前田正の発言 (本会議)
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○前田正君 新進党の前田正でございます。
私は、新進党を代表して、平成九年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案について、橋本総理並びに三塚大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。
この法律案は平成九年度予算の財政的裏づけをする法案ではありますが、その予算案は以下に申し上げるように大きな問題点を抱えたものであります。
まず第一に、景気への配慮を著しく欠いていることであります。
政府は、足元の景気は回復してきているとの前提のもと、平成九年度において一・九%の実質経済成長率を実現できるとしております。しかしながら、消費税五%への引き上げや所得税の特別減税の打ち切り、医療費などの社会保障負担の増を合わせて九兆円にも上る国民負担増を優先させた九年度予算案は、景気の回復どころか大きなマイナス効果を生じさせるものであります。特に、GNP、国民総生産に消費の占めるウエートが約六割にも達するだけに、本年四月以降予想される個人消費の落ち込みが景気に与える影響は大きく、政府の見通しは到底実現できないと考えます。このことは、最近の株安、円安に見られるように、市場関係者の見方からも明らかであります。
先般のG7蔵相会議の際の日米蔵相会談においても、大蔵大臣は内需拡大による景気回復の実現を米国のルービン財務長官から要請されたと報道されておりますが、九年度予算案はそのような国際的要請からもかけ離れたものとなっていると言わざるを得ません。そこで、まず平成九年度予算案が景気に与える影響についてどのように考えているのか、総理に御所見をお伺いいたしたいと思います。
また、二兆円規模の所得税、住民税の特別減税の継続や有価証券取引税、土地税制の見直しにより、個人消費など民間市場経済の活性化を誘発すべきであると考えますが、この点についても総理の御所見をお伺いいたしたいと思います。
第二に、九年度予算案は財政構造改革への取り組みという点でも不十分なものと言わざるを得ません。
国及び地方の債務残高は四百七十兆円を超え、これに国鉄長期債務等のいわゆる隠れ借金を加えた総額は約五百二十兆円となり、国内総生産を超えております。この額は、一万円札で積み上げれば実にエベレスト山の五百四十倍もの高さになり、国民には到底考えられない金額であります。このような現状を踏まえれば、本格的な財政再建に取り組むことは急務の課題でありますが、問題はその手法であります。単なる歳入と歳出のつじつま合わせではなく、既存の制度やシステムを見直す構造改革によって財政再建を果たすことが肝要であることは当然のことであります。
政府は九年度予算を財政構造改革元年予算と称しておりますが、さて、実際にその中身を見れば首をかしげざるを得ないのであります。国債費を除いた一般歳出を租税収入の範囲内におさめたなどと言っておりますが、補正予算をあわせて考えてみると、これがいかに粉飾したものであるかがわかります。また、公共事業の配分比率が固定化しているなど、予算のばらまき構造が温存されたままであります。確かに特例債いわゆる赤字国債は減額をしておりますが、これは九兆円にも上る国民負担増によってクリアされているだけではありませんか。公債減額のみをもって財政構造改革と言っているのではありませんか。
政府は、国民負担増のほかに、九年度予算のどこが構造改革の名に値すると考えているのか、大蔵大臣の見解をお伺いいたしたいと思います。
真の財政再建は、まず減税や規制緩和などにより景気の回復を確実なものとした後、公共事業費などに見られるむだな歳出や社会経済情勢の変化に伴い不要となる歳出を、個別の歳出のレベルで徹底的に削減することにより行うべきであると考えます。また、毎年の単年度予算の財政収支にこだわらず、例えば五年間程度の期間の中で財政再建が実現できるような、中期的な視野を持って財政運営を行うべきであると考えます。
そのために、まず手始めとして公共事業関係費のばらまきをやめるなど、歳出について聖域を設けず思い切った削減を行うことにより減税財源を捻出することは考えられないでしょうか。特に、その例としてウルグアイ・ラウンド対策費を見直すなど、思い切った決断がなければ到底財政再建を真剣に考えているとは言えないのではないでしょうか。中期的な財政再建のビジョンとして、例えば財政再建五カ年計画のようなものを策定し、国民の前に明らかにすべきではないかと考えますが、大蔵大臣の明確な答弁を求めます。
言うまでもなく、赤字国債の発行は、これまでの歳出の経常的な収支で賄うという財政法の基本的原則に著しく反しており、次世代に資産を残さず負担だけを残すことになり、世代間の公平という観点からも問題があると指摘してまいりました。その発行は厳に回避すべきとの方針を繰り返して提言してきたところであります。
政府は、昨年十二月に財政健全化目標に関する閣議決定をされ、この特別公債について、二〇〇五年度までのできるだけ早期に脱却をするという目標を立てておられます。平成八年度の発行額より約四・五兆円減額をして約七・五兆円にしたと政府は言うかもしれません。しかし、繰り返しになりますが、問題はその手法であります。
私は、平成九年度については、減税の実施、規制緩和等の構造改革を通じ、まず第一に景気回復を確実にし、日本経済を再建することと同時に、行政府として、みずからの定員削減をし、民間委託の促進などの行政改革に一層取り組む必要があります。さらに、社会保障、公共事業、地方財政、防衛、農業、文教といったような国民一般に幅広く受益が及ぶ分野においても、財政の果たすべき役割や守備範囲を大胆に見直し、聖域を設けることなく、制度の根本までさかのぼった検討、見直しをも行う必要があります。
高名な経済学者のシュンペーターは、かつて「馬車を何台つなげてみても汽車にはならない」という有名な言葉を残しました。技術革新には原理的な転換が必要ということを極端に言いあらわしております。経済財政構造改革も原理的な発想の転換が必要であると思います。このことは、二十一世紀を目前に控えた我が国のとるべき道であるということを、この際、特に申し上げたいと思います。
最後になりますが、景気浮揚対策についてお伺いをいたします。
経済企画庁の月例経済報告では、景気は緩やかながら上昇傾向にあるとの発表がなされておりますが、国民にはその実感がまるでないとの声があちらこちらから聞こえてまいります。これは、先行きの不透明さもさることながら、政治不信を招く問題ばかりが続き、将来に向け明るい夢を持てるような話題が身近に何らないことに起因しているのではないでしょうか。まず隗より始めよ、小さくても国民が夢と希望が持てるようなことには政府も積極的に取り組んでいくことを望むものであります。
西暦一九六四年に東京で初めて夏のオリンピックが開催をされました。それを契機に日本は高度成長へと突き進んでいきました。冬季オリンピックは札幌、そして来年には長野で開催されますが、夏のオリンピックは東京以来開催されておりません。今まさに、二〇〇八年開催に向けて、私の地元大阪市、そして横浜市が招致活動を続けております。海外では、アメリカが、二〇〇八年開催に向けて六つの都市が立候補を決め、さらに、一九八四年に大成功をおさめ、大きな黒字と経済効果をもたらしたロサンゼルスも立候補を予定していると聞いております。
スポーツを通じ青少年の夢をはぐくむと同時に、大きな経済効果により景気浮揚にも通ずるこの問題について、もっと国民の理解のできるような政府の積極的な対応を求め、総理にその御所見をお伺い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