角本良平の発言 (運輸委員会)

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○参考人(角本良平君) 三つに分けて申し上げます。
 第一は、責任の論理であります。
 日本国有鉄道清算事業団の債務の処理に当たっては、まず最初にこの事業団自体が負債増大を阻止できるようにつくられていたかどうかという問題でありまして、答えは否定であります。そうつくられておりません。
 営業収入のない組織ですから、当初に与えられた資産以上の返済ができるはずはなかったわけです。いわば一千万円しか資産がないのに三千万円の負債を始末せよと命じられておりました。差額の二千万円は返しようがありませんから、当初にそれは不可能と自己破産すべきでありました。債権者は、それは不良債権と処理すべき性質でありました。返済能力のない者に貸した責任が逆にございます。
 次に、資産の処分は、利子がかさまないように一日も早く実施すべきでありました。また、当初は、バブル経済のもとで価格も有利でありました。ところが、それを行わせなかったのは国と地方自治体でございます。事業団の責任ではございません。阻止した人たちはそれによって何らかの利益を得ていたのではなかろうか。一体、この行為が経済の常識に反していたかどうかは別にいたしまして、この場合は責任者は明確でありまして、被害者は事業団でございました。
 この時点で事業団は運営不可能と投げ出すべきだったのですが、実際にはそうしませんでしたし、利払いのためにさらに借りました。借りた方にも貸した方にも責任を生じたわけでありまして、返済能力のない者にお金を貸して、返さないと嘆いていても、これは解決にならないわけであります。
 以上三つの点、すなわち事業団の設置、土地処分の阻止、利払いのための債務増加の責任、この三つの責任が問われるわけであります。
 当然のことですが、事業団の債務は、その結果を招いた責任者が負うべきものであります。これが私の申し上げる責任の論理であります。法治国では当然そうであります。
 そこで、対策の議論は、この責任の論理に基づいてなされるべきでありますが、大変不思議な話が私の小さな耳にも伝わってまいります。
 例えば、国鉄が残した債務だからJRにも道義的責任があるという主張がございます。しかし、JRといっても、その利用者からの収入を主とする組織でありまして、JRの利用者が過去の政治、行政が発生させた債務にどうしてそんな責任があるのか説明できるでしょうか。大体、道義的というのは、法律制度上あるいは経済の論理によって説明できないことをもっともらしく言うための言葉であります。
 二つ目の例は、事業団は運輸省の所管だから運輸行政の全体の中で責任を持つべきだという話で、港湾や空港の経費を削ってこちらへ回せといった主張であります。これはいわばたかりの論理です。因果関係がつながらない者に金品をせびるわけで、隣には金があるから出せというような話であります。
 三つ目は、もっとひどい主張で、鉄道の欠損は道路の整備による、したがって事業団には道路の経費から金を出させようというものであります。確かに、道路が三十年前のままなら国鉄は安泰だったでしょう。しかし、向こうの商店が繁盛したのでこちらが寂れた、その分を向こうに賠償させよう。世の中ではこんなことは通用いたしません。
 以上が第一に申し上げる責任の論理であります。
 そこで、第二は、現状を悪化させないように、悪化の防止であります。
 十年間に事業団の債務は膨らみました。次の十年放置しておけば、何倍にもなるでしょう。その対策を今ここで我々議論しておりますが、第二、第三の事業団が次々と出てさましたら国民は対応できなくなります。
 次の十年に、私は、今の運賃政策のもとでは、大手民鉄もそうでありますが、JR各社は行き詰まり破滅すると思います。現在の運賃政策のもとで、大手民鉄でさえ過去二十一年間に十四年は、すなわち三分の二の年度は欠損でした。恐らくその前を調べてもやはり同じだったと思います。JRの場合は、貨物は既に今年度を含んで五年連続の経常損失と見込まれます。旅客では、北海道が三年連続になります。一体このような状態でJR本州三社といえども今後に欠損は避けられないと思います。
 法律では原価を償うことになっておりますが、一体世界の常識として、このように法律が明記しているにもかかわらず今申し上げた運賃政策が行われる、これはどうしてか理解のできないことであります。と申しますのは、今の運賃政策は収入は支出よりも少ないということを認めているわけであります。原価の算定方式につきましてはこの一月から改めたと言われておりますけれども、その原価と運賃とが結びついておりません。解説では、従来の運賃政策と変わらないんだということが言われております。
 ここで国鉄の欠損の経過を手短に申し上げます。それは事業団の債務の理解にも重要であります。
