宇野收の発言 (議院運営委員会国会等移転小委員会)
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○参考人(宇野收君) ただいま御紹介いただきました国会等移転調査会会長の宇野でございます。
昨年の九月より、国会等移転調査会の基本部会を中心に調査、審議してまいりました「首都機能移転その意義と効果」に関しまして、去る六月十日に開催されました第四回国会等移転調査会におきまして中間報告を取りまとめ、同日付で羽田内閣総理大臣に私から御報告をいたしました。その後、十四日付で内閣総理大臣より国会に報告されたと承っております。
本日、この場にお招きいただきまして御報告の機会を賜りまして、まことにありがとうございます。
基本部会は、昨年五月十八日に開催されました第二回調査会においてその設置が決定されまして、昨年の九月七日に第一回部会を開催して以来、精力的に審議を進め、途中二回にわたる海外調査、東京都からのヒアリング、公聴会等も交えながら、本年五月十八日までに計十一回にわたり検討を進めてまいりました。
基本部会の審議に当たりましては、私も可能な限り出席させていただきましたが、国土庁の首都機能移転問題に関する懇談会取りまとめや内閣の首都機能移転問題を考える有識者会議の取りまとめの議論、その他従来からあるもろもろの学説や論調等をも踏まえつつ、移転の意義と効果を大きく八つの観点から検討をいたしました。
すなわち、中間報告の最後のページに基本部会の開催の経緯がございますが、「国際的役割の増大への対応」、「新しい社会への変革のトリガー」、「人心一新の好機」、「政治、行政改革の契機」、「東京の過密問題解決への寄与」、「二十一世紀にふさわしい国土構造の実現」、「地震等災害に対する脆弱性への対応」及び「その他」の八項目であります。これらにつきまして、専門的に調査、審議を進めてまいりましたが、このたび、これまでの成果を幅広く国民各位の御議論に供することが必要であると考え、調査会の中間報告としてここに取りまとめた次第でございます。
首都圏移転問題に関する報告書といたしましては、過去におきましても、先ほど申し上げましたように国土庁懇談会取りまとめがございますが、これは国土政策上の観点にウエートを置いた報告内容となっており、また、内閣の有識者会議取りまとめは、大所高所から首都機能移転の必要性を強調したものであります。
今回の中間報告は、各委員の見識と英知を結集して、これら先行した二つの懇談会における論点につきましても一層具体的かつ詳細な分析に努めるとともに、より幅広い観点から新たに、国民の意識、価値観、政治行政システム、経済社会構造、国際情勢の変化等、多岐にわたる観点からの検討を加えたほか、歴史的な考察をも行うなど、さらに広い視野に立ち、掘り下げた議論を行った上で取りまとめたものであります。また、具体的な例示をふんだんに盛り込むとともに、通常の型にとらわれない文体、言葉を用いるなどして、国民的合意を図る上でより理解しやすい内容にすることを目標としてまいりました。
報告書を順にめくっていただきますと、最初に「はじめに」、続いて「目次」がございまして、一ページの「序章」となっていくわけであります。その「序章」の冒頭に、「われわれが、この小論で試みようとしていることは、首都機能移転という壮大な歌劇の序曲を奏でることである。」というくだりがございます。首都機能移転をオペラに例えていますが、皆様御承知のように、オペラの場合、通常、第一幕の前に序曲が演奏されるわけでありますが、序曲は幕あけがすぐそこまで来ていることを告げるとともに、幕あけ以降に展開されるであろう歌劇の内容を聴衆にあらかじめ暗示することを役目としていると言われております。
こうしたことになぞらえまして、ここでは、この中間報告がこれから始まっていく首都機能移転という壮大なプロジェクトの幕あけを宣言するとともに、その道筋を多くの国民が内容を予見した上で理解を深めていただくことにより首都機能移転への理解を高め、かつ期待を膨らませていただこうということであります。
全体の章立ては、いわゆる起承転結を意識して構成しております。
まず、起に当たります「第一章 転換期を迎えた日本とその二十一世紀における新しい方向」は、今なぜ首都機能移転が必要かについて議論を説き起こすために必要な我が国内外の情勢変化に関しまして、来るべき二十一世紀における変革の方向について概観しております。
