徳永信一の発言 (厚生委員会薬害エイズ問題に関する小委員会)

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○参考人(徳永信一君) 私は、七年間薬害HIV訴訟を闘ってきた弁護士の一人として意見を述べさせていただきます。
 七年前、やむにやまれぬ気持ちで裁判に踏み切った経緯については先ほど家西代表の方から話があったと思います。
 裁判が始まった後、しかしながら厚生省の応訴態度というのは非常にひどいものでした。エイズというのは、当時対岸の火事であった、またエイズ研究班や血液製剤小委員会といった専門委員会を設けて検討した、そして最善を尽くしたんだと言うばかりであって、何ら真相を明らかにしようという姿勢を見せませんでした。我々弁護団の手元には、悲しいかな、ほとんど証拠らしい証拠がないというのが当時の実情でした。
 厚生省に対して、当時の専門委員会のあり方等について、また意思決定のプロセス等について、また厚住省が把握していた危険情報等について資料を明らかにしなさい、またはそのことについて事実関係を明確にしなさいと釈明を求めても、これに全く応じようとしませんでした。もちろんのこと、資料についてはそれがないというふうな対応を貫きました。
 私たちはやむを得ず、真実を求めてアメリカやヨーロッパといった外国に証拠、資料、情報を探しに行きました。そして、そこで情報公開に基づいて公開された公文書や製薬会社の内部資料、またアメリカのCDCの専門家の政府委員等に取材する等をし、また証人として日本に招請する等をし、真実を少しずつ明らかにし、結審にまで持ち込み、そして和解勧告にこぎつけたのでした。訴訟資料の、証拠書類のほとんどは外国の文献です。
 それと翻訳です。日本で起こった薬害の責任を問う裁判だということを考えれば、これは明らかに異様です。
 本年の二月、厚生省のロッカーの中から今までないと厚生省が言い続けてきた資料、議事録、そういったものが出てきたときには怒りよりも悲しさ、ないしはせつなさといったそういう感情を持ちました。ある種のそれは無力感だったように思います。ばかにされたのは患者、弁護士だけでなく、三権の一つであるはずの司法そのものが愚弄されたのです。七年間にわたる奔走は一体何だったのか。私たちにとって厚生省はアメリカやヨーロッパよりも遠い存在でした。
 当時の情報につきましては、なぜ感染の危機が迫っていたとき、それが明らかになりつつあったときにその危険情報が開示されなかったのか、私たちにはそれはわかりません。また、裁判で国が何をやってきたかということが問われているそのさなかであっても、そういった意思決定のプロセスに関する情報が開示されなかったということはなぜなのかわかりません。その求めている情報の内容はまさに薬品の危険に関すること、またはそれに対して政府がとった対応の政策決定についてのことです。なぜそれらのことが隠されたのか、いまだに納得できません。
 厚生省は、とりわけエイズ研究班、血液製剤小委員会、そういった専門委員会の結論があったんだということをその免責の口実にしています。他方、エイズ研究班、血液製剤小委員会の側は、自分たちは学問的研究を行うそういう委員会であるということをもってみずからの責任を逃れようとしています。
 そして、そこでいつ、何が、どういう資料に基づいていかなる議論がなされたかということについて、長い間隠されて明らかにされてきませんでした。専門家が専門知識と、そして専門家としての責任で検討したのであればどうしてそれが明らかにされなかったのか、いまだもって納得できません。
 厚生省では現在も私的、公的なものを含めて多数の専門委員会が開かれ、それぞれが政策決定に関与しています。そして、その多くは国民の健康や生命に直接、間接に関与するものです。
 しかし、だれが、一体どういう基準で、何を、どういう責任に基づいて、どういう議論をしているのか全くわからない状況です。厚生省に問い合わせましたところ、昨年、一体どれだけの数の諮問委員会、専門委員会が開かれたのかということについて尋ねましたけれども、厚生省はこれを把握していませんでした。現在のところ、厚生省があらかじめ出した結論、あらかじめ出したいと思っている結論についてお墨つきを与えて、その責任をあいまいにするブラックボックスとしての役割をそういった専門委員会が果たしているというふうに言わざるを得ません。
 政策決定にかかわる専門委員会のあり方、役割、そして責任、これらを明確にし、少なくとも事後的に情報公開を義務づける、そういうことによって国民の民主的な監視といったものが絶対必要だというふうに思います。
 本件では、これから参考人として証言されることになっている安部英氏がこの政策決定に大きくかかわっています。彼の行動は矛盾に満ちており、数々のなぞを秘めています。問題は、かかる人物によって政策決定がゆがめられたというのであれば、そのことを許したシステム自体が問われなければなりません。
 情報公開、専門家委員会のあり方と、そしてそれをめぐる責任の問題といったことを語りましたが、最後に、厚生省の現状の体質の問題について触れておきたいと思います。
 この裁判をめぐる報道の中で一番驚いたことは、一九八五年に加熱製剤が承認された後、その販売が開始された後もミドリ十字が非加熱製剤の出荷を継続していたということでした。厚生省が回収命令を出さずに企業の自主回収にゆだねるという政策をとったことがその原因でした。そのため、非加熱製剤はその後二年十カ月余りも市場で使われ、被害を拡大し、そして血友病患者ではない肝臓疾患の患者さん、そして新生児出血症の患者さん等にも被害が拡大していきました。
 これはなぜこういうことが起こったのか。今回明らかになった資料の中に、一九八三年十月にスクリーニングが未了の製剤についてどうするかということについて検討した報告があります。そこでは、スクリーニングが未了であってもそれが大量にある、そしてその金額は三十数億円に上るということを分析した後で、そのまま使用を継続するという結論がなされています。人命よりも企業の利益が優先されたとしか思えません。
 こうした方針がとられた背景には、厚生省が、国民の安全といった課題と同時に、企業の育成、企業の保護という目的も有しているという事実があると思います。国民の安全を守る役目を持つ者が同時に企業の保護という役割を持つとき、一たん薬害の問題が、そしてその危機が起こったときに両者の調整という見地で問題が解決されてきた、このことは本件の薬害を通じて一番明らかになった問題だと思います。厚生省の中に国民の安全を守るという立場の確立を求めます。
 現在、薬事法の改正ということも準備されているというふうに聞きますけれども、本件薬害がスモンの薬害を教訓にして改正された薬事法のもとで行われたということを決して忘れないでください。法律の改正だけではなく、それを運用する厚生省の体質といったものについて十分な検討が加えられなければ薬害の再発は防止できないと思います。
 情報公開、専門家委員会のあり方、厚生省のあり方、体質といったものについてるる述べてまいりました。関係者の個人責任については現在進行している刑事司法の場でその追及が進められていきます。しかしながら、薬害を生んだ構造そのものにメスを入れ、そして新たな制度改革を実現していくのは国会の場しかないと思います。薬害エイズ真相究明、そしてそれに基づく薬害再発の防止、そのことについての参議院に期待するところは大であります。
 よろしくお願いします。

発言情報

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発言者: 徳永信一

speaker_id: 28163

日付: 1996-04-17

院: 参議院

会議名: 厚生委員会薬害エイズ問題に関する小委員会