今泉昭の発言 (本会議)
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○今泉昭君 私は、平成会を代表いたしまして、ただいま議題となりました労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案に関して、総理初め関係各大臣にお伺いいたします。労働時間の短縮は、豊かでゆとりある国民生活の実現はもとより、先進国の一員として国際協調を図りつつ、活力ある経済社会を目指す構造改革の一環として国を挙げて取り組んできた最重要課題の一つであります。
このため、一九八六年に出された前川レポート以来、その後三回策定されました経済計画におきましても、年間総労働時間千八百時間の早期実現を掲げてまいりました。
一九八七年には、四十年ぶりに労働基準法を改正し、原則週四十時間労働を翌年の一九八八年四月一日から施行するとともに、同年五月に策定された経済計画「世界とともに生きる日本」において初めて、計画期間中、すなわち九二年度までに週四十時間制、年間総労働時間千八百時間の達成を目指すことを公表し、国際的な公約ともなったわけであります。
しかし、この計画の達成目標年次をはるかに過ぎた今日、我が国の労働時間の現状は、九六年で年間総労働時間の平均が千九百十九時間であり、基準法に定めた週四十時間をはるかに上回る長時間労働のもとで働く労働者が約二千四百万人に上る状況にございます。
我々は、我が国経済を支える勤労者の皆さんが豊かでゆとりある生活を実感できるために、一日も早く法で定めた週四十時間制を完全に実現できる政策の実行が必要であると考えます。
時短促進法改正に関しくまた、労働時間の短縮に関して、以下の問題について政府の見解を伺います。
まず第一は、労働時間短縮に向けての政府としての姿勢についてであります。
一九九二年に決定を見た生活大国五カ年計画によれば、九二年度から九六年度までに年間総労働時間千八百時間を達成することを目標とするとされました。しかし、今日の実情は、目標を百時間以上も上回る状況にございます。この間、時間短縮の実現に向け時短促進法を施行する等、中小企業への援助、指導、さらには猶予措置等の工夫がとられ、労働時間短縮への環境整備がなされてきたはずであります。しかし、ここ数年の状況は何ら前進が見られていないと言っても過言ではないと考えます。
そのように実効が上がらないのはなぜでしょうか。週四十時間、年間千八百時間という目標に問題があるのか、それとも企業者側、あるいは勤労者側にその熱意がないと考えられるのか、総理の見解を伺いたいと思います。加えて、今回同じような措置を延期するだけで実効が上がると確信を持っておられるのかもお聞かせ願いたいと思います。
第二点は、法のもとには万人が平等であるべきという点についてであります。
労働時間の実態は、産業別、業種別、そして企業規模別により大きな格差が存在しております。労働時間は労使の自主的な交渉により決められるのでありますから、企業労使の力量や企業経営のよしあしにより格差が出るのは、自由主義経済のもとではある程度やむを得ません。
しかし、労働基準法に定められている法定の労働時間は、我が国社会における生活権のミニマムであります。社会の構成員として当然守らなければならない社会的規範であります。したがって、週四十時間という基準法に定められた労働時間に猶予を設けたり例外的取り扱いをすることは、そこに働く人を法が守らないことであり、法のもとでの不平等を生むことになります。
政府並びに行政は、そのようなことがないように、その危険性のある企業に対し強力な行政指導、監督はもとより、企業の環境整備に援助を含めた工夫を凝らすべきだと考えますが、労働大臣及び通産大臣の見解をお伺いいたします。
第三点は、法の精神についてお伺いいたします。
四月一日から猶予措置の期限が切れる中小企業の一部の経営者に対して、経営側四団体は、労働時間の短縮がコストアップとなるのを防ぐために、労働時間の短縮分だけ基本給を引き下げることを指導していると聞きます。法律上は、時間当たりの賃率さえ下がらなければ違法とは言えないでしょう。しかし、そこで働く労働者は、日本独特の賃金制度のため、基本給の引き下げが月収賃金の減少、ボーナス、退職金の低下につながることになるわけであります。
労働時間の短縮は、豊かさ、ゆとりを実現するためのものであり、賃金の減少、ボーナス、退職金の低下と引きかえにする二者択一のものではありません。国際労働基準であるILO条約第四十七号並びに第百十六号におきましても、週四十時間に伴う賃金の引き下げをすべきでないと明確に示されています。
今回の措置で二年間の行政指導の強化が言われていますが、経営者団体のこのような考え方は法の精神に反するものと考えますが、労働大臣の見解を伺いたいと思います。
第四点は、今後の労働時間短縮への展望についてお伺いいたします。
経済計画に示された年間千八百総労働時間の実現を図るためには、基準法に定められた週四十時間の達成だけでは実現不可能であります。すなわち、年次有給休暇の取り扱いや時間外労働の制限をどのように取り扱うかが重要なかぎとなります。
我が国の場合、年次有給休暇のミニマムは十日、平均付与日数は約十七日となっていますが、実際に使われるのは平均九・五日程度にしかすぎません。千八百時間労働の実現のためには、付与日数、取得日数とも最低二十日は必要だと考えられますが、今後の有給休暇の取り扱いを基準法の中でどう考えておられるのか。審議会の検討を待つのでは千八百時間の実現はさらに遠のくのではないでしょうか。
また、特例措置として残されている商業、映画・演劇、保健衛生、接客娯楽業について、どのような対策を考えておられるのかを労働大臣にお伺いいたします。
過去二回の経済計画における労働時間短縮計画は、残念ながら成功したとは言えません。現経済計画における目標は、まさに三度目のものであります。三回も失敗に終わる計画はまさに国際的な信頼を失いかねません。
現経済計画の計画期間は二〇〇〇年度までであります。この計画期間中に、週四十時間、年間千八百時間をぜひとも達成し、二十一世紀の我が国の勤労者がゆとりと豊かさを実感できる社会となるよう期待をしながら、そして今回改正案がそのための役割を十分果たすことを祈念いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