愛知和男の発言 (本会議)

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○愛知和男君 私は、新進党を代表して、ただいま議題となりました金融関連六法案に対し、総理並びに関係大臣に補足質問をいたします。
 そもそも、この段階での本会議で補足質問をしなければならない事態に至ったのは、昨日の金融問題特別委員会における強引な質疑打ち切り、採決という、与党並びに高鳥委員長の議会制民主主義を否定するような委員会運営の結果であります。(拍手)
 そこで、本題に入る前に、議会人としての橋本さんに、そもそも議会制民主主義における国会運営について橋本さんはどのように考えておられるか、お尋ねいたします。
 いわゆる多数決原理で運営される議会ですので、最後は表決により多数を占める意見をもって全体の意見とするのは当然のことではありますが、政党政治を基本にすれば、このことは言ってみれば議会における議論を行う以前から結果は明らかであるとも言えます。しかし、このことにより議論すること自体を否定するものであってはならないはずであります。
 議論を通じていろいろな問題点が明らかになり、当初の多数意見も修正が加えられることも考えられますし、また逆に、そのようなこともあり得るという柔軟な姿勢で多数派は臨むことが民主主義のあるべき姿であります。初めから、議論の過程でどんなことが起きようとも最後まで絶対に考え方を変えないという姿勢で臨んだのでは、何のための議論なのだということになってしまいます。
 住専法案が無修正のまま可決されたのは、密室で決められた根拠のない法案を数で通すということにほかなりません。私は国会に出て二十年目を迎えておりますが、まだ当選間もないころ、絶対多数を誇っていた自民党の先輩から教えられたことで忘れられないことの一つは、「国会というところは野党のためにあるものだと思って議会運営に当たって、初めて議会が本当の機能を果たすことができるものだということを肝に銘じておくように」ということでありました。まさに至言だと思います。
 多数意見の立場にある者がいかに少数意見の人たちの立場を尊重するか、少数意見を大切にし謙虚に耳を傾けるという姿勢をいかにしっかりと持つかということであります。このことが正しく守られている議会こそ本当の民主主義が機能していると言えるのであり、逆に少数意見を全く無視した運営がなされる議会は、形だけは一見、民主主義で物事が決められているようであっても、実際は全くその逆で、まさにファッショであると言ってもいい状態になるのであります。
 ところで、このたびの金融特別委員会の運営は、全く少数意見の立場の者を無視した、民主主義の本旨に反するとんでもない暴挙であったとしか言いようがありません。我々の委員が一人一人質問要項を提出し、そのために必要な質疑時間を要求したにもかかわらず、一般質問で合計要求時間八十四時間に対して、わずかに十一時間強の質疑が終わったところで突然審議打ち切り、採決という推移の一部始終を委員会室の総理大臣席で見ておられた橋本さんは、この状況をどのように受け取られますか。この一連の委員会運営は民主主義の原則に照らしてどのようにお考えか、議会人としての橋本さんの所見をお伺いいたします。
 我々新進党は、常に審議を尽くすことを求めてまいりました。去る三月四日に始まる第一委員会室のブロックは、審議拒否ではなく、全く正反対の審議要求のためのやむを得ぬ行為だったのであります。(拍手)与党各党が、我々がいない間に与党だけで質疑打ち切り、採決を決めてしまったため、一たび委員会が開会されれば、我々は審議を続行することができなくなってしまうので、審議を尽くすという要求を貫くために委員会をブロックし、与党の猛省を求めたのでありました。
 議長のあっせんもあって、与党が審議を尽くすことを約束したものと理解し、我々はこの行為を中止したのでありますが、まさにこのたび再び我々の審議要求を拒否する行動をとったことは、信義にもとることはもちろん、議会制民主主義の否定につながることであり、憂慮にたえません。与党各党は我々に対して審議拒否をしていると批じてまいりましたが、与党こそ審議拒否をして 一判たのであります。この点につき、総理の所見を求めます。
 それにしても、総理はなぜこれほどまでに金融関連六法案の成立を急ぐのでしょうか。政府は予算の審議の当初から、住専処理が政府の原案どおり成立しないと金融不安が生ずるとか、景気が回復しないとか、外国からの信用が落ちるとか言ってはおどかしをかけてまいりましたが、実際は全く違った姿になっているではありませんか。どうしてこんなに急ぐのか。今月二十七日から開催されるリヨン・サミットに間に合わせて、各国首脳の間で格好よく振る舞いたいからでしょうか。もしそうだとすれば、とんでもない間違いだと言わざるを得ません。
