寄本勝美の発言 (地方分権及び規制緩和に関する特別委員会)
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○参考人(寄本勝美君) ただいま御紹介をいただきました寄本でございます。大学では地方自治を専攻いたしておりますが、本日は、地方分権推進法案について意見を述べる機会を与えていただいたことに心より感謝いたしております。
さて、地方分権の推進は、我が国の政治や行政の改革にとってはもちろんですけれども、文化ですとか経済などさまざまな分野におけるもろもろの活動を活性化し、あるいは充実発展させていく上で今や必須の課題になっており、それゆえに、私は地方分権推進法案が参議院で可決されますように強く願っております。
以下、法案の内容と今後の動きをめぐりまして私の意見を述べさせていただきます。
第一に、国と自治体との協力と役割分担についてであります。
法案の第二条によりますと、国と自治体は国民福祉の増進に向かって相互に協力する関係にあること、そのため、国と自治体が分担すべき役割を明確にすることと規定されております。国と自治体との協力とかパートナーシップの重要性はだれにとっても異論のないところですが、ただしその内容については二つの異なった意見があります。
その一は、国と自治体との協力については、現状における両者の関係が既に協力そのものになっているのではないか。したがって、事改めて両者の役割を明確に分けることを両者の協力の条件とする必要は必ずしもないのではないか。国庫補助事業ですとか機関委任事務にいたしましても、それぞれ国と自治体の機能が融合するもとで両者の協力が実現しているのではないかというものであります。
もう一つの意見は、国と自治体との協力すなわちパートナーシップは、両者の役割をできるだけはっきりと分離し、そうした分離に立った役割の明確化に基づいて相互に協力し合うものでなければならないというものであります。
私は二番目の意見をとるものであります。国と自治体との協力は、両者の役割をできるだけきちっと分けてその上での協力でないと、行政責任は国と自治体との間で常にあいまいですし、自治体の自主性、自立性も損なわれます。行政の簡素化や効率化にとっても支障になります。さらに、パートナーシップとは基本的には対等の関係にあるパートナーが互いに協力し合うことを指すのであって、自治体が国庫補助に過度に依存したり、国から不要なあるいは場合によっては不当な関与を受けている状況のもとでは、とても真の意味でのパートナーシップが築かれているとは言えません。その点法案は、国と自治体との間において役割を明確にすることと、そして両者の協力を進めることを一体的に考えており、高く評価できると思います。
第二に、それでは国と自治体の役割をどのように分けるのか、つまり役割分担の明確化をどのように行うかについてですが、法案の第四条は、国の役割とすべき範疇を限定するとともに、住民に身近な行政については自治体が自主的かつ総合的に実施すべき役割を広く担うべきであるとしています。このような役割分担の基本的考え方は、内容面での多少の相違こそあれ、最近の地方六団体・地方分権推進委員会の報告や第二十四次地方制度調査会の答申などでも提起されており、私も異論はありませんが、次の点に留意する必要があろうかと存じます。
すなわち、一つ一つの事務事業について、まず市町村がその政策主体及び実施主体となることができるのかできないのかという基準で見ていくこととし、市町村にとってできるものは市町村の事務とし、できないものは都道府県の事務とし、都道府県でもできないものは国の事務とします。この場合、できるかどうかは市町村ごとのあるいは都道府県ごとの行財政能力によってある程度異なってきますが、ここでは市町村レベルの行政区域、都道府県レベルの行政区域、そして全国レベルの行政区域という、専ら行政区域の違いだけで判断することにいたしたいと思います。
そこで、現状を見ますと、市町村あるいは都道府県でできることに関してまで国は随分と細々とした関与をしたり、あるいは補助金を出しております。できる事務事業に関しては政策の形成から実施に至る権限は市町村ないし都道府県のものとし、それに対する国の関与や財政的措置は、法案の第四条、第五条にありますように、全国的な統一やナショナルミニマムの実現に必要な範囲あるいは程度に限るべきであります。ただし、それぞれの事務についてのできるかどうかの判断は必ずしも容易ではなく、時代の変化によっても変化しがちであります。
ちなみに、清掃事業といいますか、ごみの収集処理を例にとりますと、この仕事は住民ないし地域社会にとって非常に身近なことから、昔から市町村の典型的な固有事務の一つに挙げられてまいりました。けれども、最近、御案内のように、ごみのリサイクルが大きな社会的関心事になってまいりますと、ごみの分別収集ですとか選別は今でも市町村レベルでできるものの、集められ選別されたごみの中の再生資源を企業が引き取り原材料として利用するよう義務づけるような政策に関しては、市町村レベルでできることは非常に限られ、都道府県レベル、ひいては国レベルの対応に期待せざるを得なくなってまいります。
つまり、住民の生活ないし地域社会にとって最も身近に見えるごみ処理事業ですらも、リサイクルという新たな社会的要請にこたえていくためには、法案第四条で規定されているような全国的な規模もしくは全国的な視野に立って行わなければならない施策及び事業の実施としての側面を急速に帯び始めているのです。
この例から私たちが理解すべきことは、かつてとは異なり今日では、ごみの収集処理や清掃行政は市町村の仕事といったような大きな分け方は適切ではなくなってまいります。分別収集は市町村の仕事でも、集められた後の再生資源のリサイクル政策は国の全国的機能に求めなければならないとするような役割分担を考えなければならなくなっているのであります。
