久保亘の発言 (大蔵委員会)

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○国務大臣(久保亘君) 今後における財政金融政策の基本的な考え方につきましては、先般の財政演説において所信を申し述べたところでありますが、本委員会において重ねて所信の一端を申し述べ、委員各位の御理解と御協力をお願い申し上げます。
 まず、最近の内外経済情勢について申し上げます。
 我が国経済の現状を見ますと、設備投資や住宅投資、生産などに明るい動きが見られ、景気には緩やかながら再び回復の動きが見られ始めているところであります。
 一方、世界経済は全体として拡大基調を維持しております。
 私は、今後の財政金融政策の運営に当たり、このような最近の内外経済情勢を踏まえ、以下に申し述べる諸課題に全力を挙げて取り組んでまいる所存であります。
 第一の課題は、景気回復を一日も早く確実なものとすることであります。
 政府としては、これまで経済運営には万全を期してきたところでありますが、このところの景気回復の動きを確実なものとするため、引き続き適切かつ機動的な経済運営に努めてまいります。
 八年度予算編成においても、我が国の現下の経済情勢を踏まえ、異例に厳しい財政事情のもとではありますが、公共投資の着実な推進を図るとともに、我が国経済の中長期的な安定成長に向けて、経済の構造改革の実現のための措置を実施することとしております。
 さらに、八年度税制改正において、七年度と同規模の所得税、個人住民税の特別減税を継続して実施するほか、土地税制、証券税制等についても適切な対応を図ることとしております。
 金融面では、昨年九月の公定歩合の引き下げを含めた累次にわたる金融緩和措置の実施により、各種金利は依然として低い水準にあり、今後ともその効果を見守ってまいる所存であります。
 最近の為替相場の動向につきましては、一連のG7蔵相・中央銀行総裁会議における合意に基づいた各国の協調等により、円高是正が進んできております。今後とも為替市場において関係各国と緊密に協力してまいりたいと考えております。
 第二の課題は、財政改革の推進であります。
 我が国財政は、昭和五十年度以降十五年間にわたり多額の特例公債の発行を余儀なくされてきましたが、平成二年度予算において特例公債の発行を回避することができました。その後、バブル経済の崩壊とともに、税収が減少し続けるというかってない状況となりましたが、各年度の予算編成においては、何とか償還財源の手当てのない特例公債の発行を回避してまいりました。
 しかしながら、八年度予算編成に当たっては、税収が七年度当初予算で見込んだ水準をさらに二兆円以上も下回る見込みとなる一方、これまでのさまざまな工夫も限界に突き当たり、多額の特例公債を発行せざるを得ない容易ならざる事態に立ち至りました。
 他方、経済情勢の変動に対しては、財政として可能な限りの対応をしてきた結果、近年公債残高は急増し、八年度末には約二百四十一兆円に達する見込みであります。単年度で見ましても、八年度予算の公債発行額は二十一兆円にも上り、公債依存度は二八%と極めて高いものとなっております。
 こうした事態が今後も続くようなこととなれば、高齢化の進展や国際的責任の増大など、社会経済情勢の変化に財政が弾力的に対応することは困難となり、我が国経済社会の発展にとって重大な支障となりかねません。
 今後の財政運営においては、容易ならざる財政事情を厳しく受けとめ、できるだけ速やかに健全な財政体質をつくり上げていくことが基本的課題であります。そのためには、中長期的観点から行財政が果たすべき役割や守備範囲を見直していくことが必要となりますが、その過程で国民に痛みを分かち合っていただくことをお願いせざるを得ないことも考えられます。
 八年度予算は、特例公債を含む多額の公債発行という財政の厳しい実情を直截にお示しする姿となりましたが、これを地ならしとして、各位の一層の御理解と御協力を仰ぎつつ、新たな財政改革への歩みを進めてまいりたいと考えております。
 第三の課題は、税制上の諸課題に適切に対応することであります。
 平成六年十一月に成立した税制改革関連法においては、消費税と地方消費税を合わせた税率は、既に先行して実施している所得税、個人住民税の負担軽減とおおむね見合う形で九年四月一日から五%とすることが法定されているほか、いわゆる検討条項が盛り込まれております。今後、本年九月末という法律上の期限を勘案して、この税率について新たに法改正を要するかどうか検討を進めていく必要があります。さらに、法人課税などの諸課題についても、その検討に引き続き取り組んでまいりたいと考えております。
 第四の課題は、調和ある対外経済関係の形成と世界経済発展への貢献に努めることであります。
 我が国としては、世界経済のインフレなき持続的成長の強化を目指して、G7蔵相・中央銀行総裁会議等を通じた政策協調を進めてまいります。また、我が国は、WTO、APEC等の場を通じ、多角的自由貿易体制の維持・強化に積極的に取り組んでおります。本年三月には、議長国として第三回APEC蔵相会議を開催し、マクロ経済や資金フローの問題等につき、協議を行うこととしております。
 関税制度につきましては、一層の市場アクセスの改善を図る等の観点から、ウルグアイ・ラウンド関税引き下げの前倒しなどの関税率等の改正を行うこととしております。
 第五の課題は、金融システムの安定性の確保と証券市場の活性化を図ることであります。
 金融は、経済活動に必要な資金の供給という、経済全体にとっていわば動脈ともいえる役割を担っており、健全で活力ある金融システムは我が国経済の持続的発展のための不可欠の前提であります。
 こうした観点から、金融機関の不良債権問題につきましては、預金者保護、信用秩序の維持に最大限の努力を払いつつ、引き続き果断に対応し、できるだけ早期に本問題の解決が図られるよう全力を挙げて取り組んでまいります。
