尾身幸次の発言 (科学技術特別委員会)

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○衆議院議員(尾身幸次君) 科学技術基本法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明いたします。
 我が国は、科学技術に関して、いわゆるキャッチアップの時代、すなわち目標となる先進国が常に存在し、かなりの分野で技術導入が可能であった時代の終えんを迎えております。今後は、フロントランナーの一員として、みずから未開の科学技術分野に挑戦し、創造性を最大限に発揮し、未来を切り開いていかなければならない時期に差しかかっております。
 とりわけ、天然資源に乏しく、人口の急速な高齢化を迎えようとしている我が国が、経済の自由化、国際化に伴う経済競争の激化と相まって直面することが懸念されている産業の空洞化、社会の活力の喪失、生活水準の低下といった事態を回避し、明るい未来を切り開いていくためには、独創的、先端的な科学技術を開発し、これによって新産業を創出することが不可欠であります。
 また、環境問題、食糧・エネルギー問題、エイズ問題など人類の将来に立ちはだかる諸問題の解決に対し科学技術への期待は大きく、この面での我が国の貢献が強く求められているところであります。
 さらに、科学技術は、我々の自然観や社会観を大きく変え、新しい文化の創成を促すという側面を有するため、これを人間の生活、社会及び自然とのかかわり合いの中でとらえていく必要があり、このような視点も踏まえ、新たな視点に立った科学技術を構築していくことが求められております。
 翻って我が国の科学技術の現状を見ると、まことに憂慮すべき状態にあります。特に、独創的・先端的科学技術の源泉となる基礎研究の水準は欧米に著しく立ちおくれており、基礎研究の担い手たるべき大学・大学院、国立試験研究機関等の研究環境は欧米に比べ劣悪な状況に置かれております。また、科学技術の高度化、専門化に対応して総合的、学際的な取り組みが緊要となっているにもかかわらず、大学、国立試験研究機関、民間等の研究者が、組織や専門分野の壁を超えて十分に有機的に連携しているとは言いがたい状況にあります。さらに、将来の我が国の科学技術を担う若者に科学技術離れの現象が見られることは、国の将来にとってゆゆしいことであります。
 以上の基本認識に立って、将来にわたり先進国の一員として世界の科学技術の進歩と人類社会の持続的発展に貢献するとともに、真に豊かな生活の実現とその基盤たる社会、経済の一段の飛躍を期するためには、科学技術創造立国を目指し、ここに改めて新たな視点に立って、科学技術の振興を我が国の最重要政策課題の一つとして位置づけ、科学技術振興の方針と基本方策を明らかにするとともに、関連施策の総合的、計画的、かつ積極的な推進を図ることが不可欠であり、このため、本法案を提案した次第であります。
 次に、本法案の主な内容を御説明申し上げます。
 第一に、科学技術振興の基本方針として、科学技術が我が国及び人類社会の将来の発展のための基盤であり、科学技術に係る知識の集積が人類にとっての知的資産であることにかんがみ、研究者等の創造性の発揮を旨として、人間の生活、社会及び自然との調和を図りつつ、その振興を積極的に行うこと、広範な分野における均衡のとれた研究開発能力の涵養、基礎研究、応用研究及び開発研究の調和のとれた発展に留意することを定めております。
 第二に、科学技術振興に関する国及び地方公共団体の責務を規定しております。
 第三に、国及び地方公共団体による大学等に係る施策の策定等に当たっては、大学等の研究活動の活性化を図るとともに、研究者の自主性の尊重などその研究の特性に配慮することとしております。
 第四に、政府は、科学技術の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、科学技術会議の議を経て科学技術基本計画を策定することとしております。
 また、政府は、科学技術基本計画について、その実施に関し必要な資金の確保を図るため、必要な措置を講ずるよう努めることとしております。
 第五に、国は、多様な研究開発の均衡のとれた推進、研究者、技術者及び研究支援者の確保、研究施設の整備、研究開発に係る情報化の促進、研究開発に係る交流の促進、研究開発に係る資金の効果的使用、研究開発の成果の公開、民間の努力の助長、国際的な交流の推進、科学技術に関する学習の振興等に必要な施策を講ずることとしております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその主な内容であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

発言情報

speech_id: 113413928X00219951101_003

発言者: 尾身幸次

speaker_id: 1221

日付: 1995-11-01

院: 参議院

会議名: 科学技術特別委員会