竹内佐和子の発言 (税制問題等に関する特別委員会)

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○竹内参考人 それでは最初に、これからの税制の全般にかかわる考え方と、それから、ビッグバンを控えてどのような金融課税の問題点が生じるかということについて述べてみたいと思います。
 これからの税制というのは、昨年来、将来に向けて中長期的にどんな税制の形がいいかということで本を出版しまして、いろんな国民の皆さんから反応を得たのですが、その反応の中から一つキーワードを挙げるとしますと、やはり税制のフラット化という考え方が非常に強く出てきたように思います。税のフラット化というのは、言葉はあるんですけれども、また、海外でも、アメリカあるいはヨーロッパでも、税をフラット化するというのは一体どういうことかという考え方がかなり盛んに議論されていますし、また、最近では、国際競争力とか社会保障改革の流れでもフラット化という言葉がよく使われるようになっておりますので、これをキーワードにしてきょうは御説明申し上げたいと思います。
 まず、そのフラット化という意味の第一番目のポイントは、従来の租特の考え方ですとか、それから特定業界あるいは特定企業向けの優遇税制みたいなものを廃止して、なるべく税率そのものを下げていこうという考え方でございます。法人課税で言えば、これは課税ベースを拡大して税率を下げるという考え方、これを通じて企業の活力を引き出すとか、新規の企業が入りやすくする、あるいは生産性を上げていくというようなことに貢献するというような形のものが第一番目にあります。
 それから、第二番目のフラット化にかかわる議論というのは、税制における中立性といった考え方でございますが、これはこれから金融課税の面で非常に重要になる考え方だと思います。つまり、金融商品ごとに、銀行が取り扱っているとか生保が取り扱っている、あるいは証券業者が取り扱っているということで、同じような商品であっても違った税制が取り入れられているとか、いろんな政策的な理由でばらばらな政策が取り入れられている場合には、顧客にとって非常にわかりにくくなりますので、そういったばらばらの税制というものが、顧客の目から見て、あるいは投資家の目から見てわかりやすいような税制に変えていく、つまり、そういったいろんな区分をなるべく少なくしていくという考え方があります。
 それから取引の面でも、個人であるとか高齢者であるとか機関投資家であるとかというふうなこと、あるいは非居住者であるというような考え方について、どのくらい細かく区分けするのか、それはなるべく区分けしないで考えた方がいいんじゃないかというような考え方もこういった範囲に入ってくると思います。
 こういうことを通じて、所得の累進性というものをなるべく緩和していく方がいいんじゃないかということが第三番目のフラット化の考え方というふうなことになると思います。これが今基本となる潮流だろうと思います。
 二番目に、こういった考え方に照らすと今のグローバルスタンダードというのは何なのかということになってくるわけですが、お手元にレジュメを配ってございますので、それに沿ってお話し申し上げます。グローバルスタンダードといいますと国際標準という考え方になりますが、よくスタンダードというと何か一つの国際標準がきちっとあるようなとらえ方をされておりますが、実際は一つの基準があるわけではなくて、グローバルスタンダードというのは、むしろ私は、国際的整合性というような考え方に照らした方がいいのではないか、世界の唯一の税制があってそれをコピーすれば非常にいいという、そんな考え方は実際にはとられていない。結果的に、あるいは税制の低い方に合わせるということがグローバルスタンダードということにもならないということで、実際には各国の所得の階層ですとか資産の分布とか、それから所得の不平等をどの程度是正したいかとか、これからどういう産業を育てたいかという産業政策の観点、こういうものが各国によって違いますので、そういった考え方とリンクして税制の形が決められるということ。
 つまり、各国ともいろいろな形の税制の組み合わせのバランスというものに特徴を持たせようと知恵を絞っているというのが現状でございます。ただし、全く日本独自の税制ですとか古来からのもので、余り外国から見てロジカルではないとかあいまい過ぎるというような部分というのは、やはりグローバルスタンダードから見て是正していかなければならないという範囲だと思います。
 そういう点で、金融課税についても、いろいろな取引課税もありますが、譲渡益課税の部分でも総合課税の考え方や分離課税の考え方を組み合わせてとっているというのが現状ではないかと思います。アメリカなどでも、総合課税といっても実際は譲渡益の部分だけは別途計算するというような考え方もとられていますし、ドイツでは富裕税のような一種独特の金融課税の考え方もあるということで、日本の社会にとって将来どういう組み合わせが一番いいかというような視点が重要になってくると思います。
 そういう意味では、有価証券取引税というのが今話題になっているのですが、この取引税だけを国際的に比較して低いか高いかというのは、非常に難しい考え方でございます。
 例えば、アメリカでは有価証券取引税はないわけですけれども、投資家の方から見ますと、株を譲渡しますと譲渡益は二八%ということになります。日本の場合は二〇%で、有価証券取引税が売却の際に〇・二一%取られますが、それを足してもアメリカよりは低い、投資家にとっての負担分は低い。実際にはみなしというふうな方法をとりますともっと低いケースもあるということで、こういうふうに税制全体として投資家の負担がどのくらいかというような形で比較していくということが望ましいのではないかと思います。
