森稔の発言 (規制緩和に関する特別委員会)

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○森参考人 森ビル株式会社の社長、森でございます。経済同友会の土地政策委員会の副委員長もいたしております。
 本日は、規制緩和に関する委員会でございます。この土地及び都市の問題の解決には、実は私は、一番その象徴的な問題として、東京二十三区の都市計画道路の実現という問題があるというふうに主張しております。この問題を通じて、かかわるテーマについてもお話しさせていただきたいと思っております。
 東京の特別区都市計画道路の完成率はまだ五四%にすぎません。周辺の横浜、川崎、千葉でも、四一から五九%と似たような状況にあります。しかも、東京区部の未完成都市計画道路八百キロを最近十カ年の平均完成速度七キロで整備し
ていくといたしますと、全部完成するには二十二世紀になります。ここ五年間の調子でいきますと二十三世紀にもなってしまうという状況でございます。
 この遅々として進まない東京都区部の都市計画道路を早急に完成させるために、また、もって不良債権問題解決の一助にしようということのために、資金とノウハウ、マンパワーを都市計画道路建設事業に集中的に投入することを提言したいと思っております。
 都市計画道路網の実現がなぜかくもおくれてきたかということでございますが、その原因といたしましては、都市計画道路の対象地を取得するべき側の行政側に、最初から自信の欠如といいますか、敗北感が存在しているというふうに思われます。だんだんこういうふうになったわけでございますが、このような状況が一般化したその時代背景は次のようであったというふうに理解しております。
 まず、人口の増大圧力がございました。その中で、住宅地の場合でありますが、替え地といいますか、道路予定地の替え地がない。また、金銭補償で簡単に代替地の取得が不可能だという強迫観念に皆とらわれていたと思います。また、地価の上昇が続きまして、つけられた予算ではいつも足りなくなる、評価が低過ぎるという傾向もありました。また、バブル時代には地価高騰の中で必要資金手当ては無限大に膨張するように思われました。一方、土地を収用される側の苦労に報いようということになりましても、収用対価の割り増し要求に対しまして、社会的にはそれを非常に不公平であるというふうにみなして、税金のむだ遣いを防げといった主張も強いものがありました。当然の要求に対してもごね得扱いにするという風潮もございました。事実、そのような状況下では、替え地の入手とか手当ては困難をきわめたわけでございます。
 一方、道路予定地の所有者の側の状況はといいますと、戦後建て直したばかりの家に住んで、やっと安心できた、事業も軌道に乗ったという非常に満足しているところに、住みかえへの要求というのは非常に抵抗がありました。また、買収する行政側には、全体主義国家的強権発動的色彩といいますか、そういうものが残っておりました。戦後の民主主義的風潮あるいは利己主義的風潮といったものと対立しがちであったということがございました。
 また、一般社会でございますけれども、道路の新設とか拡幅に対しまして、これを環境破壊であるとか、交通事故がむしろ多発するのではないかとか、大気が汚染されるのではないかとか、都市の過密化を招くのではないかとか、地価がますます高騰するのではないかとか、東京への一極集中を助長するのではないかといったような立場から、反対という空気がございました。非常に批判的なものがございました。また、借地借家法を絶対とする考え方がありまして、特に居住権は絶対であるというふうな風潮があって、これがまた大変な抵抗になりました。一方、強制執行とか代執行は、成田空港の例にございますように、権力の乱用だというような形で、非常に反社会的な行為であるというふうにみなされました。したがって、世論や議会は計画の実行に積極的ではなくて、むしろ改廃運動の方が多かったという状況でございました。
 ところで、今日はどうなったかといいますと、状況は一変したと思います。
 まず、代替地の取得に関してですけれども、既に東京への人口増大圧力というのはとまりました。都心部の人口はこの数年減少傾向にございます。外周部の区でさえも人口は減少に転じておりまして、また地方から東京大都市圏への流入もとまって、むしろ減少が一部始まったところもございます。また、バブルの後遺症がございまして、大量の空き地が至るところに存在する状況になりました。当然、もう住宅も東京区部で一〇%余っている、空き家になっているという状況も背景にございます。そういうわけで、多様な種類の代替地を容易に取得できる状況に変わっているわけであります。
