工藤長義の発言 (大蔵委員会)

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○工藤参考人 おはようございます。さくら銀行の工藤でございます。
 さくら銀行は、昨年四月来、全国銀行協会連合会会長行として、今回の外為法改正にかかわってまいりました。私自身も、外国為替等審議会の法制特別部会に専門委員として参加させていただきました。このたびは、外為法改正について銀行業界を代表して大蔵委員会の皆様方に参考意見を述べよとのことでございますが、ほかにより適切な方が多数いらっしゃる中、まことに僭越とは存じますが、民間銀行の立場から所見を申し述べさせていただきます。
 外為法は非常に守備範囲が広い法律でございますが、大きく申し上げて、私ども銀行では、居住者間で行われる外貨にかかわる取引並びに居住者と非居住者との間で行われる円貨及び外貨にかかわる取引を管理している法律、このように把握してまいりました。
 現行法では、これらの取引は、外国為替公認銀行、以下為銀と省略させていただきますが、これに集中されております。これは、外為取引の実態を常時把握し、有事の際の規制を実効あらしめるためであると考えております。これがいわゆる為銀集中主義であります。
 現行制度は、貿易を生命線とする我が国経済の発展のため、これまで一定の効果を上げてまいりましたが、我が国経済の国際化の進展に伴い、ユーザーの皆様にとって使い勝手が悪い部分が目立つようになってまいりました。また、今後の金融技術の発達、取引のエレクトロニクス化などの進展を展望いたしますならば、早急に制度を改めない場合には、金融取引が海外へ逃避するおそれすら出てまいりました。このような認識に立って、現行制度を抜本的に見直し、空洞化の危機に瀕している東京市場をニューヨーク、ロンドンに比肩すべきアジアの金融センターとして確立することが今回の外為法改正の眼目であると理解いたしております。
 本日は、民間実務家の立場から、この改正を、一、支払いに関する自由化、二、居住者間の外貨資本取引の自由化、三、居住者・非居住者間の資本取引の自由化、四、為銀制度の廃止、この四つの項目に分け、銀行業務、銀行経営にどのような影響を与えるかを中心にお話をさせていただきます。
 まず初めに、支払いに関する自由化でございますが、これは、先ほど申し上げた外為法の二つの守備範囲により、居住者が他の居住者との間で行う外貨での支払いに関する自由化と、居住者と非居住者との間で行う支払いに関する自由化にさらに分けられます。
 前者は、一般に居住者間外貨決済と呼ばれるものが中心となります。例えて申し上げますと、あるメーカーが商社を通じて製品を海外に輸出していて、その商社が輸出代金をドルで受け取った場合、現行法下では、メーカーがその原料輸入の決済などのため商社からドル建てで支払いを受けようといたしますと、個別に大蔵大臣の許可が必要となります。この許可は経済合理性のあるものについては認められておるというふうに承っておりますが、外為法改正後は、許可手続自体が不要となりますので、より多くの居住者が居住者間外貨決済を行うことが見込まれます。この結果、従来余り一般的でなかった国内での外貨送金取引や外貨預金取引の増加も予想され、私どもは、これらの商品・サービスの内容をお客様が利用しやすいように現在レビューしておるところでございます。
 居住者間外貨決済の増加が銀行の収益にどのような影響を与えるかにつきましては、従来必ず発生しておりました外貨と円との通貨の交換、転換取引がどの程度減少するか国内の外貨送金手数料がどの程度になるか等さまざまな要因の組み合わせが考えられまして、予想は非常に難しゅうございます。ただし、全体といたしましては、外貨と円との交換取引、転換取引が減少いたしますので、手数料は減少する方向にあるもの、このように考えております。
 次に、支払いに関する自由化のうち、クロスボーダー、すなわち国境をまたがるものでございますが、この中で最も影響の大きいのは、非居住者との受け取り・支払いの相殺でございます。改正後は、第三者を含む複数の海外拠点との相殺、いわゆるマルチネッティングが事後報告のみで可能となります。海外に多数の拠点を持つ企業は極めて効率的な資金管理が可能になるものと思われます。
