和田八束の発言 (予算委員会公聴会)

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○和田公述人 和田でございます。
 私は財政、税制の方を専門にやっておりますので、本日は予算全般につきましてその問題点と見ておりますところを申し上げまして、若干私の意見も申し上げたいと思います。
 平成四年度予算でございますが、いわゆるバブル経済崩壊後の状態のもとで、かなり苦しいといいますか、財政状況のもとで編成されているように思うわけであります。
 そこで、財政の現在における課題といいますと、景気対策でありますとか、あるいは生活大国への基礎づくりでありますとか、あるいは世界状況の変化に伴う軍縮という課題でありますとか、あるいは国際貢献でありますとか、こういうふうな非常に大きな問題があるわけですけれども、これらの課題のどれが重点であるかということは必ずしも見えてこないところがあるのですが、それ以上に、これからの財政の方向づけといいますか、これについての内容がはっきりしないという点が非常な不安感を抱かざるを得ないというふうに思うわけであります。
 最近十年ぐらいの財政の動向を見てまいりますと、いわゆる財政再建というのが八〇年代以来大きな課題でありましたけれども、これに対して、八〇年代におきましてはいわゆる中曽根行革というのが行われまして、主として公共事業の抑制を初めとする経費の削減、それから行政改革というのが行われまして、これらによって財政再建への方向がとられたということであります。必ずしもこれによって一挙に国債の減額というのが実現したわけではないわけでありますけれども、九〇年代の初めになりますと、いわゆるバブル経済によりまして税収入が非常に潤ってまいりまして、それによって公債依存度が低下するという非常にラッキーな状態になったわけであります。それに伴いまして、公共投資が一挙にふえる、あるいは福祉政策もかなり以前に比べまして増加するというふうなことになりまして、一応財政にとっては見通しができてきたように見えたわけですけれども、昨年から本年になりまして急速に税収入が鈍化いたしまして、今日に至った。
 これから先一体どうなるのか、再び経費削減によりましてこれを乗り切るのか、あるいは財政再建の見通しを、計画をここで変えるのかというふうなことが、一つの岐路といいますか、選択の岐路に現在立たされていると思うわけです。あるいは増税というふうな考え方も成り立つわけですが、これを一体どちらにいくのかということであります。
 結果的にはかなり大幅な公債発行が行われまして、昨年、平成三年の公債発行が五兆円余りであったのに対して、七兆円以上ということでありまして、主として公債発行が税収の鈍化といいますか減少というものをカバーする、こういう形になったわけであります。今後これが、昨年策定されました財政の長期見通しによりまして平成七年度までに公債依存度を五%程度にするというふうな、こういう一つの見通しというものが実現できるのかどうかということにつきましては非常な危うい感じを持つわけでありまして、その点が本年度予算において一つの不安材料ということになると思うわけであります。
 公債発行につきましては、これを建設国債だけで賄うのか、あるいは特例公債の発行にするのかというふうな問題が景気対策とも絡んで議論されたわけでありますけれども、同時に、歳出面におきましては国債費が年々かなりの額、本年の予算でいいますと十六兆円以上になっておりまして、その割合が二三%弱というふうなことでありまして、これは長期的にかなり予算の圧迫材料になるということは言うまでもないわけであります。
 したがいまして、現在の予算の状況を見ますと、予算全体に占める一般歳出の割合というのは五割強というふうなことでありまして、実際に国民が財政によっていろいろなサービスなり受益を受ける度合いというのは、一般会計の外見的な大きさに比べまして非常に小さいということであります。こういう状態がかなり長期的に続くということは非常な不安でありまして、一時的に公債の増発というのは財政上やむを得ない、あるいは景気対策的な意味もあるというふうに考えましても、長期的に見まして、このような財政状態が長く続く、あるいは公債の累積が百七十兆円を超えるというふうなこういう状態は、やはり国民経済的に見ましても、あるいは財政の状況からいいましても非常に不安な状態でありまして、早期に改善が行われるということが必要ではなかろうかと思うわけでございます。
