鈴木淑夫の発言 (商工委員会)

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○鈴木(淑)委員 新進党の鈴木淑夫でございます。本日は、このような機会を与えられまして大変光栄に存じまして、喜んで参上いたしました。
 新進党を代表してということでございますが、問題の性質上、どちらかといえば、委員の先生方の御討議のお役に立つような問題点を私なりに整理して申し上げまして、それぞれの問題の所在について、この後先生方の御議論に多少ともお役に立てばという立場でお話ししてみたいと思います。
 ただいま中山委員もおっしゃいましたように、戦後長い間禁じられてきました純粋持ち株会社、これは、財閥の復活を阻止するという観点で独禁法の九条に規定されております純粋持ち株会社を一定の条件をつけてとはいえ解禁をしよう、この大きな変化は、さまざまな時代的な背景の変化、そこからの要請に基づくものであることは言うまでもありませんが、私は、一番大きな時代の要請といいますか背景の変化は、いわゆる経済のグローバル化、申すまでもなく、各国経済、各国のマーケットが地球規模で統一されてきている、その地球規模の大きなマーケットの中で、メガコンペティションと呼ばれるような厳しい競争が行われる、大競争時代に入っているという事実だというふうに思います。このことから、少なくとも二つの要請が出てくる。
 一つは、国内の市場シェアを問題にして、過度の事業支配力が起きやしないかということを、これまでは割とそういう観点で、国内の観点で議論しがちでございましたが、今度この九条の改正を考えるときに見落としてはいけないことは、たとえ国内のシェアが相当大きく見えましても、その市場というものが、性質上諸外国の市場とつながって完全にグローバル化しているときは市場支配力が全く違ってきてしまうわけでありますから、そういうグローバルな競争条件がある場合は、これまでの発想で単純に国内の市場シェアを問題にして言ってはいけない、これが大事なポイントの一つではないかと思います。
 それからもう一つは、主要国トップの米英、それからヨーロッパ大陸でもフランス等は、御承知のように既に純粋持ち株会社を活用して企業の競争力を高めているわけでありまして、したがって、このメガコンペティション時代に日本だけが純粋持ち株会社を禁止していることによって、日本の企業がグローバル化した市場の中で競争力を失うというか、相対的に手足を縛られた形で競争せざるを得ないこのハンディキャップ、こういうものをやはり考えた上で今度の法改正をするのだという視点。この二つの視点が私は非常に大事だというふうに考えております。
 今申し上げましたように、純粋持ち株会社というのは競争上非常に有利であるというふうに申し上げましたが、具体的に私は四つぐらい少なくとも利点があるというふうに思います。
 一つは、いわゆる事業多角化の利益、スコープメリットですね。スケールメリットという言葉がありますが、これは規模の経済性、企業が大きくなることによって効率が上がるという規模の経済性。ここで問題にしているのはスコープのメリット。たくさんのスコープを持つことによってそのグループの経営の効率が上がるという、このスコープメリットをフルに発揮するためには、純粋持ち株会社のもとにさまざまのスコープ、事業分野を持った子会社が並んで、それ全体を効率的に事業を行わせていく。このスコープメリットを発揮する上で、純粋持ち株会社が解禁されている国とそうでない国の間でハンディキャップが起きるということであります。
 二番目は、資金面からいきましても非常に資金効率がよくなる。いわゆるダブルレバレッジがきくということでありまして、持ち株会社が調達した資金、これは持ち株会社の増資ということもありますが、持ち株会社が増資すれば、その自己資本充実をばねにして社債発行等々によって資金を調達してくる。それを今度は子会社の増資資金という形で投資していきますと、子会社はその自己資本充実をばねにしてまた社債、コマーシャルペーパー、借り入れ等々の形で資金調達力を高めてくる。グループ全体としては今言ったように二重のレバレッジがきいてきまして、資本資金効率がよくなる、だから競争力が強いという点であります。
 三番目は、純粋持ち株会社形式をとることによりまして、新規事業を行う子会社のリスクを限定化して、グループ全体に波及するのを防ぐ。しかし、その子会社はリスクをあえてとって新規事業に挑戦する、こういうことをやりやすくするということがありまして、これもまた諸外国のベンチャービジネスが非常に伸びてくる、それに対して日本はそれがやりにくいというハンディキャップを負っているという点であります。
 四番目は、今度は逆に、特定の事業分野を持つた子会社、特にこの場合は預金を扱っている金融機関、銀行等ですね、ここに他の事業を行っている、例えば証券業とか保険業等々を行っている子会社のリスクが波及してこないようにファイアウォールを立てる上でも、現在の日本では事業持ち株会社、親子関係でしかやれませんが、純粋持ち株会社が解禁になることによってファイアウオールをもっと立てやすくなって、預金取扱金融機関へリスクが波及することを防ぎながら、なおかつスコープメリットを発揮できるような多くの業種を一つのグループとして経営できる、こういうメリットがあるというふうに思っております。
 以上は、先生方御承知のとおりのことをただ私が整理しただけでございますが、この四つのメリットというのは、これまでも日本でやれた事業持ち株会社にも若干はありますが、純粋持ち株会社の方がはるかにこの四つのメリットを発揮しやすいということは言うまでもないところでございます。
