田浦直の発言 (災害対策特別委員会)
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○田浦直君 去る七月二十三日寸浦田委員長、山崎理事、本岡理事、井上委員、鎌田委員、阿部委員、三浦委員、渡辺委員、久保委員、上山委員、有働委員、そして私、田浦の十二名は、熊本県及び鹿児島県における平成九年七月梅雨前線豪雨による被害の実情を調査してまいりましたので、その概要を御報告申し上げます。なお、阿曽田清議員が熊本県において現地参加されましたことを申し添えさせていただきます。
去る六月の気象庁長期予報によれば、七月はエルニーニョ現象の発生に伴い低温多雨との予報がなされましたが、関東地方は七月三日から八日にかけて連日猛暑が続くなど、これまでの定説を覆す異変が生じたことから、気象庁もさきの予報を修正したところであり、また七月の早い時期に既に二つの台風が上陸するなど、例年にない状況が生じていると報じられております。
九州地方では南下した前線が停滞し、熊本では七月六日から十三日までの八日間に、熊本市で七百九十九ミリ、阿蘇山西方の鞍岳では千二百九ミリを記録したのを初め、多くの地域で総雨量が千ミリを超えております。これを今年度の梅雨期の雨量として見た場合、平年値と比較しても熊本の六七%増、天草本土の六四%増など、軒並み五〇%以上も多く、また今回大規模な土石流災害が発生しました出水市でも、七月七日からの五日間で平年の七月降雨量の二倍を超える雨量を記録するなど、広い地域に短期間で大量の降雨が集中したことが今回九州地方各地に災害を発生させた原因であったと考えられております。
私たち派遣委員は、まず熊本県坂本村の山腹崩落現場の視察に向かいました。車中において熊本県全体の被災状況について説明を聴取した後、山腹崩落現場において績坂本村村長から被害状況を聞き、要望を受けてまいりました。次に、八代市の球磨川河川敷から自衛隊ヘリコプターに搭乗し、上空から坂本村の山腹崩落現場及び出水市の土石流災害現場を視察いたしました。上空からの視察では、両被災地の状況や周囲の地形、また規模の大きさ等、被害状況を全般的に把握することができ、大変有意義であったと考えております。
その後、出水市でヘリコプターをおり、出水市中央公民館において須賀鹿児島県知事、矢野出水市長から被害の概要及び要望を聞いた後、針原地区の土石流被災現場を調査してまいりました。
以下、順次御報告申し上げます。
まず、熊本県全体の災害の状況でありますが、裏山の崩壊により菊池市で一世帯二名、水俣市でも四世帯六名が生き埋めになりましたが、いずれも全員無事に救出されたとのことであります。また、多量の降雨により山沿い、川沿いの広い範囲で多くの避難者が出ており、九市町村で四百三十六世帯千三百七十二名が避難勧告により、三十一市町村で約百九十世帯が自主的に避難をいたしましたが、勧告はすべて解除されたとのことであります。さらに、大規模河川のはんらんはなかったものの、熊本市及び周辺の十四市町村で百六十棟が床上浸水、四十一市町村で千三百八十四棟が床下浸水するなどの被害が出ており、国道二百十九号線を初め県道や市町村道で土砂崩れや路側決壊により道路規制が約六百カ所に上ったということであります。
このように千ミリを超す雨量があったにもかかわらず被害が比較的小規模にとどまったのは、河川の水位と潮位とのバランスがうまくとれ水が早期に引いたことが幸いしたとのことでありますが、二十三日の時点で農地及び施設等の農業関係で約六十七億、山地崩壊や林道等の林業関係で約三十億、道路、河川、砂防の土木関係で約百二十二億、その他合わせて約二百二十億円の被害が出ており、今後の調査によりさらに被害の増加が見込まれるとのことであります。次に、坂本村の山腹崩壊現場におきまして、績坂本村村長初め関係者から被害状況について説明を受けました。