今国会には容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律案が提案されていますが、それを見ますと、国は、容器包装廃棄物の分別収集やリサイクル事業の促進のための資金の確保、基準の設定、科学技術の振興や国民の理解を得るための教育・広報活動などの責務を新たに担うものとされています。けれども、分別収集や選別作業は市町村で依然できることであり、この容器包装法案でもそうみなされているわけですから、この面での市町村自治を守るとともに、新たに都道府県と国の役割とされる事業につきましても市町村サイドの自主性や選択の幅をできるだけ尊重される仕組みとすべきことは言うまでもありません。
以上のように見てまいりますと、国と自治体との役割分担を明確にする、明確に分けるということは、必ずしも自治体の役割を量的にふやすということではないのであります。
日本の自治体は、あたかもデパートがあらゆる商品を用意しておりますように実に多種多様にわたる仕事をしており、その量も世界の先進諸国と比べても屈指のものがあります。これからの問題は、量というよりも質だと思います。市町村、次いで都道府県にとってできる仕事は国とは分離して分権と自治を徹底することとし、できないこと、できがたいことについては国がそうした役割を積極的に果たしていくべきであり、その結果、国の役割が今よりも増大する分野ないし事業もあり得るわけであります。こう申しますと語弊があるかもしれませんが、国はこれまで自治体でできる事項に関してあれこれ関与をしたり補助金をつけたり、そして国しかできないことあるいは国がやるべきことにつきまして必ずしも熱心でなかったといったような点に問題があろうかと思うのであります。
さて、法案について申し上げたい第三の点は、機関委任事務についてです。
機関委任事務について法案では第五条で整理合理化をすることがうたわれており、この整理合理化には廃止することを含んでいると解されているように思われます。けれども、機関委任事務は国と自治体との協力をもたらす手段となっているとの考え方があり、また、たとえ廃止を原則とする場合でも、国政選挙の実施のように、その一部は今後も機関委任事務として残してもよいという主張があるように思われます。しかし私は、機関委任事務はこの際全廃すべきであり、国の事務の遂行に当たってどうしても自治体の実施にゆだねざるを得ないような事務につきましては、事務委託方式をとるなど別の形式をとればよいというふうに既に多くの識者から指摘されているのではないでしょうか。
機関委任事務制度というのは、機関委任事務に関しては自治体の長を国の機関とみなし国の指揮命令下に置くというものですから、国と自治体との間の権力的上下関係をつくり出すものであります。この制度が存続する限り、自治体の長は、一方では直接公選された住民の代表であり自治のリーダーでありながら、他方では国の機関でもあるという二つの帽子をかぶり続けることになるわけです。
今回の法案をめぐりましても、機関委任事務を一部存続するのはやむを得ないとする向きがあるようですが、どんなにわずかでも機関委任事務が残りこの制度が存続する限り、自治体の長は二つの帽子をかぶり続けることになるわけで、今回の地方分権の推進の意義や成果が大きく減退することになってしまいます。
なお、多くの機関委任事務については自治体の長も職員も実際には機関委任事務として意識しておらず、この点で他の自治事務や団体事務と比べてほとんど差異がないという指摘がありますが、それならばなおさらのこと機関委任事務を廃止してしまえばよいと思われます。他方、どうしても国による統制が必要な事項に関しては、何も機関委任事務という制度をとらずとも他の方法でそれを行うことができるはずであります。この際、長年議論されながら実現されないできたこの制度を廃止し、このたびの地方分権推進の成果を歴史に刻んでいただけますよう心から願う次第であります。
第四は、地方分権推進委員会についてです。
法案によりますと、本委員会は、地方分権推進法に沿って地方分権に関する基本的事項を調査審議すること、その結果に基づいて地方分権推進計画の作成のための具体的指針を内閣総理大臣に勧告すること、さらにこの地方分権推進計画に基づく施策の実施状況を監視し、必要な意見を総理大臣に述べることとされております。
このように地方分権推進委員会は、本法案が成立して実施に入るや、それ以降の動きについては、地方分権推進計画の作成に始まって、その実施をチェックし必要な意見を述べるという、まさに最初から最後までの動き全体にかかわる機能を持つことになり、今回の改革の成否が本委員会の活動にかかっていると言っても決して過言ではありません。それだけに、五年間という期間内に果たしてこれらの仕事を終えることができるのかどうか心配がないわけではありませんが、これについては委員会の頑張りと事務局体制の整備に期待しておきたいと思います。
他方、七名の委員には、自治体や国民の代表を加えることはもちろんのこと、委員会関連の情報の提供、公開あるいは公聴の採用、ひいては活動の透明性などの確保をお願いしておきたいと思います。
第五は、個々の自治体の改革についてであります。
法案では、地方分権の推進に合わせて、各自治体は行政運営の改善と充実、行政の簡素化、効率化、ひいては行政の公正の確保、透明性の向上並びに住民参加の充実を図ることが求められております。こうした課題はまず自治体サイドの姿勢と努力に求められることは言うまでもありませんが、こうした課題に取り組むためにこそ地方分権が必要となってくるわけであります。
さらに、現行の地方自治法などの関連法におきましても、こうした自治体の努力が多様な制度改革を実現することができるようにやがて改正されてよい時期になるのではないかと思われるわけであります。
第六に、これが最後でございますけれども、地方税財政についてでございます。
国と自治体との間の役割の明確化や国庫支出金の整理などに伴って、私は、現在の地方税と国税の配分割合を少なくとも五対五にすべく地方税を拡充し、自治体間の財政格差などの問題は地方交付税などの財政調整制度でもって補うべきだと考えます。
なお、地方交付税あるいは地方債については、地方分権推進の観点から見まして改善されるべき問題があり、それに対する地方分権推進委員会の活動に期待いたしたいと思っております。
以上、御清聴まことにありがとうございました。