 また、地価でございますけれども、既に御承知のとおり、バブル期以前の状況にまで下落いたしました。事業費が天文学的に膨らむ状況ではなくなりまして、バブル期と同じ事業費があれば、二倍または三倍という用地取得も可能になりました。
 道路予定地所有者の方の状況でございますけれども、これも相当意識変化がございまして、むしろ早期事業化の要請が出るようになりました。まず、戦後五十年を経過して家屋の老朽化も進みました。建てかえの時期が来ているものも多いわけです。また、昨年の阪神・淡路大震災の惨状を見て、建物の構造強化、道路など市街地基盤整備の必要性というものを再認識するようになりました。
 また、都市計画道路予定地の方々は、建築規制がかかっておりまして、ほとんど建てかえることもなく暮らしていましたが、時代に合った建物とか環境に変わってまいりました周辺の状況と比較して、商店としても、住宅としても、明らかに見劣りがするようになってきた。経済的にも心理的にも建築制限が耐えられなくなってきたという状況でございますし、特に耐震上見劣りがするといいますか、危険があるということが認識されてきております。また、再開発による質のよい環境の実例がたくさん出てきまして、みずからの環境をレベルアップすることのイメージができるようになりました。そういうわけで、道路予定地の方々には早い事業化を望むという声が出てきたというわけでございます。
 また、社会の道路整備に対する理解も高まってまいりました。沿道環境に配慮した植栽帯をたっぷりとった道路や、カラー舗装等の楽しいショッピング道路が幾つもできてきたことによりまして、一般的にも道路建設に対する抵抗感が薄れてまいりまして、むしろ地震のときの避難通路確保とか、平常時の通過車両の細街路への進入の削減ですとか、渋滞の解消などの必要性とか、幹線道路の整備に対する要望が強くなっている状況でございます。
 また、国際的な視点からもその必要性が認識されてまいりました。国際的な都市間競争ですね。経済成長が目覚ましい東アジアの拠点都市は、ハイレベルのインフラ整備を強力に推し進めておりまして、事業活動環境、居住環境を高めておりますが、このままでは東京は国際活動の中心都市としての地位を滑り落ちるおそれがある。都市計画道路を初めとする都市整備が緊急の課題だということが認識されてきているわけでございます。
 ここで、都市計画道路の整備の役割と効果といったようなものを振り返らせていただきたいと思うのですが、まず平常時の都市活動を高め、安全とか快適とか環境の面でも大きく寄与することになります。都市内の施設に集まる交通、都市内施設から発生する交通を集めまして、効率よく処理することにより、都市活動を円滑にいたします。また、交通渋滞を解消して、人の移動コストとか物流コストを削減し、騒音、排気ガス面でも環境の改善にも役立つことになります。住宅街等の細街路へ通過交通が進入することを防いで、交通安全上も環境改善上も寄与することがわかっております。
 また、電気、水道、ガス、下水道、電話などの都市インフラの埋設スペースを提供することになりまして、広幅員であるがゆえに強固な共同溝の埋設も可能であります。また、歩道が整備されることによって、街路樹を植えることができ、散策やサイクリング等も可能にし、ショッピング等も楽しめるといった潤いを町に与えるものであります。
 防災上も、避難路、救援人員、救援物資の輸送路、火災の延焼遮断帯というようなことにもなりまして、生命、財産の被害を少なくするとともに、仮に被害があった場合の復興も容易にするということが理解されました。
 再開発と都心居住の関係にも寄与します。つま
り、広幅員道路は土地の高度利用を可能ならしめまして、またその売り渡し資金とか買いかえのための需要、裏地への需要を生みまして、この機会に裏地の表地化するための共同事業に結びつきやすく、後背地を含めた市街地の職住近接型の大規模再開発計画の誘因となり、都心型住宅街の実現のチャンスとなります。
 さらに、この点を強調いたしたいのですが、土地市場の流動化に寄与できるのです。都市計画道路用地の取得は、取得される土地所有者の代替地取得を伴います。代替地として取得される土地の所有者もまた代替地を求めることが多い。こうして連鎖的に所有権が移動することが、すなわち土地取得実需を生み出します。東京の土地市場を流動化させて、不良債権問題の解決を促進することになります。ちなみに、不良債権の中の東京の市街地の割合は七五%から八〇%を占めているということが共同債権買取機構に持ち込まれました不動産の割合等から推測されます。
 さらに、道路整備をすることによりまして土地の有効利用が可能になりますから、土地の固定資産税の評価額がアップするといいますか、価値が上がります。そして、建築物も増大いたしますから、固定資産税そのものと、もちろんその活性化によります。その他の税収、経済活動が活発化いたしますから地方税収源も充実、拡充につながっていくということになります。