まず、坂本村は、総面積百六十二ヘクタールの約九割が山林であり、山間のわずかな平地に集落が点在し、急峻な地形が多く、毎年梅雨期や台風シーズンには災害が多く発生している。七月上旬から長雨が続いたものの、空梅雨との予報で安心していたやさき、十五日から斜面の崩落が始まったため、下流域の五十七世帯百七十二名の住民に対し直ちに避難勧告を行い、関係各機関の敏速かつ的確な協力もあり一名の犠牲者も出さずに済んだとのことであります。
この崩壊現場は、人吉市に向かう九州自動車道、肥後トンネルの手前付近にある八代郡坂本村鮎帰の川幅約十メートルの油谷川が流れるV字谷で、平成五年の台風十三号による風倒木の被災復旧地であります。急峻な斜面が刃物でえぐり取られたように崩れ落ち、赤い地肌が露出しておりました。崩落した土砂は十三万立方メートルとも言われ、自然の力の脅威をまざまざと感じさせられたものであります。
なお、風倒木災害等を含む山地崩壊については、坂本村で県全体の四割を占め、そのうち七割の処理が済み、残り三割の復旧事業中で、平成九年度の事業を八月初旬の入札にかける準備中の事故であったとのことであります。
県では九州大学を初め関係各機関の協力を得て調査を行ったところ、崩落は八百ミリ近い降雨による地下水の上昇に起因する深層崩壊によるもので、崩落部分の左側に亀裂があり、その後も不安定なのり面から間断なく中小規模の崩落が続いたとのことであります。
そこで、雲仙・普賢岳の災害復旧で活躍した無人重機を投入し、まず斜面の安定を図る工事を開始し、次いで、大量の土砂によってせきとめられた推定二、三万トンとも言われる水の排水路を確保するため、導水管を敷設するとともに新たな河道の確保とその拡幅のための掘削工事を行うなど、建設省及び県の速やかな応急工事の結果、避難勧告は十九日に解除され、応急仮設工事も二十日に完了したとのことであります。
次に、鹿児島県出水市境町針原地区の土石流災害被害状況等について御報告いたします。
須賀鹿児島県知事の説明によりますと、出水市では、七月七日から十一日午前七時までの雨量が六百七十四ミリと平年の七月降雨量の約二倍を超える雨がわずか五日間で降ったことから、十日の午前零時四十九分ごろに土石流が発生し、これにより、二十一名の方々が亡くなられ、重傷二名、軽傷十一名の人的被害を生じ、全壊十八棟、半壊一棟、一部破損及び床上浸水を含め二十三棟の住家と十二棟の非住家に被害を受け、二十三日現在、四十四世帯百二十六名が避難中である、また地域の主要農産物であるミカンの樹園地や農業施設にも大きな被害を受けたとのことであります。
また、鹿児島県は、十日に災害対策本部を設置するとともに、国との協議の上、出水市に対し直ちに災害救助法を適用し、土砂の排除と被災者の救済を開始しましたが、この救出救助活動には消防、警察、自衛隊等の関係各機関合わせて延べ二千二百人を超える方々に当たっていただき心から感謝している旨、また針原川の改修については、現在出水市管理の準用河川であるが、これを県管理の二級河川に格上げし、砂防事業との一体的工事を進めていく旨の発言がありました。
矢野出水市長からは、砂防ダム上流が崩落し、予想をはるかに超えた約二十万立方メートルの土砂が針原地区を襲い、完成間近の砂防ダムが約五万立方メートルの土砂をとめ、十五万立方メートルがダムを乗り越え、住宅、倉庫、道路、ミカン畑が埋め尽くされた。その結果、二十一名のとうとい命が失われ、市の基幹的農作物であるミカン園も六・四ヘクタールが壊滅、土砂の排出を要する園地が三・八ヘクタールにも上り、被害総額が約十三億三千六百万円に達する出水市始まって以来の大災害となった。この針原地区は風光明媚なところで、今年三月から四月にかけて北薩地区を襲った地震でもほとんど被害はなく、天災とは無縁に近いところと信じており、今回の土石流災害は予想だにしなかったとのことでございます。
これを受けて、派遣委員からは、予算の制約でダムの許容量が小さく査定されたのではないかとの疑問や、今後の砂防事業のあり方、被災したミカン農民等の生活再建問題、二次災害発生のおそれの根拠及びダム上流のため池と土石流との関係等ついて、県、市側と意見交換を行いました。
