石田美栄の発言 (本会議)

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○石田美栄君 私は、平成会を代表いたしまして、ただいま報告のありました高速増殖原型炉「もんじゅ」ナトリウム漏えい事故調査報告に対して、総理並びに科学技術庁長官に質問をさせていただきます。
 さて、これまでの原子力利用関連施設の事故では、調査が一通り終わった段階で結果が公表されることが多かったのですが、今回の「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故では異例の中間報告がなされました。その姿勢は当然としても、そうした段階で発表に踏み切ったことには幾つかの重大な意味があると思われます。また、今後、事故原因などの徹底的な究明がなされることによって、この際、我が国のエネルギー政策の将来展望についても十分な議論と再検討が進められなければならないでしょう。
 エネルギー政策、原子力政策の展開は、国の将来を左右する非常に重大な問題であり、社会の信頼と支援がなければ原子力の開発利用は成り立ちません。しかし、今回の事故では、動燃事業団としては、日本ではナトリウム漏れば絶対に起こらないと重ねて言明してきたこともあり、現実に起きてしまうと、事故現場を撮影したビデオを隠してしまったり事故の過小評価を行ったりしたことによって、原子力政策への国民の不安感や不信感を一層あおる結果となりました。
 昨年十二月、この事故以前に実施されたある世論調査において、原子力に関する情報は十分に公開されていると思っている人はわずか六・四%という結果もあります。そして、このたびの大騒動から三カ月たった本年二月の世論調査でも、なお情報公開が進むとの見方には半数の人々が懐疑的であり、かつ七割以上もの人たちが日本の原子力発電所でも大事故が起こるのではないかという不安を感じているというのが実情です。
 このように、我が国の情報公開がいかにおくれているかは、今回の「もんじゅ」の事故に限らず、薬害エイズ問題、さらには住専への財政資金投入問題を見ても明らかであります。早期に情報公開がなされていれば、とうとい今も国民の血税もどれほど失われずに済んだことでしょうか。幸い「もんじゅ」の事故は二次系で発生したために人命を失うことはありませんでしたが、原子炉内で同様の事故が絶対に起こらないという保証はないのであります。
 そこで、橋本総理大臣にお尋ねいたします。
 できるだけ多くの国民にわかりやすく、かつ信頼される原子力政策のために、情報の公開、提供について本日までどのような努力がなされてきたのでしょうか。これまでの施策と今後の不安解消と信頼回復のためのお考えをお聞かせ願いたいのです。
 次に、このたびの事故の社会的影響についてお尋ねいたします。
 さきの沖縄での米兵による少女暴行事件によって、一般国民が米軍基地がいかに沖縄に集中しているか改めて関心を寄せたように、今回の事故によって原子力関係の施設がいかに一部の地域に集中しているかに気づかされました。「もんじゅ」のある福井県には十五もの原子力発電所があります。福島県、新潟県を加えた三県一帯に何と全原子力発電所の三分の二が集中しております。したがって、こうした地元自治体との信頼関係が原子力政策を進めていく上で非常に重要であると考えます。
 今回、事故通報のおくれや事故隠しがあったことによって、地元住民を初め関係自治体との信頼関係が失われてしまったと言われておりますが、国として信頼回復にどのように取り組んでいくのか、最高責任者である総理の具体的な方針をお聞かせ願いたいと思います。
 次に、この中間報告を読みますと、何々していたらとか、何々すべきであった、する必要があったというような表現がたくさん出てまいります。運転マニュアルの不備に運転員の判断ミスが重なって事故を拡大させたと、動燃事業団の対応を厳しく批判しております。
 このことから、情報公開に対する意識改革や人員の育成強化、適正な配置、施設機器の充実、さらに危機管理マニュアルの整備や、平時から事故に対する教育訓練などを怠ってきた動燃事業団への批判は当然のこととしても、そのような体制を放置してきた監督官庁である科学技術庁の責任も厳しく問われなければならないはずです。
 そこで、安全に対する責任と日ごろの安全審査体制はどうであったのか、科学技術庁長官にお尋ねいたします。あわせて、現在の安全審査の内容も根本から見直すべきだと考えますが、見解をお伺いいたしたいと思います。
 また、この中間報告では事業者である動燃事業団に十四項目にわたる改善措置を求め、二月二十七日に動燃からその検討結果が報告されていますが、それを受けて、科学技術庁としてはどのように受けとめて今後対応されていくのか、お伺いいたします。
 そして、もう一点、この中間報告では原子力安全委員会の姿がかすんでいることであります。原子力安全委員会こそ安全規制のためにわざわざ原子力委員会から切り離して独立させたのであって、このたびのような事故にこそ機敏に対応し、安全確保に努め、原子力への信頼回復のために役割を果たすべきだったと思うのですが、一体どうなっていたのでしょうか。
