吉川芳男の発言 (本会議)

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○吉川芳男君 私は、自由民主党を代表して、羽田総理並びに関係大臣に若干の質問をするものであります。
 まず、政治姿勢について伺います。
 先月八日、細川総理の突然の辞意表明により、ちょうど三週間日にようやく羽田内閣は成立を見たわけであります。疑惑に満ちた細川内閣が退陣すれば、連立与党が続く限り、だれの目にも羽田副総理兼外務大臣が総理の座を引き継ぐ人だと思われながら、何ゆえかくも日時を要し難産になったのか。
 それは、今さら私が指摘するまでもなく、連立与党内の政策の合意形成に手間取ったことと、唐突な統一会派「改新」の結成により、これに反発した社会党の政権離脱にあります。つまり、別な言い方をすれば、衆参両院とも首班指名選挙は難なく一回でクリアしたけれども、その後の改新劇以降では政治的基盤が全然違ってきたことに思い知るべきと存じます。
 各種報道機関は、この傷跡にライトを当てて、これでもかこれでもかと内閣短命説を言い立てております。まあ一時期、非自民をもてはやすがごとき報道ぶりから見れば相当風向きが変わってきたのかとも思いますが、何にしても困難な船出には違いありません。
 まず、質問の第一点は、この政治状況をどう把握しておられるか、お伺いするものであります。
 この内閣、マスコミの指摘するまでもなく、基盤の脆弱性は疑いを入れません。
 まず、平成六年度予算を可決成立した時期が一つの終えんの潮どきと考えられます。ただし、それでは余りにも短く、せっかく連休中、根回しにヨーロッパ各国を歴訪し、いわゆるナポリ・サミットに向けて努力を重ねてこられたのだから、これをなし遂げてもらうべきだ。いや、アメリカとの関係修復が何といっても当面の最大急務であり、幸いアメリカの大統領、国務長官とも新政権のお手並み拝見とばかり六月末までの協議再開の猶予期間を与えてくれているのだから、貿易不均衡、規制緩和、内需喚起にいかなる方策を見出し得るのか、そこを見届けるべきだと、さまざまな意見が飛び交っております。
 総理には、こうした意見の交錯していることは十分承知と存じますが、みずからはどんな政権維持構想をお持ちであるのか、明らかにされたいのであります。
 また、ここで一言聞いておかなければならぬことは、世に言う一・一連合、小沢的政治手法についてであります。
 言うまでもなく、民主主義、議会政治は、目的もさることながら、手続とそこに至るまでの手段、方法を大切にする政治形態です。しかるに、昨年の八月以降、連立政権の幾つかの切所節目においてこの一・一ラインによる強権的手法が云々され、小沢的発想が随所に見られるとマスコミは報道しております。すべてが真実とは思っていませんが、相当蓋然性があると考えられます。このままでは世に言う権力の二重構造に拍車をかけることになりまするが、総理はどのように受けとめ、対処なさるのか承りたいのであります。
 さらにお聞きしたい点は、前任者細川前総理、細川政権とのかかわりについていかなる認識を持っておられるかという点です。
 疑惑が高じてにっちもさっちもいかなくなったらさっさと辞任表明をやって、後は野となれ山となれとばかりの態度には、無責任の感を通り越してあきれ果てたる所業と断ぜざるを得ません。ずさんきわまりない資料を国会に提出し、遁辞を繰り返し、しからば証人を招致してそのいきさつを明らかにしてほしいとすればこれを拒否し、あげくの果てには重大な問題点が発覚したから辞任する、そういった後にもその問題点は目くらましであったとコメントして平然としている、これは到底常人ではない感覚であります。
 しかも、辞任表明の中にも平成六年度予算の早期成立に一言半句も言及してないのは一体何ゆえなのか、全く理解に苦しむ態度であります。
 この一連の事柄に副総理であった羽田現総理はいかなる進言をやってこられたのか、一切連立政権側から聞こえてこないのであります。羽田内閣は改革継承内閣とみずからを位置づけております。改革とは何か。政治の腐敗、金権体質からの脱却こそその第一歩ではなかったのではないでしょうか。細川前総理の疑惑解明にいかなる決意を持たれているのか承りたいのであります。
