宮澤喜一の発言 (政治改革に関する調査特別委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○宮澤内閣総理大臣 戦争中から、日本が敗戦になり占領を受け、そして主としてアメリカの援助によってその後復興をし、今日に至りますまでの長い時間の間で、奥野委員は政府のあるいは政界の中心になられて今日に及ばれました点は、私について御言及がございましたが、奥野委員こそはやはりその間のいろいろな苦労をなさったお方であることは世間の皆様がよく御存じでございます。
その長い年月を顧みまして、その間に起こったことのいろいろな解釈あるいは評価というのは、あるいは奥野委員と私と必ずしも全部御一緒でないかもしれないと思いますけれども、しかし、この長い年月を考えまして、まさに往事渺茫と申しますか、感慨深いものがございます。
ただいまお話しになられましたことを私なりにいろいろ承って考えてみますと、今日、経済関係におきましては、我々の対米関係というのはむしろ日本がいろいろな意味でアメリカ側から要請を受ける、あるいはお互いのあり方について構造協議のような形で協議をし合う、そういう立場にございますが、安全保障関係においてどうであるかということについてはいろいろ議論が分かれておるであろうと思います。私自身は、日米安保関係というのは両国にとって利益であるから存在している関係だというふうに考えております。一般的に、我が国の安全がアメリカの核の抑止力によって守られているということは、冷戦中も冷戦後も同じことではございましょうけれども、しかし、それは我が国だけの利益として働いておるのではなくて、アメリカ自身がそういう日本との関係を自分にとっても利益である、こう考えておるからだというふうに判断をいたしております。
その基本には、日米両国間がやはり基本的な価値観、民主主義であるとか自由であるとか基本的人権であるとかいうことについて、基本的な価値観を同じくしております。経済関係、文化関係等々いろいろございますけれども、そういう基本的な利害の一致のもとに日米間の安全保障関係が平等の立場において成立しているというふうに私は考えております。
大変端的な例を申し上げますけれども、今度、せんだって訪米をいたしましたときに、私のところヘアメリカのレス・アスピン国防長官が訪ねてこられました。コリン・パウエル統幕議長を率いて首脳部が来られました。そのことは、安全保障面においても軍事面においても、アメリカ自身が我が国を大切に考えているということの一つの証左だと申し上げてよろしいと思いますが、それは例えば今日我が国が駐留米軍に対して負担しておりますいわゆる受け入れ国としてのサポート、ホスト・ネーション・サポートと申します、四十六億ドルに達しておりますので、この点は財政的に必ずしも楽でないアメリカにとっては高い評価を受けている部分でございますが、私は、それに対しまして、例えば沖縄のように非常に基地がたくさんあって県民が苦労をしておられるところがある、基地はできるだけ集約、統合してほしいというようなことをお話をしておるわけですけれども、我が国にとっても、また東南アジアの各国にとっても、米国の存在というものは積極的に歓迎をされておるというふうに考えておりますので、したがいまして、安全保障関係においても我が国が何かを一方的に負うておるというふうには私は考えておりません。それもお互いの利害に合致した上で生まれている関係だというふうに思っているわけでございます。
現状をそういうふうに考えますと、まさに奥野委員の言われましたように、今度のクリントン政権というのは、クリントン氏自身が我が国との過去の戦争といったような関係を現実に知らないわけでございます。現実に体験をしないことと、したことと本で読んだこととはおのずからやはり違いまして、クリントンさんにとってはやはり日本との関係は自分が物心ついたところから始まっていると申し上げても私は間違いでないと思いますが、しかも、それは基本的には非常にいい関係にある。
クリントンさんは、今度日本との関係を三つに分けて説明をしておられましたが、一つは、政治・安全保障等の関係である。これは、ただいま申しましたようなこともありまして、アメリカにとって満足すべき状態である、こういうふうに言っておられます。次に、両国が一緒になって国際的に共同して行わなければならない幾つかの責任の遂行という点では、例えばせんだってのロシアに対する経済支援の会議のように、お互いの協調のもとに大変にうまくいっておると思う。その他、北朝鮮でございますとかカンボジアでございますとか、幾つかの例が挙げられましたが、国際的な協力関係もまず満足と思う。問題は、両国の間の経済問題であって、ともかくアメリカが何年努力をしても貿易の赤字というものが解消しない、改善しない国は日本である、それにはいろいろな理由があるだろうと思うけれども、これから少し時間をかけてお互いに検討していこうではないかと、最後のところはちょっと省略をいたしましたが、そういったようなことで、三つ目の問題について非常な問題意識を持っておられる、こういう関係であったと思います。
したがいまして、しかし、本当は奥野委員の言われましたことはもっともっと深いことを言っておられるので、それは私、決しておっしゃっている意味を聞き落としてはおらないつもりでございますけれども、そういう長い間の両国の関係の中で、現在、世界の経済の第一、第二の大国であるという状況、そして、我々としては、憲法のもとに民主主義、基本的人権、自由というようなものを享受をしておるという状況から考えまして、幸いにして冷戦という状況がなくなりつつございますから、その冷戦後の世界の平和秩序というものはどういうものであるかということについて、我が国も米国等々と一緒にその平和秩序の再構築に努力をするというのが今我々に与えられておる任務ではなかろうか。
御質問に対して十分にお答えをし切れておりませんが、さように考えております。