目黒吉之助の発言 (本会議)

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○目黒吉之助君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました農業協同組合法の一部を改正する法律案に対し、宮澤総理並びに田名部農水大臣に質問をいたします。
 まず最初に、本題に入る前に、宮澤総理は、我が国農業の現状をどのように認識しておられるのかについて質問をいたします。
 今日、農業従事者の高齢化が進む中で、一昨年の新規学卒就農者はわずか千八百人と、大手企業一社の新規採用者数よりも少なく、将来の農業生産に重大な支障を及ぼすおそれが出てまいっております。また、中山間地域の過疎化や高齢化が一段と進み、担い手不足による耕作放棄地は今日二十数万ヘクタールに及んでおり、農業・農村社会の維持に重大な懸念を投げかけております。宮澤総理は、このような我が国農業、農村の危機的な状況をどのように認識しておられるのか、御所見を承りたいと存じます。(拍手)
 総理、このような危機的状況を招いた原因は一体どこにあったでありましょう。
 私は、結論から先に申し上げますと、現行農業基本法には、制定当初から見通しの甘さが指摘されてまいりましたが、農業の近代化、合理化を目指した基本法と相反する農政を政府みずからがとり続け、今日なおその延長線上で農政が展開されておりますことを御指摘を申し上げなければなりません。(拍手)
 すなわち、米の過剰を抑えるための一時的な緊急避難措置として始められました減反政策は二十年余に及び、この間、工業立国を目指す立場から、輸出した工業製品の見返りに農産物の輸入自由化政策を拡大し、今では世界一の食糧輸入国となってしまっておるのであります。これは、農業基本法に定める「輸入に係る農産物との関係の調整」を定めた条項に反しており、この結果、国内農産物の価格政策、選択的拡大生産政策は、大きくねじ曲げられてしまったのでございます。また、基本法が目指した自立経営農家の育成は、いつの間にか中核農家育成政策に変更され、現在では九〇%の農家が兼業化し、農業所得率は何と一七%にまで落ち込んでしまっておるのでございます。
 以上のような政府の基本法と相反するこれまでの農政が、今日の我が国農業を危機的状況に追い込んだ最大の要因となっていると考えます。(拍手)この点について、総理はどのように見ておられるのか、御所見を賜っておきたいと存じます。
 このような中で、農林水産省におきましても、昨年五月、新しい食料・農業・農村政策に関する検討本部を設置し、農政の抜本改革に向けて幅広い分野の検討を行っており、近いうちに報告書が提出されると聞いております。総理、私は、これらの検討結果も踏まえて、現行農基法にかわる新しい食料・農業・農村政策を定めた基本法の制定が我が国農業を再建するために不可欠となっていると考えます。
 新しい農業基本法では、第一に、農業や化学肥料などによる土壌の汚染、水質の汚染を未然に防止するなど環境に優しい農業、第二に、農業の有する国土保全、環境保全機能等を活用する農業、第三に、地域社会を維持し発展させる農業、そして第四に、爆発的にふえると予測をされております世界人口増加にも対応した国際社会で貢献する農業等々を視野に入れて策定をされなければならないと存じます。(拍手)
 具体的には、若者が働きがいを感じ、希望を託すことのできる農業であり、条件不利地域の所得政策や、農業の公益的機能を重視した環境保全型家族農業の確立が新しい農政の基本理念に据えられなければならないと考えます。その中で、農協の果たすべき役割も明確にし、我が国農業の再建に役立てていかなければならないと存じます。
 以上、私は、新農業基本法の制定について述べてまいりましたが、この点について総理の御所見をしかと伺っておきたいと存じます。
 次に、日本農業の将来に重大な影響を及ぼすガット農業交渉と米の市場開放問題について、再びお伺いをいたします。
 現在、ガット農業交渉は、アメリカ・EC間の輸出補助金などを中心とした対立て、先行きが不透明な状態になっております。このような中で、今月十三日に開かれたガット非公式貿易交渉委員会では、新ラウンドの交渉をさらに継続する方向を打ち出したと伝えられ、事実上、十一月のアメリカ大統領選挙後の最終決着になるのではないかという見方も出てまいっておりますが、ガット農業交渉の今後の見通しについて総理にお伺いをいたします。
 政府は去る三月四日、ガット事務局に対し、農業保護削減国別リストを提出し、米を初め乳製品、でん粉などの関税率を明記せず、基礎的食糧の包括関税化に反対の姿勢を打ち出してきておりますが、総理は、この基本方針を今後とも堅持される方針に変わりはないのかどうか、改めて決意のほどをお伺いいたしたいと存じます。(拍手)
