中西真彦の発言 (税制問題等に関する特別委員会)
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○中西参考人 中西でございます。
それでは、私は、一産業人という立場から、一言御意見を申し上げたいと思います。
まず、レジュメの中に書いてありますように、総論として四点申し上げます。
それは、税を取り巻く環境といいますか、経済社会構造の変化について述べ、第二点で、危機的な財政状況と、それに対して徹底した行財政改革が必要であるということを申し述べます。第三点で、税体系の抜本的改革が今こそ必要であるということを申し述べて、第四点で、国民的な政策課題の解決と税制の役割について述べてみたいと思います。
それから、総論が終わりまして、今度は、私は産業人でございますので、企業として非常に関心の高い個別項目のあり方につきまして、五点ほど申し上げます。
一つは法人課税、第二に土地税制、第三に金融・証券関連税制、第四に個人所得税、住民税、第五に相続税ということでまとめていきたいと思います。
まず、税制のあり方について述べさせていただく前に、現在及び将来の税制を取り巻いております環境について、一言述べてみたいと思います。
御案内のように、我が国の出生率は今他の先進国の中でも最も低くて、夫婦二人で一・三人か、たしかその辺ですか、非常に低い。世界に例を見ないスピードで、逆に高齢化は進んでいまして、まさに超少子・高齢社会を迎えようとしております。これによって、勤労世代の人口が減少して、今後増大する一方の社会保障関連の各種サービスに伴う社会的費用を支える担い手が非常に著しく減少することになりまして、勤労者一人当たりの負担や企業の負担はますます増大していく、こう考えねばならぬと思います。この状況をこのまま放置しておけば、また、社会全体の勤労意欲の減退や経済活力の衰退は当然危惧されるわけでございまして、これに対して税制のしかるべき手を打っていかねばならぬと思っております。
一方、経済社会は、これまたますますグローバル化、ボーダーレス化しておりまして、人と物と金と情報が、これは一国の思惑や規制を超えて、規制が少なくて負担の軽い国へどんどん選択して動いていくということになっておりまして、その結果、いや応なしに制度や負担は国際的な平準化の方向に向かわざるを得ない。経済活動に対する、いわゆる中立性の確保が当然そこで求められてくることになると思います。これは、さっき竹内先生もおっしゃいましたが、まさにグローバルスタンダードという視点が非常に重要になってくると理解しております。
このように経済社会構造が変化する中で、我が国の財政状況は、もう今さら私が申し上げるまでもなく、四百四十二兆円という債券発行残高がありまして、隠れ借金なんかも入れますと大変な額のようでございます。この平成九年度予算、ちょっと辛口のあれを言わせていただきますと、国民の多くが不急と思うような事業が九年度予算でも予算づけされたようなことでございまして、こういうことをやっておると、債務は際限なく拡大していくのではなかろうかと心配しております。
このような構造的な赤字体質の持続は、これはもう対外的にも我が国の威信を大きく失墜しかねないわけでございまして、こうした最悪の財政状況の中で、公的サービスを支える財源であります税の今後のあり方を検討する前提としては、多くの産業人にこの税制の意見を、私も今回、ここへ出るに当たって意見を聞いてきたんですが、皆、十人が十人申しますことは、今言われております構造改革、省庁、特殊法人の統廃合、公務員の定員削減や規制緩和あるいは地方分権の推進など、国、地方ともどもに、徹底した行財政改革をまず断行してください、そして効率的な行政によって歳出削減を図ることが先であって、その上で、すべての税制改革の意見は出てくるという意見を皆さんおっしゃいます。
構造転換が急がれる今日、経済社会を支える一つのシステムとして、これまでの税制もいろいろ改革がなされましたが、ここで抜本的な改革が不可欠になっておる、私はこう考えております。私は政府税調のメンバーでもございますが、この点も、ことしの政府税調でも強く申し述べてまいりたいと思っています。
