甘利明の発言 (税制改革に関する特別委員会)

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○甘利委員 日本の投資家が全体に意気消沈をしているというのはそうなのですけれども、世界じゅうの投資家が同じにそうかというと、違うのですね。アメリカは相変わらず活発なのですね。日本が非常に縮こまっている。ここに一つの問題があるのですね。
 空洞化を考えるときに、産業の空洞化も確かに深刻ですが、資本市場の空洞化というのはより深刻だと思う。それは何かというと、産業の空洞化というのは目にはっきり見えるし、時間がかかるのですよ。目に見えるというのはなぜかというと、外に出るには工場を建てる、あるいはそのために敷地を手当てする、人の手当てをする、これは時間がかかるし、具体的に目に見えるのですよ。ところが、資本市場の空洞化というのは目に見えづらいし、場合によってはあっという間に移動するのですね。だからこれは非常に深刻だし、しっかり見ていないと危険だなというふうに思うのであります。
 今、我が国の産業政策上に一番深刻な問題と言われているのは、御案内だと思いますが、起業率、つまり開業率ですね、業を起こそうという起業率とそれから廃業率、やめちゃう、廃業率の逆転現象なのですね。つまり業を起こそうという比率が減って、業をやめたり、あるいはもちろん倒産したりする、その比率の方が上回ってしまっている、これが非常に深刻な問題です。開業率は、かつて我が国も七、八%ありました。しかし、今は四%しかありません。ちなみに、アメリカでは開業率が一二%ぐらいあります。
 日本の既存の企業が成熟化をしてきています。成熟化をしてきますと、どうしてもやはり成長力というのが落ちできますよね。高齢化社会がそうであるように、活力が落ちてくる。そこで、新しい分野とか新しい業態の企業が生まれてくるということが新しいエネルギーを生み出して、それが成長力になっていくということに産業の実態はなるのですけれども、その新しいエネルギーが起きてこないわけですね。
 どうして起業率、つまり開業率が上がらないかというと、幾つかの原因がありますね。
 一つは、事業意欲がないのですね。言い方をかえると、起業率を上げるための要素といえば、一つに事業意欲が存在をすることということが挙げられるし、二つ目はアイデアとか技術のシーズが存在をすること。何もないところに業を起こすわけにはいきませんからね。意欲があること、シーズが存在をすること、それからもう一点が、事業化するための資金が存在をすること。つまり、起業率が上がるための要素というのはその三点があるのですね。
 考えてみますと、日本はこの三点が全部そろっているのですね。同じ人が全部持ってはいないでしょうけれども、国内にはその三つがちゃんとあるのですね。この三つがありながら開業率が上がらないというのは、逆な見方をすればはっきりしますけれども、企業家精神が尊重をされないような社会ではないか。あるいは、起業、業を起こしてもメリットがないのだ、税制上の制約その他が諸外国に比べて日本の方がきついからメリットがないというようなことが言えると思います。
 しかし、何といっても一番大きい理由は、店頭公開市場が閉鎖的なのですね。この間の本会議で野党質問もありました。あの部分は私も、あの質問内容に賛同する一人であります。広く資本を調達する場が開かれていないというのが最大の原因なのですね。
 ちなみに、日本で会社を起こしてから店頭公開できるまでの年数をアメリカと比較をすると、日本は二十七・二年、アメリカはたった五年ですからね。一年で店頭登録された超優良企業もありますね。たしかマイクロソフトはそうだったと思います、記憶をしておりますけれども。日本では、新規の上場企業数というのは、若干ふやしましたけれども、週三社から五社、アメリカは週十二、三社ですよ。日本では店頭登録会社というのは五百三十社、アメリカはNASDAQ、ピンクシートを初め全部合わせると二万社以上あるのです、けた違いに。
 要するに、この新規事業創造部分がアメリカの活力を担っているのですね。日本は既存の企業がもう成熟化して、言ってみれば高齢化社会を迎えていますから、新しく担っていくエネルギーが生まれてこなくちゃならないのです。それが成長力なのです。そこの部分がぎゅうっと締められちゃっているから、だから問題があるのですね。信用力とかあるいは担保力がなくても、すぐれたアイデアとか技術力あるいは成長力があれば、必要なときに必要なだけの資金を調達できる、そういうパイプが、要するにアメリカにはあるけれども日本にはない。
 再度申し上げますけれども、アイデアとか技術のシーズというのはあるのですよ。私は中小企業関係をずっとやってきましたから、具体的事実をいっぱい知っています。この間、私の地元の大和市というところで、商工会、これは二十万都市の日本最大の商工会でしたけれども、これが商工会議所になったのですよ。それを、なることをちょっと払お手伝いした関係で、当時の工業部会長さん、ある会社の重役さんですけれども、その方が、商工会議所に入っていただくためにずっと事業所を手分けして四千社回ったのです。
 その人は今二代目の会頭になっておられますけれども、私のところにいろいろ報告に来られるのですよ。そのときに言われたことは、私もこうやって企業経営して何十年もきましたけれども、実に驚いたと。日本の中小企業というのはすごい技術やノウハウを持っているということを改めて感じました、四千事業所を回ってみて、四、五十人の、おやじがやっている小さい会社、そのおやじさんがすごい技術を持っているのですよね、だけれども、残念ながら宝の持ち腐れで、その技術をどう事業化に生かしていいか、全然すべがわからないのですね、そういうことを私に真っ先に報告してこられたのですよ。
 もうそれこそたくさんある中小企業の中に、びっくりするような技術を持っているところというのはいっぱいあるのですよ。その技術を生かせば新しい業だって起きるのですよ。起こすために何がないかといったら、金がないのですよ。だけれども、日本には金はあるのですよ。政府にはないかもしれないけれども、個人金融資産というのは一千兆とも言われていますね。アメリカは二千兆だ。人口をあれすると、アメリカと同じだけバックグラウンドがちゃんとあるのだ。
 技術シーズもある、お金もある。何が足りないか。それが結びつくお見合いの場所が整備されていないのですよ。店頭公開市場というのは、本来リスクマネーを調達する場所として当初は考えられたはずなのですよ。ところが、有形無形の行政指導なりなんなりで、結局三部上場市場になってしまったのです。一部、二部、三部。
 店頭公開というのはリスクマネーを調達するところだから、アイデアや技術力、そういうシーズで勝負をかける、そこでそれを見込んだ資金がそこに集まって業をどんと起こす、そういう場だったのに、店頭公開市場に登録するためには、登録する必要がないぐらい立派にならなきゃ登録ができないという矛盾が起こっちゃっているんですね。この間の本会議でも大臣はこの件、答弁されていましたけれども、こういうことに対して、大臣どういうふうにお考えですか。

発言情報

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発言者: 甘利明

speaker_id: 20087

日付: 1994-10-27

院: 衆議院

会議名: 税制改革に関する特別委員会