上田章の発言 (政治改革に関する調査特別委員会)
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○上田参考人 白鴎大学の上田でございます。
本日お呼び出しを受けましたのは、案件は公職選挙法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案ということになっておりますが、私にお尋ねの件は、先ほど佐藤先生がお話しになりましたように、今度のいわゆる区割り法案におきまして一票の格差が二倍を超える選挙区が若干生じておる、これは憲法十四条の法のもとの平等に反しないかという点ではなかろうかと思いますので、この点に絞りまして私の考え方を申し上げたいと思います。
先に結論を申し上げますと、私も佐藤先生と同じように、違憲ではないという考え方でございます。
実は私、本院の法制局長をやっておりまして、現職の当時、ちょうど中選挙区制における衆議院議員の定数是正の問題にぶち当たりました。私の現職のときには、昭和六十一年のいわゆる八増七減案という改正もお手伝いをさせていただいたものでございます。
定数是正の問題を考えます際に一番問題となりますのは、言うまでもなく最高裁判所の判決でございます。最高裁判所の判決は、先ほど佐藤先生も詳しくお話しになりましたが、昭和五十一年、昭和五十八年、昭和六十年、昭和六十二年、それから平成五年というように幾つか判決が出ておるわけでございますが、これらの判決はほぼ内容は同様であるというように考えていいのではないかと思います。
その判例によりますと、
憲法第十四条第一項の規定は、国会を構成する
衆議院及び参議院の議員を選挙する国民固有の
権利につき、選挙人資格における差別の禁止に
とどまらず、選挙権の内容の平等、すなわち議
員の選出における各選挙人の投票の有する影響
力すなわち
投票価値の平等をも要求するものと解すべきで
ある。ということを第一に言っております。
しかし、また、憲法は、国会の両議院の選挙に
ついて、議員の定数、選挙人の資格、選挙区、
投票の方法その他選挙に関する事項は、法律で
定めるべきであるということを四十三条二項、四十四条、四十七条において言っております。
選挙制度の仕組みの具体的決定を原則として国
会の立法裁量にゆだねているところである。そ
こで、投票価値の平等は、憲法上、右選挙制度
の決定のための唯一、絶対の基準となるもので
はなく、原則として、国会が正当に考慮するこ
とのできる他の政策的目的ないしは理由との関
連において調和的に実現されるべきものであ
る。それゆえ、国会が定めた具体的な選挙制度
の仕組みのもとにおいて投票価値の不平等が存
する場合に、それが憲法上の投票価値の平等の
要求に反することとなるかどうかは、右不平等
が国会の裁量権の行使として合理性を是認し得
る範囲内にとどまるものであるかどうかによっ
て決するほかない。というようなことを言っておるわけでございます。
この判例は、言うまでもなく中選挙区制の定数是正の判決でございますが、基本的には今回の小選挙区の区割り画定についても同様のことが言えるのではないかと思っております。
ところで、このいわゆる区割り法案といいますのは言うまでもなく衆議院議員選挙区画定審議会の勧告を受けて作成されたものでございますし、また審議会は、各選挙人の投票価値の平等が憲法上の要求であるということにかんがみまして、選挙区の画定案の策定に当たりましては、「各選挙区の人口の均衡を図る」ことを重視するとともに、各選挙区間の人口の格差が一対二以上とならないようにすることを「基本」とするという衆議院議員選挙区画定審議会設置法の第三条一項に規定する基準に従いまして画定案が作成されております。また、人口基準以外の「行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならない。」ということも同じく第三条に書かれているところであります。さらに、第三条第二項では、各都道府県にまず一議席を配分するということも規定されております。
これらは、今申しましたように、衆議院議員選挙区画定審議会設置法という法律が国会において議決されたというそのことに基づきまして審議会の方で勧告をなされたものでありますから、この国会で制定された内容、こういうものを所与のものとして受けとめるべきことになります。したがいまして、さきの都道府県一議席配分の結果、都道府県間の格差が既にそれだけで一・八二倍ということになります。そして、これを前提として各選挙区を画定するにつきましては、人口格差を二倍未満にすることは至難のわざでございまして、審議会において大変御苦心のあったことと思います。