 住専問題が国会で論議され始めてから今日まで、政府の住専処理策に対する国民の理解は、深まるどころか逆にますます納得しない人がふえているではありませんか。それは、処理策がルールも論理も無視したものだからであります。各種の世論調査によれば、国民の九割近くの人々が依然政府案に大きな疑問を抱いているのであります。こんな状態のままサミットに出かけていっても、各国首脳から評価されるどころか、逆に笑われてしまうようなことになるのではないでしょうか。
 こんな泥縄的対応ではなく、本当に国民の理解と支持を得られるような方策を講ずるために指導を発揮されることこそ、我々の総理としてふさしい行動だと思いますが、いかがでしょうか。
 それにしても、委員会における我々の追及に対して、マスコミなどは突っ込み不足などと書いておりますが、政府・与党こそ国民に対する説明が不十分だと言わざるを得ません。なぜならば、政府案に対する国民の理解と支持はさっぱりふえないからであります。むしろ、我々の追及結果によって処理策の矛盾が露呈し、世論の動向に反映していると思いますが、総理の御所見をお伺いいたします。
 さて、住専処理に関し、私どもが住専問題の今後のポイントと考えている点について何点か質問をいたしますので、政府の明快な答弁をいただきたいと思います。
 まず、政府の住専処理策についてでありますが、地価の下落により不良債権は拡大しているはずでありますが、政府案作成時の地価は昨年一月時点の路線価、住専の損失額は昨年八月の住専への立入検査をもとにしております。不良債権はどのくらい拡大しているのでしょうか。本年一月の三大都市圏の路線価は前年度比一六%下落しておりますが、直近の地価に基づき処理策を作成し直さないのでしょうか。作成し直さないのであれば、不良債権の増加分は積算根拠にはもともと含まれていないことになりますが、どのような扱いになるのでしょうか、大蔵大臣にお伺いいたします。
 政府の処理スキームでは、住専処理機構が債権回収を図っていくこととされておりますが、共同債権買取機構、東京共同銀行の例を見てもわかるとおり、不良債権の回収というのは並大抵のことではありません。住専処理機構に単なる借りかえで移された不良債権は、ただ十五年間塩漬けになり、十五年後には巨額の税金投入が必要になってしまいます。住専処理機構がどのように債権を回收するのか、具体的に示していただきたいと思います。
 私どもは、政府の処理策は関係者の責任逃れのためのものであると言わざるを得ないと考えております。すなわち、住専処理機構は単なる民間会社であり、債権が住専から別の会社に譲渡されてしまえば、歴代住専経営者の経営責任、母体行の経営関与の責任、紹介融資の責任など、追及はほとんど不可能になってしまいます。また、住専七社には、経営内容、資産の傷みぐあいにかなりの相違があり、一括に処理してしまうのはまさに責任逃れのためであります。一括処理が回収効率を上げるというのは、共同債権買取機構の実情を見ても明らかなとおり、まさに詭弁であります。
 また、住専五社に国税庁の捜索が入り、かねてより新進党が指摘してきたそのずさんな融資の実態が明らかになりました。住専は担保権設定順位が低いものが多く、これでは住専処理機構による通り一遍の債権回収方法では到底債権回収などできないと考えられます。大蔵省は住専処理機構の運営策を母体行に検討するよう要請した模様ですが、これでは今までの委員会答弁とは違ってまいります。母体行が処理機構の運営をするのなら、強力な債権回収体制など実現できるのでしょうか。さらに、法的な債権回収もさることながら、土地、債権の流動化にどのような策を考えようとしているのでしょうか。こうした点につき、大蔵大臣の答弁を求めます。
 続いて、日本の不良債権の実態についてであります。
 不良債権の総額は一体幾らあるのでしょうか。大蔵省は三十八兆円としておりますが、海外の調査機関ではその数倍という報告もあります。さきに経営が破綻した太平洋銀行の場合でも、九五年三月時点のディスクロージャーでは二百七十五億円であった不良債権が、経営破綻したときには実に二千八百億円でありました。このように、不良債権の全容を明らかにしない限り、幾ら不良債権の償却が進んでも日本の金融システムに対する信用は落ちる一方なのではないか。大蔵大臣の見解を求めます。
