義を守ることの重要性を認識し、ウルグアイ・ラウンドの年内決着を目指すとしています。自由貿易は、先進諸国間の経済の円滑な発展のみならず、南北問題の解決、さらにはソ連、東欧の改革成功のためにも不可欠であり、ウルグアイ・ラウンドの成功は緊急課題であるはずであります。ところが、肝心の農業問題の見通しは立っておらず、各国首脳も決断に苦慮しているのが実情であり、総理ほどのように年内決着の筋道をつけるおつもりでありましょうか、お伺いをいたします。また、政府は米問題について国会決議を尊重する義務を負っております。総理はこの点について改めて決意を述べるべきであります。
 第三に、今回のサミットは、ゴルバチョフ大統領を招いて国際情勢とともに対ソ支援を検討したことが最大の特徴でありました。それは、ソ連改革の成否が今後の世界の安定に極めて大きなインパクトを与えるからであります。肝心の金融支援については日米などが消極的で、技術支援など六項目の合意にとどまりました。この程度でソ連の改革が成功すると考えておられるのでありましょうか。
 総理は、兵器移転の登録制、新思考外交の世界規模での適用、対ソ金融支援の見送りなど、我が国の主張が大幅に取り入れられたとして今回のサミットに満足しているようでありますが、これらは日本の資金を引き出すためのサービスであるとのさめた見方さえあります。総理、以上指摘した三点について明確な御答弁をお願いいたします。
 さて、去る七月三十一日、ブッシュ、ゴルバチョフ両大統領は戦略核削減条約に調印いたしました。当初五〇%の削減を目標としていたにもかかわらず、およそ三〇%の削減にとどまったわけでありますが、いずれにせよ、初の戦略核削減の意義は大きなものがあります。検証措置を含む戦略核削減条約の締結は、米ソ間の信頼関係の進展を物語り、冷戦の終結を一層確実なものとするものであります。しかしながら、今回の条約によって核戦争の危険性がなくなるわけではありません。我が国は、世界唯一の被爆国として、核兵器の全廃に向けて国際世論の喚起に全力を注ぐ義務があります。
 総理は、米ソ戦略核削減条約をどのように評価しておられるのか、そして、今後政府として核廃絶に向けていかなる取り組みをなされる所存か、お伺いをいたします。
 欧州地域における緊張緩和の動きは目覚ましいものがあります。この歴史的な動きをアジア・太平洋地域にも波及させることが今日の重要な課題であります。平和国家を標榜する我が国こそが、アジアの一員として真っ先に取り組むべき事業であります。これについて政府は、欧州とアジア・太平洋地域では置かれた条件が大きく異なり、まず北方領土問題や朝鮮半島の南北対立、カンボジア問題などの解決が先決であるとして消極的姿勢をとり続けてきたのであります。
 ところが、政府は、従来の立場から一歩踏み出し、さきのASEAN拡大外相会議で、政治、安全保障面での対話の場を設けることを提案しております。個々の政治的対立の解決にめどが立ったと判断したのでありましょうか。結果的には、中山外相提案は合意を得るに至らず、検討課題とされるにとどまったと伝えられております。総理は、外務大臣をして提案せしめた理由、各国の合意を取りつけられなかった原因、今後の対処の仕方についてどのように考えておられるのでしょうか、お尋ねをいたします。
 次に、経済協力についてお伺いします。
 先般の通常国会で総理は、被援助国の軍事支出、大量破壊兵器の開発製造、武器の輸出入、民主化と人権保障の四点を我が国の政府開発援助の供与基準とすることを表明されました。これは援助方針の明確化を図ろうとする試みとして評価するものでありますが、私は二つの側面から問題を提起いたしたいと存じます。
 その第一は、三国間関係とか安全保障状況を含む国際関係などを総合的に配慮してODAを実施するという名分のもとに、せっかく示されたODAの供与基準があいまいなものに終わるおそれがあることであります。例えば、武器輸出の抑制について顕著な実績をいまだ見出し得ない中国、また民主化の進展がほかばかしくないミャンマーに対する援助は、この基準からするといかなることになるのでありましょうか。
 第二に、ODAの供与基準を実効あらしめるため、援助基本法の制定と実施体制の一元化の実現に進むべきであります。与党の加藤政調会長からも国際協力庁の新設に向けて提言がなされている今こそ、総理の指導力発揮のときではありませんか。総理の御見解をお示し願いたいと思います。
 この八月六日、九日は、人類史上初めて広島、長崎に原爆が投下されて四十六周年に当たります。犠牲となった多数の市民の御冥福を祈るとともに、今なお不安な日々を送っておられる被爆者の方々の御労苦をお察し申し上げます。そして同時に、核兵器の全廃と、内外の被爆者の援護に努力すべき責務を痛感する次第であります。
 かかる立場から、私たちは全野党共同提案による被爆者等援護法案を提出しております。原爆被害という極めて特殊な事情にかんがみ、生存しておられる被爆者及び亡くなられた被爆者の遺族に対して、国家補償の精神に基づき援護を行おうとするものであります。被爆者及びその遺族の苦痛を国の責任において償うことは、我が国が世界に核廃絶を主張していくに当たっての道徳的基礎を固めることでもあると信じます。
 総理は去る六日、広島における原爆死没者慰霊・平和祈念式に出席されたわけでありますが、そこにおいて感じられた気持ちを大切になさろうとするのであれば、被爆者等援護法案を積極的に成立させるよう努力するのが当然の責務と理解いたしますが、いかがでございましょうか。総理の率直かつ前向きなお考え方をお示し願いたいと思います。
 最後に、部落問題についてお伺いをいたします。
 さきの国会における六十数回にわたる野党議員の質疑で、改めて部落差別の厳しさが明らかになりました。また、部落問題の解決のために、今後も何らかの法的措置を求める国民的世論も急速に高まってきております。もはや法打ち切りということに執着したままでは進まない状況になっております。そもそも地対協は六月に中間意見具申を出す予定でしたが、これはできませんでした。地対協の審議停滞の原因は、残存事業量の正確な把握ができていないことにあります。
 そこで、政府として、速やかに全同対の協力を得て問題の完全な把握を図るための資料を作成し、地対協の審議を促進すべきではないでしょうか。また、なぜこれまで正確な実態把握を行わなかったのか、なぜ中間意見具申にかわる異例の会長談話で来年度同和対策予算の概算要求への便宜的措置を講ずることになったのかなとについて、事情の御説明を承りたいと存じます。
 以上をもちまして、私の代表質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 112115254X00219910808_002

発言者: 浜本万三

speaker_id: 2198

日付: 1991-08-08

院: 参議院

会議名: 本会議