牛嶋正の発言 (本会議)

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○牛嶋正君 私は、平成会を代表して、ただいま議題になりました容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律案について、総理及び関係大臣に質問をいたします。
 今や我が国は、世界GNPの一五%を超える生産物を産出する経済大国になり、国民一人当たりのGNPも世界のトップレベルに達しています。戦争によって壊滅的打撃を受けた我が国が半世紀でここまで発展することができたのは、日本国民の勤勉さ、高い貯蓄率、地場産業における技術の蓄積、そして高い教育水準等さまざまな要因が結び合っての結果であったと言えます。
 しかし、この経済大国と私たちの高い生活水準の現状を資源の利用という側面から見るとき、戦後我が国経済がたどってきた路線をそのまま延長して二十一世紀に向けての我が国の進路を考えていくことには、問題があると言わねばなりません。
 例えば、経済大国とは地球上の限られた資源を大量に消費する国というとらえ方もできます。また、物の生産は労働力、資本ストック及び資源の結合によって可能となり、それらを効率的に結び合わせて生産の拡大を図っていくのが技術水準であるとすれば、技術進歩は、資源の効率的利用を可能にする反面、地球全体で見ると、資源の消費を進め、それだけ有限である資源が枯渇する時期を早めることになるともみなされるのであります。
 さらに、資源の消費に伴って排出される廃棄物が自然の環境回復力ないしは浄化力を上回るとき、廃棄物が滞留して環境破壊につながっていくことになります。その典型は、化石燃料の消費とそれに伴って発生する二酸化炭素との関係に見られるとおりであります。大気に滞留する二酸化炭素は、温室効果によって地球の温暖化や森林の破壊を通じて地球の各地域において生態系を崩してきました。
 このように資源の有限性と環境保全とを考えるとき、今こそ、経済発展とは何か、あるいは経済成長とは何かを真剣に考え直す時期ではないかと思います。
 特に、国土が狭く資源の乏しい我が国が、今後とも他の国々から資源の提供を受けて生産活動を続けていかなければならないことを考えるとき、資源の消費をできるだけ抑え、環境を守りながら私たちの生活水準を着実に向上させていくという新しい資源節約型の経済システムの構築を目指していかなければならないと考えます。
 その場合、新しい経済システムには、その中に次の三つの要素が組み込まれていかなければなりません。
 第一の要素は、廃棄物の減量であります。家庭にあっては物を長く大切に利用することでごみの減量を図り、事務所、事業所においても資源の効率的な利用のための技術開発に努めていかなければなりません。
 第二の要素は、資源再利用システムを社会のあらゆる側面に組み込んでいくことです。そのため、廃棄物の再利用のみでなく、家庭と企業、また企業と企業の間でもできるだけリサイクルシステムを組み込んでいくことが求められます。
 第三の要素は、廃棄物の環境に対する負荷をできるだけ小さくすることです。これを実現するに当たって新しい技術の開発が必要となります。
 ただ、我が国の経済システムの基本に市場経済が置かれていることを考えるとき、社会のいろいろな側面にこれらの要素を組み込んで新しい資源節約型の経済システムを構築していくことは、決して容易なことではありません。例えば、戦後の経済発展の過程ででき上がってきた大量生産・大量消費の体制の中でごみの減量を進めることは、かなり難しいことであると言わねばなりません。
 このような視点に立って、今回のリサイクル法案に対して、五点について質問させていただきます。
 第一に、この法案はリサイクルシステム構築の第一歩として評価されますが、その対象が容器包装に限定されていることから、見方によっては一番やりやすいところから手がけたという印象も感じられます。そのため、これ以上のリサイクルシステムの進展は望み得ないのではないかという懸念もあります。
 このような懸念を取り除くためには、公共投資基本計画でも提唱されている循環型の廃棄物処理システムの確立に向かって、技術開発の面でも、また組織づくりの面でも、万全の体制を整え取り組んでいかなければならないと考えますが、これについての総理の決意をお伺いします。