 また、帝国データバンクの調査によれば、住専の大口貸出先三十二社の金融機関からの借り入れ状況は、九四年末時点で七兆千百九十一億円であり、そのうちノンバンクからのこれら大口貸出先ヘの貸し込み割合は、住専の二〇・一%を上回、二四・六%であります。住専処理が進むことによって、担保物件が処理され、貸し手が倒産に追い込まれるような事態が続出すれば、その貸し手にそれ以上に貸し込んでいるノンバンク等の経営が悪化することが懸念されます。ノンバンクに七も打撃を受けると考えられますが、政府・与党はどのように対応するつもりでしょうか、見解をお伺いいたします。
 なお、新進党は、すべての不良債権処理を視野に入れていることを申し添えておきます。
 さらに、系統金融機関の今後について政府はどのように考えているか、お伺いいたします。
 すなわち、農林系統金融機関のリストラ等を含めた改革をどのようなプランで考えているのでしょうか。信用事業は縮小する方向なのですか、それとも拡大する方向なのでしょうか。縮小する場合、経済事業の能力維持にどのような方策をもって取り組むのでしょうか。拡大する場合、運用規制の緩和が必要ですが、運用規制を緩和した場合、金融機関としての経営能力強化をどうするのでしょうか、農林水産大臣にお伺いいたします。
 ところで、政府処理のスキームについては、一次処理はもちろんのことですが、二次処理以降のスキームについては全く不透明であります。
 すなわち、住専処理機構に母体行、一般行、系統が行う低利融資も、その利率など明らかになっていないが、母体、一般、系統で低利融資の金利差があるのかないのか。さらに、最終的に返済されるかどうかも不明確であります。
 その低利融資を債務保証するのがこれまた民間の出資による金融安定化拠出基金でありますが、いまだに拠出者、拠出額等不明確であり、本来預金保険機構とは関係のない系統金融機関、生保、損保等にも低利融資の保証料の名目で拠出金を求めるなど、対応がまことにお粗末であります。そして、いまだに民間の合意を得るに至っておりません。
 金融安定化拠出基金の上積みも模索されているようですが、この点についてはいかがでしょうか。
 また、その運用益の利回りも政府に都合のよい数字になっており、現実味に乏しいと言わざるを得ません。
 そもそも与党、大蔵省の威光低下も甚だしいけれども、こんなことで住専を完全に処理することができるのでしょうか。
 政府のスキームの問題点はまだまだあります。
 まず、株主総会についてでありますが、住専各社の株主総会は六月に迫っておりますが、日本住宅金融の場合、安定株主の比率が低く、個人保有株は五〇%を超えているが、解散決定、資産譲渡決議は危ういと言われております。
 また、大半の銀行は、住専処理策の先行き不透明から不良債権を有税償却としておりますが、五月の決算発表時には株主が当初織り込んだような大蔵省が指導している無税償却をしておらず、株主総会の混乱が予想されます。
 処理策が成立した場合は三月末にさかのぼって決算を修正できるとの指摘もありますが、国税庁はこのような形での無税償却を認めるのかどうか。
 どうしてこのような綱渡りの処理策を何が何でも成立させようとするのでしょうか。
 住専に対する債権を有する金融機関は、平成八年三月期決算で大半が債権を有税償却で行いましたが、有税償却を行うところが出てくること自体、政府案のいいかげんさが暴露され、信頼が坪らいでいる証拠ではないでしょうか。
 また、政府は、二次損失の半額を国庫負担によるとしておりますが、その財政資金を、処理開始から五年後と言われるように、しばらく期間を置いて投入することとしたと聞いております。住専処理が金融システムの安定のためであるのなら、なぜ五年後なんですか。直ちに投入すべきであります。国民の怒りがおさまってから財政資金を投入しょうとしているのなら、これはまさに国民に対する背信行為であります。強力な回収体制とかぎりぎりの負担とか、抽象的な答弁をせずに、本当に税金投入が必要と確信しているのならば、税金投入額総額の概算ぐらいは堂々と示し、国民に理解を求めるべきではないでしょうか。大蔵大臣にお伺いいたします。
 また、参議院予算委員会の証人喚問で、角道農林中金理事長は、五千三百億円の積算根拠は前農林大臣に善処をお願いしており知らないと証言し、橋本全銀協前会長は、税金投入は突然決まったと証言しております。当事者間の知らないところで処理スキームは決められたのでしょうか。