 銀行にとりましては、従来取り扱っていた外国為替取引が企業内で相殺される分だけ減少いたしますので、収入の減少となることが予想されますが、逆に企業にとりましては、その分コスト削減になるわけでございます。しかし、銀行にとりましても、新たなビジネスチャンスがないわけではありません。相殺を行う企業は、正確、効率的な相殺を実施するために何らかのコンピューターシステムを必要とするでありましょうし、また、相殺を効率的に行うためには、日本の本社が各海外拠点の資金ポジションを常時リアルタイムで把握する必要も出てまいります。銀行は、このような資金管理システムをトータルで提供することで、新しいビジネスの展開を図っていく考えでございます。
 二つ目の項目である居住者間の外貨資本取引の自由化のうち、銀行の営業に対する潜在的影響力が最も高いのは、外国為替業務がだれにでも営めるようになるということでございます。
 新しい外為業務の担い手としてどのような方が参入してこられるのかにつきましては、現状、来年四月以降の参入を明言されておる企業も特にございませんで、予想は困難でございますが、当面は、外国為替取引を単独で提供するというよりも、既存の取扱商品と外為商品を組み合わせた商品を提供されるのではないかと推測いたしております。もちろん、銀行と同等ないしそれ以上のサービスを銀行より安価に提供する新規参入の方があらわれれば、銀行は顧客を奪われ、銀行収益は打撃を受けることになります。
 第三の項目である居住者・非居住者間の資本取引の自由化の中で、銀行経営にとって極めて重要な意味を持ちますのは、居住者と海外の金融機関との資本取引の自由化であります。と申しますのも、今回の改正により、単に外為業務のみならず、預金、貸し金を含むすべての銀行業務において、邦銀は海外の金融機関と競争することになるからです。すなわち、居住者は、海外の金融機関に預金をし、その預金から送金を行うことによって証券を購入したり海外直接投資を行うことが事後報告のみで自由に行えることになります。
 したがいまして、ニューヨーク、ロンドン並みの国際金融市場となるため、外為法が改正されるとともに、他の金融監督・規制、税制、会計制度がグローバルスタンダードに達することが、邦銀が海外の金融機関と対等に競争するために必要となってまいります。外為法が文字どおりビッグバンのフロントランナーとなって、他の改革が進展することを期待いたします。
 すなわち、各国の金融市場をレースに例えさせていただきますと、外為法改正は、我が国金融システム改革という集団の中で、鼻の差先行しているフロントランナーとの位置づけではないかと思います。ただし、我が国金融システム改革という集団は世界の金融市場の中では第二集団でございまして、第一集団は、ニューヨークとロンドンが激しいデッドヒートを繰り広げながらその速度を速めている。外為法改正に続く諸改革が速いピッチで進まなければ、第一集団を追撃するどころか、第三集団、第四集団にも追い抜かれてしまう、このような状況にあるのではないかと考えております。
 具体的に申し上げますならば、規制・監督面では、金融持ち株会社の導入、それに伴う業態間の相互参入が早急に認められる必要があります。御存じのとおり、欧州の銀行は、ユニバーサルバンク方式により証券業務を行うことが認められております。米国の銀行におきましても、グラス・スティーガル法によります銀行と証券の分離の実質的な緩和が進行いたしております。これら欧米の金融機関と商品提供力、商品開発力において対等に競争していくためには、我が国におきましても、銀行の証券子会社の業務範囲にかかわる制限の撤廃など、制度面の整備を早急に行う必要がございます。その他、金融先物オプション取引に対する取引所税の撤廃など、税制面の問題につきましても早急に対応する必要があると考えております。
 ビッグバンは、従来の漸進主義からの決別を内外に示すネーミングと理解しております。外為法改正の後に続く諸改革が迅速に進むことを強く希望する次第でございます。