 さらに、施設の安全性に関する行政庁の審査結果についてダブルチェックを行うことが同委員会の重要な役割であり、海外の大きな事故についての原因究明を行い、教訓事項を抽出することもその役割であったはずであります。だとすれば、一九八五年七月にフランスの高速増殖実証炉スーパーフェニックスで少量のナトリウム漏れ事故が発生し、調査の結果、二次系配管の温度計さやがナトリウムにぶつかって振動したことが原因とわかったため、振動しにくい短いさやに交換したという、こうした事故の経験も生かせていない上、「常陽」の成果も生かされていないということをどのように考えればよろしいのでしょうか。
 また、原子力安全委員会が三月二十九日に公表した原子力安全白書では、今回の事故について原因究明と再発防止策について徹底した調査審議を行い、その結果を国民に公表するとしておりますが、みずからの責任や反省については少しも触れておりません。原子力安全委員会の責任について中川長官はどうお考えか、改めてお尋ねいたします。
 次に、「もんじゅ」事故の技術的な面での評価と安全性について幾つか中川長官にお尋ねいたします。
 一つ目は、ナトリウムそのものの危険性とは何であるのか。
 二つ目は、ナトリウムの漏えいによって原子炉の安全上どのような影響が考えられるのかであります。
 三つ目は、事故の直接原因となった温度計のさや管については、これまでの調査の結果、構造そのものに問題があること、ありふれた部品との理由で振動の影響についての解析はメーカー任せで実験は全く行われなかった上、安全審査の対象になっていなかったことなどがわかってきております。また、他の温度計十六本にもすり傷が見つかっていますが、ほかにも安全審査の対象から外れているこのような落とし穴があるのではないでしょうか。
 四つ目は、事故調査のために三月二十六日に行われた「もんじゅ」事故再現実験でさえ、開始直前の準備中にナトリウムが漏れ出し、激しく燃えて実験がそのまま中止されたという極めてお粗末な出来事がありました。また、先日の二回目の実験も装置故障のため中止になりましたが、事故原因の最終報告はいつごろをめどに考え、その後の対応をいかにお考えかであります。
 さらにつけ加えて、環境保護団体グリーンピース・ジャパンの招きで来日し、「もんじゅ」を視察したドイツ・ミュンヘン大学のヨハン・ベネケ博士が「動燃は米国やドイツを超える安全解析をしていないことがわかった。炉心崩壊事故が起こらない保証はない」と指摘していることについての感想をお伺いいたします。
 以上五点について、明確にお答えいただきたいと思います。
 次に、原子力政策の将来展望についてお尋ねいたします。
 国民生活を守ることは行政、政治の大きな役割ですが、エネルギー供給の将来的な保障は、食糧や防衛などと同様に極めて重要な課題であります。資源に乏しい我が国にとって、エネルギー保障のために新しい技術開発が求められており、核燃料リサイクルの技術を確立することも重要な柱の一つでありましょう。今回の「もんじゅ」の事故や再処理計画のおくれなどの状況変化に照らして、新原子力開発長期計画の変更についてはどのようにお考えでしょうか。
 また、先ほど申し上げました多くの原子力発電所が立地する三つの県からも核燃料リサイクルなどのコンセンサスのあり方について提言書が出されておりますが、それにはどう対応されるのか。さらに、今後、原子力政策をどのように再構築していくお考えなのか、橋本総理にお尋ねいたします。
 次に、この四月十九日から二十日にかけてモスクワで原子力サミットが開催されます。ここでは放射性廃棄物の海洋投棄防止やチェルノブイリ事故から十年経て原子力の安全性向上問題などが中心テーマになりますが、我が国の「もんじゅ」事故についても先進国は大きな関心を持っていると言われております。
 そこで、今回の事故を踏まえ、我が国としては何を訴え、どのように我が国の原子力政策に反映させていくのか、総理のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
 最後に、あの阪神・淡路大震災、北海道のトンネル事故、住専処理問題、薬害エイズ問題、そしてただいま議題になっております「もんじゅ」の事故に見られますように、何か大きな問題が起きると、その処理や対応には必ず縦割り行政の弊害が顔を見せ、無責任の体系が露呈して、その結果には必ず責任のなすり合いが起こります。そして、最終的な責任の所在があいまいになり、だれも責任をとらないという、極めて国民にとって腹立たしく、不幸な状態になってしまうのが常であります。このような現状では、国民の政治と行政に対する不信感が募るのも極めて自然なことではないでしょうか。
 そこで、我が国の最高責任者である橋本総理に、極めて重要な課題や突発的な危機管理にどのようなリーダーシップで責任ある対応をとられる御決意か、お尋ねいたします。
 そしてまた、今まさにあらゆる場面で権限と責任を明確にする体系づくりが求められております。国民が信頼するに値する責任のとれる行政と政治にするために、総理が言われている「変革と創造」のお立場から、今すぐ何から手をつけてどうしていくべきとお考えかお尋ねいたしまして、質問の締めくくりとさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 113615254X01019960410_004

発言者: 石田美栄

speaker_id: 7700

日付: 1996-04-10

院: 参議院

会議名: 本会議