 政府は系統金融機関の体力ぎりぎり論を展開しますが、金融機関の住専への融資額では、トップは農林中金であり、八千百二十五億円もの貸し込みをしております。系統は住専処理機構に対し総額で五千三百億円の贈与でありますが、なぜ都市銀行並みの経営体力を持つと言われる農林中金を含めても五千三百億円なのか、積算根拠は全く不透明であります。農林大臣に明確な説明を求めます。
 農林水産大臣は、我々が五千三百億円の贈与についてその積算根拠を再三にわたってただしたのに対し、五千三百億円は系統金融機関が贈与できるぎりぎりの負担であると再三答弁してまいりました。しかるに、農林水産大臣のその舌の根も乾かぬうちに、系統が新たに負担する事実が明らかになってきております。
 すなわち、一つは、約一千億円とも言われているいわゆる追加負担。二つは、系統にも負担が求められることが明らかになった二次負担。三つは、昨日明らかになったように、農林省は系統融資にかかわるノンバンクの不良債権額は五百六十九億円と言ってきたにもかかわらず、国際的な基準である全銀協の統一開示基準ではそれが三千七十六億円である事実が明らかになったことなどであります。農林水産大臣のこれまでの答弁は、全くの偽りであったのではありませんか。
 これらは、系統金融機関に加入する農家一戸一戸の負担になるものであります。一説によれば、新たな負担は農家一戸当たりにすると約十五万円になると言われております。新たな負担は、農家一戸当たりの負担は一体幾らになるのでしょうか。
 さらに、地価の下落に伴い不良債権は今後ますます増大することが予想され、追加負担は今後際限もなく増大することが十分予想されます。系統金融機関は、大蔵省主導の住専処理策に最後までつき合っていくつもりなのか。
 これらの諸点について、農林水産大臣の明快なる見解を求めます。
 こうした中、農林系金融機関に対する住専の利払いが停止するかの報道がされておりますが、住専は実質上経営破綻状態であり、この利息は処理額の中に繰り入れられるのではないのでしょうか。
 また、大蔵大臣は、住専の利払い停止を歓迎すると参議院予算委員会で答弁し、農林水産大臣は、利払いを求めると発言しております。また、厳しい世論に恐れをなし、政府・与党は金融機関に追加負担を求めるとしておりますが、系統は本年一月よりの利子分六百億円を放棄すると聞いております。そもそも、系統への金利は、住専処理の前提として、資産、負債の中に算入されていたのでしょうか。もらってもいない利息を放棄することが追加負担になるのは納得がいきません。政府・与党は、なぜこのように数字、金額の数合わせのみに熱中されるのでしょうか。信義、道義といった言葉は一体どこへ行ってしまったのでしょうか。また、国会も終盤となったこの段階で、泥縄的追加負担を求め、それを審議する時間も与えない。まさしく言語道断であります。追加負担というなら、なぜ法案作成段階から考慮に入れておかなかったのでしょうか。明確な答弁を求めます。また、住専の社員を母体行において再雇用する平成八年六月七日 衆議院会議録第三十四号 性よう大蔵省は行政指導をしたように聞いておりますが、これは、かの評判の悪い与党追加策においても約束されている金融機関のリストラに逆行するのではないでしょうか。
 また、法的に追加負担を求めることはできるのでしょうか。母体行が追加負担に応じた場合、それは一次処理だけなのでしょうか。
 住専のみならず、破綻金融機関の処理においても、帳じりの合わない部分を健全な金融機関に拠出させるという奉加帳方式が、いわゆるジャパン・プレミアムにあらわれていると考えます。
 また、たとえ一次処理を追加負担により糊塗したとしても、二次処理に税金が必要であることは何ら変わりません。依然として、国民の税金は投入されるわけであります。これではまるで朝三暮四の例えそのものであります。このようなまやかしでごまかされるほど国民は愚かではありません。金融機関が追加負担こ応じたとしても、税金が必ず必要になる事態をはっきりと国民に明らかにするべきであります。見解をお伺いいたします。
 さらに、総理にお伺いいたします。
 政府は、住専処理が国際公約であると強弁して政府案を擁護しておりますが、アメリカを初め国際社会が日本に期待しているのは、住専を処理することであり、政府案を支持しているのではありません。日本の国際的な信用を取り戻すためにも、透明、公正な処理が必要であります。
 公的資金の導入に当たっては、預貯金者保護が大前提であり、明確なルールが必要です。それを論議し合うのが金融問題等特別委員会であります。政府の住専処理策は明らかにルール違反なのでありますから、この際、撤回して、新たに話し合うべきであります。
