プラサート・チチャイワタナポンの発言 (国際問題に関する調査会)

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○参考人(プラサート・チチャイワタナポン君) 本日は、参考人としてお招きいただき、アジア太平洋地域の安定と日本への期待というテーマで私の考えを表明する機会が与えられましたことに心から感謝を申し上げます。大変光栄に存じます。
 日本は世界で最も成熟した民主主義国の一つであり、この国会はその象徴であるように見えます。多分、この調査会は、国際問題を調査するという点で、今までの実績の面においても、この調査会のメンバーの構成においても他に例のないものだと思います。お招きいただきましたことを改めて感謝したいと思っております。
 さて、ここに御出席の皆さんがお気づきのように、日本は天然資源やエネルギーを十分に持たない、海外との貿易に依存している国でありますので、アジア太平洋の安定は日本にとって最も重要なことであります。それゆえに、平和的な国際環境、隣国の繁栄と安定は日本の生存にとって非常に重要でありましょう。
 こうした日本の生存条件を頭に置きながら、多くの日本の政策担当者は、アジアの人々、またアジアの政策担当者が日本にどのようなことを期待しているかをたびたび聞かれます。
 アジアは広いので、ここで私は東南アジア、またその地域機構であるASEAN、さらに安全保障と日本の経済協力の面に私の話を限定したいと思っております。
 また、ここで述べます意見は一人の学者としての考えであり、またタイ人である以上若干のバイアスがかかっているのです。どうかお許しください。
 冷戦の対立の構造が崩壊するとともに、東南アジアは長い間、独立戦争、ベトナム戦争、カンボジア問題などを経てようやく平和と安定の時代に入りました。一方、北東アジアでは今なお緊張、または武力衝突の可能性など諸問題が残っております。北方領土、台湾海峡、朝鮮半島、尖閣諸島、竹島問題などたくさんそのまま残っております。
 また、安全保障問題は若干形が変わってきました。一つのシフトとしては、海をめぐる諸問題に転換していることです。もう一つは、社会的安全保障の方に転換してきました。麻薬問題、エイズ、テロリズムなど社会的な安全保障の面が重視されてきました。
 北東アジアにそのまま残る緊張及び二つの安全保障概念のシフトという安全保障環境の変化は、皆様が御存じのとおりだと思いますが、日本は冷戦が終わっても、北東アジアの緊張、または安全保障の転換、そのシフトに大きく影響を受けている国と私は見ております。それゆえに、日本にとってはアメリカの軍事的なプレゼンスは引き続き重要です。また、米軍基地の意義は改めて評価されます。
 アメリカの軍事的プレゼンス及び在日米軍基地の重要性は東南アジアの国々も認識しております。しかし、その重要性の認識はだんだん薄まってきました。この重要性の認識を忘れてはいけないと日本の指導者がよく我々にメッセージを伝えてきました。ここで若干のギャップがあるように私は感じます。歴史を振り返ると、東南アジアは、この地域で影響や利害の拡大を争った大国の間の争いから痛々しい教訓を得ました。また、隣国の間の紛争や対立という苦い教訓も学んできました。
 この二つの教訓から、一九六七年にASEANが設立され、その後もさまざまな努力や実績を重ねてきました。ASEAN自由貿易地域、AFTA、ASEAN地域フォーラム、ARF、アジア欧州会合、ASEM、ASEAN10というビジョンなどはその努力、またその実績であります。ASEANは多角的、マルチなアプローチや地域対話、さらに非軍事的なアプローチを追求していくと私は思います。ASEANは、大国間の覇権争い、隣国間の対立を回避することを目標にさらに努力していくだろうと思います。
 ASEANが日本に期待しているのは何でしょうか。ここで幾つかの点を取り上げて考えてみたいと思います。
 第一に、あらゆる分野、とりわけ日本の市場へのアクセスを改善するという点です。ASEANとASEAN各国の関係をさらに強化することを期待します。
 第二に、米国や欧州とバイラテラルな交渉をする場合、これはASEANを不利な立場にさせないことを期待します。
 第三に、ASEANのイニシアチブで始まった会合、例えばASEAN拡大外相会議、ASEAN・PMC、ASEAN地域フォーラム、ARF、アジア欧州会合、ASEMへの積極的な参加を通してASEANを支援することを期待します。
 第四に、日本はミャンマーの軍事政権に対して人権状況を改善するよう外交的な影響力を行使することを期待します。日本は、ミャンマーの指導者たちと個人的なつながりを持っており、かつては巨額の経済援助をしてきました。外の世界を見るために、ミャンマーから日本へ多くの研修生を招くことができるのではないでしょうか。また、研修生を東南アジア諸国に行かせることも考えられます。
 さて、ODAについて言いますと、ASEANは日本の経済協力から徐々に卒業してきました。幾つかの国は日本の円借款からも卒業させられました。ここで、私は幾つかの点を指摘しておきたいと思っております。
 第一に、南南協力、特に第三国研修計画をより強化することを期待します。
 第二に、一層の情報公開が必要だと思います。情報公開は、国内外での理解と支持をもたらしてきました。一層の努力はより理解と支持を得られるだろうと思います。
 第三に、社会開発、ソーシャルディベロプメントは経済開発に劣らず重要な要素だと思います。
 このために、基礎教育にもっと注意が払われるべきだろうと思います。また、日本のNGO及び現地NGOがもっともっと利用されることを期待します。
 第四に、シビルソサエティー、市民社会の成長は、民主主義の発展や国民の参加に大きな貢献をする重要な要因です。シビルソサェティーは、タイや幾つかの国の中心的な国家開発のコンセプトとなってきました。
 第五に、被援助国は将来援助国になるでしょう。それを励まし、支援するのがよいことだと思います。これは日本を含むすべての援助国にとって重要な課題であると思います。援助哲学にもなり得ると思います。この哲学が採用されますと、援助のスタイルに大きなインパクトを与えると思います。
 最後に、私個人の意見を少し述べさせていただきます。
 今日、日本の国会は二つの重要な法案を審議中です。一つはODA基本法、もう一つはいわゆるNPO法です。ODA基本法はこれまで何度か国会に提案されました。NPO法は現在の国会で審議されると聞いております。日本の国会の尊厳が今シビアに試されているのではないかという気がします。国会が成熟した民主主義のシンボルであることを示せるかどうか、二つの法案は納税者のODAに対する主導権、そして参加への権利に密接にかかわるものであり、これらの法案を通すかどうかに国会の見識が問われているのではないでしょうか。
 以上、簡単ですけれども、どうも御清聴ありがとうこざしました

発言情報

speech_id: 114014308X00419970303_003

発言者: プラサート・チチャイワタナポン

speaker_id: 20545

日付: 1997-03-03

院: 参議院

会議名: 国際問題に関する調査会