明石康の発言 (国際平和協力等に関する特別委員会)

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○明石参考人 ただいま林委員長から御紹介にあずかりました明石でございます。よろしくお願いします。
 私は、昨日ニュー・ヨークからここに着きまして、この十四日にはバンコクを経由しまして、十五日にプノンペンに入ることになっております。そのことによって、国連のカンボジアにおける暫定行政機構は現地に展開されるという運びになります。
 このカンボジアにおける国連の平和維持活動というのは、基本的には、昨年の十一月二十三日にパリにおいて、我が国を含む関係国がカンボジアにおける四つの分派の代表も交えまして合意に達したわけでございますけれども、それに基づいて、国連の安全保障理事会がこの二月の二十八日、アメリカの議長のもとに全員一致で採択した決議に基づいて発足するものでございます。
 予算措置に関しましては、立ち上がり予算としまして、国連総会が、極めてこれは異例のことでございますけれども、カンボジアの場合、戦争を、二十年にわたって続いた戦争と内戦の結果、インフラが全く整備されておらないという現状、それから、この五月になりますと雨季が始まるということもございまして、ともかくも立ち上がりのための基本的な予算は必要であろうということで二億ドルの予算が特別ついております。
 しかしながら、我々の、今のところこのUNTACに要する分担金の部分、その予算が十九億ドルという数字が出ております。これはまたさらに精密な、より正確な数字を出す必要がございまして、その作業がこれから数週間において行われるわけでございますけれども、その十九億ドルの予算、この予算がやや多過ぎるのじゃないか、国連史が始まって以来の大きな平和維持活動なものでございますから、多過ぎるという意見もございました。
 しかしながら、先週私はワシントンに参りまして上下両議員約二十名の方々にお会いしましたけれども、カンボジアとかアジア問題を担当しておられる議員の先生方は、いや多過ぎるどころか、これは少な過ぎるんじゃないか、果たして、二十年続いたカンボジアの内戦を抑え、本当の民主主義をカンボジアに樹立し、クメール・ルージュその他の残虐行為が二度と起きないように保障するためにはこれで十分なのかということを、下院議員のソラーズさん、それから、政府に対して批判者の側に回っておりますアトキンス下院議員その他からそういう声が漏らされましたので、予算が多過ぎるという声もあって、国務省では非常に悲観的な見通しを聞いてきたんだけれども、そういうことで、米国議会においてもアジア問題その他をやっておる皆さん方と予算をやっておられる議員さんたちの間の非常に率直な対話というものが必要ではないかということをちょっと申し上げてまいったわけでございます。
 で、御承知のとおり国連は今やPKOの花盛りという感がございます。どうして国連がそういうことになったかといいますと、これは何と申しましても、もちろん米ソの間の冷戦が今や完全に終結を遂げだということが基本的な理由としてあるんだと思います。それでまあポスト冷戦の時代に我々は入っておるわけでございますけれども、米ソのそのおもしかとれたということで、伝統的に前からくすぶっておったいろんな地域紛争、宗教的な対立、人種的な対立、部族的な衝突、こういったようなものが、こう今まで抑えられておったものが噴き出してきた。
 そういうことで、国際社会は皆様御存じのように次から次と新しい紛争が起きております。そのことで国連は、そういう小規模な地域紛争、局地紛争なんでございますけれども、それに対処するために、相撲でいえば行司みたいな役割として、主として小規模な国連の監視団ないしは平和維持部隊ないしは選挙監視団というものが世界各地に次から次と送られておるわけでございます。この数年の間にも、一九八八年以来約十にわたる国連の新しい平和維持活動が新たに発足しております。これはそれに至るまでの三十三年間の間にたった十三の平和維持活動が発足したということを見てもわかるとおり、ここ数年の間にこういう平和維持活動が急に世界じゅうに展開されるようになってきているということでございます。
 この一月三十一日に開かれました安保理サミット、宮澤総理も日本から出席されたわけでございますけれども、その安保理サミットにおきましてもこういう平和維持活動に国連が乗り出して、国際平和のために積極的な役割を果たすようになったということは大変結構だ。しかも、その平和維持活動の範囲が広がっておって、単なる停戦の監視、軍隊の撤退の見届けということだけではなくて、自由選挙、民主選挙の監視とか人権の保護とか、それから難民の帰還を達成してやるという今までなかった諸方面に広がっておるという点で、これは将来の国連の活動として注目すべきものであるし、国際。社会全体としても強化しなくちゃいかぬじゃないかということがその安保理サミットの宣言の中に盛り込まれることになっております。