 このたびの住専処理の政府案全体に関して決定的に不足しているのは、責任の所在がはっきりしないということと責任追及の仕組みが不徹底だということであります。官僚がみずからの判断と責任で決定したのか、政治家が政治家としての判断で決断したのか、また、責任追及についても、経営者、借り手など、いかにもあいまいであります。この点についての総理の御見解をお伺いいたします。
 次に、金融行政全般にわたってお伺いいたします。
 これまでの我が国の金融行政は、行政の強い規制を背景に金融機関の業務等に介入し、市場競争力の弱い中小金融機関を保護する、いわゆる護送船団方式であったと言えます。
 二十一世紀に向かって、我が国の金融機関の国際競争力を高め、我が国の金融市場が名実ともに誇れるものとするよう、これまでの護送船団方式による金融行政を大きく転換し、市場重視の透明性の高い金融行政を推進していくことが重要であるとの観点から、金融機関の経営の健全性の確保を図っていくため、今般、金融機関等の経営の健全性確保のための関係法律の整備に関する法律案の中で、客観的ルールに基づく早期是正措置を導入しょうとしておりますが、その発動基準、措置内容等については省令に委任するとして、具体的内容については今のところ全く明らかにされておりません。透明性の高い行政の実現を図るというりであれば、その具体的内容について早急に明らかにすべきであると考えますが、大蔵大臣はどのようにお考えでしょうか。
 また、実際の運用に当たっては、金融機関に対して出された措置命令の内容を公表しなければ、これまでの密室の行政と何ら変わることがなく、私としては、その内容を明らかにしていくことが必要であり、場合によっては国会に報告することを義務づけることも検討すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 金融行政の透明性の確保は、時代の要請であります。これまでの国会における議論を通じ、新進党は、今まで明らかにされていなかった金融行政の実態を国民に明らかにすべく努めてきたところであります。今後は、これまでの不透明な行政指導等に基づく金融行政ではなく、国民及び国会の前に、どのような行政が行われているかが明らかにされる必要があります。その意味からも、金融行政の改革と大蔵省の改革は不可分であることは明白であります。
 このためにも、金融機関に対する検査権限の大蔵省からの独立を図ることなどにより、業者行政と検査権限を分離する等の措置を講じ、これまでの行政とは違った透明性の高い金融行政を確立すべきだと考えますが、大蔵大臣の見解を伺います。
 金融機関の更生手続特例法案では、信用組合の破綻処理に関して、会社更生法の適用の手続の整備を図っております。しかし、農業協同組合については、同じ協同組合組織でありながら、更生手続の対象外としており、行政当局への申し立て権の付与もされていないのであり、整合性がとれておりません。どうして農協を対象としなかったのか、その対応の違いについて、理由並びに基準を−農林水産大臣に明確にしていただきたいと思います。
 また、一方では、信用組合については更生手続の道を開いているのに対して、他方では、住専には私的整理を行っており、その対応は明らかに矛盾しているものであります。住専と信用組合の破綻処理における更生手続に関する対応の違いについて、その理由、基準は何か、大蔵大臣に明確にしていただきたいと思います。金融機関の更生手続特例法案では、金融機関に破産の原因たる事実が生ずるおそれがあるときは、監督官庁は更生手続開始の申し立てができるとする特例を規定しております。しかし、ルール型行政への移行を目指すとき、業者行政と検査権限の分離の観点から見て、これが行政権限の強化につながり、焼け太りにならないという担保を明確にすべきではないでしょうか。
 むしろ、更生手続開始の申し立て権は、監督官庁自身に付与するのではなく、業者行政とは別の独立した機関、例えば我が党が考えるような特殊法人として公社等を設立し、そこに申し立て権を付与すべきではないか、あるいは監督官庁と公社との双方に申し立て権を付与すべきではないかと考えふところでありますが、このような考え方に対する大蔵大臣の見解を求めます。