 それから次に、それでは金融システム改革というものが税制に与える影響というポイントに移っていきたいのですが、これからの金融システムとして一番重要なポイントは、日本に個人預金が千二百兆あるということでございまして、この千二百兆がどういった形で活用されるのか、あるいはどのようにビッグバンによって動いていくのかという点が極めて重要になってまいります。
 現在、その千二百兆の資産のうち四一%が預金になっておりまして、郵便貯金が一八%、それから保険が二六%、これは三百五兆でございますが二六%で、この三つが非常に大きい資産になっております。その他、株式が七%で、債券と投信が三%ずつということになっております。
 アメリカの預金と比べますと、非常にがらっと変わっておりまして、日本は預金が四一%ですが、アメリカでは一三%程度で三分の一以下。逆に株式を見ますと、日本は七%なのですが、アメリカでは資産の二一%が株式になっている。三倍以上が証券市場に流れ込んでいる。このコントラストがはっきりしているわけですが、ビッグバン以降どのようになるかという点につきまして、やはり欧米型に少々近づくだろう、つまり預金の比率が減って、株、債券などの割合が大体現在の二倍程度に拡大するというふうに見られているわけです。
 こういうふうな段階になりますと、今までの縦割り型の税制、こっちの税制が安いからこっちにしようという形ではなく、なるべく選択性がはっきりするような、つまりゆがみを与えないような、投資家の資産の選択に役立つような税制というのが必要になるだろうというふうに考えられます。
 ビッグバンに関しては、外為関連の動きとしてもう一つ外為法の改正というのがありまして、ビッグバンに伴って、海外に円預金口座を開く動きがまず第一段階起こるだろう。これは人によってかなり個人差がありますので、すぐに動くケースもあれば、いや、ちょっと待ってからというケースもあるでしょうが、少なくとも海外にいた経験のある方とか海外でショッピングをしたい方などは、海外に円預金口座をつくって、そこから通信販売の代金を払ったり、あるいは株の売買注文をしたりする、あるいはいろいろな預金をするというような考え方になって、まさにユニバーサルバンキングの世界に一歩足を踏み入れるというような世界になるのだろうと思います。
 こういうふうになっていきますと、ある程度国内で今まで高目に設定されていたいろいろな手数料体系というものがだんだんと是正されて、国際価格に近づいていく。この段階で何が起こるかといいますと、まさに日本の証券市場の危機が訪れるということになるわけです。
 現状を見てみますと、証券会社の経営状態というのは今非常に危機的な状況にどんどんなっています。バブルの崩壊以後、ビジネスが非常に急速にマイナス傾向に入っているわけです。ちょうど平成二年のときに、こういった手数料収入というのが証券会社では一時四兆五千億円にも達していたわけですけれども、現在一兆五千億程度に低下していまして、まさに証券会社そのもののビジネスが、ビッグバンを待つまでもなく極めて停滞傾向にあって、非常に危機的な状況にある。その中で、手数料の自由化というのがビッグバンの目玉になっていますし、既に手数料をもらわない──もらわないというか、半額にするというような新しいニュースも出てきまして、かなりショックが広がっているということでございます。
 このビジネス縮小の原因はどこにあるかということなのですが、もちろん有価証券取引税を撤廃すればもう今にでもよくなるという考え方もございますが、どうも原因というのはやや深いところにありそうでございまして、かなり構造的な原因だ。
 一言で言えば、やはり日本には投資家の目というものを日本の経営に生かせないという体質があるのではないか。それから企業の評価をするためのいろいろな企業会計の問題。それからグローバルなROEといった基準に合わせた場合に、そういう考え方を徹底しにくいというような問題。あるいは、証券会社が手数料をもらっていながらも、そこに乗せてお客さんに伝える情報が極めてあいまいであるとか、つまり情報価値が薄いものをお客さんに売っているというようなケースもある。こういうふうな問題がありまして、かなり制度的な、税制だけじゃない問題が極めて深いというふうに外国の投資家などは見ているわけです。
 ビッグバンを成功させるためには、やはり株式市場だけではなくて、日本のマネジメント自体がある程度連動して動くというような体制に持っていく、それから証券市場自体も新しい商品の開発、MアンドA等の大きなビジネスに転換していくというふうなことが必要だ。そういう意味では、有価証券取引税は、調整は必要であっても、これをなくすと活性化するといった発想ではどうも国際的に余り信頼は得られないのではないか、やはり資本市場のルールを明確にするということによって取引高を拡大していくという発想が重要なのではないかと思います。
 ここで一応金融システム関連の話を終わらせていただきまして、三番目のポイントである金融の税制改革というところに話を持っていきたいと思います。
 まず、外為法の改正によってどんな金融課税の問題が生じるかということについて一点申し上げたいのですが、最初に、円預金を開いたり、個人がお金を送金したりという段階であれば、手数料体系が崩れるとか、そういうインパクトになります。