 その点につきましてまた後で申し上げることにいたしまして、次に税制改正について意見を申し上げたいと思うわけですが、税制改正につきましては既に抜本的税制改正というのが行われまして、この抜本改正の内容というのはかなり社会的、経済的にも定着してきたところもあるわけで
ありますけれども、なおいろいろな点で抜本改正の仕上げをするとか、あるいは見直しが必要であるということは言うまでもないと思うわけであります。
 抜本改革のスローガンといたしましては、資産、所得、消費の負担のバランスというふうなことも言われたわけでありますけれども、必ずしもそれが最近において改善されているというふうには言えないわけであります。殊に、給与所得者といいますか、サラリーマンの納税者数というのは年々ふえておりますし、それからいわゆる直間比率という点から見ましてもほとんど目立った改善というものはないわけでありまして、やはりサラリーマンを中心としたところの所得税負担というものは低下しているとは言えないわけでありまして、次第に上昇傾向にあると言っていいと思うわけであります。抜本改革から既に何年かたっておりますので、ここでやはりサラリーマン減税といいますか、これを行う必要というのは極めて大きいというふうに言えるわけであります。
 その点、本年は例えば地価税が施行されるわけでありますけれども、この地価税の収入は一部を減税に充てるというふうなことも言われていたわけでありますけれども、そのような地価税収入を見込んだところのサラリーマン減税というものが実現しなかったというのは、かなりそういう給与所得者にとっては落胆する結果になっていると思われるわけであります。
 それに対して相続税は、評価の改定などもありまして、それに伴う相続税の課税評価の適正化というのですか、これに伴ってその調整ということで減税が行われ、さらに小規模宅地等にかかわる課税の特例なども拡充されて、相続税については唯一減税の対象になっているわけでありますけれども、もともと相続税といいますのは、資産の不平等といいますか、こうしたものを是正するということで、あの狂乱地価上昇というふうなもとでの地価対策の一環としてもかなり重視されたわけでありまして、それがこのような相続税評価の見直しということに実現された向きもあるわけでありまして、そのようないきさつからいいますと、かなりほかの税項目に比べまして相続税の減税というのは過大ではないかという感じがするわけであります。
 ここでやはり相続税の持っております資産の公平という観点を維持するということでいえば、若干この評価の改正によって負担の増加という結果になる部分もあるわけでありますけれども、さらに大きな相続税の目的ということからいいますと、かなり過大な減税になっているのではないかというふうな感じがいたしまして、ここのところやはり私といたしましては、給与所得者に対する減税というのが非常に必要であったのではないかというふうに思うわけであります。
 それで、全体として増税が行われたということは、税収の減少に伴う歳入の問題からいいまして一つの対応ではあったかと思うわけでありますけれども、やはり財政のあるべき姿ということでいいますと、安易に増税で収支を償うというのではなくて、歳出の面での見直しというものを十分に思い切って行うということが必要ではないかと思うわけであります。
 しかしながら、現在の財政の歳出のあり方からいいますと、かつて公共事業費を長期にわたって抑制したというふうなことを再び行うということは事実上できないわけでありますし、また、社会資本の充実というものが特に必要になってきているということが言えるわけであります。あるいはまた福祉、社会保障予算というものは、高齢化社会を控えましてこれを抑制するということは、これも不可能なことであります。
 そういうふうにして見ますと、なかなか、歳出の抑制、削減とかあるいは財政に直結するような行政改革といいましても、すぐに効果があるようなものがあるというふうには思われないわけであります。
 その中で唯一、一つの歳出削減の面での期待が持たれる部分というのは防衛費ではなかろうかと思うわけでございます。
 従来、防衛費につきましてはいろいろな問題がありまして、必ずしも削減というところに直結しなかったわけでありますけれども、今日は防衛費をめぐる環境といいますのは、国際状況の変化でありますとか、あるいは国際的な貢献でありますとか、そういうふうな観点からいいましても非常に条件が整ってきているわけでありまして、今後、歳出面における合理化あるいは歳出の抑制というふうな観点からいいましても、唯一期待のできるのが防衛費ではなかろうかと思いますので、中期防の見直しでありますとか、あるいは定員の削減等も含めまして、防衛費をいかに削減するかということが歳出面においては一つの重要なポイントになるのではなかろうかと思うわけであります。
