プラサート・チチャイワタナポンの発言 (国際問題に関する調査会)
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○参考人(プラサート・チチャイワタナポン君) とても難しい御質問です。林先生もアジアの国々を見てこられたと思いますが、おっしゃるとおり、イギリス植民地時代はまず官僚エリートをつくって、独立してからこういう官僚エリートが軍をつくるんですね、シンガポールの場合もマレーシアの場合も。こういうパターンは旧イギリス植民地ではアジアにおいてもアフリカにおいても同じです。まず官僚エリートをつくって、その国が独立してからこういう官僚エリートが今度は軍をつくる。そこがシンガポールの場合は典型的で、軍の歴史がとても浅い。
このパターンと違って、タイの方は軍の支配時代は非常に長い。軍のカリスマのある人は王様になる、端的に言えば。そこで、タイの場合は非常に苦しく、民主主義発展の道は血が流れる、何回も何回も。九二年五月にクーデターが起こって軍が発砲した。つい四、五年前のまだフレッシュな思いが残っています。
そこで、林先生の御関心は、いかにしてシビルソサエティーが成長し、そこで民主主義発展が可能になるか、その見通しはどうだろうかと。
冷戦崩壊で、多くの今までの独裁政治体制はいわゆるトランジショナルデモクラシーに入っています。トランジショナルデモクラシーはどういうような政治かというと、議会制民主主義、また民主主義制度、インスティチューションはあるんですけれども、国民はまだそういう民主主義メカニズムを信頼していないという定義です。
こういうトランジショナルデモクラシーは、韓国はもう乗り越えたと思います。タイは乗り越えつつあります。形としては民主主義体制がそろっていますけれども、問題は、国民が政党を信頼しない、政治家を信頼しない、これがネックだと思いますが、韓国の次はタイだと思います。
トランジショナルデモクラシーから次にシュアデモクラシーに移っていきますけれども、シュアデモクラシーのポイントは、やっぱり民主主義インスティチューションなどがそろっていて、また国民が信頼する。これはとても難しいです。うちの国のタイですと、今難しく、乗り越えようとするんですけれども、非常にネックとなっていて、軍の影響力が低下しても国民がまだ政党、選挙、憲法を信頼しない。
去年十一月にタイで総選挙がありました。当時学んだ教訓は、いわゆる第一党現象です。第一党になればその党首は総理大臣です。だから、幾らお金を使っても議員をできるだけたくさん集め、選挙運動にお金を使う、票の買収などまで。それでやっと第一党になる。いわゆる第一党現象、これはタイは典型的です。
歴史を見ても、一九二五年以後、日本もそういう歴史があったようです。普通選挙権が与えられて有権者が急にふえて。大正デモクラシー時代は第一党になれれば総理大臣と。原敬以後です。そこも同じで、非常に政党が腐敗して、第一党になろうと。同じパターンですけれども。
これを乗り越えるのはやっぱり政治改革です。政治改革をやるために、今タイは、まさにその時代、その時期です。国民の要求がすごくあるんです。前のタイの政権の対応は、じゃ憲法の見直しと。結局、政治改革が可能、憲法改革をやろうと決意しました。新しく憲法策定草案委員会がことし一月からスタートしました。タイの憲法はいろんなことを細かく書きますから、それを変えれば、例えば選挙制度、政治資金管理などが全部そこに書いてありますから。八カ月以内でこれを完了する予定です。
先月、タィの一つの団体が東京にやってきました。九三年、細川政権時代にできた四つの政治改革法の結果はどうですかと、去年十月に総選挙があって。皆さんが自治省、また自民党本部、慶応大学の堀江教授などと会った。
それで、受けた印象としては、日本のモデルは、まだ政治改革は終わっていないという印象です。しかし、この第一党現象をなくするために、フランスとドイツのようないろいろなチェックメカニズムをたくさんつくろうと。これは、日本の場合は細川政権時代はやらなかった仕事で、フランスとドイツのような行政裁判、憲法裁判、会計裁判、オンブズマンのいろんなメカニズムをつくろうと。これでトランジショナルデモクラシーを超えられるかが一つ示されています。
今月には大きなセミナーが開かれます。フランス、ドイツ、イスラエル、日本、この各国の代表が招かれて徹底的な政治改革セミナーをやる。日本からは自治省の推薦で慶応大学の堀江先生が出席されるかもしれません。
ちょっと話が長くなりました。