前田勲男の発言 (本会議)
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○前田勲男君 私は、自由民主党を代表して、先ほど趣旨説明のありました住専処理法案及び金融関連五法案について、総理並びに関係大臣に若干の質問をいたします。
冒頭、中国政府は八日、地下核実験の実施を発表いたしましたが、これは包括的核実験禁止条約の交渉のさなかに唯一強行に及んだものであり、総理は、実験直後の遺憾表明のみならず、今後あらゆる機会をとらえて中国に対して厳正に厳重に抗議すべきことを強く要請をいたし、総理の御見解を求めるものであります。
本国会は、巷間、住専国会と言われるほど住専処理問題をめぐり紛糾し、衆議院の予算審議の長期空転等により五十日間に及ぶ暫定予算を余儀なくされた上に、住専処理法案を初め金融関連法案が会期末間近の七日にようやく参議院に送付されてきたという事態を迎えております。
この間、我々は、党利党略を離れ、国民の目線で予算案を審議し、証人喚問等を通じて母体行、住専、借り手等の責任を追及するとともに、預金者の保護と金融システムの安定化の見地に立ち、住専処理に伴う国民の負担を可能な限りなくするように協議を重ね、意見の集約に努めてまいりました。残念ながら参議院の本会議の決議として実らなかったのでありますが、参議院与党三党として、五月十三日、総理に対し、三項目を申し入れた次第であります。
六月六日、衆議院の住専処理法案及び金融関連法案の特別委員会可決に当たって与党三党の声明文が出されましたが、これは、金融機関の新たな寄与等については我々が一カ月前に総理に申し入れた趣旨と同様なものであり、しかもその具体的詰めはこれからでありまして、まだまだ大きな課題が残っております。我々はこれから鋭意審議を進めていくつもりであります。
衆参両院での予算審議を通じて母体行責任が大きく浮かび上がり、金融機関の追加負担を求める国民の声が一層高まってきている中、我々参議院が大局に立って改めて金融機関へ具体的な要請を強力に行うよう最大限の尽力をなすべきであります。
つきましては、まず五月十三日の参議院の与党三党の総理への申し入れについて、総理はどのように受けとめこの一カ月間対応されてきたのか、総括的にその辺の事情をお伺いいたします。
バブル崩壊による経済社会的影響は多岐にわたり、特に国民の資産価値が低下し、今や超低金利により老後のための蓄えさえも当てにならなくなってきております。
日銀が先日発表した金融白書によりますと、近年の金利低下が家計部門、金融機関等へ与えた影響を分析いたしておりますが、これによると、家計部門の純利子所得が九四年度に四・一兆円減少、九五年度もさらに二・六兆円減少しております。
このことは、超低金利により生活者から金融機関等へ毎年数兆円近くも所得移転がなされていると言われたことを明確に裏づけるものであります。他方、信用組合等経営破綻、住専問題等が影響して、農協や中小金融機関の預金が減少し、大銀行や郵貯へシフトする動きが出ております。
住専における母体行責任、紹介融資問題等に加えて、大銀行を初めとする金融機関にはこのような国民生活にもいろいろ影響を及ぼす大きな経済的、社会的責任があることは明らかであります。これを十分踏まえて国民負担の軽減に極力努力をするのが金融機関本来の姿であると考えますが、この問題について総理の御所見を求めたいと存じます。
我が国の預金量は約八百兆円と、G7の他の先進六カ国の預金量にほぼ匹敵するガリバー的な規模を誇っており、世界金融市場に及ぼす日本のこの不良債権の影響はまことに甚大であります。それであるからこそ、不良債権の象徴としての住専の早期処理が国際公約までになり、世界から注視されておるところであります。
巨額の預金量を有する日本の大銀行が、アメリカ金融市場で不祥事を起こしたり、国内では乱脈経営による破綻が連続し、刑事事件に発展する等、いわゆる護送船団方式の中で自己責任原則を忘れたモラルハザードは目を覆いたくなるような状況を呈するに至っております。
かてて加えて、高給をはみ、リストラも不十分なままで、しかも大口借り手が今ものうのうとしている状況にあります。これらのツケを何の反省もなく国民に回そうとすることに国民の真の怒りがあるのであります。
先日、全国銀行協会連合会会長の発言に対して官房長官が、思い上がっている、庶民の気持ちがちっともわかっていないと怒りを爆発され、先月三十日に全銀協会長は蔵相に陳謝をする一幕がありました。
六月四日、衆議院の参考人質疑で全銀協会長は、新たな寄与について、「私としては、いい案が見つかるものなら検討を進める可能性が生まれると考えておりますが、業界の事情も考えると、乗り越えるべき課題も多いというのが率直な感じでございます」と答えて、全面拒否から姿勢が若干柔軟になった感がいたしております。
この乗り越えるべき課題とは、株主代表訴訟と中小金融機関の負担能力問題等のことであるようでありますが、この点について、今までの判例、中小金融機関と大銀行との体力格差の分析等を十分に踏まえて、これらに対応し得る政府の要請、見解を含めた声明の工夫や具体的な対策を検討すべきと考えますが、法務大臣並びに大蔵大臣の方針を伺います。