 それからもう一つ、この予算において理解が非常にしにくいという部分でありますけれども、NTT株の収入による事業というのがありまして、これは、従来一兆三千億円ぐらいこれが充当されていたわけでありますけれども、本年はその財源の裏づけがなくなったということで、主としてBタイプ、いわゆるBタイプと言われる部分でありますけれども、この部分につきましては建設国債を発行しているということであります。そのことによりまして、表面的に公共事業費がかなり前年に比べて一般公共としては増加するとか、あるいはその分につきましての公債金収入がふえるというふうな結果になっておりまして、結局NTTの収益事業といいますのも一般公共と一体的に行われてきたわけでありますので、いきなりこれを一兆円以上削減するということも公共事業の確保という点からいうと問題があるということはよく理解できるわけでありますけれども、しかし、従来NTTの収入というものがあって、それを国民に還元するということで行われてきたわけでありますけれども、どうも非常にわかりにくいわけでありますし、今日のように建設国債で財源の裏づけをしなければならないということになってまいりました以上、このNTT事業のあり方というのも、もとに戻しまして一般公共の中に含めるというふうなことでないと非常にわかりにくいのではないかという感じがいたしますので、一つの検討事項ではないかと思うわけであります。
 最後になりますが、以上のようなことで、私は、現在の財政問題で非常に重要者のは、やはりバブル経済崩壊後の今後、どのような方向づけをしていくのかということでありまして、これを国民の目によくわかるように示していただくということが大事だと思うわけであります。
 その点からいいまして、一つのあり方といたしましては、やはり長期財政計画というのを本格的なものを一つ立てる必要があろうかと思うわけであります。今までは収支見通しということで一つの試算が行われたりいたしましたけれども、もう少しはっきりした形で、何といいますか、一定の成長率のもとでの歳入の見通しというものを明確にするということと同時に、財政バランスを、収支バランスを長期で考える。
 いわゆる単年度主義でやりますと、この年度に歳入が不足いたしますと公債を増発する、逆に、バブル経済時のように税収入がかなり豊富に入ってまいりますと、それを単年度で歳出化するというふうなことになってしまいますので、やはり従来の経済の状況からいいましても数年という区切りで変動があるわけでありますので、地方財政などではそういうものに対応するために一つの基金を設けて財政の調整をやっておるわけでありますので、国家財政におきましてもそういう手法というものが必要ではなかろうかというふうに考えますので、ひとつ御検討をいただければ幸いだということであります。
 それからもう一つは、財政状況が非常によくない、あるいは赤字である、国債を発行しておりますので赤字であるということになりましても、これは一般会計について言えることでありまして、財政といいますのは特別会計それから政府機開会計全体を通じて存在しているわけであります。
で、これら全体を見てみますと、必ずしも一般会計で見るような歳入不足といいますか、問題があるのかどうかということであります。
 昨年の政府予算が出た段階での新聞報道などによりますと、一般会計では不足しているけれども特別会計では非常に剰余金などがあるんだ、全体で二十六兆円にも達しているというふうな新聞報道がありまして、私も全体を見ることはできなかったわけでありますけれども、特別会計の幾つかを見てみますと、不用額というのが非常に多い、一割ぐらいを占めている特別会計が幾つかあります。それから剰余金収入というのがかなりありまして、四割ぐらいに達している特別会計もあるというふうなことでありまして、一般会計こそ非常に厳しい状態でありますけれども、これを総合的に見ていく必要があるのではないかというふうに感じますので、ひとつ特別会計、一般会計を通ずる財政の見直しというものが必要ではなかろうかというふうに感じましたので、その点を申し上げまして終わりにいたしたいと思います。どうも失礼しました。(拍手)

発言情報

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発言者: 和田八束

speaker_id: 32185

日付: 1992-02-26

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会