与謝野馨の発言 (金融問題等に関する特別委員会)

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○与謝野委員 私は、橋本総理の御意見は正しいと思うのです。そういう金融不安は起きないという人と、それから起きるかもしれないという両説があって、どちらも証明できないときは、やはり政治家は安全な道を選ぶべきだと私は思うのです。
 こういう金融問題で国民を巻き込んで実験をするということはできないです。だから、用心深く用心深く政府がやるということは私は当然のことだし、今回、先ほど申し上げましたように系統の金融には七十兆の預金があって九百万人の預金者がいるわけです。今は世の中が発達していますから昔みたいな取りつけというのはなかなかないわけですけれども、我々が心配しなければならないのは、静かかつ大量の預金の移動ですよ。これもある種の形を変えた取りつけなんです。そういう預金シフトが起きますと、やはり金融機関の経営というのは危殆に瀕する。
 これは、私はこの予算委員会での住専問題の議論をずっと聞いておりますと、昭和二年の金融大恐慌のときの議論とそっくりの議論をしているのですよ。まず、その当時も政党間の政略的な争いがありました。そういう中で、昭和二年に政府が提出しました震災手形二法という法律が実は国会で議論されたわけです。
 そのときもどういうことが起きていたかというと、大正時代に第一次世界大戦があって日本は大変な好景気になった。その後関東大震災が来て、その前の好景気の反動プラス関東大震災ということで大変な大不況になった。そこでこの震災手形というのが振り出されて、震災地で手形を出せばそれを金融機関が割り引いてくれて、それを日本銀行が再割引するということで、日本銀行に膨大な不良債権がたまった。
 そこで、これは何とかしなければならないということで、その当時の若槻内閣が震災手形二法という法律を出して、一億円を限度として日本銀行のそういう債務を面倒見ましょうということだったのですが、まあ国会では大きな騒ぎになって、橋本総理のお父様の時代の政治家で星島二郎さんとか武藤山治さんとかという議員が質問に立って、質問は今野党の皆さんがやっている質問と全く一緒です。一つは、国民の膏血を一部政商に投入するのはけしからぬ。それから、情報開示なんというしゃれた言葉はなかったのだけれども、資料を見せろ、要するに情報開示をしろ、責任問題を明らかにしろ、こういう三つのことを延々とやっていたわけです。
 延々とやっていて結論が出ないうちに、三月十四日に、その当時の片岡大蔵大臣が予算委員会の場で、きょうとうとう渡辺銀行が破綻に至りましてという答弁をした途端に渡辺銀行、中井銀行ほか二行が取りつけに遭って、金融恐慌のスタートがあったわけです。
 それで、衆議院と貴族院は慌ててとにかくこの震災手形二法というのを国会で通す。しかし、その当時は天皇の御裁可を得なければならないから、枢密院というのがあって、四月十七日にこの震災手形二法というのを否決するわけです。否決する理由は、台湾銀行の責任が明らかでないからこの法律は通せないということで、若槻内閣が倒れて田中義一内閣に移ったわけです。
 それはいいのですが、実は、野党がその後この震災手形を処理しなければならないといって出した法案は、若槻内閣が出した法案と全く同じ。しかし、そこで政治がこういう金融問題を政治的に利用したために、結果的に政府の支出というのは、一億円であればよかったものが最終的には七億円のお金が要った。七億円、七倍のお金が要ったわけです。ですから、こういう金融問題を余り政党間の政治に利用しますと、結果は国民経済が大変な混乱になる。しかも、結果的には政府の財政支出というのはその当時でも七倍になった。ですから、これは我々はやはり歴史に学ばなければならないところがあるわけですよ。
 それで、この昭和二年に金融の問題の処理を国会が失敗したために、政治が失敗したためにどういうことが起きたか。昭和四年にはウォール街で株の大暴落があった。日本は大不況になりました。もう失業者があふれる、会社が倒産をする、いろいろな金融機関もどんどん倒産する、そういう一連の引き金を、実は政治の不手際が引き金を引いたのですよ。
 だから私は、この住専の問題は政党の政略には利用してはならない。静かに迅速に解決するということがやはり政治が国民に対して果たさなければならない責任だと私は思うのです。これは、金融問題でそのときにとにかく失敗したために、五・一五事件とか満州事変とか二・二六とか、ずっと暗い時代の幕あけになった。やはりこれは、国会が政党の政略を離れて国民のために迅速に処理をしなければならない責任があると私は思うのです。
 先ほど総理もそういうことをおっしゃいましたが、この住専の処理というものは、実は住専の問題ではなくて日本の金融体系全体の問題だということを、やはり総理の言葉でこの場から国民にきちんとお訴えをする必要があるのじゃないかと思います。

発言情報

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発言者: 与謝野馨

speaker_id: 23890

日付: 1996-05-28

院: 衆議院

会議名: 金融問題等に関する特別委員会