土肥隆一の発言 (本会議)

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○土肥隆一君 ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案に関しまして、私は、日本社会党・護憲共同を代表して、総理並びに関係閣僚に対し質問を行い、御所見を承りたいと思います。
 最初に、私は、本法律案に対する質問に入る前に、社会保障における国の責務を端的に示すところの財政上の措置が近年とみに薄れつつあることに、強い懸念を抱いていることを申し述べる次第でございます。
 社会保障費用に占める国庫負担の割合は、対国民所得比で見ますと、一九八〇年代初頭は五%台、それが年々低下し、八九年には四%まで落ち込んでいるのであります。また、国の予算に占める社会保障関係費の割合は、一九七七年度の二〇%をピークにして、年を追って小さくなっていき、一九九二年度予算においては一七・六%まで低下しているのであります。そして、来年度予算における社会保障関係費の伸び率が、実に十三年ぶりに一般歳出の伸び率を下回っているのであります。
 こうした事態は、健康保険あるいは雇用保険への国庫負担分が削減されたことによることは明らかであります。総理、どうしてこのような社会保障に対する国庫負担の比重がだんだんと小さくなっていったとお考えですか。そして、この傾向は今後も続けていくおつもりでありましょうか。それとも寸社会保障における国の財政上の責任をもっと大きくされるつもりでありましょうか、お答えいただきたいと思います。
 社会保障における国の財政負担が小さくなっていき、加えて、高齢化社会が急速に進展する中で、多くの国民は、国の施策が全体的に明らかでないために、先の見えない人生に不安を抱いているのであります。総理が「生活大国への前進」を声高に叫ばれるならば、長期的な展望に立った社会保障の総合プランを国民の前に明示すべきではありませんか。総理、社会保障の今後のあり方についての基本的な認識をお聞かせください。
 今回提出されている健康保険等の改正案は、実に不思議な法案であります。政府管掌健康保険が大幅な黒字を出し、積立累積額がおよそ一兆四千億に達した。そこで、この積立金を運用して、一九九二年度からおおむね五年を見通した中期的財政運営をしたい。つまりこれで事業運営安定資金を創設し、その運用益を活用するというのであります。その上、まだ健保会計に余裕があるから保険料率を千分の八十四から八十二に減額する、これで支払い側は単年度で一千二百四十億円負担が軽くなる、同じく国の方は、国庫補助率を一六・四%から一三%にすることでその負担を一千三百十億円削減することができる。つまり、国民のだれも損したいという形で国庫負担を減らす方法が見つかったというのであります。
 思い起こせば、健保といえば、かつては国の三K赤字の一つでありました。この赤字対策をめぐって、政府のたびたびの健保法改正に対して、社会党は長い間、国民の医療を守り、かつ国の責任を果たすことを求めて闘いを続けてきたのであります。一九八〇年ごろまでは、赤字に次ぐ赤字で、まことに不安定な状態が続いたのです。オイルショック時の大幅な医療費改定もありました。そして今、黒字基調になった。
 なぜそうなったのでしょうか。それは、保険料負担を過大なものにし、一方では、本人の療養の給付率を十割から九割に下げ、加えて医療費の抑制を図り、そして景気の好調も手伝って黒字になったのであります。そうであるならば、この一兆四千億円を中期的な財政安定に活用するというのならば、同時に、給付の改善や付添料等の保険外負担の解消などという形で国民にも還元すべきものと考えますが、総理の御見解をお聞きしたいと思います。(拍手)
 ところで、政府は、社会保障制度審議会等において、この国庫補助の削減した分一千三百十億円を、本年四月一日から改定される診療報酬引き上げに伴う国庫へのはね返り分一千三百四十億円、その差はわずか三十億円、に充てると説明されておりますが、とすれば、初めから診療報酬財源捻出のために政管健裸の積立金に目をつけたと言ってもいいのではないでしょうか。今回の改正は、一見、健康保険の中期的な財政論を展開しているように見えますが、実は財政当局の思いを先取りした財源捻出法案にすぎないと言ったら言い過ぎでしょうか。総理の明確な御答弁をお願いいたします。(拍手)
 国会は、一九七七年の健保改正に当たって、その附帯決議において、「給付及び負担の公平化を図るため、保険者間の財政調整を行う」、そして「本人、家族の給付率の均一化」を図ることを決議しました。また、一九八四年の「今後の医療政策の基本的方向−二十一世紀をめざしてこにおいて、厚生省は、二十一世紀においても医療保険制度を揺るぎないものとするため、医療保険制度における給付と負担の両面における公平(一元化)を図る必要があると述べております。端的に言って、これからの課題は医療保険の一元化であります。総理、いつになったら一元化は達成されるのでしょうか。
 国民は、公平で長期的展望に立った医療保険制度を求めております。我々は、すべての医療保険の九割給付の実現、国民健康保険の財政力の強化措置、難病や長期慢性疾患への公費負担の拡大等を通じた真に公正な医療保険の一元化を求めております。こうした医療保険の一元化の議論を進める中で、国庫負担のあり方を検討していくというのが本来の方法であり、今回の改正案のように、まず国庫補助率を引き下げておいて、それから医療保険審議会を設けて一元化を議論しようとするのは順序が逆であると思いますが、総理のお考えをお尋ねいたします。(拍手)
 国庫補助率の一三%への切り下げは「当分ノ間」とされ、あたかも暫定措置であるかのような印象を受けますが、こうしたあいまいな表現ではなく、法文上の何らかの歯どめをすべきであると考えます。今後、健康保険を取り巻く財政状況の変化によっては、速やかに国庫補助率の復元を図るというような見直しの法規定を新たに明記することがどうしても必要であると考えますが、この点についての総理のお考えをお聞かせください。(拍手)
 また、改正案では、おおむね五年間は保険料率の引き上げはしないで済むような中期的な財政運営を図るとたっておりますが、本当にこの間において保険料引き上げはしないと確約おできになりますか。お答えいただきたいと思います。(拍手)
 次いで、厚生大臣にお尋ねいたします。
 国庫補助率の引き下げで出てきた財源を、四月に予定される診療報酬の改定分に充てる、特に看護婦さんを初め医療従事者の賃金その他の労働条件に充てられると説明を受けておりますが、人件費部分の単価の改定により、診療報酬は引き上げられても、それがどのようにして看護婦さんの賃金を含む勤務条件の改善に使われるのでしょうか。診療報酬の改定が看護婦さんなどの処遇改善に直結するようだ制度や指導が不可欠であると思いますが、これはどのようにされるのか、大臣のお考えをお尋ねいたします。(拍手)
 また、一九七七年健保法改正時の国会の附帯決議において、政府は「保険料の労使負担割合について検討すること。」となっております。その後随分と長い年月がたっておりますが、その後の検討はしておられるのでしょうか。お答えください。
 最後に、高齢化社会の急速な進行や医療需要の多様化、きめ細かい介護政策が望まれる中、国民の医療ニーズにこたえる保険システムをいかに構築するかは、今日の厚生行政の重要な課題であります。医療保険の機能と制度を今こそ根本的に見直し、給付と負担についても、だれもが納得できるレベルを提示すべきです。保険間の格差を是正して公平なものにすべきであります。
 こうして、国民が納得して、安心してゆだねることができる医療福祉制度の確立に向けて今こそ着手しなければ、必ずや後世に禍根を残すことになることを強く訴え、高齢化社会における医療保険は基本的にどうあるべきかについて、大臣のお考えを最後にお尋ねし、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕

発言情報

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発言者: 土肥隆一

speaker_id: 29990

日付: 1992-03-06

院: 衆議院

会議名: 本会議