内橋克人の発言 (規制緩和に関する特別委員会)

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○内橋参考人 大変に重要な現実を御指摘になったと思います。まさに、中小の専門商店の閉店という現象が日本のコミュニティーというものを破壊している、そういうところまで来たと思います。
 私は、個人的なことで恐縮ですが、相当以前から、そうした地方都市における古い歴史を持った商店が、シャッターを閉めたままで、そして近寄ってみると一枚の張り紙がしてあって、御連絡の方はここに連絡してください、そういう電話番号が書いてあるという風景ですね。地方に参りますと、もう午後六時になるとほとんど人っ子がいない。人々が集まっていらっしゃるのはパチンコ屋さんだけ、あるいは夜になると盛り場だけ。これは、悪いと言っているのではございませんが、事実なのですね。そういう状況の中で、小売店の方々は、まさにもう意欲をなくしているという状況です。
 これは、数字の上で御必要でございましたら、幾らでもお伝え申し上げますが、九一年から九四年の間に、零細な小売店の減少は、既に九・七%、一〇%、一割減ってしまったのですね。これはその前の三年間に比べて、これは商業統計が三年ごとですから、その前は三%程度の減少でございました。これにかわって今何がふえているかといえば、先ほどおっしゃいました大手チェーンのコンビニエンス、これは大体一五・七%、同じ三年間にふえております。それから、大型総合スーパーは一八・一%ですね。
 つまり、そうしたこれまでの、地域社会にありました歩いていけるそういう専門小売店が店を閉めて、それが郊外にできた大規模な、アメリカにおいてはモールと呼ばれますけれども、この商店街、ショッピングセンター、そちらの方に消費者が移っているということの大きな証明であります。これをどう考えるのか。個別のお店、どのような店が減少に転じているかということなどについては、御必要でしたら数字がございますが、相当大きな幅でどんどん小売店の数が減っております。
 そこで、この現象をどうとらえるのかということについての認識というものが、日本の社会で余りない。むしろ、規制緩和の立場から申しますと、こうした小さな店は生産性が低い、生産性が低い店からもっと合理化された、生産性の高い大手のそうしたモールにリプレースメントされていくことが、日本の流通を整備したり合理化したりして物価高を解消して、内外価格差を解決していく道である、だから、むしろ加速すべきだ、こういう議論が現在の主流だと思いますね。
 しかし、先ほども申しましたけれども、小売店の役割というものはとても重要です。先ほどお話をいたしましたように、「どれだけ消費すれば満足なのか」の著者は指摘をいたしておりますけれども、つまり、日本のこうした、パパママストアと言ってよろしいかと思いますが、小売店は何をしてきたかと申しますと、それは要するに、徒歩圏で歩いて物を買うことができるということなのですね。わざわざガソリンを使って空気を汚染して、遠い郊外に殺到していく、そこに駐車場もあるでしょうけれども。しかも、人々を引きつけるために、直接物を売るということとは関係のない娯楽の施設とか、ある種の文化を、疑似文化をそこにつくって、そしてそこに人を吸収していく。このことが何を失わせているかということだと思いますね、日本の社会で。
 私たちは、例えば夜遅く帰ってまいります。例えば主婦が、最近は共稼ぎが多いわけですけれども、そういたしますと、地域のコミュニティーの中で実際に営業を行っている小さな店があれば、店がたとえ閉まっておりましても、トイレットペーパー一本ない、それを少しいただけませんかと裏口をたたいて、そのトイレットペーパーを得て、そして用を果たすことができたわけですね。
 それが全部つぶれていくということになりますとどうなるかといえば、郊外のモール、あるいはまた都心部の百貨店が営業時間を延長せざるを得ない。延長しているところで働いている人はだれかといえば、パートタイマーです。パートタイマーの賃金は、それでは本社員とどれくらい違いがあるか。契約スチュワーデスのケースを持ち出すまでもなく、これは合理化しなければなりませんから、したがってとても安いわけでありますね。
 そういうことで働く。働いて帰ってくれば店が閉まっている。こういうことになりますが、人々がやむなくそうした大手のところで物を買うようになりますと、いや、我々はこうした人々から、つまり支持されているのだというふうに、経営者もあるいはまた経済学の方々もおっしゃるわけですね。
 しかし、本当にそうかということが私はとても大事だと思います。先ほど申し上げたサステーナブルシティーという考え方においては、中心部にすべてのショッピングとか公共の交通機関の発着場を置きまして、人々は徒歩であるいは自転車ですべての用を果たせるような町をいかにつくるかというのが、新しい都市づくりの概念になりつつあるわけですね。
 そういう観点から申しましても、今お話をいたしましたような中小小売店の役割というのは、単に生産性の高い低いということではなくて、高齢化社会を支えているのはだれかといえば、そうしたコミュニティーにある専門店である。
 専門店の主人が、例えばよくございますけれども、孤老死、つまり孤独死。御主人が入院しておられて、お年を召された御婦人がひとりいられて、そしてその方が亡くなったときにだれが一番最初に発見したかといえば、近所の御用聞き、いまだに残っている近所の御用聞きの商店の方が、おかしい、そういうことがわかって通報なさって、子供さんが飛んでこられる。そういうことは日常茶飯事に起こっているわけです。
 これは、生産性の高い低いという、マクロの極めて抽象的な数字で分けることはできない。何をもって生産性というのか、こういうことになると思います。中小小売店の問題はとても重要だというふうに考えます。

発言情報

speech_id: 113604019X00819960522_011

発言者: 内橋克人

speaker_id: 12937

日付: 1996-05-22

院: 衆議院

会議名: 規制緩和に関する特別委員会