 住宅金融専門会社をめぐる問題は、金融機関の不良債権問題における象徴的かつ喫緊の課題であります。この問題の処理に当たっては、住専からの資産等を引き継ぐために設立する住専処理機構に資金援助等を行う預金保険機構に設ける住専勘定に対して、財政資金六千八百五十億円を支出することといたしました。また、住専処理機構において引き継いだ資産にかかる損失が万一生じた場合には、適切な財政措置を講ずることとしております。
 これらの財政措置は、住専問題の早期処理により、我が国金融システムの安定性と、それに対する内外からの信頼を確保し、預金者保護に資するとともに、我が国経済を本格的な回復軌道に乗せるため不可欠であり、やむを得ないものと決断したところであります。
 住専問題の処理に当たっては、透明性の確保とともに、住専の経営責任を初め種々の責任の明確化等を図り、国民各位の御理解を得るよう全力を尽くしてまいります。
 このため、積極的な情報開示に努めてきており、先般、国会より議院証言法に基づき提出要求のあった住専七社に対する過去二回の調査結果及び上位貸付先実名リスト等について、内閣の承認を経て提出したところであります。
 また、借り手の返済責任につきましては、預金保険機構の指導のもと、住専処理機構が、過去の取引経緯、関係者の利害等にとらわれることなく、法律上認められているあらゆる回収手段を迅速かつ的確に用いることとし、特に、悪質な回収困難事案に対しては、預金保険機構が罰則で担保された財産調査権により調査するとともに、みずから回収するなど強力な体制を整備することとしております。なお、借り手、貸し手に限らず、その他の関係者についても、違法行為に対しては厳正に対処していく必要があると考えます。
 さらに、過去の金融政策や金融検査・監督のあり方を総点検し、今後、金融機関における自己責任原則の徹底を図るとともに、市場規律が十分に発揮される透明性の高い新しい金融システムを早急に構築していく必要があり、ディスクロージャーの促進、早期是正措置の導入や検査・モニタリングの充実を図るほか、破綻処理手続の整備、預金保険制度の拡充等を進めてまいります。
 以上の不良債権問題の早期解決と新しい金融システムの構築については、昨年十二月の金融制度調査会答申も踏まえ、先日国会に提出いたしました特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進等に関する特別措置法案のほか、所要の法律案を今国会に提出することとしております。
 次に、証券市場の活性化につきましては、市場が本来の機能を発揮する上で必要な環境整備を図ることが責務であるとの考えに立ち、昨年末には証券界からのヒアリングを踏まえた規制緩和措置を公表いたしました。また、八年度税制改正において、有価証券取引税の軽減措置等を講ずることとし、本年一月からは社債の適債基準の撤廃等を行いました。引き続き一層の証券市場の活性化に努めてまいる所存であります。
 次に、平成八年度予算の大要について御説明いたします。
 八年度予算は、徹底した歳出の洗い直しに取り組む一方、限られた財源の中で資金の重点的、効率的な配分に努め、質的な充実に配慮することとし、厳しい財政事情の中にあって豊かで活力ある経済社会の構築等のために真に必要な経費の確保に努めたものとなっております。
 歳出面につきましては、一般歳出の規模は四十三兆一千四百九億円、前年度当初予算に対し二・四%の増加と抑制されたものとなっております。国債費は、定率繰り入れの実施などの結果、十六兆三千七百五十二億円となっております。これらに、地方交付税交付金、緊急金融安定化資金等を加えた一般会計予算規模は七十五兆一千四十九億円となっております。
 次に、歳入面について申し述べます。
 税制につきましては、当面の経済状況等を踏まえ、平成八年においても所得税の特別減税を継続して実施するとともに、土地税制等について適切な対応を図る一方、公益法人等に対する課税の適正化、租税特別措置の整理合理化、その他所要の措置を講ずることとしております。
 公債につきましては、発行予定額を二十一兆二百九十億円としております。その内訳は、建設公債が九兆三百十億円、特例公債がいわゆる減税特例公債を含め十一兆九千九百八十億円となっております。なお、借換債を含めた公債の総発行予定額は四十七兆五千九百億円となっております。
 財政投融資計画につきましては、対象機関の事業内容等を厳しく見直すとともに、国民生活の質の向上等各般の政策的要請に的確に対応していくとの考え方に立ち、住宅建設、地域の活性化等の分野を中心に一層の重点的、効率的な資金配分を図っております。
 この結果、一般財投の規模は四十兆五千三百三十七億円、前年度に対し〇・七%の増加となっております。また、資金運用事業を加えた財政投融資計画の総額は四十九兆一千二百四十七億円、前年度に対し一・九%の増加となっております。
 なお、国債の円滑な消化に資するため、その引き受けについて資金運用部資金を積極的に活用することとしております。
 この機会に、平成七年度補正予算(第3号)について一言申し述べます。
 七年度一般会計補正予算(第3号)につきましては、歳入面では、最近までの収入実績等を勘案して租税及び印紙収入の減収を見込む一方、特例公債の発行等を行うとともに、歳出面では、地方交付税交付金の減額等を行うこととしております。
 以上によりまして、七年度一般会計第三次補正後予算の総額は、第二次補正後予算に対し、歳入歳出とも一兆四十四億円減少し、七十八兆三百四十億円となっております。
 以上、財政金融政策に関する私の所信の一端を申し述べました。
 なお、既に本国会に提出したものを含め、御審議をお願いすることを予定しております大蔵省関係の法律案は、平成七年度補正予算(第3号)に関連するもの一件、平成八年度予算に関連するもの五件、その他四件、合計十件であります。今後、提出法律案の内容につきましては逐次御説明することとなりますが、何とぞよろしく御審議のほどお願いを申し上げます。

発言情報

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発言者: 久保亘

speaker_id: 7804

日付: 1996-02-16

院: 参議院

会議名: 大蔵委員会