正村公宏の発言 (規制緩和に関する特別委員会)

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○正村参考人 官と民の役割とよく言われるわけですが、大変基本的な御質問なのでお答えしにくい部分がありますが、私は経済学を専攻しておりますけれども、私どもは官と民というふうには言わないで、公共部門と民間部門、プライベートセクターとパブリックセクターの役割いかん、そういうことなんですね。
 それからもう一つは、プライベートセクターという中に、企業だけではなくて、もちろん家族という生活単位もありますし、それから自発的なさまざまな市民団体もありますし、それも考慮に入れなければいけないわけでありますが、しかし多くの部分は、我々の社会、現実には市場の原理、交換の原理、貨幣経済の原理で動いていますね。そうしますと、私たちはできるだけ民にゆだねた方がいいというふうに今は考えるようになっている、多数派の経済学者は。そうなっていますが、すべて民にゆだねていい、あるいはすべて市場にゆだねていい、基本的に市場にゆだねていいと考えているわけではないんですね。
 やはり、まず経済全体の安定ということに関しては政府が相当責任を負わなければいけない。政府、中央銀行が政策を誤りますと、大変な混乱が起こります。財政の経済安定化機能も無視できません。第二に、資源配分が極端にひずんでしまう、あるいは十分にうまくいかない。プライベートイニシアチブにゆだねておいたのでは例えば老後保障がちゃんとできないというときには、パブリックイニシアチブで年金システムをつくったり、医療システムをつくったり、介護システムをつくったりいたしますね。それはどうしてもやらなければいけない。民に任せておいたのでは、できないことはないかもしれないけれども、余りにも時間がかかり過ぎて国民の安心感が得られないという場合には、当然、税なり保険料なりを徴収してきちっとやりましょう、民間の生命保険会社にゆだねるよりはその方がいいですよ、こういう話になりますよね。
 そういうふうにして区分けをしていって、ミニマムどうしてもこれとこれとこれをやらなければならないということが幾つかあるわけです。それは我々、市場の失敗と言っていますが、独占の問題が発生しますし、情報が不完全な場合もありますし、それから余りにも経済が不安定化しやすいという問題もあります。我々は外部効果と言っていますけれども、公害問題を発生する場合には規制をしなければいけませんし、それから、直接の利益は得られないけれども住民にとっては必要であるという、緑豊かな公園をつくるなどという事業は民間に期待できませんから、公共部門がやらなければいけませんね。そういうところをちゃんと見きわめて、やるべきことをきちんとやる、そのかわり余計なことに政府は口出ししないで民間の自己責任でやらせる、民間のイニシアチブでやらせる、イニシアチブが自由に発揮できるようにする、この区分けをやらなければならないところに今来ていると思います。
 ただし、もう一つ踏み込んで言えば、現実の経済社会がうまくいくかどうかということの非常に大きな部分は、人的資源がどういうところに配分されているか、責任の意識があり、そして物事を判断する能力のある人材がどこにどういう形で集まっているかということが長期的には決めるんですね。ちょっと唐突に響くかもしれませんが、かつて、明治時代に軍の学校を優遇したことが昭和の軍国主義的な方向へ国家を引っ張っていくことに非常に響いたわけですよ。人的資源がそこへ流れている。
 今までのような仕組みの中では、人的資源の相当部分が、潜在的に優秀な人材が相当部分、官庁に流れて、そしてそれが国家を背負ったような気分になって一生懸命やってきた。これが機能しなくなってしまったんですよ。それは、彼らの仕事、自分がやっている仕事の公共性についての確信がなくなってしまったんですね。余りにも個別利益の泥沼にはまり込み過ぎてしまって、大蔵省にいたしましても、その他の官庁にいたしましても、パブリックの感覚がなくなっちゃったんですよ。
 だから、パブリックとは何だということについて考え直すことによって、私は行政をつぶせと言っているのではなくて、行政の本当の機能を見直すことによって、行政にもっとしっかりした人材が集まるような仕組みがつくられなければならない。そこまで掘り下げた社会経済システム論が要るんじゃないでしょうか、人材のアロケーションまで含めてですね。そういうふうに思っております。

発言情報

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発言者: 正村公宏

speaker_id: 10584

日付: 1996-05-22

院: 衆議院

会議名: 規制緩和に関する特別委員会