それから、高齢化の進展とともに急増します、さっき申し上げました社会保障費など各種公的サービスに要する費用も、今の税制の枠組みの中ですべて賄ってまいるといたしますと、結果的に、個人や企業に対してより一層重い負担を強いることになります。行政改革による財政削減効果や受益者負担の考え方の活用などを視野に入れながら、国民や企業の間で、これはさっき中里さんがおっしゃいましたが、広く薄く負担していくこと、税制としてはそういう税制が望ましいと私は考えております。
その意味では、私は、直接税に過度に依存してきた現在の税体系を徐々に改めていって、中長期的には、やはり直間比率を是正していくことが不可欠である、これが非常に税制の方向としては大事であるということで、中里さんと全く同じでございます。
かつて、御案内でしょうが、英国でロイド・ジョージという総理大臣がおって、英国から貧乏人を追放しようという旗を掲げて、所得税、法人税ともども最高税率を九〇%まで持っていったのですね。その結果、英国は富の再配分をやって、貧乏人はなるほど追放できたのですが、英国から、背骨のある人間と、頭脳と、企業の優秀なのは全部アメリカに脱出した、その結果、英国の没落が始まったと言われておりまして、私は、さまざまな理由もあるでしょうが、大英帝国の没落はこの税制が極めて大きな要因であったと理解しております。
また、この改革の範疇は個別項目の見直しに終わることなく、所得、消費、資産の課税全体にわたるバランスの見直しもこれまた必要でございまして、その際に、当然のこととして、負担は公平、中立にして簡素であって、かつ国際的に見て整合性のとれたものでなくてはならないと思います。
また、今後の我が国において、このメガコンペティション時代を生き残っていくためには、通産省や政府がおっしゃっておるように、何よりも科学技術の振興がプライオリティーとして大事なことだと私は思っております。
また、通産省が、経済構造の改革と創造のためのプログラムというものを、全省庁横断的なプログラムを産構審で書き上げまして、この内閣議にかけたようでございますが、私も産構審のメンバーとしてこれに参画しました。産業構造改革、経済構造改革、今橋本総理によっていろいろな改革が言われておりますが、私は、財政構造改革も当然これは国家の大命題でありますけれども、プライオリティーとしては、経済構造改革にともかく手を打って、今産業転換が求められておる経済界で産業転換、構造転換をやらすということが先じゃないか。産業が沈むと、当然、賃金カットも始まれば、残業もなくなるわ、雇用の調整も入るわ、もう大変なことになってきて、すべての財政構造計画も挫折することに結びつく、したがって、プライオリティーは、まずここで経済構造改革が重要である、それにあずかってやはり税制が一番キーになる、私はこう理解しておりますので、やはりその辺、税の体系の見直しに力点を置いていきたい、こう考えております。
以上のような認識のもとで、さっき申し上げました今後企業にとって急を要する個別税目について、五点ほど所見を申し述べたいと思います。
まず第一に、法人課税のあり方ですが、我が国の法人は、御案内のように、欧米諸国に比べまして相対的に高い税負担を強いられております。日本は、実効税率が、国税と地方法人事業税合わせまして四九・九八でございまして、欧米は、英国、アメリカ、ドイツとも、まあドイツが非常に高かったのですが、今般思い切って四〇か四一ぐらいに引き下げたようですから、アメリカ、ドイツ、英国ともに四〇%前後ということで、日本だけが断トツで高いわけでございますね。これは当然我が国の空洞化を加速しますし、外国企業の我が国への進出も阻害しておる、こうなっておりまして、我が国の法人税制は、市場原理のもとでの成功者の十分な資本蓄積を妨げて、将来の投資循環にも大きな制約になっておると言わざるを得ないと思います。
自由主義経済においては、弱者を支える制度的補完は当然最低限必要と考えられますが、過度に応能に依存し過ぎる課税は社会全体の活力を奪い、向上意欲を損なうことになりかねない、こう考えています。これを抑止するためにも、法人税、法人事業税などの思い切った引き下げによって私はそれに対応する必要があると思いますので、この四九・九八を四〇%に、欧米並みに引き下げるべきである、こう思っております。
ちなみに、APECではシンガポールが二〇%台ですね。APECは大体二〇%から三〇%台でございまして、日本の中小企業などは今後このAPECの企業とまさにボーダーレスの競争をしていかなきゃならぬわけですから、これだけの差がありますと大変な負担と足かせになると言わざるを得ないと思います。