 それで、それでは日本に何が期待されておるかということに話を移したいと思いますけれども、今や国際社会において押しも押されぬ大きな力を持つに至った日本に対する期待というものが非常に大きいことは皆様御存じのとおりでございます。私も先週ワシントンの国務省、国防省、ホワイトハウス、上下両議院の議員さんたちに会って非常にそれを感じさせられたわけでございますけれども、日本はお金もうけをしているだけじゃなくて、やはり国際平和と安全保障のためにもっと協力していいんじゃないかという声は非常に強くあるわけでございます。
 で、御承知のとおり今アメリカは十一月の大統領選挙、上下院両院の選挙を控えておりまして、ブッシュ大統領はやや外交に少し専念し過ぎた、やはりもっと国内問題を重視しろということでアメリカ全体がやや内向きになっているということで、対外援助その他の予算が非常にいろいろな障害に当面しております。
 平和維持活動のためにも、今年度三億五千万ドル、来年度も三億五千万ドルを国務省としては要求しておるわけでございます。そのことしの三億五千万ドルのうち二億ドルはカンボジア関係のアメリカ側の出資といいますか分担金でございますけれども、イーグルバーガー副国務長官なんかは、非常に情勢は厳しい、何でも外国ないしは国際と名のつくものに関しては金がなかなかつかないということを言って慨嘆しておられまして、そういうことで国連に迷惑をかけるかもしれないけれども、アメリカはそういうもの青払わないんではないんだ、払うんだけれども、その払う時期としてはもしかしたら十一月以降になるかもしれないので、それまでに迷惑をかけるかもしらぬけれども、日本その他からの拠出を大いに、つなぎとしてやってもらえれば非常に幸いなんだという声がありました。
 下院議員の、下院のアジア問題小委員会の委員長をしておりますソラーズ議員なんかも、そういう意味では具体的に私に、日本としてはどれだけ出すつもりがあるのかということを単刀直入に聞いておりまして、私は日本の代表ではないんだ、私は国連の代表ですからそのことについてはっきり申し上げる立場じゃないんだけれども、日本としてもアジアの問題、カンボジアの問題にはかねてから深い関心を持っておるわけでありますから、応分の、相当額の拠出は期待できるんじゃないか、そうでないと私としても非常に困るし、そういうことでは期待しておるんだと申し上げておきました。
 カンボジアに関しては、御承知のとおり各国に割り当てられる分担額、こういうものがございまして、日本の場合総額の一二・四五%が割り当てられておるわけでございます。しかし、日本としてはもっと協力していいんではないか。そういうことで、できれば拠出の方、義務的ではない自発的な寄付に当たる拠出、難民の帰還、救済、それからカンボジアの将来の立ち上がりのための復旧、復興のための必要経費、こういうものは分担金じゃなくて拠出金の形でやることになるわけでございますけれども、その拠出金の方にも大きな期待がございまして、分担金と拠出金の総額については、日本に三分の一くらい期待したいという声が相当強くあるように聞いております。
 日本は、今まで国際社会に対する貢献としては、湾岸の場合もそうでございますけれども、相当の額を結局出しているわけでございますが、その出す時期がおくれるために、何か国際社会に期待したほどのそういう感謝の念が起きないということが今までの実態であったんではないかと思いますけれども、少なくともカンボジアの場合、これはアジアの足元でございますし、日本がかねて関心を持ってきた地域でもございますから、むしろ日本が率先して出すことによってほかの国からの誘い水の役割を果たしていただけるということになると、非常にありがたいというふうに私は考えております。
 それから、このカンボジアの暫定行政機構でございますけれども、これは単なる国連の平和維持活動ではございません。停戦を監視し、外国軍隊の撤退を見守り、それからカンボジアの四派の軍隊約二十万、それから民兵二十七万、合計四十七万人を一定場所に集め、それから武装解除を行う、そういう停戦監視並びに武装解除の野心的な仕事も一つございます。しかし、そのほかにも六つの仕事を抱えております。