 次に、預金保険法の改正については、政府案によれば、金融機関の円滑な破綻処理のために新たに整備することとしている整理回収銀行は、信田組合のみを対象としたものであり、第二地銀を初めとするその他の金融機関についてはその対象〉しておりません。整理回収銀行も従来の護送船印方式の延長線上の発想でありますが、普通銀行等の破綻処理は、合併・再編等による従来の護送船団方式をそのまま継続するということなのか。正しそうであれば、市場規律と自己責任原則に立脚した金融システムの構築という大蔵省の基本的な方針と矛盾しているのではないでしょうか。
 また、政府案によれば、破綻処理に際して政府保証を付すこととしているのは信用組合の破綻に限られており、その他の金融機関の破綻については付されておりません。金融機関の破綻処理において、なぜこのように信用組合とその他の金融機関で制度に違いを設けているのか、その理由について大蔵大臣にお伺いいたします。
 法案では、信用組合だけの破綻処理について整理回収銀行の業務の対象とし、また、五年後の信用組合特別勘定の廃止の際に、一般金融機関特別勘定から補ってもまだ不足する赤字額を税金で支援することとなっております。ところが、今回の整理回収銀行方式では不良債権を丸抱えすることとなってしまいます。まして、従来の護送船団式が破綻し、政府案の整理回収銀行方式の対象全金融機関に適用しようとすれば、財政赤字が際限なく拡大するおそれもあります。金融機関の破綻処理に関する公的支援の基準としては、公的支援は預貯金者保護のためにこそ行われるべきであると考えますが、これについての総理の見解をお尋ねいたします。(拍手)
 改正法案においては、破綻信用組合については整理回収銀行に対する事業譲渡等により処理することが基本となっており、その後は整理回収銀行が債権回収業務に当たることとなります。この場合、破綻信用組合が有していた旧経営者に対する損害賠償請求権は整理回収銀行には引き継がれなければ、事業譲渡の段階でそれ以前の経営責任は遮断され、旧経営者の責任は遡及して追及することができなくなるのではないでしょうか。
 また、整理回収銀行が回収業務を行うに当たって発見した犯罪の告発を義務づける規定を明確にすべきであります。さもなければ、整理回収銀行の回収業務次第では、結果として政府が、借り千の借り得、ごね得等の社会正義や経済倫理にも、る行為を促進することになるのではないでしょうか。
 これらの懸念についてどのように対処していくつもりか、総理にお答えをいただきたいと思います。
 預金者保護に万全を期するためには、今後生じる金融機関の破綻に対し十分対処できるだけの預金保険料を徴収しておく必要があると考えます。政府案によれば、預金保険料は従来の七倍程度に引き上げることとしておりますが、これは、今後の破綻処理費用をどのように見積もり、また引き上げ後の保険料収入をどのように見積もった結果であるのか、そしてこのような引き上げで今後の破綻処理に十分対処していけると考えているのか、大蔵大臣の見解を伺います。
 信用組合の業態転換の促進等の金融制度調査会答申に盛り込まれた信用組合の持つ構造的な課題についての対応が、提出された法案に盛り込まれておりません。なぜか、理解に苦しむところであります。いまだ明らかにされていないことにかんがみまして、今後の信用組合のあり方について大蔵大臣の見解を求めます。
 信用組合の機関委任事務に基づく監督権限は、第一義的には国と都道府県のいずれにあるのか、いまだに明らかにされておりません。信用組合の監督に関し、機関委任事務の権限をこの際明確にすべきであると考えますが、大蔵大臣の見解を伺います。
 次に、都道府県の財政支援についてでありますが、大蔵省の説明資料では、地方財政による支援につきまして、「期待」ということになっているようでありますが、政府案では、民間金融機関の拠出の増加に加え、政府保証という税金による支援までも前提としているにもかかわらず、監督権限を有している都道府県の負担についての規定が全くないのであります。なぜなのか。ルール型行政実現のためには、なお議論が必要であります。地方財政による負担の場合は、全くの任意なのかそれとも義務なのか、いまだに明らかにされておりません。大蔵大臣の見解を伺います。
 また、信用組合に対する監督権限におきまして、国と知事とが共同検査を行う場合に、その発動の基準はいかなるものなのか、これについてもいまだ明らかにされておりません。早期是正措置との関連も含めまして、明確にすべきであります。大蔵大臣の見解を求めます。
 また、破綻金融機関の債権を強力に回収していくためには、債権の証券化等その流動化を促すための措置を検討することが必要であるとの意見を申し添えておきます。