きょう、尾原審議官がおられて恐縮ですが、私は、この間、政府税調で、主税局が描きました、課税ベースを広げて、そしてその結果の減税財源でもって法人税を引き下げるというシナリオには反対をさせていただいたわけです。
なぜかというと、これも、確かに租税特別措置とかもろもろの課税ベースがタックスエロージョンを起こしておりまして、そういう課税ベースの拡大ということを否定するものではございませんが、そういった税収中立型の減税だけでは今の日本の産業界の法人税引き下げというものにはとても見合わない、さっき申し上げたように、少なくとも欧米並みのところと対等に戦えるところまで実質減税をやるべきであるということで、私どもは、昨年の課税ベースを広げてレベニュー・ニュートラルで一%か二%ぐらい下げるということに対してはあえて反対をしたわけでございます。
それで、問題は、実質減税に伴うその財源として、私は、これは冒頭申し上げたように、国、地方の徹底した行財政改革をやっていただいて、課税ベースの適正化とともに税体系全体の抜本的な見直しを考える必要があるのではないか、こう考えています。
ちなみに申し上げますと、私は大田区に住んでおりますが、大田はあの程度の小さな村で、村と言うとちょっと失礼ですが、六千人の職員がおるのですね。その上に東京都約二十万がおります。その上に国家があるわけですね。中身はどの程度を出しておるかといいますと、この間私は区長に聞いたのですが、あの緑のおばさんは、私はついこの間まで、ボランティアでやっておられると思って会釈をして通っておったのですが、何とあの緑のおばさんに、地方自治体、区は年収六百万出しているのですね。六百万というのは、中小企業のれっきとした世帯主であり管理職クラスですよ。だから、彼らが聞いたら涙を流して悔しがる金額ですよ、なぜにそれだけ高いあれを出しておるかということで。今の企業の法人実効税率四九・九八、五〇のうち地方法人事業税が一二%を占めていますね。国税は一二七・五ですが、欧米が大体三五・五ですから、まあそう差がない。これも三%か四%下げる必要があると思うのですが、余りにもこの地方事業税が高過ぎる。
地方の応益サービスがあるからいいのではないか。当然、地方行政のサービスに対する応益税的対価として払う必要があるということがあると思いますが、これは住民税でも払っているし、固定資産税でも払っているのですね。ですから、私は、ここのところは今後議論を詰める必要がありますが、ともかく高い、ここを減らさないと、企業の足に重い鎖をつけてASEANなりAPECと戦えということにならざるを得ないと考えております。
次に、土地税制でございます。
土地税制につきましては、さきのバブル経済期に地価抑制策として強化された土地税制が、バブル崩壊とともに地価が大きく下落したわけでございまして、下落したにもかかわらず依然としてその枠組みが残されておるということで、一方で土地の保有コストを著しく高いものとして、他方で土地の流動化を阻害するといった、経済活動の活性化を阻む要因がこの土地税制でございます。
私は、この際、これは政府税調で盛んに申し上げておるのですが、政府税調も、学者先生その他、いろいろな意見の方がおられまして、この土地税制に関しては頑として存置すべきである、政策税制措置として存置すべきだという意見が多うございまして、私どもはこれに涙をのんだわけですが、私は、資産デフレをとめる意味でも土地税制はこの際、特に地価税などは思い切ってもう廃止すべきであると思っていますし、それから固定資産税についても、土地の評価方法自体のあり方や地価公示価格の七〇%という評価割合が非常に高いのですね。
これは、御案内のように平成六年に一気に自治省が、きょうたくさんおられますが、自治省が七割評価に上げたのですね。それまで全国は、地方によって違うけれども、大体二〇%から二五%ぐらいの評価だったのです。それを突然七割に上げたということでありまして、この辺にも私は原因があると思いますので、今、軽減措置を自治省等が用いておられますが、私は、そういう小手先ではなくて評価の引き下げ、これをきちっとした理論づけをして引き下げなければいかぬし、それから標準税率の一・四にも場合によっては踏み込む必要があるのではないか、こう考えております。
