嶋崎譲の発言 (本会議)

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○嶋崎譲君 私は、日本社会党・護憲民主連合を代表して、ただいま報告のあったカンボジア、モザンビークのPKOに関する閣議決定について、総理並びに関係閣僚に質問をいたします。
 まず初めに、PKO問題に先立ち、先般行われた日米首脳会談に関連し、緊急質問を行います。
 日米首脳会談に際し、クリントン大統領の発言をきっかけに円高が急速に進み、日本経済に重大な影響を与え、さらに対日輸出の拡大のためのアメリカ側の具体的要求として、包括的協議機関の設定が具体化しつつあります。このような結果を招いたことは、クリントン政権の対日政策に対する宮澤総理の認識の甘さが露呈したものと判断せざるを得ません。
 総理、経済同友会の首脳らが、政治家が為替について勝手なことを言うのは、米国であろうが日本であろうが不謹慎だ、企業は今まで何度も円高を吸収してきたが、一ドル百円台になれば状況は違う、本質的な体質改善をしなければ間に合わないと発言し、今回の円高急騰を口々に非難しています。急速な円高が世界経済に与える影響を考慮に入れ、国際的な協調の新しい動きも見られますが、ようやく明るい兆しが見え始めた景気に水を差しかねないという見方が強いようです。総理はどのように判断されていますか、まず伺いたい。
 政府経済見通しは、一ドル百二十二円八十銭としていたが、一ドル百円台となった場合、九三年度経済見通しにどのような変化が予測されるか。民間の研究所では、一ドル百五円を前提とすると、実質経済成長率が政府の三・三%見通しに対し一%台に転落するのは確実で、貿易黒字もドル表示価格がはね上がることでさらに膨らんでしまうとし、円高が貿易不均衡を解消するのは望み薄と見ているが、どう判断されますか。
 さきの日米首脳会談とその後の米国の閣僚の発言によれば、クリントン政権の通商政策は、円高と内需拡大に加え、半導体など七つの分野で目標数値を定め、日本側の輸入拡大や市場開放を迫るという三段構えてあります。
 総理は、分野別の目標設定に対し、管理貿易につながると拒否されたやに聞いております。しかし、考えねばならないことは、これまで、例えば日米半導体協定で外国製半導体の日本市場シェアを、協定前八%だったものを二〇%に引き上げるために日本政府が努力することを内容とし、その実現に努力した経験に見られるように、日本政府が管理貿易的手法をとってきたことを考慮し、日本は人為的に管理可能な市場だと判断させているのではないですか。貿易不均衝を盾に強いられる面があると同様に、欧米の市場とは異なり、操作可能だと外国に思わせる異質性や閉鎖性を改革していくことが緊急なのではないかと考えますが、総理の見解を伺いたい。
 要するに、首脳会談を通じて日米政府間の認識の差が極端に大きくなっています。円高に伴うデメリットをどのように企業体質改善に生かすのか、メリットを生かし、輸入関連産業や政府が抑制している分野での円高差益還元や円高効果の積極的導入などの経済政策を、今こそ国民の前に明らかにすべきであります。総理の見解をお聞かせ願いたい。
 さて、PKO問題に入りたいと存じます。
 カンボジアで国連ボランティアとして活動していた中田厚仁さんが殺害されるという痛ましい事件が起きました。身の危険を感じながらも懸命に活動していた彼だけに、心から改めて中田さんとその御家族の皆さんに哀悼の意を表明いたします。
 今回の事件に関連して、国連カンボジア暫定行政機構、UNTACの捜査結果が近く発表される予定と聞くが、また報道によれば、殺害者はいわゆるポル・ポト派ではないと伝えられているが、政府は、真相の究明、犯人の特定、公平な措置がとられるよう、UNTACに強く求めるべきであります。今日まで政府がとってきた措置について報告をしていただきたいと存じます。
 政府は、昨日、モザンビーク共和国における国際平和協力業務の実施及びUNTACへの選挙要員の派遣等について閣議決定いたしました。国連モザンビーク活動参加のための専門調査団の宮澤総理への報告書によれば、PKO協力法に基づく参加条件である停戦の合意の原則は満たしているとした上で、任務の遂行は十分可能と結論づけています。
 報告書では、まず現状について、主力展開は当初予定より約一カ月おくれて五月になると予想し、政治状況では、紛争当事者間の停戦合意は守られていると強調しています。しかし、和平プロセスについて、政府とモザンビーク民族抵抗運動との具体的な交渉が進展しておらず、選挙実施の前提の武装解除が進んでいないとも指摘しています。選挙も予定の今年の十月は不可能で、早くとも来年五、六月ごろとの見方が一般的であるとしています。また、政治的意図での武装攻撃は発生していない、首都マプトの治安も安定していると指摘しています。
