伊藤裕夫の発言 (内閣委員会公聴会)

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○伊藤公述人 御紹介いただきました伊藤でございます。本日は、この公聴会にお呼びいただきまして、ありがとうございます。
 私は、民間シンクタンクでこの数年、国内、海外のNPOに関しまして調査を行ったりしている立場でございます。また、個人的にも、NPO推進フォーラムというNPOの活動をサポートする団体の運営委員をやっております。そういった立場から、社会政策との絡みの中からNPOに関する意見を述べさせていただきたいと思っております。
 NPOへの関心というものがこの数年、日本においても盛んになってきているわけですが、実は、非営利組織に対する関心は、世界的にももう既に二十年ほど前から議論されている問題じゃないかと思うわけです。それには、大きく二つの要因があったと思います。
 一つは、外的な要因でございます。
 いわゆる福祉国家の危機と言われている背景の中で、NPOへの関心が高まってきていると考えております。ちなみに、福祉国家の危機というのは、一九八〇年のOECDのパリ会議のときのテーマでございます。すなわち、このとき、一九七〇年代を通じた低成長、また、それをもたらす財政危機の中で、あるいは社会問題自体がグローバル化していく、さまざまな形で拡大していく中において、これから先の国家の運営の中でどのような方針があるか。その中で出されたものが今日まで続いております。例えば、民営化、規制緩和、あるいは分権化、そしてNPO、NGOの参加といった問題じゃなかったかと思うわけです。
 また、第二の問題としまして、内的な要因もございます。
 これは、市民社会自体がこの二十年を通じて非常に成熟化してきた、そして市民自身の能力というものが市民社会の中に確立してきたということじゃないかと思うわけです。具体的には、ボランティアといいますか自主的社会参加活動というよう宣言葉が、既に一九八三年度の国民生活審議会の総合政策部会の報告書の中で登場しております。また、八〇年代を通じまして市民運動自体も、それまでの反対あるいは要求を中心とした運動から、提案あるいは自主事業を行っていく活動に変化してきております。また、九〇年前後からは、企業の社会貢献といった動きもあり、経団連にそういった委員会ができる、こういった動きがございます。
 このようにNPOへの関心というものは、外的にも内的にもさまざまな形で、この二十年の間、徐々に積み重ねられてきて今日に至ってきており、それらが求めているものは、一言で言うならば、新しい社会システムというものを考えていく、そのようなものとしてNPOというものがあるのじゃないかと考えております。すなわち、官民の役割分担を再編成していく、あるいは自由な市民活動を保障することによって新しい社会のエネルギーを生み出していく、このような大きな展望の中でまずNPOというものを考えておきたいと思うわけです。
 このような背景があるゆえにこそ、今回におきましても、NPOの法人化に関する議員立法が、しかも三党から出されていった、このように大きく評価したいと思っているわけでございます。
 以上のような観点に立ちますと、いわゆるNPO法案に対して期待されることは、大きく二つあるのじゃないかと思っております。
 第一点は、社会システムの変革の展望がきちんと示されているかどうか。
 具体的には、今国会でも討論されております一連の改革法案との連携性というのがあるのかどうか。行政改革、規制緩和、地方分権、情報公開といった一連の改革法案とのつながりというものが明示されていることが必要じゃないだろうか。そして、具体的にはそれは法案の中におきましては、いわゆる許認可制度とか、あるいは管轄官庁制度といった、これまでの公益法人を縛っていたシステムに対して違った取り組みがなされているかどうか。また、非営利活動の枠というものを余り限定的ではなく、より広い形で認めていく、多様な人々の価値観というものが反映できるようなものにしていく、こういった要素があるのかどうか。
 また、複雑な民法特別法というものが今現在あるわけでございますけれども、こういったものがきちんと今後整理されていく方向にあるのかどうか。このような社会システムの変革の展望が示されているかどうかが第一点。
 第二点といたしまして、こうした形で今後生まれてくる非営利市民活動がきちんと社会の中で自律していけるのかどうか。いわゆる補助金漬けになっていくのではなく、社会の中でそれ自体がみずからを再生産していくようなシステムかどうなのか。具体的には、単にボランティアという形ではなく、ボランティアを超えた形でいくこと、すなわち有償スタッフがきちんと保障されていくということが必要だと思います。すなわち、価値を実現するための新しい職業集団をつくっていく、そのようなことが保障されているかどうか。
 また、自主的な財源を確保するための仕組みが考えられているかどうか。収益事業を行うこと、あるいは寄附税制によって社会からさまざまな支援を集めていくだけのシステムがあるかどうか。
 また、三番目には、NPOを支援するNPOといいますか、NPOの中において分業体制がつくられ、そして非営利組織をさらに財政面、人材面、さまざまな面で支えていく、このような社会とNPOをつなぐような、インターメディアリーと言われておりますけれども、そのような仲介団体というものが育っていく、そのような可能性を含み得るかどうか。
 以上のような点がNPO法案にきちんと盛り込まれているかどうかということが大きなメルクマールになると考えております。
 そういった視点から見てまいりますと、今回の法案に関しましては、私自身はまだまだ不備な点が多いのじゃないかと思っております。
 私自身、原則としてはNPOに関する法人法は絶対に必要であり、早急につくるべきであるという立場でありますが、しかし、現在上程されている案を見る限り、例えば与党案に関しましては、一つは、十一項目の列挙、これはどうしても、その十一項目というものを具体的に列挙することによって行政の恣意性というものがそこには反映されてくるのじゃないだろうか。それから、社員の二分の一ですか、三分の一以下でしたかが有償でなければいけないという形で、これは職業という問題から見ると非常に問題じゃないかと思います。ほかに社員名簿等々の問題がございます。
 新進党案に関しましては、先ほど来出ております地域性といいますか、社員の過半数、あるいは役員の三分の二以上が同一地域に住むということ、これはかなり全国的な組織、あるいは先ほど言いましたインターメディアリーといった、NPOを支えるためのNPOをつくっていくにおいては非常に問題が多いのじゃないかと思っております。
 共産党案に関しましては比較的問題点は少ないと私は見ておりますが、しかし、既存の公益法人制度との関係性というものが今後どのようになっていくかということが非常によくわからないという気がしております。
 そのような問題点を含んでおり、こういった問題点を今後ぜひ討論の上、修正していただきたい。そして、先ほど申し上げましたNPO法に期待されております社会システムの変革の展望、それから非営利団体、非営利活動というものが自律的に社会でみずからを再生産していくための仕組み、こういったものをなるべく盛り込めるような形で考えていただきたいと思うわけです。
 また、今回の法案が何らかの形の修正をとり成立した後も、この法案を育て、より有効にしていくための問題、特に二年後の見直しに向けてのさまざまな問題、これには大きく税制の問題と、それから民法を含めた既存の公益法人制度の問題がございますが、こういったものに対しても十分な目配りを含んだ検討をお願いしたいと考えております。
 以上でございます。(拍手)

発言情報

speech_id: 114004914X00119970603_014

発言者: 伊藤裕夫

speaker_id: 17961

日付: 1997-06-03

院: 衆議院

会議名: 内閣委員会公聴会