 次に、熊谷官房長官、あなたは就任の日、内閣記者会との初会見のとき、国民との間に信義信頼が大切だと盛んに強調されていましたが、その後、記者の小沢氏の女性べつ視ともとれる暴言に対しての質問には、一切その事実関係を明らかにすることなくうやむやに言い過ごされたのであります。およそ事実の隠ぺいや非を非と認めない態度から信義や信頼が生まれるはずのものでないことは言うまでもありません。
 私は、あなたの態度や発言には一片の誠意も認められず、官房長官としては不適任だと思うものであります。この際、はっきり事実関係を示し、それに対する長官の見解を披瀝するか、はっきりさせたくないなら辞任するかの道を選ぶべきだと思うのであります。明確な答弁を要求します。
 次に、内需拡大、税制問題について質問します。
 政治の空白、混乱のしわ寄せが我が国の危機管理問題に重大な影響を及ぼしていることを大変危惧するものですが、この問題については既に我が党の平井議員が質問いたしておりますので、私は経済面への悪影響を中心に質問いたします。
 羽田内閣の発足早々円相場がまた急上昇し、一時百一円台と八カ月ぶりの高水準となりました。円高の背景は言うまでもなく千三百億ドルにも及ぶ日本の経常黒字であり、日本が内需拡大、輸入促進等により黒字削減をどの程度行い得るか、国際的な最大関心事となりつつあります。今回の円相場の高騰は、少数与党政権である羽田内閣が本格的な減税を含めた景気対策を打ち出すのは困難ではないかと市場関係者の多くが見ていることによると思われます。
 米国のベンツェン財務長官は、日本の政策が内需拡大と貿易黒字の大幅削減につながることが大切だと強調しております。このような米国の期待にこたえなければ、失望感からさらに円高が進むリスクが当然生ずるわけであります。大手でも一ドル百円では輸出の採算が合う製品はほとんどゼロという状態であり、これ以上の円高は景気の足を大きく引っ張ることになります。
 これに対して総理はいかなる方策をお持ちか、まずお尋ねします。
 不況は三十七カ月と戦後最長を更新し、企業がリストラに懸命に取り組んでいる中で倒産や首切りの不安が拡大しております。景気動向は、先行、一致指数とも一月に急上昇いたしましたが、二月には急落し、非常に不透明であります。どうも景気回復のパターンが従来と大分変わってきたのではないか、景気対策がタイミングを失したこともあってもはや急速な回復が期待できないのではないかとの見方が出ております。
 今までにも経企庁の判断の公表がおくれて、手の打ち方が後手後手に回った例が多いわけでございますが、これは経済成長見通しの適否にかかわる重大な問題でありますので、経済界出身であります経済企画庁長官の率直な答弁を願います。
 かつて経験したことのないデフレ不況の深刻さを十分認識せずに、前内閣は政治改革法案のみにかまけ、我が党の昨年秋からの緊急景気対策のたび重なる要請、予算の年内編成についての強い申し入れをことごとく無視し、じんぜんと日を過ごしてまいりました。このような経済無策のしわ寄せがいまだ景気の底固めを見ない深刻な事態をもたらしたことは明白であります。
 羽田総理は、当時の副総理としてどう責任を感じておられるのか、所信表明でも何らの反省の言葉が見られません。明確にお答え願います。
 不況対策のおくれにより、景気は再び失速するおそれも出ております。予算の早期成立が強く望まれ、我々もそれに協力するにやぶさかではありませんが、そのためにも羽田総理は予算の審議促進のネックとなる問題の排除に積極的に協力するおつもりがあるか否かをお聞きするものであります。
 予算の早期成立と並行して、内需拡大の最大の柱である減税の継続、財源問題について早急に結論を得ることが不可欠であります。さきの連立与党間の確認事項においては、この問題は最大の争点であり、社会党との妥協を図るため、内容が全く不明瞭な、まさに玉虫色そのものになっております。社会党は、政権離脱後、その確認事項に拘束されないとの立場と聞いておりますし、与党内の税制改革協議会で社会党を除く協議がどういう形で進むのでしょうか。
 他方、藤井大蔵大臣は、再任時の記者会見で減税を上回る増税を示唆する趣旨の発言をいたしております。
 このような状況で、六月末までにいかなる方法で国民の理解を得つつ税制改革要綱をまとめるお考えなのか。
