林義郎の発言 (政治改革に関する調査特別委員会)
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○林(義)委員 改めて私は、国会の議事録にこれを掲載していただくように、私から読み上げておきたいと思います。その方が議事録に載るためにもいいのだろうと思いますから申し上げておきますが、投票価値の平等は憲法の要請である、こういうのが第一にございます。それから、憲法上の平等と不平等、合憲と違憲との限界ということについてどうおっしゃっているかというところでございます。
岡原さんは、もう亡くなられましたけれども、最高裁判所の長官をされた方でございますから、私は、その法律的な見識についてはやはり相当に評価をしなければならない方だと思います。もうやめたからその人の意見は聞かないなどということではなく、やはり法律家として立派な御判断を持っておられた方でございますから、当然に私は聞いていい話じゃないかな、こう思うところであります。
そこで、ここに書いてありますのは、
憲法上の平等と不平等即ち合憲と違憲との限界は、何処にあるのだろうか。それはすぐれて法律文化の問題であって、国民の多数がどの程度をもって、憲法の求める平等と考えるかに係っている。もとより性質上数学的完全平等はありえないが、大半の国民大衆は、その住むところによって、投票権が半人前以下に取り扱われるとか、自分は一票だけしかないが他人は二票以上を投ずることができる、という差別の屈辱には耐えられないというのが偏らない心情であり、一般の常識であろう。又はぼすべての学者も最大格差二対一を超えれば違憲と説いでいる。
私もその考え方に賛成である。恐らく憲法学者にすれば、この法のもとの平等におけるところの一票対二票以上の格差というのはやはり非常におかしいというのは、私は、これは憲法学者でなくて一般の常識だろうということを説いておられるのだと思います。
そしてこの平等は一選挙区内の有権者の投票の平等ではなく、全選挙区・全国民の間の平等でなければならない。この国民多数共通の感覚を憲法解釈に取り入れるのが、裁判所の役目であり、それを立法化するのが立法府の責務であると思う。
裁判所の違憲立法審査権が確立せず、平等の観念が国民の間に十分に行き渡っていなかったと思われる旧憲法時代から、選挙区間の最大格差は、大正一四年の普通選挙に全面改正の時には一・四九対一、昭和二二年の改正の時は一・五一対一であった。新憲法下、法の下の平等が強調される最近になって却って格差が拡大し、その現状を追認するかのように、三対一までは憲法に違反しないとの議論があるのは誠に嘆かわしい。アメリカでは、最初裁判所が一%、二%の差別をも違憲としたが、最近は裁判所も学者も、概ね一五乃至二〇%までを合憲としていて、議会も憲法違反の法律であるとの裁判所判決があれば、直ちに対応措置をとること、などと対比すれば、わが国において三〇〇%の格差を基準にして平等を論じていて、しかも国会が法改正を渋っているのは、憲法感覚がにぶすぎると思う。
こういうふうな御議論があります。あえて私は申し上げましたけれども、こういった議論が、私は憲法学者の間で非常に一般的な議論ではないか、こう思っておるところであります。
私は、政治改革は大いに進めていかなければならないと思っています。特に、政治改革の中における腐敗防止の関係、保岡先生やその他者さん方、大変御努力をいただいたところでありますから、そういった点については、私は、大いに進めていかなければならないが、その今回の政治改革の一つの基本であるところの小選挙区制の問題につきまして、その創設に当たりまして、最初から法のもとの平等の大原則に反するような制度で拙速につくることはいかがなものであろうか。決して私は褒められたものではない。憲法学者の意見、また一般国民の常識、そうしたもの等をやはり十分に勘案してやるのが国会の見識ではないかと思うものでございます。
法律をつくった、それから選挙になったときには、選挙をやった、選挙が済んだら直ちに違憲訴訟が起こった、違憲だというような話になってきた、こういうことになってくる可能性が私はないようにしなければならない、これが私たちのとるべき態度ではないかと思うのであります。
私は、こうした意味で、岡原さんも亡くなられましたからあれですけれども、多くの憲法学者もおられますし、私も若干のいろんな資料を調べてみました。皆同じような議論を言っておられますが、現在の段階におきましては、現行憲法のもとで、現在の中選挙区制のもとで、その中で判断するときにはいろいろな事情を考慮してやって、ある程度まで合理性があるならば、それをもってすぐに絶対な違憲だというわけにはいかないというのが今の大勢でありまして、それは違憲ではないというだけでありまして、本当に立派な、憲法に合ったものだというところはだれも言っておられないわけでありますから、私は、この際やるべきであるのは、やはり憲法に合った堂々たるものをつくってやることが正しいんじゃないかな、こう思っておるところでございます。
そういった意味で、私は委員長にぜひお願いをしたい。やはり憲法学者を、私はあえてだれそれを呼べとかなんだとか言いませんが、やはりしかるべき憲法学者の方々あるいは民間の方々でも結構でございますから、やはり国民の常識というもので判断をしていただくことが私は必要なことだろう、こう思いますので、特に憲法学の人について、参考人として招致をして広く意見を聞いてもらいたい、こう思うのであります。
そして、オープンな形で私はぜひ当委員会で議論をしてもらうことが大切なことじゃないかな、こう思っています。政治改革の問題は、当委員会に与えられたところの役割というのは、私は非常に重たいものがあると思います。それは、単に現在においてどうだということじやありません。恐らく、この政治改革をやって、選挙制度を改正すれば、やはり何十年、十年を超えるところの年月を私はかけてやることになるだろうと思うんですね。単純に、あしたやって、一遍やった、二遍やった、それで廃止するなどというような話では私はない。そういった基本のことを議論するわけでありますから、私は一日、二日を争ってやる話ではない、十分な議論を国会において尽くくれることが必要なことじゃないかと思って、あえて委員長に御提言を申し上げるところでございます。
私も、委員長は法曹に身を置かれた方でありますし、委員長の法律感覚は大変立派なものであるし、磨きがかかったものであると思っているところでありますし、委員長の名誉のために、また、ここにおられるところの委員会の諸君の名誉の問題にもかけて、私は、各党の方々の御同意をいただいて、立派な参考人を招致して意見を聞き、そしてまたオープンな形で御議論をしていただくことを心から望んでやまないところであります。
委員長から御答弁いただきたいと思います。