峰崎直樹の発言 (本会議)

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○峰崎直樹君 私は、日本社会党・護憲民主連合を代表して、ただいま議題となりました二法律案に対し、総理並びに関係大臣に質疑を行います。
 去る四日、国連カンボジア暫定統治機構UNTACに派遣された文民警察官五人の死傷事件が発生しました。
 質疑に先立ち、私は死亡した高田晴行警視の御冥福をお祈りするとともに、御遺族に衷心よりお悔やみを申し上げます。また、負傷された要員各位に心からお見舞い申し上げます。
 このような事態に対し、総理は仕方ないなと発言されたとも報じられておりますが、その真意を明らかにしていただきたいと存じます。
 さて、商法に改正を加える必要があるとすれば、その要綱を示されたいと法務大臣が法制審議会に諮問したのは今から四十年近くも前の一九五四年、昭和二十九年のことです。その答申を受けてこれまでに累次にわたる法改正が行われてまいりました。
 特に、一九六五年、昭和四十年代からの数年置きの商法改正は、いずれも資本の自由化と株式会社の不祥事対策を背景にしたびほう策的改正にとどまるものとは言えないでしょうか。確かに、会社は利潤を追求する営利法人であって慈善事業団体ではありません。しかしながら、現代の国民生活や海外取引は企業の存在抜きには語れないものとなっており、今や会社の社会性、公共性は国際的にも無視することはできない時代になっております。
 一九七四年、昭和四十九年の商法改正案の議決に際し、本院法務委員会は、「大規模の株式会社については、その業務運営を厳正公正ならしめ、株主、従業員及び債権者の一層の保護を図り、併せて企業の社会的責任を全うすることができるよう、株主総会及び取締役会制度等の改革」を行うよう政府に求めました。
 ところが、国民の怒りと政治不信を増幅させた東京佐川急便に見られる取締役の特別背任事件、イトーヨーカ堂や金権腐敗政治とも密接に関連した平和相互銀行事件に見られる監査役の不祥事等々、累次の商法改正にもかかわらず、企業犯罪は依然として後を絶ちません。また、ロッキード事件以来、政治腐敗はとどまるところを知らず、総理御自身も関与を指摘されたリクルート事件に見られる企業の反社会性も記憶に新しいところです。さらには、やみ献金の原資とも見られる今般のゼネコンなどの異常なまでの使途不明金の存在、これらはいずれも長期自民党政治支配のもとにおける汚職と利権政治を再生産する構造的な政治機構が一向に改善されてはおらず、またこれまでの商法改正が何ら本院の附帯決議にこたえるものとはなっていないことの証左ではないでしょうか。
 その意味において、商法改正は決して政治改革と無縁の存在ではないし、また取締役や監査役の犯罪を阻止できず、とどまるところを知らない多額の使途不明金をチェックできない監査制度等は、株主や債権者などの権利を完全にじゅうりんするものであり、この際、商法サイドからの徹底的な改革も必要になっているのではないでしょうか。
 さらに、会社法については、ここ十数年来顕著となっている経済の国際化等の進展に伴う企業経営環境の激変に配慮し、国際会計基準の導入等をも念頭に置き、また二十一世紀を展望した新たな視点から、我が国のあるべき企業法制を構築するための抜本的見直しを図る時期が到来していると言えるのではないでしょうか。
 私は、このような認識のもとに、今回の改正法案の疑問点などについて順次お伺いしていきたいと思います。
 まず、私の認識に対する総理の御所見を伺いたいと存じます。
 次に、総理の政治姿勢を伺いたいと存じます。
 今や政治改革の最大の課題は、金権腐敗政治を一掃し政治倫理を確立することにあると思います。そのためには、総理の強力なリーダーシップのもとに所要の新法制定を検討するほか、現行の法律や制度の運用を一部改正の必要性を含めていかに一体的、有機的に活用してその実効性を図っていくかが求められているのです。
 それには、第一に、企業・団体献金を即座に廃止することが必要です。幾ら政治家個人間の寄附を禁止してみても抜本的な改革にならないと思いますが、いかがですか。
 第二には、代表質問で我が党の矢田部議員が質問したように、英国並みの政治腐敗防止法の速やかなる制定が必要です。今衆議院政治改革調査特別委員会で審議中の自民党提出の関連議案では真の政治浄化への基本法と言うには甚だ不十分だと思います。総理・総裁として、矢田部議員に対する答弁の責任を問いたいと思います。
 ところで、今回の商法改正も理念的な改正にとどまり、真に機能的、効果的な法改正になっていないというのが学者、有識者の多数意見です。基本法たる商法の改正には十分なる検討と精緻な理論的整合性が要請されるにもかかわらず、七月の東京サミットを念頭に、日米構造問題協議での指摘事項を早期に解決しようとする余り、総理お得意の外圧をてこにして新総合経済対策にまで盛り込んで本案の早期成立を期し、その速やかなる施行を図る旨決定したのではないでしょうか。仮に今国会で成立したとしても、施行期日が数カ月先と予想される本案に景気対策の効果を期待することはそもそも困難であるし、宮澤内閣の経済運営の失敗を棚上げにしたまま、安易に基本法たる商法をなりふり構わず経済対策に結びつけようとする発想は筋違いと思いますが、いかがですか。
 バブル当時に発行されたワラント債の償還が本年度約十一兆円に上ると言われております。今回の社債制度の改正はそれをも念頭に置いたものであり、企業の資金調達の関係上どうしても改正案の年内施行に持っていきたいというのが政府・自民党の本音なのではないでしょうか。そうだとすると、このような社債発行を許容していた現行の制限規制そのものが不備であったと言うべきであるし、何よりもバブル経済の運営に加担した政府・自民党の責任が問われるべきなのではないでしょうか。資金調達の容易化は、会社にメリットはあっても、本当に社債権者の保護の強化につながる改正と言えるのでしょうか。発行限度枠の撤廃を焦る余り、将来の不良債権の発生防止に手抜かりはないと言えるのでしょうか。社債管理会社の設置だけで本当に社債権者は十分保護されると言えるのでしょうか。
