秋山昌廣の発言 (外務委員会アジア・太平洋に関する小委員会)

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○政府委員(秋山昌廣君) 防衛庁の秋山でございます。
 お手元に「中台情勢について」という資料をお配りしてあるかと思いますが、それに沿って私の方から、中国が三月に台湾付近で実施した演習の中身と、それから中国軍の台湾侵攻能力ということにつきまして御説明させていただきたいと思います。前者につきましては既にこの委員会で別の方からお話があったやに私も聞いておりますが、政府としてといいますか、防衛庁としてこのように認識しているということを簡単に御説明させていただきたいと思います。
 まず、演習の概要、四ページに図が出ておりますけれども、三月八日から十五日まで台湾近海の二カ所に航行制限海空域を設定いたしまして、八日から十三日にかけて第二砲兵部隊がミサイルを四発発射しております。ミサイルはいずれもM9と認識しております。着弾地は、一、三、四発目が高雄の西方、二発目が基隆の東方と認識しております。
 何枚かめくっていただきますと別紙2というのがございますので、ごらんいただきたいと思います。
 M9の飛しょう概念図でございますが、我々の理解するところでは、大体射程距離が六百キロというミサイルと認識しております。通常でありますと、ここに書いてあるような飛しょう概念、つまり高度百五十キロで飛しょう時間約六、七分という認識でございます。
 しかし、今回中国が撃ちました四発は、いずれも我々の理解するところでは、かなり高い仰角といいますか、上の方に撃って、射程では四百五十キロ強という形で発射しているというふうに認識しております。ミサイル関係の専門家によりますと、非常に着弾地の精度を高める撃ち方というような認識をしているところでございます。ある意味で、そらしてはならないといったような撃ち方ではなかったかというふうに理解しております。
 それから、また資料の一ページを見ていただきますと、「海・空軍実弾演習」というところでございます。三月十二日から二十日まで福建省南部沖に航行制限海空域を設定いたしまして、原子力潜水艦も参加いたしました各種艦艇あるいは各種作戦機の参加による実弾演習が行われた海空合同訓練という認識をしております。空中ミサイル射撃訓練、対地あるいは対海爆撃訓練等が実施されたと見ております。悪天候の影響等によりまして、十五日以降はかなり訓練が小さかったと考えております。
 それから三番目でございますが、三月十八日から二十五日、総統選挙の日をまたいでの陸海空統合演習が福建省北部の沿海部及びその沖合に航行制限海空域を設定してなされた。しかし、これも悪天候の影響等がありまして、大規模な演習は実施されなかったという認識をしております。
 二ページを見ていただきますと、その後の状況でございますが、我々の認識は、中国軍は一連の演習を終了して、台湾正面に集結していた一部の部隊がおのおの基地に帰還をして、ほぼ集まってくる前の状況に戻っているという認識をしております。
 米国の対応でございますが、今、アジア局長からも説明がありましたように、空母インディペンデンス及びニミッツを台湾海域に派遣いたしておりまして、国防次官補代理のキャンベル氏の発言にありますように、事態を重大に見ている米軍の一つの行動であるという認識を我々も持っております。
 議会の対応は、御案内のとおりでございまして、三月十九日に下院での決議案、三月二十一日に上院での決議案といったようなものが採択されているわけでございます。
 中国側の反応は、これも御案内のとおりで、ここに書いてあるとおりでございますが、李鵬首相あるいは外交部のスポークスマンの発言といったようなものがあるわけでございます。
 防衛庁の対応といたしましては、台湾付近で実施された中国軍の一連の軍事演習の動向について、これは当然十分注意を払わなければいけないという認識のもと、航空自衛隊と海上自衛隊の航空機等によります情報収集体制を強化いたしたところでございます。当然のことながら、その他の関連組織における所要の勤務体制をとったところでございます。
 それから、三ページを見ていただきますと、「中国軍の台湾侵攻能力」というタイトルになっておりますが、一言で申し上げますと、中国軍は規模的には大変大きいものがございますが、質的には旧式の装備が大変多うございまして、台湾侵攻能力は限定的という認識をしております。
 もう少し詳しく御説明させていただきますと、最後の七ページになりますが、中国、台湾の軍事力を比較した表がございます。これはミリタリー・バランスあるいはジェーン年鑑等をベースにいたしまして作成した表でございますが、まず上の方を見ていただきますと、中国には当然のことながら台湾にない核戦力というものを持っております。ICBM若干基、それからよく言われる中距離弾道ミサイル百基前後、そして短距離弾道ミサイルとして今回四発演習で発射されたM9といったようなものがあるわけでございます。こういった装備は台湾にはございません。
