井上哲夫の発言 (本会議)

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○井上哲夫君 私は、民主改革連合を代表して、ただいま議題となりました平成五年度予算案に反対の討論を行います。
 まず最初に、このたびの予算委員会が、東京佐川急便事件及び先般の金丸前議員脱税事件の真相究明のための証人喚問問題をめぐり与野党の意見が一致せず、一週間近く審議の空白を生じたことにつき国民の皆様に深くおわびをいたします。新聞の投書欄には、「国家運営の最重点は予算にある。これにノータッチとも見られる参議院ならば廃止してもよいではないか。一院制にして衆議院での審議時間を豊富にし、かつ参議院に要する歳費、経費を衆議院に注ぎ込んでアメリカのような強大な国政調査権を持つ特別委員会を設置したなら、証人喚問問題などはその核心をついて早期に解決する」と、このような厳しい叱責がありました。
 さて、先般の政治腐敗の問題につき、ここで一言申し上げます。
 戦後、我が国の政治の中で、今日ほど国民の政治に対する不信感が高まっているときはありません。今回の金丸前自民党副総裁及び生原秘書の所得税法違反事件は、ロッキード、リクルート、そして佐川急便事件に引き続き、政府・自民党政権の底知れぬ腐敗と、大物政治家が金まみれになっている姿を白日のもとにさらした一大金権腐敗事件であります。
 私は、去る二十六日、地元の三重県議会より、二十五日議決をした竹下登衆議院議員等の議員辞職と政界浄化に関する陳情を受けました。この意見書には、昨年十月十九日、臨時県議会を招集し、関係議員の辞職等を内容とする政治倫理の確立に関する意見書を全会一致で可決し、内閣及び関係機関に提出をした。しかしながら、今回金丸前自民党副総裁が不明朗な多額の脱税容疑で逮捕、起訴され、竹下登元首相の暴力団関与の問題ともろもろの疑惑ももはや弁解の余地がなく、日本国民の道義を重んずる崇高な精神を一瞬にして根底から覆すこととなり、民主主義を基調とする我が国の将来に不安を与えたものであると言っております。よって、政府並びに国会は政治倫理の確立と政界浄化のため、速やかに辞職勧告、政治改革の断行、そして政治家の疑惑に対し検察当局による徹底究明の措置を遂行されるよう強く要望を受けたわけであります。
 このような腐り切った政治の現状に対し、宮澤総理は国民感情を逆なでするような、極めて遺憾のたった一言で片づけておりますが、これでは国民の怒りは、静まるどころかますます高まることは明らかです。これらの腐敗政治家に対して、司直による徹底的な実態の解明が行われることはもとより、その道義的社会的責任が厳しく問われなければなりません。それなくして、現在我が国全土を覆っている国民の政治への不信感は到底払拭することはできないからです。
 我々民主改革連合は、我が国政治史上かつて例を見ないこのような金権腐敗政治の実態の徹底的な解明に努めるとともに、真に国民の期待にこたえられる徹底的な政治腐敗防止システムの確立により腐敗政治家を追放し、真の民主政治を国民の手に取り戻すことに直ちに着手すべきことを主張するものであります。
 本日、私はNHKスペシャル報道番組をビデオで見ました。三年前に「かくして政治はよみがえった」と題して放映され、大きな反響にこたえて最近三度目の放映があったもので、英国議会での腐敗防止の歴史をたどっております。一九九三年八月二十五日イギリスで成立した腐敗行為・違法行為防止法は、当時の法務長官ヘンリー・ジェームズが三年間にわたる準備と、二十一日間の審議中与野党議員の反発の中で成立にこぎつけたばかりか、時の首相グラッドストンがこの法案成立を強力に支援したからです。この結果、今日のイギリスでは選挙違反という言葉はもはや死語になっている。
 そして、この法律成立後、政治家への未公開株譲渡事件、いわゆるマルコー二疑惑事件の反省から、閣僚の行為規範アスキスルールが確立され、さらに一九七二年の建設業ジョンポールソン大疑惑事件を契機に議員個人への利害関係公開制度の導入となり、議員は役職、取引、援助、資産のすべてを公開するシステムが完成し、政治と金、政治と腐敗の関連との断ち切りが実現されました。
 国民、有権者は、これまで毎日の新聞、テレビ報道で佐川疑惑や金丸脱税事件のてんまつを連日見ております。一方では、今私が申し上げた特別報道も目にしているわけです。となれば、宮澤総理、あなたの政治改革への熱意を国民は冷静に見詰めており、新聞投稿では、先頭に立とうとしない首相の姿勢を嘆くものばかりです。髪振り乱しての渾身の取り組みを待っております。今こそ頂点に達した政治不信の払拭の先頭に宮澤総理は立たねばなりません。
 ところで、バブル経済崩壊後の今日、我が国全土は出口の見えない不況の渦中にあります。山深ければ谷深しとは申しますが、目下の不況については政府の経済運営の責任が厳しく追及されねばなりません。
 その理由は、第一に、政府がいわゆるイザナギ超えの長期景気達成に固執する余り、景気の転換点を見誤ったことであります。第二に、政府が平成四年度の経済見通しで三・五%と高い実質GNP成長率を宣伝し、そのため在庫調整のおくれなどを招いたことです。そして第三に、前経済企画庁の高官が、不況は市場経済に必要不可欠で有益ですらあるとの発言をしましたが、こうした官庁エコノミスト及び政府の失敗が、今日の不況型倒産の増加や失業、首切り、そして四期連続の経常赤字という結果を招いたことです。
 以上のような理由から、今回の不況が政策不況であることは明らかであり、我々民主改革連合は、このような政策不況を招いた政府及び政策当局に対し厳しく責任を追及するものであります。
 本予算案に反対の理由を最後に申し上げます。
 反対の第一の理由は、本予算案には、さきの国会より我々が主張してきた所得税減税が盛り込まれていないことであります。
 我が国は現在全国的な不況の中にあり、殊に個人消費の落ち込みには深刻なものがあります。このような現状を打破し景気回復を図るには、昨年の総合経済対策に五年度予算での公共事業の追加、公定歩合の引き下げだけでは不十分であり、GNPの約六割を占める消費を刺激するため大幅な所得税減税が不可欠であることは今や論をまちません。それにもかかわらず政府がかたくなに所得税減税を拒んでいることは、タイムリーな経済運営という政府の責務の放棄であり断じて容認しがたいものであります。
 反対の第二の理由は、景気対策を地方及び財政投融資に押しつけている点であります。
 政府は、本予算案において公共投資を前年度比四・八%ふやし、昨年を上回る高い伸びを確保したと宣伝しておりますが、他方では、財政投融資計画による公共事業を一二・四%増にし、また地方単独事業においては一二%増と、本来国が主体となって行うべき景気対策まで財投や地方に押しつけているのが実態であり、このような他力本願の予算は到底認められるものではありません。

発言情報

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発言者: 井上哲夫

speaker_id: 6250

日付: 1993-03-31

院: 参議院

会議名: 本会議