石川会長の言にありましたように、市町村をようかん切りにすることは許されないのでありまして、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮され、結果的に二倍を超える選挙区が多少生じましたとしましても、審議会の審議の経過、さらに今国会先生方が慎重に御審議をなさっておるというこういう立法過程を考え合わせましたときに、これもやむを得ないものではないかと思うわけでございます。
また、さきの最高裁判所判例は中選挙区制のもとにおける定数是正の判決でありまして、今度新しく小選挙区比例代表制が発足するに当たって、一対二未満の投票価値の平等が要請されるのではないかという考え方がございます。
この考え方は確かに一考に値するものと思っておりますが、さきにも申し上げましたように、最高裁判所の中選挙区制のもとにおける定数是正の考え方というものは選挙制度一般についても同様に当てはまるものというように考えられますし、さらに、今回の選挙制度の枠組みは小選挙区のみならず比例代表制をも並立させたものとなってお
ります。
この制度を前提として投票価値の平等を考えた場合、両選挙制度によってその価値の不平等の許容限度は異なるのでございまして、比例代表制については各ブロック間における一票の価値はほぼ同じということになっておりますが、小選挙区制につきましては、これに比し、投票価値の平等については緩やかに考えられ、中選挙区制の場合における最高裁判所の判決から推測される三倍以内、この点は、先ほど佐藤先生が詳しく一対三の点はお述べになりましたので省略させていただきますが、裁判所は明確に一対三以内であればよろしいとは言っておりませんが、あえて私が最高裁判所の判決から推定されると申し上げましたのはそういう意味合いでございますが、そういう三倍以内という基準に近いものもある程度は認められるのじゃないかというようなことが考えられます。
しかし、この新しい小選挙区比例代表制を発足させるに当たりましては、一対二未満の平等の要請は重く受けとめるべきで、この点は先ほど佐藤先生もおっしゃいましたが私も同様な考え方を持っておりますが、さきに申しました、審議会でも二倍以内におさまるよう努力をされておるということ、その結果としてやむを得ず格差が二倍を幾分超える選挙区が生じましても、これをもって直ちに憲法第十四条の法のもとの平等に反するとは言えないのではないかと思うわけでございます。
なお、最後に私は、この制度が発足しました後、是正の問題につきまして一言触れておきたいと思います。
と申しますのは、今までの中選挙区制の場合におきましては、別表におきまして「この法律施行の日から五年ごとに、直近に行われた国勢調査の結果によって、更正するのを例とする。」というように書いてございます。「例とする。」というところがくせ者でございますが、いずれにいたしましても、是正がなかなか行われなかったということは事実でございます。
今度の場合には、先ほど申し上げました衆議院議員選挙区画定審議会設置法という法律におきまして、第四条で、「国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から一年以内に」勧告を行うのだということを書いてございます。しかも、これは国勢調査でございますから十年ごとということになるわけでございますが、この原則以外にも、審議会では、「各選挙区の人口の著しい不均衡その他特別の事情があると認めるときはこ勧告を行うことができるのだということも書いてございます。
したがいまして、今度は法律事項としてこの審議会は内閣総理大臣に勧告をすることになります。勧告をすることになりますと、国会はこれを尊重しないといけないということでございますから、今までよりはより是正が行われやすくなったといいますか、行われることになるのではないかと思いまして、この点は私は今度の制度の方がずっと進歩しているのではないかと思うわけでございます。
いずれにいたしましても、先ほど佐藤先生もおっしゃいましたが、これは法律事項でございますので、先生方の御意思というものが一番中心になる問題でございますから、この点だけ、御認識は当然あると思いますが改めて申し上げまして、私の公述にかえさせていただきます。
以上でございます。(拍手)