 私たちは景気回復による税収増も当然考慮すべきだと考えます。そのためには景気回復にマイナスとなるような増税はすべきでなく、均衡のとれた国民負担のあり方や行政経費の節減について思い切った方策をまず確立すべきであります。それが不十分なまま安易な増税を図ることは問題であると考えるのでありますが、その点について総理の所見を伺いたいと存じます。
 ナポリ・サミット、日米協議再開のタイムリミットから見て、六月末までにまとまらなければ景気の先行きに冷や水をかけることになるだけでなく、日米関係の破綻を招き、日本が国際的に孤立することにもなりかねません。六月末までにまとめることは、前政権、連立与党の公約でもあります。これがまとまらなかった場合、総理自身の進退問題に当然発展すると見ておりますが、総理の明確な答弁を求めます。
 次に、財政に関し幾つか質問いたします。
 我が国財政は、税の大幅な減収により極めて厳しい状況にあります。財政に期待されるものは、後世代に大きな負担となる国債残高が累増しないような健全な体質をつくり上げることが財政再建の原点と思っております。しかるに、「責任ある変革」を目指して誕生した連立政権が初めて提案した平成六年度予算を見ますると、景気回復の至上命題にこたえなければならないとしても、赤字国債の五年ぶりの復活を初め国債の大幅発行増や歳出の繰り延べ、後送り等の隠れ借金などによる帳じり合わせが顕著に目立ち、ツケを将来に回し、生活者重視の予算編成とは裏腹に、およそ改革の名に値しない、従来の硬直的、固定的な予算配分に陥っていることはまことに遺憾であると言わねばなりません。
 また、税制面でも同様な例が見られます。一例として、暴落した地価の現状に合わせて課税が見直されてしかるべきでありまするが、固定資産税の評価がえは実勢と大きく乖離し、税の過重を招き、不満が高まっております。自治大臣、これを見直すべきではないでしょうか。
 具体的に財政面から平成六年度の予算の特色を見ると、国債依存度が一八・七%と極めて高くなり、平成七年度の国債依存度五彩以下の財政再建目標の達成が困難となったことであります。
 今後の財政運営は、減税財源、公共投資の拡大等景気対策の財源のため、より厳しい状況が続くことを考えますと、再び赤字国債依存体質へと逆戻りする懸念を抱えておりまするが、政府として、今後財政再建目標をどう講ずるのか、隠れ借金依存体質からどう脱却するのか、将来の財政展望をどう構築するのか、その方針を総理大臣及び大蔵大臣より示していただきたいのであります。
 次に、規制緩和について伺います。
 総理は、みずからのために行うという姿勢で規制緩和を中心とする経済改革を進めると発言されていますが、もちろん市場開放のみならず、不況対策として規制緩和はミクロ経済対策の最大の柱として火急であり、新たな投資、市場開発分野を創出し、競争により民間部門を活性化することがかつてなく強く要請されております。
 総理は、就任早々二カ月足らずの短期間のうちに、民間の自由な発想を尊重し、いかに官僚、縦割りの省益の壁を打ち破るか。そのためどのように蛮勇を振るい内外の要請にこたえるか、まさに指導者としての力量が厳しく問われるところであります。
 総理は、霞が関官僚の評判がよろしいようでございますが、官僚のおぜん立てに乗る発想では失敗することは目に見えております。官僚は、先行き、政権が不安定のため、小出しの様子見を決め込むことをしかねません。規制緩和について、推進方針と決意を具体的に聞きたいのであります。
 次に、行財政改革についてお尋ねします。
 税制改革のてこにするため、中央省庁、特殊法人の統廃合を細川前総理が指示したと報道されたやさきの退陣となり、行革は依然としてたなざらしとなったままであります。連立政権の行財政改革がいかにかけ声だけのものであったか、本年度の予算編成内容を見ると歴然としております。
 先ほど申し述べましたように、財政負担のツケを将来に回しながら、行政経費について国民が納得するような大幅な節減は行われていません。まして、国民が目に見える形での行政機構の簡素合理化がどうなるのか、具体的に何も検討されていないのであります。
 平成元年、消費税の導入は中曽根内閣の行革断行の成果を踏まえ初めて可能になったのであります。大不況にあえぎ、生き残りをかけて必死にリストラが行われている中、行政システムのみが旧態依然のままではもはや許されません。