須賀知事からは、県内千八百八十八カ所の危険地域のうち整備が済んでいるのは四百十三カ所で千四百カ所余りが未整備であるが、財政問題もあり、なかなか整備が進まないといった問題がある。
また、針原地区の砂防ダムについては、五万二千立方メートルの流出土砂量を想定していたものの、実際のダムの計画容量は二万二千立方メートルであったことを地元に説明していなかったことに対し、今後、危険渓流地にダムを設置する際には、土砂の最大流出予想量はすべて地元への説明に入れるようにしたい旨の発言がありました。被災現場は、山のような大量の土砂の合間に破壊された民家が点在し、また幹の大部分が埋まったミカンの木や引きちぎられた自家用車の残骸、吹き飛ばされた砂防ダムの巨大な塊等が残されており、土石流のすさまじさと恐ろしさを痛感させられた次第であります。
この惨状を目の当たりにし、浦田委員長から献花を行い、私たぢ一行は亡くなられた方々の御冥福を心からお祈り申し上げた次第であります。
さて、針原地区の砂防ダムは、本堤が高さ十四メートル、幅八十五メートルと鹿児島県下でも大規模なものであり、副堤、垂直壁ともに九六%が去る六月末に完成し、下流の護岸工事等、附属的な工事を残すばかりの状況でありました。
現場一帯の地質は安山岩を基盤としておりますが、ダムは地盤の弱い砂れきの河床上に建設されております。土石流は針原川の砂防ダム上流約三百五十メートルの右岸で発生し、のり面の長さ約二百メートル、幅七、八十メートル、最大深さ四十メートル、約二十万立方メートルにも及ぶ土砂が大量の雨による地下水の水圧の上昇により一気に崩壊し、ため池を破壊しながら、時速五十キロをも超えるという速さで砂防ダムの堰堤を一部破壊し、これを乗り越えて二百メートルほど下流の住宅地を襲い、泥流はさらに下流の八代海の海岸縁を走るJR鹿児島本線にまで達しましたが、この針原川はふだんは四、五メートルの川幅で、水も少ない川であるとのことでありました。
また、鹿児島県からは、斜面の左側にある長さ六十メートル、幅十五メートルから二十メートルにわたる亀裂を生じている風化の激しい部分を切り裂く等の作業が終われば避難勧告も緩和できるとの見通しや、この砂防ダムによって被害が四分の一におさまっているとの建設省土木研究所のシミュレーションの結果、さらに、ダムがとめた約五万立方メートルの土砂を排除し、約二万立方メートルのダム機能を回復させるが、砂防機能を高めるため、もう一基ダムを増設したいとの見解が示されました。
被災地の状況は以上でありますが、これを踏まえた現地における要望事項は次のとおりでございます。
坂本村の績村長からは、切断された林道の通行どめが長期化することにより住民生活に多大な影響が懸念される一方、今後の台風シーズンの到来を控え、二次災害のおそれもあり、早急な災害復旧工事の完了が望まれるが、予算上の制約に苦慮しており、財政上の特段の配慮を願いたい旨、また須賀鹿児島県知事からは、第一に針原川の砂防事業について、土石流の発生により莫大な量の土砂が堆積し二次的な災害発生の恐れがあるため、砂防ダムの設置など災害関連緊急砂防事業等に要する予算の確保、第二に河川・耕地等災害復旧工事の早期実施のため、災害に対する査定の速やかな実施と災害の早期復旧、第三に被災した住宅の円滑な復旧を図るため、住宅金融公庫災害復興住宅資金貸し付けの適用、最後に財政措置の充実として、今回の土石流災害にかかわる県及び市の財政負担は極めて多額に上ることが予想されていることから、災害復旧事業等にかかわる起債枠の確保及び災害にかかわる特別交付税の重点配分等特段の財政措置を願いたい旨、また矢野出水市長からは、被災者の救済、道路及び農地の復旧に向け、災害救助法の適用における弾力的な運用等切実な要望を受けてまいりました。
以上が調査の概要でありますが、最後に、復旧作業でお忙しい中、本委員会の調査に快く御協力をいただきました方々に厚くお礼を申し上げますとともに、被災地の一日も早い復興と住民の皆さんの今後の安全を心からお祈り申し上げまして、御報告を終わらせていただきます。