若林正丈の発言 (外務委員会アジア・太平洋に関する小委員会)
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○参考人(若林正丈君) 八八年に前総統が亡くなられた後、副総統であった李登輝氏が総統になったわけでございますが、ほぼ一九九三年の春までは李登輝氏にとっては政権内の権力闘争の時代でございました。ですから、自分の権力が安定するといいますか、党内の権力覇権が確立するに従って比較的彼にとって明瞭な政策になってきた、そういう意味の変化があるんではないかと思います。
一つの国家、二つの政府とか、一つの中国に二つの対等な政治実体があるというのが政府の公式の、台湾側の方の一つの中国の解釈でございますけれども、中国と台湾との言葉の化かし合いといいますかゲームがありましてわかりにくいんですが、第三者から見ればとりあえず今は二つの中国でいくんだというのが李登輝政権の立場だと思うんです。これが李登輝政権の間に変化するとはちょっと思えないというのが私の印象です。
ただし、総統選挙後にどのような大陸政策の第一歩を踏み出すべきであるかということについては現在まだぼかされていると思います。李登輝総統の発言を見ますと、いわゆる三通という直接に中国と航空機や船舶をやりとりしていくというようなことですが、これについては国家安全の問題もあるので、まず敵対状態の終了ということですね。これは昨年の一月に江沢民氏の呼びかけがあった後、李登輝総統がそれに対応する発言をした際にも出てきたことでございますが、それを優先するというようなことを言っております。
ところがその一方で、総統選挙が終わりますと、マスコミは一斉に三通だというようなムードをかき立てようとしておるわけです。行政院の大陸委員会という部局がございますが、選挙中に私がそこの方と話したときに、いや、三通一二通と言っているのはマスコミがそういうふうにしているだけであって、我が政府の方の優先順位は敵対状態の終了という問題をまずやっていくのが第一歩なんだということでありますが、中国との接触のためのいわゆる半官半民の海峡交流基金会というところへ参りますと、やはり三通をやっていくというようなニュアンスの発言も聞かれました。ですから、どういうふうに第一歩を踏み出すか、私が現在知っているところではまだどうもはっきりしない。
ただ、国家統一綱領というものにおきましては、三通をするためにはやはり両方の例えば航空当局のオフィシャルな接触がどうしても必要なわけでありまして、それは立木先生がおっしゃられた中期の段階に行われるということになっておりますが、これはどうもなし崩し的にオフィシャルな接触というのが始まっていくのではないか。今もうノンオフィシャルの形では両岸関係はなかなかマネジメントできなくなってきているだろう、実務的にも難しくなってきているというふうに私も思っておりまして、ですから中期段階の一部というのはなし崩し的に始まるというような判断を私は持っております。