 また、東京の都市計画道路をやるということが全国のモデルになりまして、相対的に高地価で、未整備市街地が広大で、整備効果が大きい東京が成功すれば、他の都市に対する効果的なモデルになると思われます。ちなみに、一番おくれているのは東京圏でございまして、名古屋あるいは大阪等の進行状況はかなり高いものがございます。
 それから、最後になりますけれども、東京の国際的な地位の維持向上に寄与すると思います。都市計画道路の完成は、東京の事業環境、生活環境を大いに改善し、国際的な都市間競争に勝ち抜くという都市経営戦略上必要不可欠な都市整備の一翼を担うものと思います。これは東京の美的なもの、あるいは道路等の基盤ができているかどうかということは、町の格といったことにも影響するものがございます。
 さて、ところで、この都市計画道路を完成するのにどのぐらいの費用がかかるかということを計算してみました。
 余り時間がなくなってまいりましたので、結論を申し上げますと、用地費で約九・八兆円でございます。
 その他の費用、道路築造費ですね、営業補償ですとか建物補償ですとかその他をし、かつ、道路舗装費等を入れまして計算いたしますと、総額一・四兆円でございます。ごめんなさい、間違えました、十四兆円でございます。一けた間違えました。平成三年に東京都が定めました第二次事業化計画では、百七十九キロ、約四分の一をやるためには八兆円を必要とすると言っておりましたが、現在ではその二倍弱の投資で全部が完成できるという状況になっております。
 それでは、この都市計画道路を完成させるためにどのようにすればいいか。この道路を五年とか十年以内に完成させることを提唱したいと思っておりますが、このためには、まず公共投資の重点配分が必要かと思います。
 東京都の道路投資額及び都市計画事業予算を見ますと、バブル経済の崩壊に伴い、都の財政収入も落ち込んでまいりまして、都市計画事業予算も落ち込んでまいりました。これでは、地価が下落した好機を生かして事業の速度を高めることはできない。東京都区部の都市計画道路の整備の広範な効果とその早急な整備の必要性を十分認識して、国と東京都ともに格別の予算配分を行うようにお願いしたいと思っております。
 この費用、十四兆円でございますが、十カ年に国で行う公共投資額、六百三十兆と言われておりますが、その二・二%であります。日本の人口の六・五%が住み、日本の就業者の一一・八%が働いておる、あるいは日本の全評価額の二〇%に当たる東京都区部、これの都市機能を支える都市計画道路整備に二%強というものを用いることは、偏った配分とは言えないのではないかと思います。
 また、都市計画道路の早期完成にはきめ細かな代替地の手当てが必要となりますが、資金のほかに多大なマンパワーも必要となります。この必要とされるマンパワーを公務員として抱えるのでは、事業完成後の負担が懸念されますし、また、その面からも予算要求自体が消極的になっていくというおそれがあります。また、特に不良債権化した土地の取得や、法的規制のかかっていない一般の土地の取得には、複雑な関係を解きほぐしながら粘り強く交渉していく必要があるために、経験豊かな人材が必要であります。
 ところで、現在不動産不況にありまして、都市開発のノウハウを有するディベロッパーには人材の余裕が多いところがたくさんございます。そこで、都市計画道路予定地及びそれに伴い必要となる代替地の取得をディベロッパーに代行させて、ディベロッパーのノウハウとマンパワーを活用するということを提言いたしたいと思います。この代行制ですね、都市計画事業代行者制度によって、これまでのネックであった用地取得スピードが大いに速まると考えられます。
 また、この代行事業の発展形といたしまして、都市計画道路予定地周辺市街地の面的整備が望まれる地区においては、道路整備とその周辺市街地の面的整備をワンセットとして事業化する手法を採用して、都市計画道路部分はその中で特許事業として整備させる方法もあわせて提言したいと思います。
 この方法は、単に幹線道路が整備されるだけではなくて、その周辺の市街地も整備されるため、街区内部が未整備のまま残されているという通常見られる問題を生じず、また、道路完成時には同時にその沿道も高度利用されて、それぞれの場所柄に応じて都心居住の推進や活気ある複合市街地の形成に寄与すると思うからでございます。
 以上でございます。(拍手)

発言情報

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発言者: 森稔

speaker_id: 6782

日付: 1996-06-12

院: 衆議院

会議名: 規制緩和に関する特別委員会