 陸軍について見ますと、兵力では中国が約九十個師団、台湾が十二個師団、人員で二百万強と三十万人程度、こういう比較でございます。数はわかりませんが、当然中国に地対空ミサイルがあるということと、台湾に、後ほどミサイル対処能力というところで御説明したいと思いますが、地対空ミサイルとしてナイキ四十基、改良ホーク百基、それから台湾が独自に開発いたしました天弓、これは数はわかりませんが今配備中という認識をしております。
 海軍でございますけれども、艦艇につきまして、中国が百万トンの一千隻、台湾が二十万トン強の約四百隻ということでございますが、中国の場合、小さい船を入れますともう少し多いのではないかという見積もりをしております。
 しかし、中を見ていただきますと、駆逐艦、護衛艦は中国が五十二隻、台湾が三十五隻。潜水艦の数は中国の方が非常に多いわけですが、戦時中のドイツのUボートから発展してきたような小さな潜水艦がたくさんあるということでこれだけ大きな開きになっております。両用戦艦艇を見ていただきますと、中国の場合、小さいものを入れますともう少し多いと思いますけれども、ミリバラ等の比較では台湾の方が多いような数字になっておりますが、ほぼ拮抗しているのではないかという見方をしております。
 作戦機の場合、台湾にはここの分類では対潜哨戒機だけでございますが、中国の場合、海軍も爆撃機、戦闘機を持っておりますので、下の方で合わせて見ていただきたいと思います。
 空軍では、台湾が爆撃機を持っていないというところが中国と違うところでございまして、戦闘機が中心でございます。全体で四百機強。それから、数で言いますと、海軍の航空機も入れまして中国は大変多くの作戦機を持っている。特に、台湾と異なりまして爆撃機を所有しているということでございます。
 ただ、これは台湾と中国全体の比較でございまして、中国の台湾侵攻能力、意図は別にいたしまして侵攻能力というものを見ます場合には、当然中国のこれだけの戦力が全部台湾に行くということはあり得ない、中国の人口、国土それから地政学的に言いましても、この一部が行くということだと認識しております。
 例えば、中国の陸軍について考えますと、幾つかの軍区があるわけでございますけれども、台湾に面している軍区というのは三つほどでございまして、その軍区の兵力を例えば積み上げて見るといったような手法によりまして、一体陸軍、海軍、空軍、中国の台湾侵攻兵力というのがどのぐらいであるかと。一つの見積もりでございますけれども、非常に雑駁な言い方をいたしますと、潜水艦を除きまして、中国の台湾侵攻能力というのは台湾を一とした場合に二ないし四倍といったような見積もりを我々はしているところでございます。
 その中で、台湾と中国の間に海峡があるわけでございますから、制空権、制海権、この辺が非常に大きな課題になるわけでありますけれども、中国にとって一つ大きな問題は、海軍における海を渡って侵攻する能力があるかどうかというあたりに非常に制限的なものがあるのではないかといったような見積もりをしているわけでございます。
 いずれにいたしましても、これは意図は別にいたしまして、純粋に配備状況あるいは装備状況から中国の台湾への侵攻能力について見ますと、我々の見方は今申し上げたようなところでございます。
 ところで、台湾の弾道ミサイル対処能力というところでございますが、これは資料の三ページのところに簡単に書いてございますけれども、現時点では弾道ミサイルに対処することを想定したシステムを保有していないというふうに我々は見ております。
 先ほどちょっと御説明いたしましたように、今台湾が所有している地対空ミサイルはナイキ、改良ホーク、それから台湾が独自に開発したと言われる天弓というところでございますが、いずれにいたしましても今回中国が発射したミサイル、あるいはそれより射程の長いミサイルに対する対処能力というものは保有していないというふうに見積もっているところでございます。
 参考のためでございますが、三ページにございますように、しからば日本の弾道ミサイル防衛はどうなのかということでございますが、これも率直に申し上げますと、我が国は弾道ミサイルに対処することを想定したシステムを保有していないということでございます。一般論として、我が国の防衛に関しまして、我が国自身の防衛力と日米安保体制と相まって、すきのない防衛体制を構築することによりまして、この弾道ミサイルによる攻撃といった事態も含めて、我が国に対する侵略事態を生じさせないことを基本としているわけでございます。
 最後に書いてありますように、弾道ミサイル防衛の問題についてどう考えるかということは、我々にとりましても大変大きな課題であります。かかる観点から、我が国としては弾道ミサイル防衛に関しまして、米国の協力も得て現在鋭意研究をしているところでございます。
 冒頭の私の発言は以上で終わらせていただきます。

発言情報

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発言者: 秋山昌廣

speaker_id: 13443

日付: 1996-04-10

院: 参議院

会議名: 外務委員会アジア・太平洋に関する小委員会