 四番目の項目である為銀制度の廃止は、エンドユーザーにとっての規制緩和及び外為業務への新規参入の自由化と平仄を合わせたものでございますが、銀行にとっての規制緩和という側面も有しております。すなわち、為銀は、これまで銀行法のもとでの規制・監督に加えて外為法上の規制・監督をも受けておりました。具体的には、持ち高規制ですとか、外為業務を営む店舗にかかわる認可などの規制を受けておりました。今回の改正によりまして、これらの規制は廃止され、外為業務の外部委託なども含めまして、従来以上に効率的な業務運営が可能になるものと考えております。
 以上、外為法改正が銀行業務に与える影響について、四つの項目に分けてお話をさせていただきました。
 銀行収益への影響という点から、再度まとめさせていただきます。
 外為業務への影響という点から申しますと、企業間での相殺など銀行を通じない支払いの増加や新規業者の参入による競争の激化など、基本的には銀行にとっての外為業務からの収入は減少するものと考えられますが、新外為法がお客様の利便性の向上に資すること大であること、東京市場の活性化が国民経済の発展にとって望ましいことであり、それがひいては銀行の経営にとっても望ましいことである、このように考えまして、私どもは今回の改正に賛同いたしておるわけでございます。
 銀行は、当面の収益の減少を業務の合理化や管理システムの販売によって補うつもりでございます。
 ここで、銀行界からぜひともお願いしたいことは、業務の合理化を進めていくためにも、支払いに関する確認義務、海外送金に関する本人確認義務、外為取引にかかわる報告義務など外為法上の諸義務や資料情報整備にかかわる報告義務を極力簡素化していただきたいということであります。いずれも政省令や個別の法律により今後詳細が定められるわけでございますが、規制緩和の流れに沿った形での簡便な内容、方法、特にコンピューターシステムを使った銀行の事務処理になじむようなものとなるよう御配慮をお願いしたいと思います。
 繰り返しになりますが、今回の外為法改正が銀行の業務に与える影響は、狭い意味での外為取引に限定されるわけではございません。国内の預金、貸し金を含めましたすべての銀行業務が海外の金融機関との競争にさらされます。しかし、私どもは、この点をネガティブにばかりとらえているわけではございません。例えば、銀行は、ニューヨークやロンドンにスワップなど金融デリバティブの取引を行う専門会社を子会社として持っておりまして、現地の優秀な専門家を雇用して業務を行っていますが、これまで、これらの子会社は日本の居住者と直接取引を行うことができませんでした。外為法改正後は、海外の子会社を通じた先端金融商品の国内のお客様への提供が従来よりも格段に容易になるものと期待しております。
 このように、非居住者との取引が自由化されたことの影響は必ずしも銀行にとってマイナスとは限らないのですが、国際標準に満たない規制、税制、会計制度が改革されず、金融資産、金融取引の海外逃避が起こった場合、銀行収益に多大な影響があることは先ほど申し上げたとおりでございます。この点をぜひとも御理解賜りたいと考えております。
 最後に、東京市場がアジアの金融センターとして再生する可能性について申し上げたいと思います。
 発展を続けるアジア市場の中で、膨大な金融資産を有する投資家を背後に持つ東京市場が欧米型の市場原理に基づく国際金融市場となることは、アジア経済の一層の発展に寄与するところ極めて大でございまして、世界経済の発展にとりましても極めて望ましいことでございます。したがいまして、私は、東京がアジアの金融センターとなるニーズは高いと考えております。このニーズにこたえるため、金融制度改革によりインフラを整えるとともに、私ども邦銀も、ビッグバンを通じてみずからを変革し、世界の一流の金融機関に生まれ変わる努力をしてまいる所存であることを申し上げて、私の意見陳述を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 工藤長義

speaker_id: 23529

日付: 1997-04-15

院: 衆議院

会議名: 大蔵委員会