宮澤喜一の発言 (予算委員会)
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○宮澤内閣総理大臣 従来ポル・ポト派が言っていることは二つありまして、一つは、十分に武器を持ったベトナムの勢力が本当にゼロにはなっていない、相当の者がまだいるという主張、これはどうも事実に徴して余り説得力のある主張ではないように思われますが、もう一つの主張は、SNCというものをつくったけれども、これは公平ではない、甚だしくフン・センといいますか、そういう中央勢力に加担をする嫌いがあって、そしてUNTACもどうもそのことを黙認しているではないかと、こういう主張でございます。
それで、第二の主張は、それはクメール・ルージュからいえば、何かそう思う節があって主張しているのだと思います。このことは、違っている、違っていないということは簡単に実証もできないことでございますけれども、そういう状況の中で選挙が行われるということは、それはフェアな選挙ではない、こういうことであろうと思うのでございますが、しかし、事実に徴して考えますと、SNCはそういうふうにどうも公平でないという批判はしょっちゅうクメール・ルージュはしておりますけれども、SNCの会合にはキュー・サムファン代表はずっと出ておるわけでございます。
御承知のように、先般北京でSNCが開かれましたときにもキュー・サムファン氏は出ておりまして、そして選挙を五月の二十何日にやろうという一応合意がありましたときに、キュー・サムファン氏はその会議の席には現実にいて、そしてそれについていわば沈黙をしておったということでございますので、それらのことを考えますと、今のSNCのあり方、UNTACのあり方にはいろいろ恐らく不満があると思いますのですが、全体をつくり上げているバリ協定そのものは否定をするつもりはない、こういうのがクメール・ルージュの立場であるように思われます。
したがいまして、それが和平の枠組みが壊れていないと私どもが考えている基本的な理由でございます。もうバリ協定がだめだ、こういうことになりますとこれはまた違うことが生まれるかもしれませんが、そうではなくて、そのやり方についていろいろクメール・ルージュとしては意見がある、異存がある、こういう主張のように思われます。それが基本的な私どもの判断でございます。
次に、この数日起こっておりますことは、プノンペンなりあるいは幾つかの都と東京との通信状況は極めて良好でございますので、そこまでのことはわかっておるのでございますけれども、現地で、ある村でこういう衝突があったというようなことになりますと、プノンペンとそことの状況がわからないというのが今の様子でございますが、どうも総合的に判断いたしますと、これから先を今予断することができませんが、ここまではフン・セン自身が、これはこれでどうもクメール・ルージュに対してUNTACが思い切ったことができない、クメール・ルージュがだんだん領域を拡大しているではないかということを非常にフン・センとしては不平に思っておったわけでございますけれども、UNTACに対して不平に思っていたんですが、ここで登録が終わりましたものですから、その間に失われた失地の回復をしておこう、こういうのがフン・セン氏の主張であるように思われる。
今度これだけ報道が大きくなりましたのは、パイリンというところに近づいたということがあって、そのパイリンというのはまさしくクメール・ルージュのいわばドル箱と申しますか、御承知のような幾つかの事情からこれが一番の中心点でございますので、そこへフン・センがしかけるのではないかということで非常に注目が集まったけれども、先ほど政府委員が申し上げましたように、二十キロまで行ったけれども四十キロのところまでまた下がった。
フン・セン氏の説明では、それがかつてのフン・セン軍のいわば縄張りであったので、そこまでクメール・ルージュが来たのは、これは、この数カ月の間に自分の縄張りに先方がいわば不法に進出した、失地を回復したのであるというのがフン・センの説明のように思われるのでございます。
そういたしますと、長くなって申しわけありませんでしたが、大きな何か全面的に両方の間の戦争が起こるということでは、ただいままでのところはでございます、なくて、フン・センはUNTACに対する自分の不満というものを一応失地回復の形で表明をした、それからクメール・ルージュはSNCに対する不満を選挙をボイコットするという形で表明をしておる、こういうことであろうと思うんでございますね。
これは今日までの判断でございますから、我が方の、今川大使というのが現地の大使でございますが、今川大使はそれらの関係者といろいろ話をしておりまして、大使の総合判断としては、確かにここのところ停戦協定の違反が目立っているけれども、全体として大きな衝突に発展する意思をフン・センもクメール・ルージュも持ってやっているわけではないというふうに明石代表等々も含めました判断を今川大使が伝えてきておりますので、私どもとしては、まず今としてはその判断を尊重してよかろうか。しかし、これは今日までのことでございますから、現地の状況の変化には絶えず注意を払っておらなければならないと思いますことは堀委員の御指摘のとおりと思います。
それから、それならばクメール・ルージュがこの五月何日の選挙に向かってこれからどうするか、何を意図しているかということにはいろいろ観測がございますが、一般的には、支配人口で一〇%ぐらいもあろうか、支配地域で一五%ぐらいもあろうか。これもごくごくふわっとした話でございますけれども、そういう状況の中で、選挙で全体の多数を得るという感じには恐らくなってはいない。しかし、そういう状況の中でクメール・ルージユがこれからどうするかということは、今からまだ二、三カ月の時間がございますので、それは経緯を見ていなければわからないのではないかと思いますが、いずれにしても、先ほど申しましたようにパリ協定全体が選挙の登録まで参りました。そして、このままいけば五月の何日に選挙
がある。そこまでのパリ協定の基本をクメール・ルージュが崩そう、それを否定しようというふうには見えないということと、今までの状況でしたら、停戦違反というのは先ほど申しましたような程度である、こう判断しております。
ただ、言われますように、これは今日までのところのことでございますので、事態を十分注意をいたしておかなければなりません。法に定められました条件が欠くようなことがないことを祈っておりますし、またそういう説得に努めておりますが、事態の推移は十分注意をして見てまいります。