牛嶋正の発言 (本会議)
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○牛嶋正君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました平成五年度予算三案に反対の立場から討論を行うものであります。
総理は、昨年秋の臨時国会において、景気回復について、八月に政府が打ち出した総合経済対策が実施に移されたならば着実に在庫調整が進み、年度末の三月ごろには景気回復の兆しが見られるものと期待されると述べておられました。この総理の予想どおりであれば、既に景気動向には回復の兆しが見られるはずの時期に差しかかっております。しかし、現状は、景気に多少の動きは見られるものの、まだ景気の底入れの感触さえ得られていないというのが実情であります。
予算編成の前提となる平成五年度の経済見通しは、総理の景気動向に対する見方に沿う形で主要経済指標が想定されていたものと私は考えます。しかし、その見通しは、閣議決定の場でさえ三・三%の実質成長率に異論が提起されました。少なくともその後の景気動向を見る限りでは、総理の平成五年度に対するこの経済見通しは完全に間違っていたと言わざるを得ません。したがって、この見通し違いの経済指標をもとに編成された平成五年度予算案は今日の不況対策にこたえ得る内容とはなっていないのであります。
以下、反対する主な理由を申し述べます。
平成五年度予算案は、次の三つの課題を掲げています。第一は、内需中心の持続可能な成長の実現、第二は、生活大国五カ年計画が策定されて初めての予算として生活大国づくりを少しでも推進することであり、そして第三は、特例公債の再発行を回避し、できるだけ財政改革を推し進めていくことであります。
しかし、その前提に置かれてきた平成五年度の経済見通しが完全に崩れた今、三つの課題のいずれもが実現が困難という最悪の事態さえ懸念されているのであります。
本予算の成立を見ないうちから補正予算の編成が議論されているという異常な状況からも明らかなように、平成五年度予算案の景気対策に対する対応が不十分であって、そのため景気回復がかなりおくれることになれば、結果的に特例公債の発行回避という課題も守り切れなくなると考えられます。
さらに、景気回復のおくれによって経済見通しで掲げられていた平成五年度実質成長率三・三%が実現しないとすれば、生活大国五カ年計画は初めからつまずくことになり、生活大国の実現も大幅におくれることになります。
このように、平成五年度予算が掲げた三つの課題が三すくみになる危険をはらむようになった最大の原因が、政府の今回の不況に対する認識の甘さとその対応のおくれ、不適切さという失政にあることは言うまでもありません。今回の不況に対する政府の初めの認識は、戦後我が国経済が経験してきた八回の景気循環における不況のパターンとそれほど変わるものではないというとらえ方でありました。それが途中で、バブル崩壊による資産デフレが金融システムの不安定化を促し、それが景気後退期と重なって不況を一層深刻化させているという、いわゆる複合不況という認識に変わってきました。
しかし、このような今回の不況に対する見方にもまだ重要な点で見落としがあると考えます。それは、バブル発生以前から我が国経済がその基本的構造の部分で少しずつ変化を示してきたという点です。今回の不況が過去の景気循環と大きく異なる点として、個人消費需要の低迷と企業の投資意欲の沈滞が指摘されます。このうち、個人消費需要の低迷が公共投資の乗数効果を弱め今回の不況を長期化させている最も大きな要因であるとすれば、個人消費需要の回復を図るための対策を欠く平成五年度予算案は生活者の政治を軽視するものであり、政府の政治姿勢が依然として企業重視の姿勢から変わっていないことを示すものと言わざるを得ません。
振り返って、昭和五十四年の第二次オイルショックのころから我が国は高齢化の進展や出生率の低下など成熟社会の様相を強く持つようになり、個人消費需要を中心に需要の伸びの鈍化が見られるようになっていったと言えます。昭和五十六年三月に第二臨調が設置され、増税なき財政再建を旗印に行政改革の推進とそれに伴う経済活動の自由化に向け規制緩和が進められる中で、戦後一貫して続いてきた需要先導型経済が徐々に需要不足型経済へ移行していったのであります。
例えば、個人消費需要を見るとき、昭和五十七年ころを境として、平均消費性向及び限界消費性向とも四、五%の低下が見られるのであります。また、企業の投資動向を見ても、それまでの省力化、省エネルギー化のための投資といった明確な投資目標が姿を消して、シェア拡大主義に基づく国の経済政策の目標とは必ずしも関連しない不確定な目標に変わっていったのであります。それがバブルを発生させ、バブルの崩壊によって挫折することになり、今の企業の投資意欲の沈滞につながっていると考えられます。
このような今回の不況に対する認識に立つとき、当然それに応じた形で不況対策も進められねばなりません。第一に、総需要を構成する個人消費、住宅投資、設備投資及び公共事業の各需要項目の相互依存性を考えるとき、公共事業の推進を通じて需要喚起を図るという従来型の対策だけでは不十分であって、我が党を初め野党が主張する所得税減税等を含む大型減税の実施による個人消費需要の喚起策など、すべての需要項目に適切な対策を講ずるという総合性が求められるのであります。
また、このような我が国経済の基本的構造の変化を想定するとき、総合的に需要喚起を図るとともに、新しい基本的構造に基づく財政、経済の運営方針を確立し、それに合わせて経済の仕組みゃ諸制度を改革していく中長期的視点の導入が必要とみなされます。いわばこれは公共経済におけるリストラとも言うべきものであります。
このような観点から、公共事業の事業別、省庁別の配分方式を改革し、住宅、下水道、生活道路の整備、都市再開発など、生活関連社会資本の整備を重点的に進めねばなりません。また、社会福祉関係予算については、生活者重視の立場から抜本的な見直しが不可欠であります。さらに、冷戦構造の崩壊、ソ連邦の消滅によって軍縮、軍事費の削減が世界的な潮流になっていることを踏まえ、防衛費の思い切った削減を行っていくべきであります。
私は、総合的な不況対策と中長期的展望からの公共経済におけるリストラという二つの重要な要素を欠く平成五年度予算はまさに欠陥のある予算案と言わざるを得ず、そこに盛り込まれた三つの課題も三すくみとなる事態が予想されることから、平成五年度予算三案に強く反対するものであります。
以上、反対する主な理由を述べ、討論を終わります。(拍手)