茂木晴夫の発言 (科学技術委員会)
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○茂木参考人 お答えいたします。
地震予知はできるかできないかということをまず最初にお答えいたしますが、一口に地震予知はできるかできないかというのは、がんは治せるか治せないかということと同じでありまして、地震によっては前兆現象が非常にはっきりしている場合もあるのですね。浜田地震とか伊賀上野地震とかいうような地震は、これはマグニチュードその地震ですけれども、非常に顕著な前兆現象がありましたから、そういう場合は今でもできます。ただし、そういう地震の数はまだ少ないのでございます。
それで、マグニチュード八クラスが可能性が高いといいますのは、領域が広うございますので、観測点がそれほど密でなくとも前兆現象を比較的つかまえ得るということで、八は現状では予知できる可能性が高い。しかし、マグニチュード七になりますと、もっと非常に高密の観測をいたしませんと、領域が狭くなりますので前兆現象をとらえる可能性が低くなります。
それで、私ども前に試算したことがございますが、マグニチュード七だとどのぐらいの領域である、そうするとどのぐらいの密度で観測網を展開しなきゃいけないかということになりますと、これは膨大な数でございまして、ただいま私どもいただいております地震予知のための事業費ではとてもそれはカバーできないということで、一般論で言いますと、マグニチュード七クラスの地震はなかなか難しい。しかし、場合によっては、そういう運のいいケースですね、そういう場合は予知できる場合もあり得るということで、その辺は全国的に網を張って、なるべくできる場合はそういう情報を提供したい、こういうふうに思っております。
続いて注意報の問題にまいりますが、地震予知は、御存じのように地震というのは地殻の破壊現象でございますので、不確定な部分が非常にあるんですね。それから、場所によってもいろいろ違うということで、東海地震について、東海地震はマグニチュード八の地震を想定しているわけですが、東海地震は必ず予知できるかということになりますと、現在の大震法では一応予知を前提としておりますが、マグニチュード八といえども、大きいから必ず前兆現象があるというものではないんですね。
例えば、この前起こりました北海道南西沖地震、日本海中部地震、それから北海道の地震、そういった地震はほとんどマグニチュード八近いわけですが、ほとんど明瞭な前兆現象はなかった。日本海中部地震は前震がありました。それで十二日後に本震がございました。いろいろ前兆現象のあらわれ方は複雑でございまして、そういうことは私ども前から申していることですが、一律にいく問題ではない。
それで、東海地震についても、これはマグニチュード八の地震だから、もう必ず大きい前兆現象が出て、そして警戒宣言を出せる。今の警戒宣言ではシナリオができておりまして、新幹線をとめる、高速道路をとめる、あるいは郵便局、銀行もとめる、それからお医者さんまでとめるというような、もうほとんど一〇〇%地震が起こった場合のシナリオだけでございますね。
こういうことをやりますと社会がどういうことになるか。それだけの確実性はないわけでございますから。それで、それを最近民間のシンクタンクが、社会的なコストですね、これは経済的なコストだけでございますが試算しました結果によりますと、社会的コストが一日七千二百億円。これは東京首都圏とそれから関西圏、名古屋圏を全く分断いたしますので、物流が途絶えるわけでございます。そういう非常に大きな社会的コストを伴う。そうしますと、それが何日続くのか、これも非常に不確定でございます。今の予知の人でそういうことに耐え得るか。
それで、地震予知というのは大体経験によっておりますが、今の駿河湾から御前崎にかけての地域で起こった東海地震というのは、これまで起こった例がないんですね。いつも駿河湾から紀伊半島までで起こっておりますが、まず一つそういう地震であるということ。ですから、言ってみれば前例がないわけでございます。
それで、隣で起こりました一九四四年の東南海地震、それから一九四六年の南海道地震、これが我々大いに参考になる地震でございますが、そのときは一応かなりはっきりした前兆と思われる現象がありましたので、それをもとに我々判定をしようと思っているわけですが、ただ、これも同じ場所でございませんので、かなり不確定がある。
そういうことで、私が注意報ともいうべきものを出したらというのは、つまり地震予知というのは、白か黒か、一かゼロか、そういう一刀両断でできるものではない。天気予報でもそうですね、何%とやっているわけでございますので。もっと気になるような変化、いつもと違う異常な、これはおかしいというような変化が起こった場合は、そういうことではなくて注意報というべきものを出して、そして皆さんに注意を呼びかける。それから、これは全く個人的な意見ですが、例えば新幹線ならば速度を減速するとか、高速道路もそうするとか、それから郵便局、銀行等は閉めなくともいいんではないか。それで、なるべく社会的コストを少なくして、そのかわり頻繁に出せる。そうしないと見逃し、空振り、これを避け得ないということで提案しているわけでございます。