 第二段階のシナリオ、これはまだ何が起こるかわかりませんのでシナリオの段階ですが、まず、今一応百万円以上は報告義務があると言われているのですが、九十九万九千円だったらいいのかということも考えられるわけで、逆にそういった点で、富裕な人たちがいろいろな形で、銀行を介さないで送金をする、あるいは繰り返して分散して投資するというようなケースも起こってきます。それから、企業のネッティングというような形で、海外関連の会社との取引を相互に決済して送金をしない、それで残った分を海外の口座に残しておくというようなケースが出てきますと、企業の決済がどうなっているかという情報が外部からはとれなくなるという段階も生じまして、モニターが非常に難しくなるのが第二段階です。
 第三段階は、税体形が崩れ始める段階が第三段階ということで、今まで源泉徴収になれていた人たちは、海外に出れば源泉徴収はかからないということで、なるべく安いところにお金を回していくということになりますので、それによってかなりの減収が生じる可能性があるわけです。こういう場合に、総合課税だということを徹底していくということも必要なんですが、同時に何らかのモニター制度あるいは情報の整備といったものが必要になるだろうということがこの関連では言えると思います。
 それから次に、金融商品に関しては先ほど申しましたが、金融サービスの相互参入に伴いましてある程度わかりやすい税制に変えていく、長期、短期あるいは金融商品ごとというふうな税制に関して、なるべく選択しやすいような税制に変えていくということが二番目です。
 それから最後に、有価証券取引税と今後の税制のあり方ということについて申し上げて終わりにしたいと思いますが、有価証券取引税というものは、売却時に〇・二一%ということになりまして、こういった取引税みたいな形をとっている英国、フランスから比べますと、税率そのものは若干低く設定されている。この考え方というのは、要するになるべく薄く、広く資産性の所得に税率をかけるというふうな考え方が背景にあると思います。
 これがまず問題だということで、証券市場の活性化が必要だということが言われているわけです。つまり、取引コストが高いと金融市場が活性化できないというのがその理由になっています。
 確かに、売買代金が低いと、委託手数料の方は高いのですが、有価証券取引税の〇・二一%というのは委託手数料に対してかなり低い額なので余り問題にならないのですが、売買代金が高くなっていくと、手数料の率が今度は逆に下がってきます。有価証券取引税は〇・二一%で一律なので、手数料の率が下がってくるに応じて何かだんだん上がっていってしまうという、つまり有価証券取引税の方がだんだん目につくようになるというような逆の、クロスの関係がありまして、大口にとってはこの有価証券取引税というのはかなり投資家負担を拡大しているというような、目につくという考え方が出てきているわけです。
 それで、こういうふうな問題点は残っていますので、取引が大きくなればなるほど有価証券取引税が大きくなってくるというのはやはり問題だという場合、それから、損した場合でも有価証券取引税はかかるというようなことで、何かここは何とかならないかということになってくるのだと思います。
 それで、ある程度の調整が必要だと思うのですが、どういう調整をしたらいいかということが最後のポイントでございます。
 この点について言えば、もう一つの譲渡益課税とあわせて調整が必要なのではないかと思います。
 譲渡益課税について言えば、現在二種類方法があります。申告分離という考え方で、譲渡益に対して二〇%、もう一つは譲渡代金の五・二五%をみなし利益、これは世界にない考え方でございますが、そのみなしに対して二〇%の税率という考え方なんです。
 この二番目のみなし利益という考え方がかなりあいまいではないか、これがちょっとグローバルスタンダードから考えますとひっかかるところだということで、この選択肢を廃止する方向に持っていったらどうかということになります。ただ、現実にはみなしで申告している方がかなり多いわけなので、投資家にとっては、このみなしを廃止されると相当困るという意見も出そうなのですが、この辺がこれからの非常に大きなテーマになると思います。
 それで、実際にもし源泉分離をやめますと、申告制になりますので、すべての投資家がすべて全員申告をしなければならないということになります。これも非常に大変なことで、それぞれが申告を準備しなければいけない、それから申告漏れが生じる可能性等々ありまして、有価証券取引税を撤廃して、なおかつみなしをやめてしまいますと、完全に申告ということになりますので、そうなりますと、今までそれになれていない投資家は一体どうするかというような問題が生じる。
 そこで、総合課税あるいは納税者番号制度というのがあるのですが、私は、この議論をすると相当時間がかかりそうだし、国民全体が投資家になるとも限らないし、むしろ私の選択肢としては、有価証券取引税をある程度残すことによって、きちっとしたインフラ部分としての投資家の状態は終えるような形に残しつつ譲渡益課税に移行していくというのが望ましいのではないかと思います。
 以上、終わらせていただきます。(拍手)

発言情報

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発言者: 竹内佐和子

speaker_id: 28425

日付: 1997-05-21

院: 衆議院

会議名: 税制問題等に関する特別委員会