 このような情勢判断の中で、四月二十三日付で国連事務総長から我が国に対し、国連モザンビーク活動への輸送調整部隊四十八名及び司令部要員五名の派遣要請がなされ、活動期間は五月から六カ月間が想定されています。
 この実施計画の決定に当たって、政府はPKO五原則、特に停戦の合意、武装解除の可能性についてどのように判断されたか、改めて明らかにしていただきたいと存じます。また、軍事部門の中での輸送調整部隊の活動への派遣ということですが、その内容、範囲について明らかにしていただきたい。
 特に、司令部要員五名については、カンボジア派遣の場合は当初は明らかにされず、その後、連絡将校という日本側の解釈で派遣してきたが、今回の国連モザンビークの活動への派遣に当たっては、その要員を明記しています。この司令部はUNTACの司令部と同様のものなのか否か、またこの業務は、中長期的な業務計画並びに輸送に関する企画及び調整とあるが、その任務の内容を明確にされたい。
 さらに、軍事常識では、司令部での幕僚活動が後方支援業務と呼べないのは言うまでもないことであります。また、PKO協力法の附則二条で、PKFの本体業務は凍結されています。その意味で、国連モザンビーク活動の司令部への派遣は、個人参加とはいえ、PKF本体業務に直接関係するものであり、憲法の精神はもとより、PKO法との整合性を欠くものと言わざるを得ません。明確な答弁を求めます。
 カンボジア国際平和協力業務計画の変更として、選挙に関する業務を追加したが、これまで、他国部隊に対する物資輸送、医療などを追加した経緯があります。ここに言う選挙に関する業務の内容、活動地域の範囲、安全の保障などについて、明確な答弁を求めます。
 今日まで、なし崩しでPKO業務が拡大されています。国会審議の過程では、さまざまなケースを想定し、何をすべきか、何をすべきでないかが明らかにされ、それに基づいて政府は実施計画と実施要領を作成したはずであります。ところが、閣議決定による実施計画の変更については国会報告の義務があるにもかかわらず、紙切れが議員のもとに届いているのかどうかさえ不明確であります。このような傾向は国会軽視であるとともに、なし崩し的に法の枠組みを崩すおそれありと言わざるを得ません。総理の弁明を求めます。
 日本社会党は、カンボジアにおける深刻な情勢について、これまでも何回となく懸念を表明してきたところであります。カンボジア情勢がますます深刻になっている今、改めて政府の対応について質問をいたします。
 第一の問題は、カンボジアに関するパリ和平協定の合意内容と現在のカンボジア情勢をどのように見るかという問題であります。
 同協定にある武装解除は、完全には実施されておりません。加えて、停戦の合意に反する戦闘が各地で継続しています。総選挙の活動が始まり、五月の投票日が近づくにつれ、さらに不安定な要因が増加しつりあります。UNTACが最も重視している自由、公正、中立の総選挙が、現在の情勢の中で実施できる見通しを持っているのかどうか、PKO部隊を派遣した政府の責任において、政府みずからの判断を求めます。
 とりわけ、パリ和平協定の完全実施に重要なかぎを握っていると見られるポル・ポト派は、同協定を遵守し、SNCから離脱することもないとしながらも、最近、プノンペン事務所を閉鎖し、また、総選挙は安全な状態では実施されないであろうとして、総選挙を武力で妨害する意図を示唆したとも伝えられています。他方、SNC議長のシアヌーク殿下は、すぐに撤回はしたものの、挙国一致内閣の構想を提案しています。こうした流動的で緊迫した情勢にあって、パリ和平協定に基づく和平のプロセスが当初の計画どおり実施できる見通しを政府は持っているのでしょうか、明確な答弁を求めます。
 第二の問題は、PKO協力法に規定されている五原則との関係であります。
 同法案の審議に際し、政府や自民党の諸君は、PKO部隊は戦場に送るのではない、鉄砲の弾が飛ぶようなところに派遣するのではありませんなどと力説してきました。鉄砲の弾だけでなく、砲弾、ロケット弾さえ飛んでいるでは奉りませんか。また、外務省の担当者は、法案審議の答弁で、PKO活動での死亡者は事故や病気によるものがほとんどだと強調していましたが、現在のカンボジアの情勢を見れば、これらの政府の説明は、PKO協力法を無理やり押し通すために国民を欺く方便だったとしか言いようがないのであります。