三ページからの「1 価値観の多様化と「個」の確立」では、従来、組織中心の価値観や横並びの重視により個を軽視してきた我が国社会において、最近社会の成熟化に伴い、国民が個性豊かな生活を求め、価値観が多様化しつつあり、また国際的な交流意欲も積極性を増しつつあること。
次に、六ページからの「2 改革・転換期にある政治・行政システム」では、今まで我が国の経済社会を長く支えてきた政治行政システムが情勢の激変により、政策課題が著しく変化してきたにもかかわらず、総合的な視野の不足が指摘され、変革への機敏な対応をおくらせており、このため制度疲労を来していること。政治行政と経済社会との関係を二十一世紀にふさわしい新たな関係に変える視点が重要であり、政治行政が国民から見てもまた国際社会から見てもわかりやすい姿で遂行されることなど、透明、公正な政治行政が求められていること。
次に、七ページからの「3 変革を求められる経済・社会」では、従来の国内産業重視の、効率的な生産重視の経済社会構造が、成熟化社会を迎え、自立、自助の社会への変革をおくらせ、国民の多様な価値観の実現を妨げ、国民の豊かさの実感を阻んでおり、またゆとりや精神的豊かさへの欲求、国際協調への要請が高まりつつある今日、そのような経済社会構造が大きな体質改善を求められていること。
次に、九ページからの「4 冷戦構造の崩壊と新たな国際秩序の模索」では、米ソ二超大国が対峙する冷戦時代が終えんを迎え、新たな国際秩序の構築が模索されており、我が国がその地位にふさわしい役割を十分に果たしていくことが求められていること。
次に、十ページからの「5 東京一極集中と国土利用のアンバランス」では、経済的、文化的側面のみならず、心理的でも抜きがたい東京一極集中志向を背景として、東京圏においては依然として深刻な住宅、通勤、通学、交通、廃棄物処理等の諸問題が山積しており、東京一極集中のメカニズムの打破が求められていることなどをそれぞれ分析しております。
次に、起承転結の承に当たります「第二章 首都機能移転の意義」におきましては、十三ページからの「1 国政全般の改革」で、我が国が根本に踏み込んだ幅広い改革を迫られており、首都機能移転がそのための重要な機会であり、国政全般の改革を強力に補佐補完し、加速し定着させる手段であること、規制緩和、地方分権と並び二十一世紀へ向けた我が国社会の改革のための車の両輪とも言うべき重要施策であること。
十五ページからの「2 首都機能移転の歴史的役割」で、内外の歴史を振り返れば、首都機能移転は新しい時代を創生じようとするときに新たな政治行政システムへの転換、国民意識の変革、新しい文化の生成、国土構造の改編等さまざまな面で重要な役割を果たしてきたこと。
さらに十七ページからの「3 首都としての東京の限界」では、東京は過密巨大都市化に伴う諸問題の深刻さ、地震災害に対する弱さ、国際政治活動への制約等、首都としてさまざまな限界に直面していることといった三つの観点からの首都機能移転の意義を述べた上で、二十ページからの「4 政経分離と首都機能移転の必要性」において、第一章で分析いたしました社会変革をより確実に推進し、加速し定着させていくためには明治以降、政官民一体となって経済発展に専念してきた体制を改め、新しいルールを確立するとともに、物理的な政経分離を図る必要があること。その際、政治行政機能がみずから率先して移転すること、すなわち首都機能移転が最も効率有効かつ適切な手段であること。
さらに二十二ページからの「5 新しい日本は新しい革袋に」において、平清盛と源頼朝の歴史的事例等を踏まえて、新しい日本を築いていくためには新首都という新しい革袋が必要であることを強調しております。
さて、「第三章 首都機能移転の効果」は、首都機能移転のもたらす効果について述べております。
そこでまず、首都機能移転が社会全体の雰囲気を一新し、政治、行政、経済、文化等に大きな変化を生じさせること。そしてそれが相互に作用し合い、定着していくことにより、我が国のあり方そのものを大きく変貌させるものであることを述べた上で、二十四ページからの「1 東京中心の社会構造の変革」で、東京中心の序列意識が崩れ、人々や企業の東京志向が緩和され、東京への優位性が相対的に低下することにより、地域の自立が促進されるとともに、東京中心の社会構造が意識面から改革されていくこと。
二十五ページからの「2 新しい視点に対応した政治・行政システムの確立」で、規制緩和や地方分権と政治行政改革を促進する契機になり、政策立案の視点が経済効率重視、大都会的なものから生活優先的、地域住民的なものに変化することとともに危機管理機能が格段向上するなど、新しい政治行政システムが確立されること。