 一つには選挙の監視でございます。これも、単に監視をするのみならず、国連が選挙法をつくり、国連の手でいろいろ選挙民の登録をやり、選挙運動を進め、最終的には来年の四月末ないしは五月に自由、民主選挙を行う。その選挙が終わりまして、立憲議会が新憲法をつくりまして、三カ月後には立法議会の形になります。それで新政権をつくられる。そこで我々の仕事は終わり、カンボジアを立ち去ることになるわけでございます。その選挙部門がございます。
 それから、カンボジアの行政が、本当に中立的な自由な形で選挙が行われる雰囲気をつくる、そのために、プノンペン政権ないしはほかの三派に偏った政策が展開されないように、カンボジアの行政を、特に外交、財政、大蔵関係でございますが、それから内務関係、国防省、情報省、そういったようなものの政策と行動を監視するという役割も担っております。
 それから、治安が非常に悪いわけでございますから、現地の四派に属する警察が独断専行で法に違反した行為をとらないように、また、法律自体公正な民主的な法律であるかどうか、そうでない場合はこれを全部変えさせる役割がございます。
 そういうことで、半ばカンボジアという国を、臨時に準政府的な機能を果たすことによって自由選挙まで持っていって、それが終わったらきれいにカンボジアの新政権に全権を渡すということで、四派から成ります最高国民評議会、これには四派が全部代表を送っておりまして、その議長はシアヌーク殿下でございますけれども、シアヌーク殿下は私を半ば冗談で、おれが議長だけれどもおまえは共同議長であるということで、二人でとにかくカンボジアの民主主義をつくるところまでやっていこうということを言ってくれておるわけでございます。
 そういうことで、もし御質問があれば、カンボジアにおけるその国連の平和維持活動にどういう国がどういう拠出をするのかということを申し上げたいと思いますけれども、約一万五千九百人のPKOを抱えておるわけでございますが、シビルアドミニストレーション、そういう行政の面も、人権の面も、治安の面も、いろいろございますので、これは単なるPKOではない、より総合的な、より包括的な、野心的な活動である。それだけに非常に難しい問題、デリケートな問題、いろいろ出てくるんじゃないかと思いますけれども、そういうポスト冷戦後の地域紛争を解決するための一つの国連の大きな手段としてカンボジア問題があるのである、これを成功裏に終えて我々が来年の春カンボジアを引き揚げることができましたら、国連というものはまたさらに一段と強力な新しい次元の国連になり得るし、とすれば、国際社会にとってももっと頼りになる存在になるのではないかというふうに私は期待しております。
 これからカンボジアに関しましてはいろいろお願いすることも多々あると思いますけれども、どうか国会の皆様方には、やはり足元のアジアの試金石でございますし、私は、二十余年にわたる内戦とカンボジアの人々のなめたその悲惨、それを救うという精神的な、道義的な意義が一つあると思います。それからもう一つは、地政学的な、戦略的な意義でございますけれども、そういう変わりつつある世界の中で、中国とベトナム、ないしはベトナムとASEAN諸国、この関係が御承知のとおり非常によくなってきております。そういうことで、この一月二十七、二十八日のASEANのサミットにおきましても、インドシナ諸国に友好の手を差し伸べております。そういうことで、そういうASEANとインドシナ諸国が仲よくなるためにも、そのかなめになる場所がカンボジアでございます。カンボジアの平和と安定がなければ、私は、東南アジアの安定はあり得ないんだと思います。
 そういう意味で、国際政治的に見てもカンボジアというのは重要でございますので、外部的な条件はできつつあるわけですけれども、これからは、まだまだ犬猿のように不信感に満ち満ちております四派の間を、国連が何とか仲を持つことによって、カンボジア人が自分たちの民主主義を樹立し、今までの戦場で解決した問題を議会政治の中で解決するというところまで持っていくのに国連がお手伝いできれば幸いだと思いますし、日本にとっても援助に値することでありますし、日本がカンボジアに関してどれだけの支持を与えるかということについては、アメリカその他も非常に関心を持って見守っておりますので、いろいろとこれから御協力、御支援をお願いしたいと思っております。
 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 明石康

speaker_id: 32147

日付: 1992-03-11

院: 衆議院

会議名: 国際平和協力等に関する特別委員会