 国鉄の赤字の定着は六四年度、昭和三十九年度からであり、その前七年間は健全経営でありました。五七年と六一年の運賃改定で物価上昇に対応できたわけです。ところが、六三年に八%近くも物価が上がりましたのに対して、六四年一月に政府は公共料金値上げを凍結いたしました。さらに、十月東海道新幹線が開通しまして、営業支出が急増いたしました。国鉄の欠損といえばだれでも労使の争いを思い出します。しかし、その前に運賃抑制と大投資という二つの原因がございました。
 さらに、自動車時代になっていましたから、鉄道は道路交通で足りるところがらは撤退すべきで、民鉄は早くからそうしていたのに、六〇年代後半に国鉄が希望したときには政治は認めませんでした。それどころか、逆にローカル線建設のため六四年に日本鉄道建設公団を設置いたしました。これが三つ目の原因であります。
 六〇年代後半、欠損続きの国鉄は政治の干渉のもとに経営管理能力が低下しておりました。そこへ六八年に現場協議制という労使慣行が政府によって導入され、以後順法闘争と違法ストが定着いたしました。これが四つ目の原因であります。
 五つ目の原因は貨物輸送でありまして、産業振興の旗のもとに低運賃が強制され、さらに需要もないのに大投資を強制されました。
 最後に、六番目に、事業団と同じことが七一年度から起こりました。すなわち、利払いのために借金する政策で債務は増加し、八〇年代には金利負担が企業を押しつぶしてしまいました。結果がJRとなったわけですが、また事業団もそのとき生まれました。
 以上の六つの原因の中で、運賃抑制と投資の二つはJRを今も脅かしております。やがてローカル線の撤去も必要になります。貨物輸送は思い切った縮小をしないと小型の国鉄になるのが明らかであります。今後十年間に大手民鉄の大部分は何とか生き延びましても、JR七社はほとんど不可能と私は考えております。
 以上、第一に責任の論理を申し上げ、第二に現状を悪化させない、悪化の阻止を申し上げました。
 次は、第三に、それでは対策はどうするか。対策は、私は節約よりほかにないと思います。事業団の債務が政治、行政の指導によるものでありますから、国全体の財政の中で処理するよりほかにありません。国民としては、増税による増収よりも、その前に節約を望んでいると思います。国民の一人としてそう申し上げたいわけであります。
 幸いに、我が国の各部門の施設能力は増加してまいりました。交通部門を見ましても、これまでのように能力不足のために投資が必要というのではなくなっておりまして、また、一部の区間で確かに混雑し能力不足が言われましても、ここは資金があっても工事がもはや不可能であります。
 交通だけではなく、すべての部門において財政支出の削減が今や求められていると思います。削減される部分では、確かに産業の縮小も避けられません。しかし、それは時代の変化として当然起こるべきことでありまして、自動車時代になれば四十五万人の国鉄が二十万人のJRになる、これは仕方のないことであります。施設が整備されてまいりますと建設関係の縮小は当然であります。供給力が豊富になってまいりますと、今までの輸送能力不足時代の規制は必要ではなくなりまして、企業も行政もその面の要員は不要になります。このようにして経費を節約し、そして過去の債務を返して、同時に新しい分野にお金を使う、これが私の考えであります。
 交通について言えば、陸海空の投資は数年間、私は差し当たり半分に抑えたらいかがかと思っております。その間にもう一度今の投資を数字ではっきり評価していただきたいと思います。何が必要なのか、重点をはっきり決めるべきだと思います。整備新幹線あるいは大都市の地下鉄投資、いずれも必要と言われましても、建設の速度をいま少し緩めましても決して輸送力不足という問題は生じないと思います。輸送需要は今や停滞あるいは減少の段階に入っていると思います。
 このような縮小に対して景気対策を考慮せよと言われるかもしれません。しかし、利用率の悪い施設をつくるため一時建設期間中の資金を動かしましても、その資金の負担が今度は景気の足かせになります。それよりも、返すべきものは早く返して、返済された資金が有効に働いていく方が景気のためになると思います。
 最後に、我が国の交通投資がいかに巨大かという例を申し上げます。
 道路投資額は、国土面積が二十六倍のアメリカに匹敵する規模であります。西ヨーロッパ諸国の数倍であります。よく人口当たりの普及率がおくれていると言われます。数字の上では確かにそうでありますが、これは人口高密度国として避けられない宿命であります。現在の道路投資額を半分にしても、なお国際比較の上では飛び抜けて大きいわけであります。交通投資はたとえ財政問題がなくても縮小すべき段階に来ております。まして資金不足であれば縮小の必要があります。
 以上、御清聴ありがとうございました。あとは御質問いただいてお答えいたします。

発言情報

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発言者: 角本良平

speaker_id: 17441

日付: 1997-05-29

院: 参議院

会議名: 運輸委員会