住専処理予算六千八百五十億円については、金融システムの安定化を図ることが主たる目的となっておりますが、実質的には、経営基盤の弱い農協や中小金融機関の経営破綻を防ぎ、これら預金者の保護を図ることにもあります。
このところの説明が明確でなかったために国民の御理解がいまだ不十分のままとなっており、単なる責任論だけではなくて、預金者保護等も踏まえてオールジャパンで新たな寄与を求められれば、農林系統金融も当然のこととして努力をしていただかなければなりません。
さきの参考人の質疑の中で、全国農協中央会常務理事は、農協系の追加負担について、後日誠意を持って対応しますと答えておりますが、これらの点について農林水産大臣の御見解を賜ります。
ずさんな住専経営の責任や資産隠し等の借り手責任追及については、既に国税当局、刑事当局が一部捜査に着手をしておりますが、一層の徹底的な摘発が強く求められております。また、住専処理に伴う債権回収、損害賠償請求について、迅速かつ徹底的に行うために債権回収機構の早期体制整備が望まれているとともに、特に回収困難事案の処理に当たりまして、資産隠し、詐害行為等の摘発に関係機関が連携を強めて取り組むことが肝要であります。
次に、預金保険法改正案等金融四法案について伺います。
金融自由化に伴う市場規律に基づく新しい金融システムを構築していくために、ディスクロージャーの徹底、適正なリスク管理、破綻処理の迅速化、多様化等を進めることが必要であります。そのために、金融関連法案により五年間で金融システムを健全化していくことは適切な対応であると考えますが、問題は、今までの護送船団方式からいかに決別し、金融機関、預金者ともに自己責任原則を確立していくかにあります。
早期是正措置について、どれだけ客観的に基準を的確に設定できるか、リスク管理にしても金融機関の内部監査体制を果たして十分に整備できるのか、また、預金保険機構は、七倍に大幅アップする保険料を実質的に負担する預金者の代理としてその機能をどのように向上させ、万全の体制を整備していけるのか、これらの問題について十分に留意した運営がなされてこそ初めて二十一世紀に向けた新しい金融システムが再構築されると考えますが、大蔵大臣はどのような対応方針で臨まれるのか、御答弁をお願いいたします。
不良債権問題、特に住専処理については、先送りして今日の事態を招いた行政の責任を重く受けとめ、金融機関への天下りの自粛等について徹底するとともに、大蔵省を中心とした金融行政について、新しい金融システムの構築と一体のものとして、この際、全面的に洗い直す必要があることは言うまでもありません。
特に、金融行政と検査・監視体制を分離し、預金保険機構が預金者の代理として検査のほかに金融機関の格付等も行うようにし、預金者が選択する場合の利便性を高めていく方向を検討していく必要があるのではないかと存じます。
また、財政政策に加え金融政策の責任を大蔵省に持たせることについては、既にかなり批判的な意見があり、日銀法の改正による日銀の独立性の確保を初め、国会への報告の義務づけ、政策委員会の透明化等のチェックシステムの導入も時期を区切って早急に検討すべきであります。
さらに、農林系統金融が住専の問題に深く関与したこと、信用組合のずさん融資による経営破綻が連続発生していること、ノンバンク不良債権が大きな問題となっていること等にかんがみ、金融全般を一元的に監視する金融監査機関の具体的構想も検討していくべきと思っております。
農林系統金融の改革で問われているのは、農協金融のあり方そのものであります。自助、自己責任、公正などの協同組合原則に立ち戻って議論されなければなりません。内部留保を多く持つことはできない仕組みの農協金融の将来展望について、今こそ真剣に考えなければならないときであります。農協金融の存在意義はどこにあるのか、今後、金融システム全体の中でどう位置づけ、どう発展させていくべきか、今こそ真剣に考えるときに来ているのであります。
日本経済の大動脈たる金融について、その行政のあり方をどうするかという重大な問題であります。総合的に検討を要し、今、簡単に具体的な話のできる段階ではないと思いますが、以上四点について、検討の方向だけでも大蔵大臣並びに農林水産大臣にお伺いいたしたいと存じます。
景気は大分明るさを増してまいりました。雇用等、まだ厳しい問題があり、景気を本格的な回復軌道に乗せるためには、不良債権の重荷をできるだけ早く軽くしていくことが緊要であります。
総理が外交に大きな成果を上げられ、経済等の内政に真剣に取り組んでおられることに国民の期待が多く集まり、最近の内閣支持率が五十数%と大幅に回復しております。
総理、ここは住専処理、金融行政の改革等に自信を持って強力なリーダーシップを発揮されるように願うとともに、二十一世紀を見据えた今後の金融行政の理念、あるべき姿の実現に向けた総理の御決意を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