 第二に、このリサイクルシステムが確立した後、このシステムが円滑に機能していくためには、このシステムを市場メカニズムに適合させることが重要な点であると考えられます。現に、アルミ缶や古紙あるいは白瓶などは市場メカニズムに乗って再利用が進められ、それなりの成果を上げておりますしかるに、この法案では、特定事業者に対してその使用量または製造量に応じて再商品化義務量が決められ、それに基づいて再商品化の責任を果たさねばならないとされており、強制性を伴います。したがって、市場メカニズムに乗るというより税に近い性質を持つということを指摘しておかなければなりません。
 そのため、法案は、一定の小規模事業者については適用除外にするとか、中小企業については施行後約三年程度再商品化義務を猶予すると決められていますが、このことが市場における自由な競争をゆがめる結果をもたらすことは明らかであります。リサイクルシステムを確立するためには、このような競争のゆがみをやむを得ないと考えるべきでしょうか。この問題について通産大臣の見解を伺いたいと思います。
 第三は、ごみの収集、処理に関する行政は、地方公共団体、とりわけ市町村の行政において極めて重要な位置を占めてきたという点です。すなわち、ごみ行政は地域住民と行政側との接点として、住民の行政ニーズが行政側に伝えられ、また行政側もごみ行政を通じて住民のニーズをとらえてきた経緯があります。それだけに、個々の市町村はそれぞれの地域性を生かし、独自のごみ行政を展開してきたと言えるのであります。したがって、地方分権の推進に当たって、地方公共団体はごみ行政を通じてそれを受け入れる下地をつくってきたとも言えます。
 しかるに、今回のリサイクル法案では、基本方針の策定に当たって、国が再商品化計画を作成するのとあわせて、市町村は分別収集計画を作成し、それに基づいて都道府県が分別収集促進計画を作成して、厚生大臣に提出・公表するとされています。これによって分別収集量と再商品化可能量との間の過大なミスマッチを調整するとしていますが、この基本方針の策定の流れが地方分権推進への地方公共団体の意欲を抑えることにならないのか、危惧するものであります。その点に関して、地方分権を推進する立場にある自治大臣の御所見をお伺いいたします。
 第四に、この法律では、廃棄物のリサイクルシステムが円滑に機能するため、消費者、市町村及び事業者の三者の責任と役割を明確にしています。すなわち、消費者は分別排出の責任を持ち、市町村は分別収集の役割を担っています。そして、事業者は分別された廃棄物を再商品化する責任を持つのであります。このような責任と役割の明確化は、リサイクルシステムを機能的ならしめるために必要であるともみなされます。しかし、懸念される点は、このことが資源節約型の新しい経済システムの構築のために必要な廃棄物の減量にどのようにつながっていくのかであります。
 もし、多くの消費者が分別排出を行うことでリサイクルの責任を果たしたのだと考えるとすれば、資源を大切にし環境保全のために自分も貢献するのであるという発想の転換や生活態度の変化までには、なかなか至らないだろうと考えられるのであります。その場合、このリサイクルシステムが資源問題や環境問題を考える上で重要な廃棄物の減量につながっていかないのではないかと心配されますが、この点について厚生大臣の見解をお伺いします。
 第五に、廃棄物の再商品化の過程で使用されるエネルギー資源の量が新しい資源を使って商品化する場合に使われるエネルギー資源の量を上回る場合は、廃棄物のリサイクルシステムが確立されたとしても、環境への負荷はかえって増大することになり、資源のリサイクルと環境保全との間にトレードオフの関係が生ずることになります。
 恐らく、今回の容器包装リサイクルシステムではこのような事態はまだ想定されないと思われますが、今後リサイクルシステムの拡充が図られていく過程で環境への負荷が増大するという状況が生じた場合、それでも廃棄物のリサイクルシステムの拡充を進めるか否かの判断に迫られると思われますが、この問題について環境庁長官はどのような見解をお持ちですか、お伺いいたします。
 二十一世紀に向けて我が国の進むべき進路を考えるに当たって、地球上の資源の有限性と環境保全を前提として、資源の消費を極力抑えながら私たちの生活水準を着実に高めていくという新しい資源節約型の経済システムの構築を目指すとき、廃棄物のリサイクルシステムの確立は必須の条件であることを最後にもう一度確認し、この法案がその第一歩として位置づけられることを念願して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣村山富市君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 113215254X02719950605_005

発言者: 牛嶋正

speaker_id: 13623

日付: 1995-06-05

院: 参議院

会議名: 本会議