当然、土地譲渡益課税については私はだんだん廃止の方向に持っていくべきだと思っておりまして、このことが土地市場の活性化につながり、また同時に、今問題になっています不良債権問題の解決にも貢献し、いわゆる資産デフレの解消にも役立っていく、こう考えております。土地税制問題は大きな重みを持った税制であると言わざるを得ないと思います。
金融・証券関連税制については、今、竹内先生と中里さんが詳しくおっしゃいましたので、私は省かせていただきます。
それから個人所得税、住民税ですが、個人所得税も、私は何も企業エゴで法人税を下げろと言っているのではございませんで、やはり税体系全般の中で、世界のグローバルスタンダードが、フラットな税制というのが多くの歴史の反省の中から出てきておるわけでございますから、私は、個人の累進構造ももう少し最高税率を引き下げてやって、子育てのサラリーマンなんかは、もう少しそこに税の負担を軽くするような措置を少子化対策とあわせてやってやるべきではないか。
この少子化対策は、ロングランには非常に大事な国家的課題だと思います。今のようなことをしていきますと、まず確実に日本はおかしくなるわけでございまして、若者が子供を産んで育てるということに、中国なんかは少なかったときにかなりある種のあれを加えたようでございますが、やはり日本もここまで来ると何らかの、例えば子供ができたら子供手当というか児童手当というか、そういうものまで考えるようなことが必要になるのではないかと思います。
最後に相続税のあり方で、これは、ウン百万の中小企業は押しなべてオーナー経営者でございます。当然、事業承継と個人の資産の相続とがラップしておりまして、ここのところにいろいろ問題がございますが、相続税も今、最高税率が七〇%という世界に例を見ない高さでございまして、俗に、三代でいかなる資産家もゼロになると言われておりますから、この辺も私は、事業承継を円滑に推進するという視点からこの相続税の引き下げをお願いしたい、こう思っております。
最後になりますが、私は、税制改革はそれ自体を切り離して論じるばかりでは意味がないわけでございまして、今橋本内閣が総力を挙げて取り組んでおられますこの行財政改革の成果をしっかりと視野に入れて検討していかねばならぬと思っております。今度、例えば財政投融資システム、第二の予算と言われておりまして、ブラックホールとか伏魔殿とか悪口を言われておりますが、何せ五十兆という一般会計予算に迫るほどの膨大な金が理財局の手で運用されておる。私は、これを悪く言えば、まさにブラックホールだということで、地方交付税なんかも、一般会計、特別会計、地方財政等にも全部絡んで非常に不透明なのがこの財投資産でございまして、この抜本見直しを今度総理から指示が出まして、私、そこのメンバーに、今後三回出席するわけですが、この辺もぜひとも深く掘り下げて、透明化と市場原理をここに導入していくことをすべきである、こう考えております。
そういうことをやりながら税の抜本的解決をするときに初めて国民的コンセンサスが得られると私は思うので、これをやらないで税改革をやれば、消費税引き上げに猛然と反対が起こりますし、何をやってもそうなると思うのですね。だけれども、さっき中里さんがおっしゃったように、消費税というのを悪者のように言いますが、直間比率の是正は今やまさに世界のグローバルスタンダードですね、これをどうしてもやらなければいかぬ。それをやるにはやはり行財政改革を思い切ってやって、それを踏まえて国民に理路整然と税体系のありようを訴えれば、私は、消費税のもう一段の引き上げたって一そういうことを言うと、ここで引き上げ論者になりますが、仮にそういうことも、国民を説得することは可能ではないか、こう思います。
これをやらぬ限り、中里さんはあと二十年ほどすると日本は明るくなるとおっしゃいましたが、私は必ずしもそう思わぬです。私は分水嶺だと思っています。通産省はこの日本改革のプログラムを五年と銘打っています、五年間で押さえていますけれども、私は、まさにこの五年ぐらいが分水嶺ではないかなと。だから、日本はこのまま非常に暗くて長いトンネルに突っ込んでいくのか、あるいは日はまた上るのか、その辺の分かれ道、ちょうどこの四、五年の対応の仕方でそれが分水嶺になる、こう考えております。
その辺で、ぜひ皆様の、先生方の御尽力をお願いいたしたいと思います。
以上です。(拍手)