 こういうメリットがあるからこそ、日本の会社、例えば日本の銀行は——米国ではすべて持ち株会社として登録しているわけですね。持ち株会社のメリットをフルに使って競争しないと不利だからであります。また、米国自身の銀行を見ましても、銀行持ち株会社というのは商業銀行の七割以上です。また、商業銀行の資産の九割以上を純粋持ち株会社、金融持ち株会社が持っている。銀行持ち株会社が持っているわけで、いかにこの純粋持ち株会社のシステムを活用することが経営効率に有利に働くかということは、このこと一つ見てもわかるのではないかというふうに思います。
 最後に、私ども、この法改正に当たってよく議論してみなければいけないなと思うことを幾つか御参考までに申し上げまして、私の話を終わりたいのですが、まず第一は、事業支配力の過度の集中を定義しているわけでございます。特に三つの類型を使って定義をしているわけでございますが、よく考えてみると、事業支配力の集中それ自体が悪いわけじゃないのですね。事業支配力が集中したって、そのことによって競争阻害が起きていなければいいわけです。
 特に、グローバル化していますから、国内だけ見て事業支配力が集中しているように見えたって、グローバルにつながった市場で厳しい競争が行われていれば競争条件の阻害は起きないわけでありますから、そこのところを間違えないように考えないといけないのではないか。外形標準で余りにも予防的に防止をしますと、実は、せっかく解禁したのに諸外国に比べてまだ日本の企業は手足を縛られているということになりかねないということを私は懸念しておりまして、この点に諸先生方の注意を喚起させていただきたいというふうに思います。
 また、これとの関係で、伝統的な考え方として、金融資本の方が産業資本より強い、だから金融資本、金融持ち株会社による過度の支配を避けなければいけない、したがって金融持ち株会社に金融以外の子会社を入れちゃいけないということを考えているわけで、私はとりあえず日本ではそれでいいとは思いますが、これまたややチャレンジングなことを申し上げて恐縮でございますが、金融資本の方が産業資本より強いというのはやや古典的な考えでございまして、経済学では今はそれは必ずしも常識ではございません。
 十九世紀の終わりから二十世紀の初めぐらいまでは、金融資本による産業資本の支配というのは事実としてありましたし、金融資本の方が強かったわけです。日本も高度成長時代には断然金融資本が強かった。
 しかし、現代においては、産業資本だって信用があれば証券化したこの金融の世界で幾らでも資金調達ができますから、むしろ信用の強い産業資本の方が金融資本より強いかもしれない。逆に、金融資本というか金融機関を自分のグループに引っ張り込むぐらいの資本の支配力を持った非金融会社というのは幾らでもあるわけですね。諸外国の例を見てもそういうのは幾らでもありますから、何となく金融資本は産業資本より当然強いのだということで法が構成されていることについても、この段階ですぐ直せとは申しませんが、先生方の御注意を私としては喚起させていただきたい。もう少し柔軟に考えないと、時代の変化と食い違って、取り残されるということでございます。
 それから、純粋持ち株会社を解禁した場合に、純粋持ち株会社になる方法として、現行の商法はいわゆる抜け殻方式、子会社に営業すべてを現物出資して自分が持ち株会社に変わる抜け殻方式だけが可能だと思うのですが、御承知のように、株式交換方式というのがもう一つあり得るわけですね。子会社の株主が保有する株式を新規に設立した持ち株会社の株式と交換する方式であります。抜け殻方式は、これは債権譲渡の通知、債務引き受けの承諾、内外での行政上の免許等の再取得とか、いろいろ煩瑣なことがあります。それに対して株式交換方式の方は簡単でございますから、これを可能にする法整備というものも考えていいのだというふうに思います。
 その場合に、もちろん税法上の問題がございまして、抜け殻方式の場合には、法人税法の五十一条の圧縮記帳の範囲を拡大しないと、これは簿価から時価に変わることによって税金を取られてしまうという問題があります。
 それから、今私が申しました株式交換方式の方がはるかに容易でありますから、ぜひこれを合法化した方がいいのじゃないかと思っておりますが、この場合も、株式を交換した時点で株式譲渡益に課税を行ってしまうとこれはやはり非常に不利でありまして、課税は先に延ばしていただかないと困る。そういう配慮が必要かと思います。
 以上は、持ち株会社化を容易化するという観点。
 もう時間が過ぎてしまいましたので、あと項目だけ二つ申し上げたいと思います。
 これは連結ベースをもっと重視する、連結ベースのディスクロージャーを一段と充実させる必要があるし、また納税も、私ども新進党が主張しておりますように、連結納税制度の導入というのを早く考えた方がよろしい。純粋持ち株会社を解禁する以上、連結納税制度の導入を早く始めた方がよかろうというふうに思います。
 最後に一つ、金融持ち株会社の検査監督はどこの官庁がどうやって行うかという問題が残っております。
 金融持ち株会社で子会社に金融機関がある、例えば銀行,証券、保険と並んでいる場合に、銀行、証券、保険には検査に当然入るし、検査監督の官庁ははっきりしていますね。上にいる金融持ち株会社はどうするのだという問題があるように思います。
 以上でございます。やや長くなって申しわけございませんでした。

発言情報

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発言者: 鈴木淑夫

speaker_id: 27950

日付: 1997-05-09

院: 衆議院

会議名: 商工委員会