 総理は、PKO部隊が応戦するような事態になれば、PKO本来の使命はなくなってしまうと答弁していますが、カンボジアでは憂慮すべき状況にますます近づいているのであります。あってはならないことですが、派遣の自衛隊部隊が戦闘に巻き込まれるとすれば、また万一、死者が出るとすれば、そのような政治的な責任は極めて大であります。
 政府がUNTACの状況判断に任せ、停戦の合意が崩れていないと繰り返すのは誤りであります。日本のPKO部隊の派遣は、PKO協力法に基づくものであり、PKO五原則を厳しく解釈して対応するのは当然であります。現在のカンボジア情勢からすれば、特に停戦の合意、UNTACがすべての紛争当事者から中立であるべきとの原則は満たされていないと見るのが妥当であります。政府はこの際、独自の検証と情勢分析により、派遣部隊の撤収を含め、慎重に対処すべきだと考えますが、総理の見解をお聞きします。(拍手)
 また、危険の度合いが高いと見られる選挙監視員五十人の派遣に関連し、辞退者が出ている現状のもとで、安全の保障について政府はどのような対策を考えているのか、確認しておきたいのであります。
 第三は、ポストUNTACに日本がどう協力するかという問題であります。
 五月選挙、九月UNTAC解散という計画は不動であると、ガリ事務総長も明石代表も再三確認しています。当初の計画どおり自衛隊をこの時期に撤収させるのかどうか、政府の判断を示していただきたい。
 総選挙後の政治情勢は極めて不安定となることが予想され、アンゴラと同様、新政府に対する内乱の再発の可能性も否定できません。このような情勢を政府はどのように見通しているか、お聞きしたい。
 また、ポストUNTAC情勢のもとで、数千人規模の新たな国連プレゼンスをカンボジアに置くことについて、明石代表も言及していますが、新たな国連プレゼンスを安保理事会が承認した場合、パリ協定に基づくUNTACではなしに、新政府のもとでの国連プレゼンスとなるため、PKO協力法による自衛隊の派遣と違った形式にならざるを得ないと思うが、政府の判断をお聞かせいただきたいと存じます。
 第四には、国連のガリ事務総長が、昨年六月の「平和への課題」という報告で、平和執行部隊の構想を提起し、一部で実行に移されていることについてであります。
 冷戦終了後、地域紛争が顕著になっているのは事実でありますが、問題は、カンボジア、モザンビーク、旧ユーゴスラビアなどを初め、これらは国際紛争というよりは、それぞれの国の国内問題であります。これに対し、紛争当事者のPKO受け入れの同意を条件としないで国連がPKOを派遣することは、国家主権の尊重、内政不干渉の原則から、途上国には強い反発があります。言うまでもなく、我が国の場合、憲法の武力の行使の禁止、PKO五原則からして、我が国がガリ提案の平和執行部隊に参加できないのは当然であります。政府はガリ報告について、日本は参加できないとしながらも、将来の構想としては評価しているようでありますが、総理の見解をお伺いしたい。
 さらに、河野官房長官が、アメリカ政府がまだ検討の段階にあるボスニア・ヘルツェゴビナへの空爆を支持すると発言したやに伝えられていることは、重大であります。政府はこの紛争に、平和的に解決すべきどのような姿勢をしたというのでしょうか、弁明を求めます。
 最後に、国際協力のあり方について、総理並びに外務大臣の見解をお聞きしたいと存じます。
 日本社会党は、PKO協力法の審議の際にも、非軍事、文民、民生を原則とする法案を提案し、初めに自衛隊の派遣ありきではなく、平和憲法の精神に沿う国際協力の実施を主張しているのであります。今ポル・ポト派は、カンボジアのPKO部隊がプノンペン政権派に偏るとして、日本を新たな敵であると公言しています。このような事態は、初めに自衛隊派遣ありきという政府の政策が、今や危機に直面していることを意味しているのであります。
 我が党は、冷戦後の国際情勢の変化に応じて、自衛隊を大幅に縮減し、別組織による平和的な国際協力を推進すべきだと強く主張してきましたが、PKO協力法の見直しを含め、総理の見解をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕

発言情報

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発言者: 嶋崎譲

speaker_id: 860

日付: 1993-04-28

院: 衆議院

会議名: 本会議