 次に、本題であります農業協同組合法の一部改正に対する問題について、政府の基本的な考え方を伺いたいと存じます。
 農協法は、戦後の農地改革の成果を踏まえ、農業者の自主的な協同組合の健全な育成を図ることを目的として制定されたものであり、また、そのため、行う事業の目的についても、組合は、その組合員のために「最大の奉仕をすることを目的とし、営利を目的としてその事業を打ってはならない。」このように定めておりまして、農協事業活動の基本的な理念といたしてまいっておるところであります。
 しかしながら、最近の農協の実態について見れば、一部の農協において、信用事業等収益が上がる事業のみに傾斜した運営が行われ、組織活動の原点とも言える営農指導事業等が十分に行われていないこと、あるいは金融事業等にかかわる不祥事により、組合の健全な運営に支障を来す事態が発生しているなど、多くの問題点が指摘をされております。
 また、こうしたことから、専業農家の農協離れ、あるいは優秀な農協職員の中途退職が増加しておりますことは、まことに憂慮すべき事態と申さねばなりません。特に、農家の農協離れは深刻であり、これは、農産物の農協取り扱い率が全国で六〇%を切っておることなどからも明らかであります。また、年代的には三十代から四十代の青壮年層に農協離れが多いという現状は、農業のあすを担う青年農業者の要求に農協がこたえていないことを物語っておるのではないでしょうか。(拍手)農林水産大臣は、この点についてどう見ておられるのか、お伺いをしておきたいと存じます。
 現在、農協系統組織においては、昨年、全国農業協同組合連合会が打ち出した「二十一世紀への挑戦と改革の考え方」に基づき、農協の現行三段階制度を、近い将来、原則二段階にしていくことと、単協の大型合併を進めていこうという組織改革に取り組もうといたしております。問題は、いかなるスタンスで取り組むかであります。改革がただ単に農協組織の強化に終わるだけではなく、あくまでも組合員のニーズにこたえ得る機能の充実が図られなければなりません。言いかえますれば、農協は、今こそ原点に立ち返った組織の整備と事業機能の拡充を行い、組合員の信頼を取り戻し、負託にこたえる運営が必要になっていると考えます。農林水産大臣はどのように見ておられるのか、明確にお答えをいただきたいと存じます。(拍手)
 また、今回の農協法改正では、特に農業の担い手不足や耕作放棄地の増加問題などを重視し、連合会への受託農業経営の事業能力を付与し、農事組合法人の要件緩和などを打ち出し、企業的農業経営傾向がますます強まってまいっておりますが、これが最後に残されました株式会社の農業参入などへの引き金にならないかどうか。また、農協の老人福祉事業が新たに法文化されようといたしておりますが、これは一体何を意味しているのでありましょう。私は、福祉行政の貧困を代行する以外の何物でもないと思うのでありますが、あわせて農水大臣の御所見を承りたいと存じます。(拍手)
 また、農協のあり方とその存在意義について、政府はどのように考えているのか、また、今後の農協改革に当たり、どのような指導方針をもって臨まれるのか、農林水産大臣に明確な御答弁を求める次第でございます。
 最後になりましたが、政治倫理、政治改革に取り組む総理の決意について、改めてお伺いいたしたいと存じます。
 最近の新聞の世論調査によれば、宮澤内閣を「支持する」が二二%、「支持しない」が四九%となっており、政権末期の様相と報じております。この原因は、政治改革に対する取り組み姿勢、指導力などが問われた結果と見られております。
 政治は、国民の信頼があって初めて実効性を伴うものであることは言うまでもございません。農協法の改正など、いかに立派な制度をつくりましても、政治に信頼がなければ、それを実施することはできないのでありまして、総理は、失われた政治に対する信頼を取り戻し、議会制民主主義の権威を回復させるため、一連の政治腐敗を早急に解明し、政治倫理、政治改革の確立に向けて、今こそ強い指導力を発揮されなくてはならないと考えますが、決意のほどをお伺いをいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕

発言情報

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発言者: 目黒吉之助

speaker_id: 23892

日付: 1992-04-17

院: 衆議院

会議名: 本会議