筆坂秀世の発言 (国民生活・経済に関する調査会)

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○筆坂秀世君 私は、二十一世紀を展望した社会資本整備、社会保障のあり方を考える上で、やはり押さえておく必要があるのは、本調査会の昨年の中間報告でも指摘されましたけれども、豊かで安心して暮らせる国民生活をどう実現するか、当然のことですけれども、これを基本に据えることが大事だと考えます。
 そういう立場から、公共事業と社会資本整備のあり方について、そして国民の負担増への対処、経済をどう運営するのかの三点について意見を述べたいと思います。
 まず、公共事業の問題についてですが、公共事業のあり方が今のままでよいとする議論は、さすがに最近では影を潜めました。私は、公共事業のあり方について三つの問題点を指摘したいと思います。
 第一は、総額六百三十兆円の公共投資基本計画、あるいは十六本の長期計画に見られる総額先にありきというやり方についてであります。これは、必要な事業を積み上げるのではなく、総額に合わせて事業をつくり出すというやり方であり、これが浪費の根源になってきました。巨大な釣り堀同然の港湾整備、ほとんど利用されない農道空港、あるいは空港整備等々、挙げればこれは枚挙にいとまがありません。
 第二は、特定財源方式であります。これも、必要性よりも財源を使い切るというところに重点が置かれています。
 第三は、今問題になっている諌早湾干拓事業などに見られるように、一たん手をつけると理由を変えてでも事業を継続する、一たん始まればとまらないという仕組みであります。
 先般、財政構造改革会議の中間報告が出されましたが、今指摘した点については残念ながら手をつけるものにはなっておりません。計画の期間を延長して単年度の投資額を圧縮するという方向が示されていますが、しかし事業そのものはむだなものがあります。したがって、この場合、期間を延ばしても浪費を長期間続けるだけのことにすぎません。それどころか中間報告は、高規格幹線道路、拠点空港、中枢中核港湾は優先的、重点的に整備するとしています。今でも港湾、空港、道路の浪費が中心になっているときに、これを優先的に進めるというのでは浪費を抑えることはできません。
 その一方で、生活関連の社会資本整備は抑制するということが指摘されています。また、経済企画庁は、六百三十兆円の公共投資基本計画について、本調査会の説明で当初対米公約ではないと言っておりましたが、質疑の中で諸外国の認識が背景にあったと述べ、外圧があったことを事実上認めました。アメリカの経済運営の利害によって日本の財政のあり方がゆがめられる、こういうことはあってはならないことであります。必要な社会資本整備のために公共投資をすること自体はもちろん必要です。これは将来のためにも大切なことだと考えます。しかし、ゼネコンとの癒着によって巨大プロジェクトを優先するやり方は改めなければなりません。参考人からも、適切なマンパワーの配置との結合や計画策定のプロセスでの住民の参加がなければ施設への投資が生かされないということが指摘されていました。これは貴重な指摘だと思います。
 また、総合的な視野に立った社会資本形成の推進のために、縦割り行政の弊害を克服することも大切であります。今問題になっている諌早湾の干拓事業でも、水害防止のための干拓ということが言われましたが、河川は建設省、河口部は農水省ということで、有効な水害対策にならず、干拓を進めるための口実になっています。しかも、今は建設大臣は優良農地造成のためと言い、農水省は水害対策のためと言っています。所管のことを理由に持ち出さないことを見てもこの事業の破綻は明白だと考えます。
 交通運輸の分野でも、道路は建設省、鉄道は運輸省ということではなく、総合的に対策を進める必要があります。そのためには、総合交通特別会計を設けて旧国鉄長期債務問題の解決やモーダルシフトの推進などに当たることを提案したいと考えます。同時に、旧国鉄長期債務はJRの本州三社に応分の負担をさせることももちろん必要であります。
 今、各自治体で新ゴールドプランが進められていますけれども、二〇〇〇年三月の期限までに達成できるかどうかという問いに対して、七〇%以上がそれは無理である、こういう回答を行っています。この点でも、この新ゴールドプランの期限までの達成のために国の責任をさらに強化すべきだと考えます。
 情報通信分野では、参考人は、各家庭までの光ファイバーのネットワークをいわば国家的事業と位置づけて推進するよう力説しました。ところが、最近の新聞報道では、在来の回線を使った新しい通信技術の採用によって光ファイバー網の整備の緊急性は薄れたという指摘もあります。長期にわたって大量の資金を投入するプロジェクトには常にこの種の問題がつきまといます。長良川河口堰や諌早湾干拓などは、目的が失われても事業はあくまでも続行されるという最悪の見本でありました。
 したがって、現時点で合理的なビジョンであっても絶えず再点検をする、必要ならば中止や変更もできるということが大切であります。そのためには、国民への情報公開、これが必要です。
 次に、国民負担について述べたいと思います。
 政府は、今国会で消費税を引き上げ、さらに医療保険制度の改悪も強行して、総額で九兆円の負担増を押しつけようとしています。本調査会でも厚生省は、給付と負担のバランスを口実に、年金制度の改悪など社会保障の全面的な改悪、切り捨てを進める意向を表明しました。これから高齢化社会になっていくことは、これは客観的な事実であります。しかし、だから高齢者が安心して老後を送れるような対策を重視するのではなく、福祉も切り捨ての免罪符に高齢化社会がされることがあってはならないと考えます。
 国民負担率について述べたいと思います。
 これは、税と社会保障負担を指すものですけれども、この国民負担率には自己負担は全くカウントされていません。例えば高齢者が一カ月入院すれば保険外負担は四十万円あるいは五十万円月々払わなければなりません。したがって、国民負担率だけで社会保障の負担を議論するのは、これは適当ではないと考えます。参考人の意見の中にも、低過ぎる負担はかえって国民の負担を重くする、こういう指摘もありました。これは、国民負担率を下げると称して社会保障給付を引き下げれば、個々人が所得を万一のための備えに回さざるを得なくなり、結局社会全体から見ても実質的な負担増となるということであります。経済の効率性の上でもある程度の福祉の水準は維持すべきという点で、耳を傾けるべき見解と考えます。
 最後に、経済運営について若干述べます。
 景気刺激策としての公共投資の効果は薄れており、むしろ国民の懐を直接暖めることを経済政策の基本に据えるべきだと考えます。
 バブル崩壊後も膨らみ続けている大企業の内部留保は、税や社会保障を通じて低所得者を中心に再配分することで個人への購買力を高めるというような政策がますます大事になってきていると思います。個人への給付をふやしても貯蓄に回るだけだという意見もあります。なぜそうなっているのか。これは、結局今の制度のもとで、老後のこと、万一の場合のことに安心感が持てないからだと考えます。だれも好きこのんで貯蓄に励んでいるわけではありません。結局、国民が生活費を切り詰めてまで貯蓄しなくても済む制度を整備することが有効需要創出の最善の手段だと考えます。
 この点でも、参考人から社会福祉そのものの雇用創出効果について指摘があったことは大事であり、今後に生かすべきだと考えます。
 以上で意見表明を終わります。

発言情報

speech_id: 114014324X00819970528_010

発言者: 筆坂秀世

speaker_id: 4295

日付: 1997-05-28

院: 参議院

会議名: 国民生活・経済に関する調査会