 次に、農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案についてお伺いいたします。
 今回の改正事項のうち、保険金の支払いの円滑化のための措置や一千万円を超える貯金についの時限的、特例的対応などについては 貯金者を保護する観点から一定の評価ができると思います。また、信用事業の全部譲渡を資金援助の対象として認めることや、保険適用を漁協から信用事業の譲渡を受けた信漁連まで拡大することは、現状から見て妥当な措置と考えます。
 しかし、本法律案だけでは、系統金融を今後どうしていくのかという基本的課題にこたえることはできないと考えます。また、本法律案を含めたいわゆる金融四法案と住専処理法案は、預金者の保護並びにそれによって生ずる金融システムの安定を眼目とするという意味で、一般法と特別法の関係に立つものであります。このため、本法律案に対する評価も住専法案に対する評価と切り離すことは困難であります。
 そのことを申し上げた上で、ここでは住専処理法案を捨象して考えた場合の貯金保険法案の問賄点について、幾つか質問いたします。
 まず、保険料率についてお伺いいたします。
 一般保険料率は現行の一・五倍に引き上げられ、特別保険料率については引き上げ前の一般保険料率と同率という方向で検討中とのことですが、これだと、農協が機構に納める保険料率は二・五倍の引き上げとなります。この水準は七倍と言われる預金保険の保険料率と大きく異なりますが、これで十分な水準と言えるのでしょうか。また、この保険料率の引き上げは農協の経営にも影響を与えるものと考えますが、いかがでしょうか。農林水産大臣にお伺いをいたします。
 ペイオフコストを超える貯金についての時限的な特例業務についてお伺いいたします。
 特例業務の会計処理に当たって、特別勘定を設け、従来の勘定と区別し、かつ、五年後に一般勘定に帰属させることとなっておりますが、特別勘定に大幅な負債を生じた場合、どのように処理を旧するのでしょうか。そのままで一般勘定に引き継いだ場合、貯金保険の円滑な運営に支障を生ずるのではないでしょうか。農林水産大臣にお伺いいたします。
 五年間の時限措置として、駐金者に債権の全額買い取りを保証していますが、このことにより、安易な破綻措置が講ぜられ、組合の自主的再建努力を阻害することにならないでしょうか。農林水産大臣にお伺いいたします。
 貯金保険の適用対象となる農水産業協同組合の範囲を信漁連にまで拡大していますが、なぜ信漁連のみに限定したのでしょうか。信農連を対象としなかった理由を農林水産大臣にお伺いいたします。
 住専問題を契機に、系統金融機関の事業運営の合理化、効率化やリスク管理体制の強化等について指摘がありますが、今後どのように対応しようとしているのか、農林水産大臣にお伺いをいたします。
 農協の経営を見ると、信用事業と共済事業で経済事業などの赤字を埋めていますが、今後は信用事業や共済事業も赤字になる可能性があります。今後このような農協経営をどうやって立て直していくのか、農林水産大臣にお伺いをいたします。
 以上、ただいま議題となっております各法案について質問してまいりましたが、最後に、与党所属の同僚議員にお訴えをいたしたい。
 諸君の中にも良識ある多くの方々は、このたびの住専処理の政府原案には多くの疑問を感じておられる方も多いかと思います。何しろ、国民の九割近くの方々が反対の意思を表明しているのでありますから、国民の意見を代表してこの国会の場で活躍をする我々としては、この国民の声を代弁することにこそ我々の使命の原点があるはずであります。(拍手)ルールなき住専処理が残すツケは極めて重いものになってしまいます。
 これから投票が行われますが、確かに、予算案の採決の場合は、住専予算に反対であっても予算案に反対投票するわけにはいかなかったかもしれませんが、今度は違います。今度こそ、議員お一人お一人が御自分の使命を十分かみしめられ、良心に従って、御自分の御判断で投票されることを切に願ってやみません。(拍手)このような行動を示す議員が一人でも多くいれば、その分だけ我が国の議会制民主主義が正しく機能していることになるのであります。
 重ねて与党議員諸君にこのことを強くお訴えをし、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕

発言情報

speech_id: 113605254X03419960607_005

発言者: 愛知和男

speaker_id: 5235

日付: 1996-06-07

院: 衆議院

会議名: 本会議