 また、さまざまな意見のある自己株式の取得及び保有に関する規制の見直しについても、新総合経済対策において次期常会までにと期限をつけてまで結論を急ぐ理由についても明らかにしていただきたいと思います。
 次に関係大臣にお伺いいたします。
 一九七四年、昭和四十九年、監査制度を中心とする改正が行われましたが、その後、衆参両院の法務委員会の附帯決議を受け、法制審議会などにおいて会社法の全面改正作業が本格的に始動するところとなりました。一九八一年、昭和五十六年には株式制度と会社の機関、株式会社の計算、公開に関する改正が、また一九九〇年、平成二年には小規模かつ閉鎖的な会社にも適合する法制度の整備、債権者保護を図るとともに、会社の資金調達方法を合理化するための改正が行われたわけですが、今回の改正はこのような一連の商法改正作業の一環としてはどのように意義づけられるのでしょうか。商法の抜本的改正終結への展望を含めて今後の方針を明らかにしていただきたいと存じます。
 次に、改正案は株主による会社の業務執行に対する監督是正機能の強化のために所要の改正を行うこととしているのですから、一九九〇年、平成二年の改正では取り上げないこととされた計算書類の登記所における公開制度や中規模会社の計算書類の適正担保の制度こそ今回の改正案に含める努力をするべきであったと思います。なぜ今回の改正案に含めなかったのかを明らかにしていただきたいと思います。
 監査機能の強化について伺います。
 監査役の任期の伸長や員数の増員、監査役会の法定化はおおむね大会社の現状を追認化するだけの改正ではないでしょうか。実務的には既に行われていることを法定化することにどのような意義があるのでしょうか。これで監査機能の強化が図られるとする根拠についても明らかにしていただきたいと思います。
 私は、監査役機能の実効性担保のためには、監査役の選任、人事権の独立性を確保する改正の方がよほど実務的ではないかと考えています。監査役制度の改正は、社外に人材を求めたり監査役会を法定化することに意義があるのではなく、経営者の影響力の及ばないところで選任されるようにすることこそ重要であると思いますが、いかがでしょうか。
 また、今回の改正案の社外監査役についての選任要件は極めてあいまいで、運用上の抜け道もあり、ほとんど効果が期待できないように思えます。要件について見直す考えはありませんか。監査役会の法定化は監査役個々人の意見反映の機会を現在よりも減殺させることにはなりませんか。従来の答弁との整合性についても明確な説明を求めます。
 政治改革との関連において、今やみ献金の原資ともなっている使途不明金の是正が大きな社会問題になっております。取締役が経理操作を行ったとしても、貸借対照表や損益計算書等の会社の会計帳簿からのチェックは必ずしも容易ではないと想像されますし、現実的に会社の計算書類等からは形式的には把握しがたいと思われます。しかも、現行商法上の仕組みは、不実記載や粉飾決算等の場合などに所定の罰則が適用されるケースが考えられるだけで、使途不明金そのものの発生を防止するような手だては何ら講ぜられておりません。現在は専ら税法上の問題として処理されておりますが、これでは監査機能の強化と言ってみても、株主の権利擁護のためには何の改善にもなりません。
 そこで、取締役の忠実義務違反の観点等から、商法においてもその規制のあり方を真剣に検討すべきではないかと思いますし、法人税法第百五十九条の積極的な運用も検討する必要があると思います。関連法規の一体的、有機的対処の必要性を含めて、法務大臣、大蔵大臣の所見を伺いたいと思います。
 また、使途不明金の多いゼネコン各社に対し、指名競争入札制度や談合等、やみ献金等の誘因になっていると思われる事項や企業倫理確立のための指導について、建設大臣から是正の概要と決意のほどを伺っておきたいと思います。
 次に、株主の代表訴訟の目的の価額を九十五万円とみなすこととする改正は、裁判所によって取り扱いがまちまちとなっている訴訟費用の算定に公平性を確保するものであり、改善と理解します。ただ、この法理は株主訴訟にとどまらず広くクラスアクション全般に及ぼすように関係法の改正を検討するべきであると思いますが、いかがですか。
 また、いわゆる国民の裁判を受ける権利と乱訴の防止、あるいは総会屋等による悪用の危険性の阻止についての所見と対応はどのようになっているのかも明らかにしていただきたいと思います。
 なお、株主の会計帳簿等の謄写閲覧権の緩和は理念的改善にとどまるのではないでしょうか。法律内部の整合性としての持ち株三%の要件にこだわる余り、せいぜい千株単位で所有している一般株主には全く無縁の改正とは言えないでしょうか。法務大臣は本当に実効性のある改正と思われているのでしょうか。
 一九九〇年、平成二年の改正案議決の際の当委員会の附帯決議において、「今後の法改正に当たっては、より一国会社全般の実情に配慮しつつ、実効性ある立法措置を講ずること。」を求めました。EC統合や日米構造問題協議での問題点の指摘等を念頭に置けば、国際化の進展に伴って経済活動に関する制度やルールの統一化は国際的にも不可欠のものとなっております。国際会計基準の導入、金融システムの安定性の確保を初め、企業のディスクロージャーの実施はますます重要になってきております。
 最後に、このような観点に立って、今後の商法の改正のあり方、抜本的な検討の必要性についての総理の所見を伺って、私の質疑を終わります。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕

発言情報

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発言者: 峰崎直樹

speaker_id: 8106

日付: 1993-05-12

院: 参議院

会議名: 本会議