大場信吾の発言 (政治改革に関する調査特別委員会)
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○大場信吾君 特定のメディアの名を挙げて大変恐縮でございますが、「NHKスペシャル」というテレビ番組があります。一九八九年七月のこと、イギリス議会史にスポットを当てて、「かくして政治はよみがえった」という番組を電波に乗せました。この放映に注目したイギリスのマスコミはこれをニュースに取り上げて、今や日本は一八八三年にイギリスの首相だったグラッドストーンに熱い視線を向けていると伝えたそうであります。一八八三年、それはイギリスの議会史上特筆すべき腐敗行為防止法制定の年であります。この法律こそ、瀕死のイギリス議会を蘇生せしめ、世界の政治改革史に刻まれる金字塔となりました。今、一部の人々は、腐敗が進行し、金権がばっこする日本の政治の現状を評して、百十年をさかのぼるイギリスの状態そのままだと述べております。それだけに、この法律制定の経緯と影響を無視することができないのは当然であります。
現在、国会で御審議中の四法案は、自民党案も社会党、公明党案も、基本的に政治倫理の確立を第一義とし、選挙制度や政治資金の仕組みの改革を行う中で腐敗行為の防止を図り、政治に信頼を取り戻すことが目的だと承っております。したがって、それぞれ議論の余地はあるとしても、まず提案されている四法案について十分双方の所見を述べ合い、整合を図りながら、必ず成立に持ち込み、政治改革へ大きく一歩を踏み出していただきたいと心から願ってやみません。
そこで私は、このたび拝見した原案の段階で二つの四法案に対する私見を総合いたしまして、自民党提出の四法案がベターであるとの判断に立ち、その理由を申し上げたいと思います。
冒頭にイギリスの腐敗行為防止法に触れましたが、この法律は、実は成立の二年後に制定された議席再配分法と言われる小選挙区制によって大いに実効を上げることになったと伝えられております。それまでほとんど二名区だった国内の選挙区を再編し、小選挙区に改めた結果、一挙に政党の比重が高まったと言われます。しかも、厳しい罰則を打ち出した腐敗行為防止法との相乗作用により、買収、供応を逐次一掃し、選挙の浄化へ前進することになったと報告されています。つまり、政治改革の手本として注目された腐敗行為防止法は、たとえ時代と国情の違いがあるとはいえ、小選挙区制によってその効果を高め、次第に定着を果たした事実に着目をしたいと思うのであります。
そこで、小選挙区制を可とする主な論拠を挙げたいと思います。
第一に、政権が国民の意思によって直接選択される道が開かれます。自民党の小渕恵三議員は、去る四月十三日の代表質問でマックス・ウェーバーの言葉を引いて、政治とはまさに政権へ近づくことだと述べ、単純小選挙区制は野党にとっても政権の獲得を十分可能にする制度であると指摘をしました。一選挙区一議員の小選挙区制は、その候補者が政権を託すに足る政策と見識を持ち合わせているかどうかを前提に投票が行われ、その行動を通じて有権者は、国家の意思の形成に参画したとの意識をはぐくむことになります。既にマスコミ関係の試算によると、平成元年の参院選の結果を分析すれば、定数五百の単純小選挙区制に当てはめた場合、野党第一党の社会党は圧倒的な議席を獲得できると試算されており、それは政権交代の可能性を示唆するものだと受け取られています。このことは、当然政権に緊張感をもたらす要因を生み、ふだんから国民の意思にこたえ、政策の立案、実行に努める姿勢が求められるようになりましょう。
また、小選挙区制は、政治活動を進める上で大幅に金の負担を軽減するに違いありません。同一政党に所属する者同士の競合がなくなり、個人的な後援会の拡大競争やサービス合戦は影を潜めると予想をされます。勢い、所属する政党と一体になった政治活動は、議員として国政に集中できる案件を整えることになりましょう。もちろん、これまでの中選挙区制にあっても多くの長所を認めるにやぶさかではありませんが、むしろ制度疲労による欠陥が色濃くあらわれ、政策に対する取り組みの甘さが目立つ以上、この制度の改革は当然の成り行きであります。
今や日本は、国内的には停滞する経済の打開を急がねばならず、一方、世界の安定に寄与するため、名実ともに果敢な国際貢献を求められております。その局面を開くためにも、国の制度的な枠組みについて、速やかに論議と改革を加えなければならないでしょう。政権を託された政党が、国民多数の支持を背景に先見性に富んだ政策を前面に打ち出し、堂々とリーダーシップを発揮して活動できるように、小選挙区制に基づく改革への歩みに大きく期待を寄せたいと思います。
