水島裕の発言 (本会議)

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○水島裕君 私は、中山案に賛成の立場から提案者、厚生大臣に質問いたしますが、この法案は多くの問題点を含んでおります。ずっと医学界にいた私としましては、この問題点をわかりやすく整理したいと思います。
 私が望むことは、参議院で中山案の賛成者が一人でもふえるということはもちろんでございますが、それと同時に、議員の皆様が脳死や臓器移植というものを十分理解され、自分の判断でもってなるべく早く自分の意思を決していただきたいことであります。宗教とか死生観などから本法案に反対される方がいらっしゃるのもむしろ納得ができることでございます。
 まず、脳死が人の死であるか否かですが、竹内基準で正確に判定された脳死は医学的には人の死と断言してよろしいのではないかと思います。しかし、人の死という重大な問題に関しまして医学界の判断を国民に押しつけるというのは問題でありまして、社会的合意が必要であります。
 実は先日、仕事の関係もあって脳死の患者を見てまいりました。そうしましたら、心臓も動いておりますし、体温も正常であります。また、外見的にはすやすやと寝ているようでございます。このような人が死んでいるというふうに十分の国民的合意を得るためには、脳死の知識の普及あるいは脳死についての啓発ということがもう少し必要ではないかと思っております。
 なお、先ほど猪熊議員から脳死と心臓死がかなり異なるというようなお話がございましたけれども、私ども九八、九%はこれからも心臓死で死亡を判定するわけでございますけれども、その意味は、そのときは既に脳死、あるいはそれから数分後は、あるいはどんなことがあっても三十分後は脳死になるという、これは医学的な一般的な見解に基づいているものでございますので、そう違ったことではないということを御理解いただきたいと思います。
 さて、それでは何ゆえ今回中山案に私が賛成するかと申しますと、この法案ではドナー本人の署名による同意が必要となっているからでございます。その意味は、ドナーの方が脳死は人の死であるという医学的な認識に同意され、しかも臓器を提供することを意思表示されたものであり、社会的に見ても十分受け入れられることでございます。本人の署名が脳死を認めているということを含んでいるかどうか、これは大切なことでございますので、提案者にぜひ御意見をお伺いし、確認をしていきたいと思っております。
 ここで、対案の猪熊案について私の意見を述べさせていただきます。
 猪熊案作成の気持ちというのは大変私もよくわかります。問題点は、先ほどからありましたように、医学的にほぼ合意されている脳死は人の死であるということを法律で否定していることになることが第一。それから第二は、生きている人から心臓などを摘出することであります。仮に私がそのときの死亡診断書を書けということを言われましたら、死亡の原因は心臓摘出と書くことになると思います。このようなことは、臓器の提供を受ける患者さんも、あるいは臓器を摘出するお医者さんも受け入れにくいことだというふうに思います。提案者にそのことを御質問したいと思います。
 次に、脳死や臓器移植を法律で定めるべきか否かの問題に移ります。
 確かに私どもは現在法律で死を判定しているわけではありませんし、また、例えば英国では、ドイツもそうですけれども、臓器移植を法制化してはおりません。しかし、現在は国民も国会で何らかの決定を下すことを期待しているので、法制化は国会の義務だと思います。
 なお、最近聞いた話では、衆議院で移植法案が通ったので、現在、外国へ行って移植を受けようと計画を立てていた人が、これは日本でも受けられるということで日本で待っている患者さんがいるそうであります。今会期中にこの法案が通らなかった場合、移植を待つ患者さんへの影響が極めて大きいと思いますので、私は、ぜひ今会期中に成立を希望しておりますが、そうでなかったときの患者さんあるいは医学界についての影響について提案者にお尋ねいたします。
 さて、今回の移植法案の審議においても医師、医療に対する不信がしばしば唱えられました。それでなくても、臓器移植は倫理的に行わなければなりません。特に脳死判定が重要で、そのためには脳死判定法と脳死判定者の資質ということが問われます。公正確実な脳死判定者の資格は省令ないし学会レベルで決めることであるかもしれませんけれども、さらに検討する必要があると思いますが、厚生大臣、いかがでございましょうか、お伺いいたしたいと思います。
 脳死判定で仮に一例でも疑惑が生じることがあれば、今後の日本における脳死体からの臓器移植医療というものは壊滅すると私は思っております。
 なお、衆議院で脳死判定の拒否権に関する議論が行われておりましたけれども、私の考えは極めて簡単でございます。改定医療法でも議論されておりますように、脳死判定の際に必須の無呼吸テストという、こういう重要な試験というのは、現在でもそうですけれども、当然患者に説明して同意を得ることにしております。すなわち、インフォームド・コンセントをとるべきであります。ですから、現在でも家族は実質的に脳死判定の拒否権を持っているということになると思います。
 本法案の運用については、さらに幾つかの問題があります。
 移植を行う施設を、先ほども話がありましたように少数に限るべきではないか。これは、技術的な面からも倫理的な面から見てもその方がよいと思います。
 次が、訓練された移植チームを早急に確立すること、あるいはその移植の準備体制を常に備えておくことです。ドナーカードの普及、ネットワークづくり、移植後の感染対策なども大切です。移植において移植医が行う手術というのは、移植医療のごく一部であるということをぜひわかっていただきたいと思います。
 このように、本移植法案の成立も重要ですが、成立後の運用がこの法律の価値を大きく左右いたします。法律ができても、後がうまくいかないでは困るわけでございます。我々は、その運用が正しく行われることを前提にこの法案に賛成しておりますので、厚生大臣の高い見識あるいは判断力、実行力を期待したいと思いますが、いかがでございましょうか。
 先日も報道されましたように、八歳の女の子が言葉も通じない外国で移植待機中に亡くなったということがありました。このような患者さんが外国ではなく日本で安心して移植医療が受けられるよう、また移植医がこれまでのように殺人罪で訴えられることのないよう、中山案が一日も早く多数の賛成を得て成立することを切望し、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
   〔衆議院議員矢上雅義君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 114015254X02619970519_011

発言者: 水島裕

speaker_id: 17228

日付: 1997-05-19

院: 参議院

会議名: 本会議