 企業マンとしての経験も持つ総理はこの辺の重要性は十分認識されていると思いますが、国民に国も一生懸命リストラをやっていると納得してもらうためにはどうしたらいいのか。総理は「簡素で賢明な政府」をつくると言明されていますが、例えば中央省庁、特殊法人の統廃合について具体的にお考えがあればお聞かせ願いたいのであります。
 さらに、抜本的な地方分権の確立を図るためには、地域住民のニーズに密着した行政サービスを円滑に提供する観点から、地方と国との役割分担を徹底的に洗い直すことがまず必要であります。その上に、赤字、借金に苦しむ地方財政の現状を踏まえ、権限を委譲するに当たり財源問題を含めて検討することが肝要と考えますが、総理の基本方針を承りたいと存じます。
 農業問題について質問します。
 去る四月十五日にウルグアイ・ラウンドの合意文書が署名され、羽田総理も日本の代表として参加されましたが、米の隠れ関税化を初めとする農産物の総自由化は大凶作にあえぐ日本の農業に大きな衝撃を与えました。真剣に農業経営の規模拡大等に取り組んでいた農家が一番大きなダメージを受け、日本農業に絶望しております。
 かてて加えて、ことしに入り、生活者重視とうたいながら、米の緊急輸入の手当て、配送のおくれ、外米と国産米とのブレンド問題等、消費者無視の場当たり行政によるパニック的な状況が全国各地に起こりました。
 ガット・ウルグアイ・ラウンド交渉において、日本の食糧の安全保障、国の基たる農業を守ることを忘れ、たび重なる国会決議を無視し、官僚任せの秘密外交、二枚舌の国会答弁に終始した責任は決して許されるものではありません。
 協定の批准や食管法を初めとする関連法制の改正はこれからであります。農政不信は全国に渦巻いており、いまだ新しい食糧の安全保障、農業の再建方策は示されておりません。このような状況のもとでは農民は農業合意をとても受け入れられませんし、すべては今後農政の信頼の回復ができるか否かにかかっております。
 このためには、食糧の安全保障に必要な国内生産体制の改善、安定を基本として、農業者が安心して営農にいそしめるよう国を挙げて早急に再建対策に取り組むべきです。
 特に米の問題については、ミニマムアクセスにより生産調整が拡大するのではないかと稲作農家は大きな不安を持っており、外米を備蓄に回す等によりまして安定した稲作づくりができるよう具体構想を早急に示すことが緊要です。
 農政通を任じている総理は、どのような展望のもとで画期的な再建対策を考えているのか、承りたいと存じます。
 次に、総理は所信表明で改革と並べて協調を掲げておられましたが、この点について関連して伺います。
 連立政権になってから、数を頼む政治手法により議会運営がゆがめられ、参議院においてもよき慣行が踏みにじられてきました。内閣の構成を見ましても、参議院出身の大臣、政務次官の数がここ十数年来と比べ、連立政権になってから明らかに少なくなっており、この面でも参議院が軽視されていると言わざるを得ません。少数与党政権として協調を声高に言われるのは当然としても、どのように協調していくのか具体的に定かではありません。参議院軽視とならないようどのような方法で協調するのか、お聞かせ願います。
 最後に、今後の政局展望について伺います。
 我々も一刻も早い景気回復を図るため予算の早期成立を望むものでありまするが、他方、細川前総理の疑惑の解明も政治の信頼回復のため急がねぼならず、国家の命運を左右する重要問題については、総理の責任を徹底的に明確にしていくことが我々の当然果たすべき責務であります。このようなことで予算成立後政局が行き詰まった場合、羽田総理はどのように決断なさるのか、政局の混迷自体がもはや国益を大きく損じかねないところまで来ておるのです。
 総理は、今はども現行中選挙区制度における解散を否定された答弁をされておりまするが、新しい選挙制度が間に合わないということだけを理由に、民意を代表し得ない少数与党政権がいつまでも立ち往生じて無策を続けることは許されません。そういうことになると総辞職しか道が残されていないと考えざるを得ませんが、明確な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣羽田孜君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 112915254X01719940516_020

発言者: 吉川芳男

speaker_id: 4743

日付: 1994-05-16

院: 参議院

会議名: 本会議