藁科滿治の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○藁科滿治君 私は、ただいま議題となりました自衛隊法の一部を改正する法律案に対し、日本社会党・護憲民主連合を代表して、総理並びに関係大臣に質問いたします。
近年、邦人の海外活動は急激に拡大する一方ですが、その中にあって世界各地で地域紛争や騒乱が多発しており、在外邦人の安全確保が重要課題となっています。このような事態に対応するため、民間法人、団体などの自助努力を促すとともに、国としても的確かつ迅速な対応体制を整備することは当然なことであります。しかしながら、緊急事態における在外邦人の輸送を自衛隊機で行おうとする本法案は日本国憲法の根幹に触れる重大な問題を含んでおり、さらにまた、カンボジアにおけるPKO活動の生々しい経験から見ても強い懸念と危惧を感ぜざるを得ません。そのような認識の上に立って、六項目にわたり具体的な質問をいたします。
最初に、自衛隊槻を使う必要性について。
緊急時における邦人輸送についてはこれまで民間定期便や政府のチャーター磯によって高い実績を上げてきております。にもかかわらず、なぜ今自衛隊機による輸送を行おうとするのか。衆議院における質疑応答で政府は、一九七五年のサイゴンの事例を引用して、一、調整時間がかかる、二、保険料が高い、三、危険なところへ行く同意が得られないと答弁しております。
そこで、私が第一に総理にお尋ねしたいのは、政府は安全性が確保されなければ自衛隊機は派遣しないと強調されていますが、安全性が確保されれば民間機でも飛べるわけであり、自衛隊機でなければならないとする論拠について答弁を求めたいと思います。また、調整時間がかかるという理由については、それ以前の問題として、湾岸戦争の際にも指摘されたように、緊急事態に対応する政府の情報収集・分析体制そのものに問題があるのではないかと考えますが、総理はどのように認識しておられるか、見解を求めたいと思います。
第二に、自衛隊機でなければ救出できなかった過去の事例について。
我が国の経済発展によって邦人の海外活動や海外旅行は急増し、それに伴って、残念ながら邦人が事件、事故に遭遇する件数も増加しております。そこで、外務大臣にお尋ねしますが、過去、海外において邦人が紛争や騒乱に巻き込まれ緊急避難しなければならなくなった例はかなりの件数に上ると思いますが、その中で、今回政府が言うような安全性が確保され、派遣国の許可がとれ、しかも民間機でなく自衛隊機でなければならないようなケースがどれほどあったのか、実績を明らかにしてもらいたいと思います。
あわせて、衆議院においては、一九七五年四月のサイゴン陥落、一九八五年三月のイラン・イラク戦争、一九九一年十月のハイチのクーデターの例を挙げていますが、これらのケースは安全性と派遣国の許可の点で問題のない事例であったのかどうか疑問であり、政府の答弁しているような要件は満たしていなかったのではないかと思われますが、外務大臣はどのように認識されているか、答弁を求めます。
第三に、政府専用機に限定しない理由について。
本法案では、輸送手段について自衛隊の航空機による輸送となっており、機種が明確になっていません。緊急時の邦人輸送については政府専用機の導入が決定される以前から議論のあったところであり、使用航空機は政府専用機に限定すべきと考えますが、外務大臣並びに防衛庁長官の答弁を求めます。
第四に、法文上歯どめのない危険性について。
安全性が確保できなければ自衛隊機は派遣しない、安全性が確保されているから現地で武器を使用することも戦闘機の護衛をつけることも考えていない、こういった趣旨の衆議院における政府答弁はありますが、しかしながら、これは法文上何らの明記も保証もありません。政府のこの口約束をもって信用しろという方が無理な話であります。ましてや、カンボジアにおけるPKO活動をめぐって今国会でも白熱した論議がなされているように、当初の政府答弁では危険ではないとしていたものが現実には防弾チョッキを常時着用する事態となり、さらにまた、指令権はUNTACより日本の方が上位と言っていたものが逆転している事態ともなって、結果的にお二人のとうとい命をも失うこととなりました。
このような痛ましい教訓から目をそらして仮に自衛隊機の使用が認められれば、これは国際法上軍用機ということになり、かえって避難輸送中の邦人に危険を生ずる可能性があり、また軍用機としての認定によって、自衛隊法第九十五条による航空機保護のための武器使用、戦闘機による護衛等とエスカレートして武力行使に道を開く危険性があります。さらに、輸送任務という観点のみから考えれば、航空機だけではなく、安易に海上自衛隊の艦艇使用にまで拡大する危険性もあります。さらに加えて、本法案はPKOの派遣とは異なり、自衛隊は政府の指揮権、すなわち国権の発動としての行動であり、武器の使用は直ちに憲法で禁止する武力行使となるおそれがあるわけであります。
この法案は以上指摘したような視点から全く歯どめのない危険性を含んだものと言わざるを得ませんが、総理並びに外務大臣、防衛庁長官の見解を求めたいと思います。第五に、自衛隊の縮小と防衛計画大網の見直しについて。
ここ数年、自衛隊の任務付与の中身を見ると、自衛隊法第百条の五の国賓等の輸送、同六の国際緊急援助活動、同七の国際平和協力業務の実施、そして今回の緊急時の邦人輸送というように、自衛隊法第八章の「雑則」に規定する余技ばかりがふえています。このことは紛れもなく、本来の任務である国の防衛をめぐっての国際的な背景、事情がさま変わりしていることを意味しております。既に宮澤総理は国会答弁の中で昭和五十一年に閣議決定された防衛計画の大綱見直しの必要性を約束されており、防衛庁においても大網見直し作業に入ると聞いていますが、米ソ冷戦構造の崩壊、日本に対する脅威の低下、さらには若年人口の減少など、自衛隊の縮小・再編の環境条件は成黒していると考えますが、国民的論議の場の設定、論議の日程的展望などを含めて、総理並びに防衛庁長官の所見を求めたいと思います。最後に、アジア・太平洋地域への平和貢献について。五月末にASEAN拡大事務協議、そして日中外相会議が開かれましたが、これは冷戦後のアジア・太平洋地域における安全保障の枠組みを模索する動きとして国内外から注目されています。しかし一方で、一部には国防予算を大幅に拡大して平和、軍縮への世界の潮流に逆行する国もあります。そうした中で、今こそ我が国は、非核国、経済大国の特徴を生かしてアジア・太平洋地域の平和と発展に貢献するためのイニシアチブを発揮すべきと考えます。最後に総理の所見を求めて、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