ちなみに、小選挙区併用型比例代表制についてでありますが、これは基本的に比例代表選挙の得票数に応じて総議席数を配分することとしており、かつて海部内閣が提案した並立制の趣旨とは異なり、比例代表制の短所をそのまま持ち込む結果になると判断いたします。すなわち、小党分立を招いて連立政権を生みやすいこと、連立政権となれば政権を担当する政党が国民によって直接選択されたことにならないこと、国の意思決定がおくれて政権が不安定になるおそれがあること、超過議席を生ずる場合があること、候補者が小選挙区で落選、比例で当選という甚だわかりにくい現象もあらわれること、これらはいずれも看過できない問題点であります。
ところで、この併用制はドイツで採用されている方式だと言われますが、ドイツでは、小党乱立を回避するため、三議席五%阻止条項を加えていると聞いております。これは、第一投票で選挙区議席を少なくとも三議席獲得できない政党、あるいは第二投票で有効投票の五%以上獲得できない政党は、比例による議席配分に参加できないこととしたものであります。この条項は、実際に併用制を採用するに当たって浮上した問題点に対する緊急避難措置だったと解釈されるのでありますが、社会党、公明党案ではそのことに触れておられません。ただし、この種の条項が付加されたとしても、憲法上の疑義が伴うという心配があります。
以上の理由に基づき、大変僣越な点をおわびいたしますが、併用制については、単純小選挙区制にまさる提案であるとは申し上げにくいのであります。
次に、政治資金について申し上げます。
ある著名な学者の言葉として、権力は腐敗する、絶対的な権力は絶対的に腐敗すると書かれた文章を目にとめました。その腐敗を抑止するためには、絶対的な力をお持ちになる政治家みずからがみずからを厳しく制御する、自制の精神を発揮していただかなければなりません。国民の素朴な疑念は、なぜそんなに金がかかるのか、一体どこから政治献金を受けているのかなどに集約されましょうか。そんな疑念にこたえるかのように、自民党所属国会議員が連名で、政治資金に関する公私の峻別についてみずからを戒める基準を明らかにしたことは注目に値します。
その声明によれば、みずからを改革する断固たる姿勢を国民に示さなければならないとし、両院で定められている政治倫理綱領及び行為規範、並びに党倫理憲章及び党所属国会議員倫理規程を遵守することを宣誓し、一つ、すべての政治資金を政治団体で取り扱うこと、二つ、政治家個人による政治資金の収受と保有を一切禁止すると申し合わせております。この声明の直後に四法案の提出となっておりますから、いかにも毅然とした決意のほどがうかがわれた次第であります。もちろん、政治資金は民主政治を支えるコストとして不可欠でありますが、金にまつわる政治腐敗が極度にあらわれている現状では、これまでの慣行を打ち破る英断が必要であります。その意味で、鋭く実態に切り込んだ自民党案にも、社会党、公明党案にも、基本的に双方に対し敬意を表します。
問題は、企業や団体からの献金について、社会党、公明党案では全面禁止を打ち出しておられるのでありますが、これは四月十四日の代表質問で自民党の加藤紘一議員が述べておられるように、個人献金システムが熟成していない現在、規制を施しながら経過的に存続を図る方がより現実的と言えるのではないかと判断をいたします。また、政党枠の限度を二倍とした点は、現在の社会情勢に見合う措置として認知できる程度であると判断をいたします。さらに、政治家個人の政治資金調達団体を二つに絞り、資金の流れをわかりやすくする措置を講じたことは、有権者の信頼を回復するために適切だと思います。
最後に、政党助成制度でありますが、特に今回の抜本改革に当たっては、選挙制度や政治資金制度を個人本位のものから政党中心に改めるため、政党の財政基盤の確立強化が絶対に必要となってまいります。しかも、それが議会制民主主義を守る不可欠の費用であるとの判断に立ち、政党に対する公的助成を導入することに踏み切ったと説明されております。その対象となる政党は、一定の資格要件を備えなければならないことは当然ですが、その収支報告の適切な処理と相まって、公正な政治活動を支える役割を果たしてほしいと思います。
以上、選挙制度の改正に附帯する選挙区画定委員会設置法案を含め、自民党の提案による政治改革関連四法案に対し賛成の意を表し、意見の陳述を終わります。(拍手)