二十七ページの「3 新たな経済発展」で、新首都の建設で、世に認められた独創的技術の応用、関連社会資本の整備による広範な社会的、経済的効果、内需の拡大等により新たな経済発展が図られ諸外国との経済的あつれきが緩和されること。
さらに、二十八ページからの「4 世界へ向けた日本の新しい姿」で、首都機能移転が今後の日本の新しい姿を世界にシンボリックにアピールすることにより、我が国の理解の増進に役立ち、また国際交流を促進すること。
二十九ページからの「5 国土構造の改編」で、東京については、過密の軽減、都市居住環境の向上、防災性の向上。国土全般については、東京への集中が集中を呼ぶメカニズムの打破、東京の吸引力の大幅な減殺、新首都圏の形成による国土構造の改編、複合的な情報通信、交通ネットワークの形成。防災については、政経分離により、リスク分散、災害対応力の強化等、国土構造の改編に大きな効果を及ぼすことの五つの柱にくくって、できるだけわかりやすく根拠を示しつつ説明をしようとしております。
さて、「第四章 「新首都時代」の創出」は、結に相当する部分であります。
そこにおきましては、まず三十二ページからの「1 新首都の創造」で、我々がどんな新首都をつくろうとしているか。すなわち、我が国の未来を国民と国際社会にアピールし、新しく生まれ変わる日本の姿を代表するような日本の進路を象徴する都市であること。新しい時代の要請に対応して、生まれ変わる政治行政システムが十分にその機能を発揮できるような新しい政治行政都市であること。世界と日本をつなぐ役割を十分に果たせる本格的な国際政治都市であることを述べた上で、三十五ページからの「2 生まれ変わる東京と新首都との連携」で、首都機能移転を契機に生まれ変わる東京と政治行政の新たな中心地となる新首都との間の機能的な分担、協力関係を支えるための密接な連携の確保について考え、また三十六ページからの「3 首都機能移転の問題点とその克服」で、国民の求心力、方向性の喪失のおそれ、日本経済の活力、効率性の低下のおそれ、東京の活力低下のおそれ、新首都への新たな集中のおそれ、投資の優先度に対する疑問の五つの問題について当調査会として見解を述べると同時に、それらをどう克服していったらよいかのとりあえずの解決策を探るとともに、四十ページからの「4 新首都づくりに当たって予め講ずべき措置」では、第一回公聴会での御意見等も踏まえ、新首都づくりに当たって、あらかじめ公正、透明な手続の確保、土地投機の防止、環境との調和、共生の確保が図られるよう措置される必要がある旨を記述いたしました。
そして最後に、四十一ページからの「5 「新首都時代」の展望」及び四十四ページからの「6 「東京時代」から「新首都時代」へ」で、新首都がつくり出す新しい時代、すなわち魅力ある選択肢が多様に提供される自由度の高い時代、国の政治、行政の運営がより開かれた透明性の高いものになっていく時代、豊かな国際社会が展開する時代及び独創的で個性的な地域社会の形成が進んでいく時代の実現について期待を込めて展望してみました。
新首都の建設は、人々が時代の変化を実感し、心機一転してよりよい未来を志向する、そういう歴史的な一大事業であり、それにめぐり合い、参画する機会を得ることは、未来に向けた夢の創造そのものであると言えましょう。
中間報告の概要は以上でございますが、私から羽田内閣総理大臣に御報告申し上げましたところ、総理からは、未来を見据えた夢のある仕事だ、二十一世紀のあり方を今考えることが大切である旨申されました。私も全く同感でございます。
本調査会におきましては、この中間報告を踏まえて、今後首都機能移転の具体化に向けて新首都の具体像や首都機能移転の進め方などについてだれもが胸の中に描き得る検討材料を提供できるようさらに議論を進めてまいりたいと思っております。
また国会におかれましても、広く内外の人々に語りかけるなど、国民にわかりやすいPRの実施に努められ、一歩一歩実現に向け国民の合意の形成が図られますよう努力されんことを期待を申し上げます。
なお、お手元にございます十ページ程度の中間報告の要点は、首都機能移転はいかなる意義と効果を持つものなのか、また問題点やその解決策は何か、さらに新首都はどんな首都になり、どのような時代が展望されるのかなとにつきまして中間報告の主要なポイントをまとめてみたものでございますので御参照ください。
以上をもちまして、私からの報告とさせていただきます。ありがとうございました。